« EUは目を覚まし悪いのはアメリカだと気づいている。マクロンはリセットが必要と主張 | トップページ | 人気番組「代理戦争」最終回 »

2022年12月14日 (水)

「ウクライナを武装させるためミンスクIIに合意した」メルケルは本当にそう言ったのか?

2022年12月9日
Moon of Alabama

 元ドイツ首相アンゲラ・メルケルがドイツ週刊誌ディー・ツァイトでした最近のインタビューについてヘルムホルツ・スミスやアンドリュー・コリブコ、アンドレイ・マルチャーノフには色々考えある

 スミスは「欧米」は信頼できないことを示していると言う。コリブコはインタビューがウクライナでの紛争を長引かせるだろうと考えている。マルチャーノフはメルケルは愚かだと言う。彼女は愚かではない。

 インタビューでメルケルは彼女が交渉し保証人として共同署名したウクライナ政府とドンバス地域間のミンスク合意は決して履行されることを意図していなかったと主張しているようだ。ウクライナ軍を増強する時間を稼ぐことだけ狙っていたのだと。

 しかし私はそのような解釈は間違っていると思う。メルケルはアメリカだけでなく自身の保守党からも非常に厳しい批判を受けている。今彼女は彼女のかつての決定とウクライナの現在の悪い結果を正当化しようと躍起になっている。彼女は話をでっち上げているというのが私の直感だ。残念ながら彼女は深刻な打撃をもたらしている。

 インタビューの問題一節はヘルムホルツ・スミスや他の人々が引用している段落より長い。文脈は重要だ。私の翻訳は下記の通りだ。

 ツァイト:比較的穏やかな年は不作為の年でもあったのか、あなたが危機管理者であるだけでなく危機の原因の一員でもあったのかと自問されますか?
 メルケル:それに対処しなければ私は政治家にはなれません。[...気候変動対策に関する話題いくつか...]ロシアとウクライナに対する私の政策を見てみましょう。当時私が下した決定は今日も理解できる方法で行ったという結論に私は達しました。まさにそのような戦争を防ぐための試みでした。これが成功しなかった事実は試みが間違っていたという意味ではありません。

 上記は本心だと思う。ミンスク合意は連邦化されたウクライナにドンバスを再統合することで戦争を防ぐ真剣な試みだった。

 しかしウクライナのポロシェンコ大統領には合意を履行する意志も政治支援がなかった。彼の下で連邦化法がウクライナ議会を通過する可能性はなかった。しかも彼に本当に圧力をかけることができる唯一の当事者であるアメリカは合意を実行しないよう彼に言っていた。しかしその後ミンスクIIを履行するという公約で大多数に選出されたゼレンスキーが登場した。彼はそれを試みさえした。しかしすぐに彼が試み続ければ彼自身の命が深刻な危険にさらされることを知った。ミンスクの実現を望まなかったアメリカの圧力もあった。しかしメルケルはそれをはっきり言うことはできない。2019年後半までに彼女はミンスクIIが永久に阻止されていることを認識したに違いない。それは彼女にとって深刻な敗北だったが、それについて彼女にできることは何もなかった。

 したがって今彼女は事後、チェンバレン風の言い訳で登場したのだ。チェンバレンが署名した1938年ミュンヘン協定はドイツがすぐに戦争をするのを防ぎイギリスや他の国々に武装する時間を与えたのだ。ミンスク合意はウクライナが軍隊をより良い状態にするための時間稼ぎだったと今メルケルは主張している。

 ツァイト:しかし、以前の状況でどう行動したかはもっともらしく見えても、今日の結果を考慮すれば、それは間違っていると思われます。
 メルケル:しかし当時の代替案が正確には何だったか言う必要があります。2008年のウクライナとジョージアのNATO加盟の議論は間違っていると思いました。両国にはこれに必要な前提条件がなく、ジョージアとウクライナとNATOに対するロシアの行動と支援方法の両方に関してそのような決定の結果は完全に検討されていませんでした。それで2014年のミンスク合意はウクライナに時間を与える試みでした。

 (ツァイト編集者注:ミンスク協定は、ロシアの影響下でウクライナから離脱したドネツクとルハンシクの自称共和国のための一連の合意だ。狙いは後にロシアとウクライナ間で和平を結ぶため停戦で時間を稼ぐことだった。)

また今日見られる通り、ウクライナはこの時間を利用して強くなった。2014/15年のウクライナは今日のウクライナではない。2015年初頭のデバルツェベ(ドネツク州ドンバスの鉄道町)の戦いで見たようにプーチンは当時彼らを容易に制圧した可能性がある。そして、ウクライナを支援するためNATO諸国が今と同じくらい多くのことができたのではないかと私は非常に疑っている。

ツァイト:首相退任後初めて公の場に姿を現した際、プーチンがヨーロッパについてどう考えているかを2007年に既に認識しており、彼が理解できる唯一の言葉は厳しさだとあなたはおっしゃいました。それほど早くそう認識されていたなら、なぜ私たちをロシアにそれほど依存させるエネルギー政策を追求したのですか?

メルケル:紛争が凍結され問題が解決されていないことは私たち全員にとって明らかでしたが、それはウクライナに貴重な時間を与えました。もちろん今こう質問をすることができます。なぜそのような状況でノルドストリーム2建設が依然承認されたのか?

ツァイト:はい、なぜでしょう? 特に当時、たとえばポーランドやアメリカからパイプライン建設について既に非常に強い批判がありました。

メルケル:はい、異なる意見に達する可能性もあります。それはどんな狙いでしたか? 一方ウクライナはロシア・ガスの通過国であり続けることを非常に重要視していました。バルト海を通さず、ウクライナ領土を通してガスを流したかったのです。今人々は時々全てのロシア・ガスの分子が悪魔からのものであるかのように振る舞います。そうではありませんでした、ガスは争われていました。一方連邦政府がノルドストリーム2の承認を申請したわけではなく企業が申請しました。最終的に連邦政府と私にとって、ノルドストリーム2の承認を明示的に拒否する政治行為として新法律を作るかどうかを決定する問題でした。

ツァイト:そうできなかった理由は何でしょうか?

メルケル:一方では、ミンスク合意と組み合わせたそのような拒否は、私の見解では、ロシアとの関係を危険なほど悪化させたでしょう。一方エネルギー政策への依存が生じたのは、オランダとイギリスからのガスが少なく、ノルウェーの生産量が限られていたためです。...

 メルケルは曖昧にしていると思う。ミンスクIIの彼女の当初の意図は、ウクライナを武装させるための時間稼ぎではなかった。彼女の意図は、更なる戦争を防ぎ和平を結ぶことだった。ウクライナに武装する時間を与えたという主張は、現在の政治情勢の中、彼女が政治的に身を守るために今でっち上げたものだ。

 その証拠は、彼女が育てたもの、常に彼女の全面的支持を受けてきたノルドストリーム2にある。その狙いはドイツをウクライナとポーランドを通るパイプラインから独立させることだった。しかし大幅に遅れたパイプラインの準備が整う前に戦争が起きた。そしてアメリカが最終的にそれを爆破した後、ドイツの現在の立場に対する現実的代替案はなくなった。ノルドストリーム2に関する彼女の答えは、ノルドストリーム2建設と同時に、彼女が意図的にウクライナを戦争に備えていたのであれば意味をなさない。

 「買われた時間」の事後引数を無効にする別のポイントがある。2014年、ロシアは非常に厳しい制裁を受け、サプライチェーン再構成に拡大する問題を抱えていた。ロシアはそれ以来、さらに厳しい制裁と戦争の準備に時間を使ってきた。本当に制裁が展開された後、ロシアが現在抱えている問題がいかに少ないかに注目願いたい。それには準備が必要だった。2018年ロシアは現在配備されている多くの優れた戦略兵器を導入した。2014年、S-400防空システムはプロトタイプにすぎなかった。今日全てのロシア防空部隊がそれを持ち配備している。ロシアは軍事品供給、特に砲弾とミサイルを増やすために時間を使った。

 「時間稼ぎ」の主張が本当だと思うなら、ロシアの状況を見て、ウクライナや他のヨーロッパと比較願いたい。誰が時間をよりうまく使っただろう? 今誰がより良い立場にいるだろう?

 メルケルの残念な偽りの言い訳の問題はコリブコが指摘する通り本当の損害を生み出すことだ。プーチン大統領を含め全員が完全な文脈ではなく事後の主張を含む段落だけ読んでいるようだ。これはウクライナでの戦争を終わらせるのを遥かに困難にする。

 今プーチンはミンスク合意に対するメルケルの真剣さを信じていたと言っている。今彼は深く失望している。反対側全員が合意できない時、彼は誰と平和について話すことができるだろう?

AZ 🛰🌏🌍🌎@AZgeopolitics ・ 2022年12月9日 - 15:41 UTC
🇩🇪🇺🇦🇷🇺  ミンスク合意のごまかしに関するメルケル発言に関するプーチン発言:「正直なところ私にとって全く予想外だった。残念だ。信頼はほぼ0に落ちた。いかに交渉するか? 何について? 彼らと交渉可能だろうか? 保証はどこにあるだろう?"

英語字幕付きビデオ

拡大する

 それでもプーチンがインタビューを完全な文脈で読み、考えを変えるよう願う。

 信頼を損なうのがメルケルの狙いだったのだろうか? それはわからない。なぜ彼女がそんなことをするだろう?

 念のために:メルケル政策の大半を私は嫌っている。私は彼女や彼女の政府を支持する政党に投票したことはない。しかし彼女は悪い政治家ではなく私は彼女を尊敬していた。その尊敬も今やなくなった。

記事原文のurl:https://www.moonofalabama.org/2022/12/minsk-ii-was-agreed-on-to-arm-ukraine-did-merkel-really-say-that.html#more

----------

 大本営広報部この重大な自白を報じているのだろうか? 時事放談でも孫崎享氏がいっておられる。日本人のウクライナ支持は変わらないと。

 Strategic Culture Foundationにも同じ話題の下記記事がある。

Merkel Spills Beans on How U.S. and NATO Partners Planned War in Ukraine Against Russia

 東京新聞朝刊 こちら特報部

議論なき安保政策転換 脅威亜あおり防衛費拡大
その手法 まるで戦前
危うき仮想的国設定
軍拡競争の果て 衝突か財政破綻
冷戦期ソ連の例も 財源の範囲内で考慮を

 本音のコラムは斉藤美奈子氏

岸田ガブ政権

「ガブ、文楽」で、やさしい女性の顔が瞬時に鬼に変わるyoutube映像を確認。岸田まさにガブ。名言。宗主国の声を聞く力の人。

 今朝の孫崎享氏メルマガ題名と一部コピー 大昔通産省は正しい方向に業界を導いた。今や経済産業破壊省。

村田製作所社長は、第5世代(5G)移動通信システム普及を背景に「スマートフォンがなくなる」と述べ、人々の身近にある通信端末が別の機器に置き換わる可能性を指摘した

将来の変化の一例としてスマホへの言及がなされた。
 かつては通産省はこうした変化を的確に把握し対策を出した。だが「安全ではない」「安くはない」原発を再稼働しようとする経済産業省に、正しい方向性を出せる力はない。経済界もそう見ているだろう

 UIチャンネル 東アジア共同体研究所:East Asian Community Institute

時事放談(2022年12月) 鳩山友紀夫×孫崎享 1:15:00

 厚顔無恥な政治屋にはあきれるが、そもそもそういう連中によろこんで投票する民度こそ問題。

 植草一秀の『知られざる真実』

選挙区私物化する世襲政治屋

 日刊IWJガイド

「防衛費5年で43兆円なら、27年防衛費はGDP比2%を大幅に超えると、須川清司氏が指摘! 軍事力偏重より総合的な国力強化を提言!」

« EUは目を覚まし悪いのはアメリカだと気づいている。マクロンはリセットが必要と主張 | トップページ | 人気番組「代理戦争」最終回 »

ロシア」カテゴリの記事

ウクライナ」カテゴリの記事

ドイツ」カテゴリの記事

コメント

この記事は掲載されたMoon of Alabamaのコメント欄を読む限り、不評なようです。
実際のメルケルの本心は、メルケル自身しかわからない事なので、憶測しても意味が無い。

もしも当時のフランスのオランド大統領が、メルケルのこの発言に対して論評するなら、
その発言は意味が有るとは思います。
ウクライナの当時のポロシェンコ大統領自身は、ミンスク合意を守る気は無かったと発言してます。
↓↓
https://twitter.com/Jano661/status/1593617760105684994?cxt=HHwWhIDTrZq61Z0sAAAA

9/30 のプーチン演説で、「ドイツ、日本、韓国はアメリカの植民地」という発言が有ります。
メルケルの本心がどうであれ、アメリカはロシアを潰す気満々だから、
メルケルにはアメリカに逆らうことはできないと思います。

今、ドイツはデモがずっと続いているそうです。
日本人と違って、ドイツ国民が自分の国がアメリカの植民地である事を自覚しているなら、
そしてこのメルケル発言が、ドイツ国民に対して向けられたものであるなら、
ドイツ国民の現在の生活の苦しさは、誰の責任かを理解して欲しかったのかもしれない。

しかし、これも憶測ですね。
興味深い記事の翻訳、ありがとうございます。
色々な解釈が有るんだな、と勉強になりました。

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

« EUは目を覚まし悪いのはアメリカだと気づいている。マクロンはリセットが必要と主張 | トップページ | 人気番組「代理戦争」最終回 »

お勧め

  • IWJ
    岩上安身責任編集 – IWJ Independent Web Journal

カテゴリー

ブックマーク

最近のトラックバック

無料ブログはココログ