石油価格上限設定で墓穴を掘ったG7天才連中
2022年12月19日
フィル・バトラー
New Eastern Outlook
さて今やメッセージは非常に明確になった。安価なロシア・ガスを動力源にしてドイツとヨーロッパの他の国々が豊かに繁栄するのをもはやアメリカは望んでいない。それは大事だ。競争に迫ってみよう。奇妙なことに、皮肉なことに、あるいは滑稽かもしれないが、今やインドは安価なロシア・ガスを動力源にして遙かに豊かに繁栄するだろう。
ヨーロッパを完全征服し同時にロシアを弱体化させるワシントンの壮大な基本計画が欧米エリート主義連中の面前で炸裂しようとしている。最近では今月G7が発表したロシア石油価格上限をインドが支持しなかった際にロシアは喜んだ。インドのロシア石油輸入は2022年最初の8か月で1,635万トンに増加したとロシア外務省は記者団に語った。
欧米が提案したような市場操作の道徳面をロシアのアレクサンドル・ノヴァク副首相は次のように指摘している。
「結果的にエネルギー不足問題は発展途上国だけでなくヨーロッパ先進諸国でも悪化している。」
アメリカやEU、イギリスやその同盟諸国による動きで非常にヒステリックなのは彼らが見逃しているように見える全体像だ。ドイツ工業を弱体化し、ヨーロッパの他の国々を「親指締め具」で拷問するのはウォール街の海賊やヨーロッパの古い金持ちにとっては輝かしい賭けのように思われるに違いないが、本当にそうだろうか? 先日ロシアのセルゲイ・ラブロフ外相は下記の冷や水を浴びせた。
「現在インドは経済成長面で主要国の一つ、おそらくリーダーでさえあると思う。人口はすぐに他のどの国より多くなるだろう。」
さらにロシアの石油やガスや他の資源に対するインドの姿勢はインド国民と国家の利益と一致している。EUと異なりインドは特定供給者を求めておらず国の需要増大と国内需要を満たす最良の取り引きのみ求めている。ワシントンの圧力下、EUは国民が感じる苦難と無関係にウクライナでの紛争を依然全面的に支持している。
現在ロシアは価格禁輸を回避するため、保険を見つけ、タンカー艦隊を構築することによりインドや他の国々にG7の石油価格固定回避支援さえ申し出た。対ロシア経済戦争におけるワシントンの愚行。Oil Priceは先月OPEC+の生産量が日量3,829万バレルに減少し、割り当て削減に日量181万バレル足りなかったと報じた。更にJPモルガンのグローバル市場投資戦略最高責任者のマルコ・コラノビッチは石油株を今すぐ売るよう投資家に促したばかりだ。またドイツでは市民や企業がガスを節約するため室温設定を下げるよう要求されている。ドイツは来年2月1日までに貯蔵中のガス・レベルが40%を下回った場合、ガス供給制限を開始する必要がある。
これに加えドイツ、ループミンの新しい浮体式LNGターミナルが数週間遅れておりアメリカがエネルギー救助に来る可能性も低いように見える更に悪いニュースがある。元の話題に戻ると11月の見出しは「インドは世界経済大国としてアメリカ、中国、EUに先んじて世界をリードしている」と書かれている。この話はインドが2027年までに世界第3位の経済大国になると予測するモルガンスタンレー報告に基づいている。ひょっとするとロシアの高品質で大量の安価エネルギーを動力源にインドはアメリカさえ困らせることができる。
フィル・バトラーは政策研究者、評論家、政治学者、東ヨーロッパ専門家で「Putin’s Praetorians(プーチンの近衛兵)」という最近のベストセラーや他の本の著者。オンライン誌New Eastern Outlook独占記事。
記事原文のurl:https://journal-neo.org/2022/12/19/g7-geniuses-shoot-both-feet-with-oil-price-cap/
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大本営広報部洗脳テレビが出さない人の意見こそ聞く意味があるだろう。youtubeで見ている海外の評論家のどなたもそれぞれの国の大本営広報部から排除はされても出演依頼されることはまずなさそう。
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