アラステア・クルック
2022年12月12日
Strategic Culture Foundation
このアメリカの「カッコウ」思考を無反省に取り入れるのはヨーロッパにとって壊滅そのものだ。
CIAと国務省勤務が長いラリー・ジョンソンはウクライナに関する欧米の考え方の「巣」の底に巣ごもりする「カッコウ」を指摘している。この鳥には二つの密接に関連する部分がある。上層はアメリカが二つの異なる紛争領域に直面していると仮定する概念的枠組みだ。第一はアメリカ対ロシア、そして第二はアメリカ対中国。
この「カッコウ」の背後にある本質的な精神的枠組みは平たく言えば完全にアメリカ中心だ。それは希望的観測に染まったワシントンから外をのぞく連中の世界観だ。
それは本当に「カッコウ」(正統な雛の間に侵入者の卵を悪意に托卵する)で、これらの戦闘風景は主張されているような二つでなく一つだからだ。どうしてそうなのか。
これら二つの紛争は別物ではなく、今の地政学的再編展開過程の核心にある欧米が認めるのを拒否している欧米文化の優越性というぬぼれで相互に関連しているのだ。
カッコウの狙いは概念的枠組みからこの極めて重要な側面を消し去り、ロシアと中国を互いに戦わせることが可能な抽象的な権力政治に全体を還元することだ。
簡単に言えばアメリカ対ロシアとは別にアメリカ対中国を分けるのは主に成長するカッコウを「寝かしつける」のに役に立つ。
リアルポリティックの大祭司であるジョン・ミアシャイマー教授は現在の地政学を(いつものように流暢に)その本性に従って行動する「ゴジラ」覇権の一つだと明確に述べている。連中は好きなように威張り散らし(帝国的に行動し)、これら覇権者から逃げ損なった人々は「路上轢死者」になる。
リアルポリティックの見解は表面的には説得力があるが今日の地政学の核心にある問題を抹消しているため重大な欠陥がある。今の地政学の基本は他の国々が、アメリカが自分たちを代弁したり、政治・財政構造を定義したり、欧米の好奇心旺盛な「厄介な問題」を他者に押し付ける'キャンセルカルチャー'を受け入れるのを拒否していることだ。
ラリー・ジョンソンは書いている。「アメリカ外交官は自分たちは非常に賢いと信じて大きな誇りを持っている。私はこれら連中の何人かと四年一緒に働き国務省の周囲をパレードする際の典型的外務官僚に染みついた傲慢さとうぬぼれの雰囲気を証言できる。」
そしてここに鍵がある。国務省から出現する超賢い考え方はクレムリン戦略全体(この見解では)がロシアは代理(つまりウクライナ)でアメリカと戦うことに依存しており、軍事的に優れたアメリカやNATO全体とはう直接対立しないことだ。
フレーフレー! アメリカには世界がこれまで知っている中で最強力な軍隊がある」。歴史上これほど素晴らしいものはない。一方ロシアと中国は貧しい「新興勢力」だ。
本当か? これはプロパガンダ言説だ。だがあなた方が、我々は世界史で最大、最高、最も進んだ軍隊を持っていると言えば、エリートの大多数はそれを信じ始められる(たとえトップ幹部がいないにせよ)。それに加えて人が自身を「超スマート」だと信じれば、それはその人の思考に浸透して、形成するだろう。
したがって「超賢い」元国務省幹部ピーター・ヴァン・ビューレンはThe American Conservativeで意見を述べている。[ウクライナ作戦の最初から]「考えられる結果は二つしかなかった。ウクライナは物理的な東部国境を元に戻す外交的解決策に到達できる...そしてNATOとロシア間の緩衝国としての役割をしっかり再確立する。あるいは戦場での敗北と外交で、ロシアは2月当初の出発点に後退する可能性があり」ウクライナはNATOとロシア間で再び位置を占めるだろうと述べた。
それだけ? 推定結果が二つだけ。
アメリカの世界的軍事'リヴァイアサン'というバラ色のレンズを通して見ると、二つの結果の主張は無情なように見えるとヴァン・ビューレンは書いている。「ウクライナの出口戦略-外交的結果-はワシントンには十分明らかだ。バイデン政権は恥ずべき事に...1980年のアフガニスタンのようにロシアを再び出血させるのに満足している。その間こわもてエセ「戦時」大統領ジョー・バイデンは前向きな超党派選挙感情を取り込む。」
ヴァン・ビューレンがバイデンの姿勢を強く批判しているのは立派だ。それでも彼の考え(チームバイデン同様)はアメリカは軍事的巨像でロシアはよろめく軍勢だという誤った前提に基づいている。
ここでの欠点はアメリカの軍事支出は巨大ながら、DCの利益誘導型政治で儲けをかき集め「ジャストインタイム生産」という仕組みで中東向け武器輸出に注力した結果、最終製品は途方もなく高いが劣っている。ロシア製品はそうではない。
これが意味することは重要だ。ラリー・ジョンソンが指摘する通り想定結果は二つだけでなく、欠けている三番目がある。最終的にロシアがウクライナ停戦条件を決定することだ。逆説的に、この欠落している三番目の選択肢の可能性が最も高い。
そうアメリカとEUの物語はウクライナが勝利しているというものだが、かつてアメリカ国家安全保障補佐官候補だったダグラス・マクレガー大佐はこう指摘している。
バイデン政権はアメリカ国民に真実を伝えるのを拒否するという民主主義社会では許しがたい罪を繰り返している。それと矛盾する情報を遮断する欧米メディアに人気の「ウクライナの勝利」物語とは対照的にウクライナは勝っておらず、この戦争で勝つことはない...紛争の今後の攻撃段階は出現しつつある新たなロシア軍と将来の能力を垣間見せるだろう...数は増え続けているが、その中には既に1,000のロケット砲システム、数千発の戦術弾道ミサイル、巡航ミサイル、ドローン、更に少なくとも1,500輌の戦車、数百の有人固定翼攻撃機、ヘリコプター、爆撃機や5,000台の装甲戦闘車両が含まれる。この新しい部隊は9か月前の2022年2月24日に介入したロシア軍とはほとんど共通点がない。
ヨーロッパにとって、このアメリカの「カッコウ」思考を自分の巣に無反省に取り入れるのは壊滅そのものだ。ブリュッセルは更に中国はロシア・プロジェクトとは違うという誤った主張も受け入れた。この精神的装置はヨーロッパがロシア-中国枢軸の急増する抵抗に直面しており、高い優位性といううぬぼれを世界の多くが軽蔑しているのを理解する必要性を意図的に排除している。
第二に「アメリカは軍事的巨人で、ロシアは代理戦争以上のことをあえてすることは決してない」からDC賢者の「たった2つの選択肢」という枠組み受け入れは巣の中の太ったカッコウをさしている。NATOエスカレーションは比較的リスクがない。私たちはプーチンをウクライナに縛り付けた。彼はNATOの全面的反撃はあえて引き起こさない。
それにもかかわらずロシアは結果を決める攻撃を開始する準備をしている。ヨーロッパはどうだろう。よく考えたのだろうか? いや、その「代替」は「枠組みパラメータ中に」現れなかったのだから。
不確定で未定義の「必要な限り」政策は論理的帰結としてEUを「永遠のロシア制裁」に縛り付けヨーロッパを経済危機に導くがプラン「B」はないのだ。ヒント一つさえない。
ところが別のレベルでヨーロッパの分析にほとんど完全に欠如している('ロシアを脆い軍事大国'と見なす欠陥ある分析を受け入れているため)対処されない現実がある。争いはキーウ・モスクワ間にではなく、常にアメリカ・ロシア間にあったのだ。
EUは必然的にその議論で単なる傍観者になるだろう。彼らには席がない。つまりエスカレーションがパラメータを再設定する時点に到達した場合には...。
要するに複数の間違った診断は間違った治療と同じだ。
DCに蔓延するエリートの傲慢さと優越感の雰囲気の経験をラリー・ジョンソンが説明する際、彼はブリュッセルの廊下を高慢に歩くヨーロッパ政治家を説明していた可能性がある。
これらのうぬぼれの結果は些細ではなく戦略的規模だ。最も直接的なのはキーウと特定の怪しい「民族主義者」に対するEUの狂信的支持と公的称賛が、民族的に「反ロシア・ウクライナ」を中立あるいは緩衝国として機能する可能性から益々遠ざけたのだ。あるいは将来の妥協の足がかりになるのを。だから何なのか?
これをロシアの視点からお考え願いたい。今やウクライナ人の感情がロシアの全てに対して非常に悪意的になっているため必然的にモスクワに違う計算を強いる。
ウクライナ活動家が民族主義ウクライナ人の辛辣な反ロシア感情をEU指導階級内で煽ったことが必然的に厳しい断層線をウクライナに作った。それはウクライナのみならずヨーロッパを破壊し、EUや他地域間に戦略的断層線を作り出している。
ロシアのプーチン大統領の目には「憤り」つまりEUやアメリカを含む欧米世界に向けられた「一種の憤り」があり、それは「我々の狙いはロシア破壊だという感覚」に煽られていると今週マクロン大統領が述べた。
彼は正しい。しかしその憤りはヨーロッパを憎むようになったロシア人に限られたことではなく、むしろ欧米覇権プロジェクトの後あちこちで破壊された全ての命に対して世界中で憤りが湧き上がっているのだ。今や元フランスの高位外交官でさえルールに基づく秩序は「覇権」に基づく不公平な「欧米秩序」だと表現している。
アンゲラ・メルケルのツァイト誌インタビューはEUの戦略的自立は常にウソだったことを世界中の国々に明らかにした。インタビューの中で彼女は2014年のミンスク停戦合意を彼女が擁護したのは欺瞞だったと認めている。それはキーウに軍隊を強化する時間を与える試みで、その点で成功したと彼女は言った。「[ウクライナ]は今見られる通り、この時間を利用して[軍事的に]強くなりました。2014/15年のウクライナは今のウクライナではありません」
メルケルはロシアを出血させるためウクライナを利用するという「賢い考え」を自白した協力者として浮上している。「基本的にロシアは平和的でなかったので冷戦は決して終わらなかった」とメルケルは言う。(彼女は明らかにワシントンが売り込んだ'強大なNATO-ちびのロシア'といううぬぼれを受け入れていた。)
それで世界的構造断層線が深く割れるにつれ世界中の国々がEUはアメリカ・プロジェクトに完全に協力していたのを再確認した。ロシアを財政的に不自由にするだけでなく戦場でも出血させるため。(「いわれのないロシアの侵略」というEU物語はもはやこれまで!
これはおなじみの「戦術」だ。世界中の大きな苦しみの中で展開されているものだ。ユーラシアが欧米圏から離脱するにつれて欧米が覇権後援者と共に、そのようなヨーロッパの悪意を「壁で包囲する」と考えるのは驚きだろうか?
メルケルはドイツの友情の質についても竹を割ったように率直だった。ノルドストリーム・プロジェクトはウクライナで困難な瞬間のモスクワへの鼻薬だったと彼女は述べ「たまたまドイツが他の場所からガスを手に入れられずそうなった」と補足した。(当時それに関する「戦略的友情」は皆無なのだ。)
もちろんメルケルは過去の事を語っていた...しかしそのような過去を語る「瞬間」に、しばしば真実の言葉が漏れるものだ。
EUは自らを戦略的当事者として位置づけている。それ自体が政治権力なのだ。巨大市場だ。それと取り引きする誰にでも意志を押しつける力を持つ独占だ。要するにEUは意味ある政治機関を持っていると主張しているのだ。
しかしワシントンはその物語を踏みにじったばかりだ。彼らの「友人」たるバイデン政権はインフレ削減法で助成した産業空洞化の風でヨーロッパを離れているが、EUの「反文化」文化に対する軽蔑は世界中で蓄積している(つまりカタールでのサッカーワールドカップにおけるヨーロッパのふざけた態度を参照)。
すると(経済力が破綻しソフトパワーが軽蔑されている)ヨーロッパはどうなるのだろう。
アラステア・クルック
元英国外交官でベイルートを拠点とするConflicts Forumの創設者兼ディレクター。
記事原文のurl:https://strategic-culture.org/news/2022/12/12/us-cuckoo-in-european-nest/
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ウソで洗脳する大本営広報部行動様式、アメリカでもイギリスでも変わらない。
ウクライナが勝ち続けているやら、気候変動はCO2のせいだやら。とはいえさすがいい加減ウソにはうんざりし始めている。マグレガー氏、洗脳広報部しかないことが問題。代替メディアがないこと。主流メディアは政府広報機関だが、それと違うことを言うとロシア工作員にされると。
書店の棚には御用評論家連中のウクライナ・プロパガンダがずらり。立ち読みさえしていない。
Massive Offensives by the Russians to Terminate Ukraine 46:26
Straight Calls with Douglas Macgregor (19) - Your home for analysis of breaking news and in-depth discussion of current geopolitical events in the United states and the world.
今朝の孫崎享氏メルマガ題名
米国内政、共和党は下院を支配。大統領は民主党、下院は共和党というねじれ。中間選挙で激しい非難の応酬。大統領府と共和党下院議員の関係薄い。重要法案成立困難。予算とバイデン政権の調査が焦点。ホワイトハウスは両委員会の委員長に工作。
日刊IWJガイド
「再び、キッシンジャー元米国務長官が、緊急にウクライナ紛争の停戦交渉をすることで、第3次世界大戦を防ぐべきだと英誌で提言!」
再び、ユダヤ系のキッシンジャー元米国務長官が、緊急にウクライナ紛争の停戦交渉をすることで、第3次世界大戦を防ぐべきだと英誌で提言! ロシアが弱体化すれば暴力と武力支配が横行する無法地帯が出現すると警鐘、ロシアが果たしてきた歴史的役割を尊重すべきだと提言! NATOとロシアが直接対決する核戦争の悪夢を回避できるのか!? 同じユダヤ系のゼレンスキー大統領は停戦交渉を拒否!
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