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2022年12月10日 (土)

プーチンがウクライナで戦争を始めたのではない

マイク・ホイットニー
2022年12月2日
Unz Review

 「ウクライナのNATO加盟は全てのロシア・エリート、(プーチンだけではなく)にとって、あらゆる越えてはならない一線の中でも最もめざましいものだ。クレムリンの奥まった暗い場所にいる図体ばかり大きく頭の悪い連中から、プーチンに対する最も厳しいリベラル批判者まで、鍵となるロシア当事者との2年半以上の会話で、私はウクライナ のNATO加盟が、ロシアの権益に対する直接の挑戦以外の何かと見なす人を誰も見たことがない。」
コンドリーザ・ライス国務長官宛ての当時のロシア大使(現CIA長官)ウィリアム・バーンズの2008年メモ

 「多極世界」には必然的なことは何もない。その登場は、始まったばかりで結果がまだ不明な戦争に完全に依存している。」本文から

 ピュー研究所が実施した調査によると「アメリカ人の約半数が...アメリカとNATOのウクライナ支援がロシアとアメリカの戦争をもたら可能性について、極端に(24%)または非常に(26%)懸念していると述べている。」(「ウクライナでの戦争に対するアメリカ人の懸念:より広範な紛争、米露衝突の可能性」ピュー研究所)

 これは核戦争を引き起こす可能性がある予期しないエスカレーションのリスクを考えると予想より少ない比率だ。それでも、これはデータが我々に教えてくれることでデータはウソをつかない。

 しかし興味深い部分はこれだ。国民の半分がロシアとの直接紛争を懸念しているにもかかわらず、彼らは依然バイデンが「侵略」とされるものに対してロシアを罰するため取っている他の措置を圧倒的に支持している。調査の詳細は下記のとおりだ。

 ロシアのウクライナ侵攻に対するアメリカの行動に対する二大政党の幅広い支持

 共和党員(73%)と民主党員(80%)双方の圧倒的多数数が、アメリカがロシアに厳しい経済制裁を課すことを認めると答えている。同様の割合の人々がウクライナに軍装備や武器を送ることを認めると述べている。

 民主党員の約10人に7人、共和党員の10人に6人は、ウクライナ近隣のNATO諸国に多数の米軍を駐留させることに賛成だと答えている。(「ウクライナでの戦争:より広範な紛争、米露衝突の可能性に対するアメリカ人の懸念」ピュー研究所)

 これは一体何を意味するのだろう? なぜアメリカ人は、厄介な制裁、追加の軍隊配備、致命的兵器の無限提供を圧倒的に支持すると同時に「ロシアとアメリカの戦争の可能性」について「極端に」または「非常に」懸念していると認めているのだろうか? 彼らは、ロシアに対するこれらハイブリッド攻撃が、最終的にはワシントン・モスクワの間の直接軍事衝突につながる戦争の一形態であることに気づいていないのだろうか?

 そして、アメリカ人はともあれこれらの厳しい措置をなぜ支持するのだろう? 彼らはウクライナへのNATO拡大はロシアに軍事的対応を強いるとプーチンが警告したのを知らないのだろうか? 彼らは最も優秀な外交政策専門家の多くがウクライナへのNATO拡大に対して警告していたことを知らないのだろうか? 彼らはNATO拡大は戦争につながる可能性があるとロシアが繰り返し警告していたのを知らないのだろうか? 民主的に選出されたウクライナ大統領が、2014年にCIAが支援するクーデターで打倒され、ワシントン傀儡に置き換えられたのを彼らは知らないのだろうか?

 2015年以来「アフガニスタン型」泥沼を作り出そうと国境を越えて誘い込むべくロシア軍に対し反乱するようCIAが極右ウクライナ準軍組織や過激派(ネオナチ)を訓練してきたのを彼らは知らないのだろうか?

 少なくとも過去8年間ワシントンが(中国を包囲するため)中央アジア全体に軍事基地を広げるべく、ウクライナをロシアに対する破城槌として利用する計画をしているのを彼らは知らないのだろうか? プーチンが軍隊派遣を余儀なくされる前の8年間、ウクライナ軍がロシア人が住む地域の住宅地を砲撃していたのを彼らは知らないのだろうか?

 合法政府が打倒された8年前に戦争が始まったのをウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領が認めているのを彼らは知らないのだろうか? (彼はCNNのファリード・ザカリアに言っている。「私はウクライナで戦争が8年間続いていると強調したい。それは単なる特殊軍事作戦ではない」)ゼレンスキーが現状を維持し、ウクライナが「中立」国のままだったら戦争は決して始まらなかったのを彼らは知らないのだろうか? 我々のCIA長官が、ウクライナのNATO加盟はロシアにとって「越えてはならない一線の中でも最もめざましいもの」と呼んだのを彼らは知らないのだろうか? NATO東方拡大がロシアの国家安全保障に対する重大な脅威で、常にそうだったのを彼らは知らないのだろうか? ロシアの母子はアメリカの母子に与えられると同じ安全と安心に値するのではないのだろうか、それとも国境の反対側からワシントンの戦闘部隊や戦車や核ミサイルを向けられて生きるよう我々は主張すべきなのだろうか? 彼らにはNATOの銃を頭に向けられたり、ワシントンの短剣を喉に当てられたりすることなく生活を送る権利はないのだろうか? これはantiwar.comの記事からの引用だ。

 冷戦終結以来プーチンだけでなくロシア指導者たちが、NATOの東方拡大、特にウクライナへの拡大を脅威として認識していることをNATOは長いこと知っている。2008年ブカレストでのサミットのNATO声明に応えて、ロシア指導部は、この誓約を実存的脅威と見なすことを明らかにした。プーチンはジョージアとウクライナのNATO加盟はロシアの安全保障に対する「直接の脅威」だと警告した。...

 ロシアはどうしてNATOが脅威ではないと見なせなかったのだろう?...ロシアはその国境へと近づき、自国だけを排除して近隣諸国を吸収する同盟を、どうして敵対的ではないものとして認識できるだろう? それは「ロシアが重要な国益と見なすものを無謀に無視している」とロバート・ゲイツは述べた。...

 2022年2月の記者会見で、プーチン大統領は「今NATOがどこにいるかわかっている。ポーランド、ルーマニア、バルト三国だ. . ..。現在弾道弾迎撃ミサイル発射装置はルーマニアに配備されており、ポーランドにも設置されつつある。まだ構築されていなくとも間もなく建設されるだろう。これらはトマホークを発射できるMK-41ランチャーだ。言い換えれば、それらはもはや単なる迎撃ミサイルではなく、これら攻撃兵器は我々の領土の数千キロメートルをカバーできる。これは我々にとって脅威ではないだろうか?

 数週間前プーチンは「アメリカの世界防衛システムの要素がロシア付近に配備されている」と不満も漏らした。彼はルーマニアや間もなくポーランドでのMK-41ランチャーについて再び話した。その時彼は「このインフラが前進し続け、アメリカとNATOのミサイルシステムがウクライナに配備された場合、モスクワへの飛行時間はわずか7〜10分、極超音速システムでは5分になる。これは我々にとって我々の安全保障にとって大きな課題だ。」(「ウクライナのNATO加盟に関するストルテンベルグの挑発的誓約」テッド・スナイダー、antiwar.com)

 こうしたことをアメリカ人はどうして知らないのだろう? どうして彼らの大多数が「プーチンが戦争を始めた」とかロシアの戦車が国境を越えてウクライナに入った2月24日に戦争が始まったと考えるのだろう。言論の自由と報道の自由を(表面上)約束している民主主義国の国民の大多数が、どうしてこれほど悲劇的に誤った情報を与えられ、プロパガンダされ、洗脳されることが可能なのだろう?

 それだけなのだろうか。アメリカ人は実際地球上最も気の弱い洗脳された羊なのだろうか? これはThe American Conservativeからの引用だ。

 「ウクライナ戦争が始まって以来、商業マスコミ、政治家、アメリカと西ヨーロッパ中の全ての管理されたNGOは、ウクライナ東部でのロシア軍事行動はいわれのないもので、不当だという主張で足並みを揃えている。

 このプロパガンダ電撃戦には一つ問題がある。それは完全に真実ではないことだ。闇の国家、つまり政府エリート、諜報機関、軍事機構はNATOを国境に近づけてロシアを脅かし、挑発するのに何十年も費やしてきたのだ。

 これを理解するためにロシアを好きになる必要はなく、永遠にウラジーミル・プチンを嫌うことが可能だ。根本的な問題は変わらない。ロシアは彼らの国境のNATOを侵略行為と国家安全保障への脅威と見なしており我々はこれを何十年も前から知っていた。

 この記録は明白で反論の余地はない。」("Blame the Deep State for Carnage in Ukraine"ウクライナでの大虐殺で非難すべきは闇の国家, George D'Neill jr, The American Conservative)

 だから、ウクライナでの戦争は2月24日に始まったわけではないのだ。そして「邪悪な」プーチンが戦争を始めたわけではないのだ。証拠が示しているのは、このウクライナ紛争は、ロシアのヨーロッパとの経済統合(そしてリスボンからウラジオストクにいたる自由貿易圏の最終的出現)が、世界権力へのワシントンの貪欲な欲望に対する"現実的な現在の危険"と見なされ、ずっと前にエリート・シンクタンクやネオコンの隠れ家で作り上げたもう一つの血まみれの策謀なのだ。モスクワが課した最終解決の一環として、ヨーロッパ全体がエネルギーや食糧不足、広範囲にわたる産業空洞化と第三世界並み貧困という次の暗黒時代に突入する事実にもかかわらず、ウクライナが最終的に崩壊に直面する事実にもかかわらず、対ロシア戦争の発射台としてこの同じエリートがウクライナに定住したのだ。冷戦中使用されたアメリカ「封じ込め」戦略を書いた外交政策の巨人ジョージ・ケナンからのこの引用を確認願いたい。1998年彼はニューヨークタイムズに以下のように語っていた。

 「ロシアは徐々にかなり敵対的な反応を示し、彼らの政策に影響を与えると思う。これは悲劇的な間違いだと私は思う。これには理由皆無だ。誰も他の誰も脅していない。この拡大でアメリカ建国の父たちを墓の中でのたうち回るはずだ。我々にはそうする資源も本格的にそうする意図もないまま我々は一連の国々を保護すると署名した。[NATO拡大]は外交問題に本当の関心がない上院によるただののんきな行動だった。」("Blame the Deep State for Carnage in Ukraine"「ウクライナでの大虐殺で非難すべきは闇の国家」George D'Neill jr, The American Conservative

 ジョージ・ケナンや元国防総省ウィリアム・ペリー、元国務長官ヘンリー・キッシンジャー、元ソビエト連邦大使ジャック・F・マトロック・ジュニアなど尊敬される外交政策評論家がなぜウクライナのNATO加盟に反対するのか疑問に思ったことはないのだろうか? ジョン・ミアシャイマーのような外交政策の重要人物がなぜ自分の評判にわざわざ危ないまねをして、この政策が続けばウクライナは全滅し、アメリカはロシアとの核戦争に終わる可能性が高いと人々に知らせるのか自問したことがおありだろうか? ミアシャイマーはこう言っている。

 「欧米はウクライナに甘い誘惑をし、最終結果としてウクライナは破壊されるのだ...我々がしているのはウクライナ人にロシア人に断固対処しろという奨励だ。我々はウクライナ人に、我々は最終的にロシア人を打ち負かし、彼らは最終的に西側の一員になると考えるよう勧めているのだ...。そしてもちろんウクライナ人はこれに同調しており、ウクライナ人はロシア人と妥協するのをほぼ完全に望んでおらず代わりに強硬政策を追求したいと考えている。私が前に皆様に言った通りよ彼らがそうすれば最終結果は彼らの国が破壊されるのだ。そして我々がしているのは事実上その結果を奨励しているのだ。」ジョン・ミアシャイマー「欧米はウクライナに甘い誘惑をしている」You Tube、1:32

 アメリカ合州国はその領土を使ってロシアに対する戦争を遂行できるようウクライナを意図的に誤解させている。それは大量虐殺に等しい身勝手な行為だ。アメリカはウクライナには重要な国家安全保障上の利益を持っておらず、その都市や人々が忘却に追い込まれるかどうか気にしない。ワシントンにとって重要なのはロシアに打撃を与え、ロシアを"軍事的あるいは経済的に過剰拡大"させる紛争に誘い込み(ランド研究所)、その国境を越えて権力を投射できないようにすることだ。それが目標であり「ロシアを弱体化させる」ことが常に目標だった。このどれもウクライナやウクライナの人々とは何の関係もない。全て権力が狙いだ。純粋で混じり物のない地政学的権力だ。

 結論:加速するアメリカの経済衰退を阻止し、卓越した世界超大国としての地位を維持する唯一の方法は軍事力行使だと外交政策エリートとそのグローバリスト同盟者が決定したのだ。明らかに、その決定は既に行われた。ウクライナ(そして間もなく台湾)で我々が見ているのは、アメリカ・タカ派黒幕は戦いなしには世界における彼らの高貴な地位を放棄するつもりがないという更なる証拠だ。彼らは権力に対する万力のような掌握を維持するため武器庫内の全ての武器を使用するつもりだ。これは「ルールに基づくシステム」からの移行は速やかでも無血でもないことを示している。これと反対の楽観的予測にもかかわらず「多極世界」には必然的なことは何もない。その出現は、始まったばかりで結果がまだ不明だ戦争に完全に依存している。

記事原文のurl:https://www.unz.com/mwhitney/no-putin-did-not-start-the-war-in-ukraine/

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 The Duran 囚人交換の話題。死の商人とバスケット選手の交換だとされる。自分たちこそ世界最大の死の商人国家なのに噴飯ものの見出し。それを垂れ流す属国大本営広報部

Prisoner exchange 32:46

 今朝の孫崎享氏メルマガ題名

習近平サウジ訪問。バイデン時の冷たい対応と異なり大歓迎。今や中国はサウジの輸出、輸入の最大相手国。米国はファーウエイ排除の国際協調を主導だが、サウジは導入を表明。米―サウジーイスラエル連合が変化。「人権の名の下の内政に干渉する」

 国連から是正するよう指摘されても全く改めない入管という人権侵害機関

 デモクラシータイムス

ともに笑う日までともに泣き、行動する クルド難民と周香織さん 池田香代子の世界を変える100人の働き人75人目+α 1:12:46

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コメント

千田様

コメントをありがとうございます。その話題の記事翻訳を近日公開予定です。
ロシアが欧米全体を信じられない事実の公開は画期的なことかも知れません。

メルケルが、ドイツのインタビューで、
欧米はミンスク合意を守る気は最初から無かった。
ウクライナの戦力UPための時間稼ぎだったとバラした事件が
ツィッターの親露派の間で話題です。

https://twitter.com/ashtwice/status/1600824649734295553

記事では、こちらの記事が辛辣で面白い。
■ミンスク合意は時間稼ぎ ( by メルケル) &不可逆性 (2022/12/10)
https://blog.goo.ne.jp/deeplyjapan/e/3f3038c203377905904e05490a758959

ゴルバチョフの時の「NATOは東進しない」という約束違反といい、西側のえげつなさはスゴイ。
プーチンが言う通り、アメリカは嘘の帝国です。

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