ウクライナに関し、ほころびつつある欧米戦線
2023年1月12日
Salman Rafi Sheikh
New Eastern Outlook
12月第1週、ドイツ当局者が記者団に防衛費をGDPの2パーセントに引き上げるというベルリンの昨年の約束は今年(2023年)だけでなく来年度も実施しないと述べた。これは単純な経済学に基づくだけでなく地政学的な決定だ。ドイツのこの決定はアメリカ戦闘機を購入する可能性も遅れることを意味する。アメリカのメディア報道が示すようにF-35ジェット35機購入は危うい状態だ。実際12月早々ドイツ防衛大臣クリスティーナ・ランブレヒトがドイツ議員たちに「遅れと追加料金」によってこの取り引きが阻止される危険があると述べた。政策のこの変化は東欧での軍事衝突に関して変化するドイツ人の意見と相互に関係している。2022年4月に問われた際にドイツ人の約29パーセントがNATOがロシアを刺激して「戦争」させたと述べた。10月に同じ質問をされて、同じ意見のドイツ人の数は急激に40パーセントに上昇した。かつては東ドイツだった州では、59パーセントが東ヨーロッパでのこの軍事衝突はNATOの責任だと考えている。
この大衆の思考は有力なドイツ人によって強化されつつある。例えば2014年のミンスク合意は当時の危機を解決するものではかったことを前ドイツ首相アンゲラ・メルケルが最近明らかにした。この合意はロシアに対してウクライナが強力になるための時間稼ぎが狙いだった。それは現在の紛争の種がモスクワでは欧米自身によって何年も前に撒かれたことを示している。変化するドイツ人の意見は2022年2月のこの紛争の開始以来ひどい経済危機、高価なアメリカ・ガスによって悪化させられている危機と戦っているドイツ政府に影響を与えるのは確実だ。
苦闘する経済とドイツの変化する政治意見の二重の影響が「東陣営」とのドイツの接触、すなわち中国と、間接的にロシアが増している状況の核心心にある。最初の本格的接触は2022年11月、ドイツ首相の中国訪問だ。欧米の多くの人々はこの訪問を一回限りの会談と説明するが、ドイツのフランク-ウォルターシュタインマイアー大統領と習の最近の電話は実質的にドイツ地政学的思考がアメリカ陣営から離れる方向で進展しているのを示している。下記の通り中国公式声明は意味深長だ。
「両国はウクライナ危機に関し意見を交換した。中国は和平会談の促進に尽力しており、長引く複雑な危機は関係者の利益にならないと信じると習近平は強調した。EUが戦略的な自律を実証し、ヨーロッパ大陸での永続的な平和と長期的安定のためのバランスがとれた有効で持続可能なヨーロッパ安全保障機構設立を率先するのを中国は支持する。」
戦略的な自律に対する言及は変化する世界においてドイツがより大きな役割を探求しようとしているのを北京が十分承知していることを示しており意味深長だ。ドイツがその力を強化したいと望んでいることは否定できないが、ドイツはただアメリカの言いなりになって、そうなるのを望んではいない。興味深いことに、シュタインマイアーと習の接触の後に前ロシア大統領ドミトリー・メドベージェフの驚くべき中国訪問が続いた。これは単なる偶然の一致に過ぎないかもしれないが、アメリカ人の多くはドイツは方針を変えつつあると考えている。電話と訪問のいずれもヨーロッパはロシアとの「戦前の平和な秩序」に戻ろうというオラフの呼びかけが事前にあったのだ。これはウクライナにNATOを拡大するアメリカ計画全体への戦略的妨げ以外の何ものでもない。
中国は調停者としてヨーロッパ状況の正常化を促進しているように見える。それは、もちろんこの紛争を冷戦風シナリオを構築し覇権をよみがえらせる機会と見ているワシントンにとっては懸念だ。だが外交的な動きの中心が今やアメリカから離れ北京に移行しつつある事実はアメリカが先手をとられるにつれて懸念する多くの理由があることを意味する。それがアメリカが中国に対して新たな攻撃を始めた理由なのだ。
訪問前にブリンケンは中国国務委員兼外相の王毅に電話した。それは12月22日のことだ。アメリカの公式声明は「ロシアの対ウクライナ戦争と、その世界規模の安全保障や経済的安定に対する脅威に関する懸念を国務長官は述べた。両者は更に現在のコロナ状況を論じ、国務長官は国際社会に対する透明度の重要性を強調した。」
だが「アメリカは対話と封じこめに同時に携わるべきではなく、協力を言いながら同時に中国を突き刺すべきではない」と王はブリンケンに指摘し「これは合理的競争ではなく非合理的な抑制だ。これは紛争への適切な対処ではなく対立の激化を意図している。実際それは依然一方的ないじめという昔ながらの慣行だ。」と補足し中国の対応は極めて好戦的だった。
一方的ないじめというのは、ヨーロッパに近づかないことを含め、あらゆる問題でアメリカに歩調を合わせるようワシントンが中国を脅すことを言う。だが王の対応は事態を制御するアメリカの能力のなさを示すだけでなく、自身によるヨーロッパ大陸支配のほころびとして、ドイツが同盟の骨組み外で活動することが増えるのを見るにつれ、これら進展にワシントンがどれほど不安なのかも明らかにしている。アメリカに対するフランスの不満と合わせて、アメリカからのドイツの距離が増大していることは将来の事態のなりゆきやウクライナでのロシアの特別軍事作戦であり得る結果にとって極めて重要だ。
Salman Rafi Sheikhは国際関係とパキスタンの外交、国内問題専門家。オンライン誌New Eastern Outlook独占記事。
記事原文のurl:https://journal-neo.org/2023/01/12/the-unravelling-of-the-western-front-on-ukraine/
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原発、国民をだまし搾り取り利権関係者間で分配する一種の統一協会では?
大島賢一教授『原発のコスト:エネルギー転換への視点』を拝読したことがある。
デモクラシータイムス
日刊ゲンダイDIGITAL 半田滋氏記事
今朝の孫崎享氏メルマガ題名
A-1昨年10-12月のGDPは2.9%増。「ゼロコロナ」脱した中国経済、順調な持ち直しは期待薄、多くのエコノミストは、仕事の消失や企業の閉鎖といったパンデミックによる傷跡が癒えるには時間がかかるのではないかと懸念している。
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コメント
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いつもありがとうございます。
誰にウクライナの戦争の責任があるかについて、ドイツ人は覚醒しつつあるとのニュース、嬉しいです。日本人は覚醒しつつあるのでしょうか?
開戦時に日本の国会で、議員の全員がゼレンスキーの演説を聞くことがあり、たった一つの政党だけがスタンディングオベーションを拒否しました。今私は、その政党の4月の統一地方選挙に向けた活動に参加しています。
ウクライナと同じ状況で、日本は台湾有事に向けて、アメリカの代理戦争をやらされるのではないかという恐れについて、友人とよく話します。
43兆円もの中古武器を買わされた日本、今こそ、日米安保条約を廃棄する運動を起こすべきではないでしょうか?
投稿: nobara | 2023年1月18日 (水) 15時39分