中国のCOMAC C919ジェット旅客機と多極主義への跳躍
2023年1月6日
Brian Berletic
New Eastern Outlook
まさに2022年末、中国COMAC(中国商用飛機有限責任公司)のC919定期便ジェット一号機が中国の国内航空会社中国東方航空に引き渡された。
「東方航空世界初の中国製C919ジェット機を受け取る」という見出しの記事でロイターはこう報じている。
世界初のC919、中国製ナローボディ・ジェット機は金曜日、上海の最大顧客である中国東方航空(CEA)に引き渡され、歴史的瞬間を記念する15分の飛行のため離陸した。
国有通信社新華社によればエアバス(EADSY)A320neoとボーイング(BA)737 MAX単通路型航空機シリーズのライバルであるこの旅客機は来春初商用飛行すると予想されている。
引き渡しから初商用飛行までの間に、最初のC919は最高100時間のテスト飛行をするとSimply Flyingが報じた。テスト飛行には複数の目的地への飛行が含まれる。一方中国は既にパイロット9人、フライト・アテンダント24人と維持管理人員13人を含め広範な人員を航空機運営のために訓練している。
この日程はCOMACや東方航空や中華人民共和国にとって明らかに大きな業績だが、それは多極世界のための大きな跳躍でもある。
飛行機を越える影響
この旅客機と既に飛行認証されているロシアのイルクート MS-21の二機と、国内のみならず彼らの背後にある国際需要を満たしている企業の可能性から考えると欧米のボーイングとエアバス社が享受した複占は終わるかもしれない。
「エアバスとボーイングにとっての新たな競争相手」という見出しのドイツのドイチェ・ヴェレ記事は、こう報じている:
新しい航空機が定期航空市場の大いに儲かる主要部分に参入する。エアバスとボーイングはそれを真剣に受けとめる必要がある。特にMC-21は今売られているエアバスとボーイングの在来型と比較して一部分野でより良い性能を提供できる。アメリカとヨーロッパの大手は何十年間も栄光の座であぐらをかいていたのでそれは少しも不思議ではない。ボーイング737の起源は1967年にまで遡り、他方エアバスA320は1987年に初飛行した。
ロシアと中国の旅客機が欧米独占企業に挑戦するのを阻止するためロシアと中国の航空機企業に対し損害が大きな制裁を課する取り組みで国家安全保障から人権に至るまであらゆることが特にアメリカ政府に実行された。アメリカ政府が中国通信企業にしたのと全く同様、これら制裁はロシアと中国の航空機企業が国際的に競争するのを阻止する企てで、可能なら、これらの企業を完全に排除するだろう。
だがG7諸国の合計より大きな人口を持つ中国は国際市場への参入にかかわらずCOMACや他の中国航空機企業を強化する可能性がある空旅市場がある。ロシアや隣接する市場は、時間とともにMC-21を大量販売する可能性を与え、自身を証明し、魅力的でより多数の国に買いやすくなるだろう。
アメリカ制裁の影響と意図を重々承知して、ロシアと中国両国ともエンジンや制御システムを含め、かつては欧米依存していた部品の代替品を開発している。
多極主義には複数選択肢が必要
多極主義は現在普及している欧米率いる単極の「規則に基づく」秩序に対する単なる政治宣言や代替の国際秩序に対する願望というだけではない。それは金融と貿易に関する代替制度を物理的に作り出すだけでなく、産業や製造の代替システム構築だ。
欧米が持っている権力はボーイングやエアバスのような独占企業から生じ、莫大な利益は株主の手中に集中する。それら利益は集中した権力と影響力を意味する。これら独占に対する代替物の創成は利益集中を弱め、結果として生じる権力と影響力を再分配する。
これが中国のC919とロシアのMC-21の成功の可能性を特に重要にする。彼らの成功は複雑さで悪名が高く参入困難な産業における欧米複占の集中権力と影響力を削り取るだろう。C919とMC-21の成功は中国とロシアのみならず、他の新たに登場しつつある工業経済に対する将来の成功のためのケーススタディと手本になるだろう。
単なる貪欲や嫉妬深い複占保護以上に、ボーイングとエアバスと彼らの周辺の圧力団体はこれは単なる飛行機販売を越える問題だと悟っている。欧米覇権を維持するか取って代わられるかだ。
C919や産業の広範で、様々な領域で拡大する中国企業の他の製品こそグローバル段階への中国上昇の要因だが、北京とその勃興を拒否するワシントン間の緊張は増大する。
多極主義の政治的側面を支える産業的、経済的要因の理解は、アメリカが課そうとしている制裁と、中国がそれらを回避し乗り越えるため使用する方法に関し、ワシントンと北京両者が下す決定を理解するのに役立つ。C919とMC-21の継続的な開発と適応の拡大は避けられないようだ。欧米がこれら新たな当事者を認め尊重していたら、これらの新旅客機が生み出す繁栄を共有できだろう。どちらの航空機も欧米のプラット & ホイットニー製エンジンを使用している。これら航空機開発を阻止するというワシントンの決定のため、中国とロシア両国が国産の代替品があるか開発中だ。これらエンジンは最終的に国内で採用され、実績が証明されてから世界市場に参入して欧米製品を打倒する可能性がある。
アメリカが制裁に依存しすぎることで政治的に自身を孤立したのと全く同様に、それはその産業のために解決する以上に多くの問題を作り出している。
中国とロシアの航空機企業とその製品がボーイングやエアバスと大きな市場シェアをめぐって一体いつ、どの程度競争し始めるかは時がたてばわかるが、そうなった場合、対象は航空機企業とその利益だけではない。富、権力、影響力を入手するための利益源が決まることで、ワシントンに一方的に決定されるか、北京とモスクワが始めた多極主義を通じて将来が決定されるかということだ。
Brian Berleticは、バンコクを本拠とする地政学研究者、著者。オンライン誌New Eastern Outlook独占記事。
記事原文のurl:https://journal-neo.org/2023/01/06/china-s-comac-c919-passenger-jet-and-a-leap-for-multipolarism/
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あえなく潰れた日の丸旅客機構想を思い出す。
東京新聞に記事が連載されたが悲しくて読めなかった。
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