アメリカの諜報関係高官が間違うとは「想像できない」と言ったAP編集者
2022年11月23日
ケイトリン・ジョンストン
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先週ロシアがポーランドにミサイルを発射したというアメリカ諜報関係高官の虚偽の主張を報じたAP通信記者が解雇された。
我々が以前論じたように匿名情報源によるAPの「ロシア・ミサイルがNATO加盟国ポーランドを攻撃し2人死亡させたとアメリカ諜報関係高官が言う」報道はロシアとNATO連合間の熱い戦争という大規模な帰結的意味ゆえ一気に広まった。その後主流政治/メディア支配層がポーランドに落ちたのは実際はウクライナ・ミサイルだったと認めるようになるにつれ、APはその記事を撤回した。
AP記者ジェームズ・ラポルタ解雇は今この極めて危険なウソを流布したことに対する説明責任の終わりに見える。完全な作り話を見逃した編集者は懲戒処分されないとAPの広報担当者ローレン・イーストンは述べ、主流報道機関を通したこのような極めて言語道断な誤報/偽情報を大衆に与えたアメリカ当局者の正体について大衆は今日に至るまで何も知らされないままだ
Important that AP accounts for publishing the false claim that Russia fired missiles into Poland. But the much more important task is finding out why an anonymous senior US intelligence official fed AP that false claim. https://t.co/6YmAn0VDap
— Aaron Maté (@aaronjmate) November 23, 2022
彼らにこのような非常に深刻なウソを言った官僚の匿名をAPが守り続けるのは全く許せない。これはAPスタッフに影響を与えただけでなく全世界に影響を与えたのだ。我々は何が起きたのか誰に責任があったか知るに値し、APには我々にその情報を隠す権利はない。
ラポルタ解雇は大失敗に関与した最も弱い人が責任をとらされる例の一つだ。有力な諜報関係高官はマスコミにエセ情報を与えても何ら罰を受けず、それで同じことがまた起きるのは確実だ。続く報道が全くの茶番であるにもかかわらずラポルタの上司は懲戒処分されない。
「ロシア攻撃の誤った記事のかどでAP通信記者解雇される」という題の記事で、ワシントン・ポストは下記の様に報じている(強調は筆者)。
ポストが見たAP内部のやりとりは間違い記事準備中の多少の混乱と誤解を示している。
ラポルタは東部時間午後1時30分頃電子メールでアメリカ当局者の情報を共有した。ある編集者が即座にAPが彼の情報に警告を発するべきか「あるいは我々はもう一つの情報源そして/あるいはポーランドの確認が必要だろうか?」と尋ねた。
さらなる議論の後、二人目の編集者が「アメリカ諜報関係高官がこれに関して間違っていると私は想像できない。」と付け加え警告を発するのに「賛成だ」と言った。
The AP fired the reporter but not the editor who, apparently, will literally believe and publish anything a US intelligence official tells her. https://t.co/eqso6p8Lu5 pic.twitter.com/LdpXVyRUnQ
— derek davison (@dwdavison) November 22, 2022
「アメリカの諜報関係高官がこれに関して間違っているとは私には想像できない。」
皆様はアメリカ諜報関係高官が間違っていると想像するのは不可能だと想像できるだろうか? これはどんな教養を身につけた大人にとっても不適切な立場で、言うまでもなくジャーナリスト、まして編集者、世界で最も影響力がある通信社の一社の編集者にとって。
これは世界で何が起きているか知るために我々が読むニュース記事を発表する人々だ。これらの人々が公共の利益に寄与すると考えるのは赤ん坊の脳レベルだ。
Antiwar解説者ダニエル・ラリソンはAP編集者の衝撃的発言に下記のように書いている。
公式主張に対する懐疑はジャーナリストと評論家にとって常にモットーであるべきだ。これらはいつもより更に少なくではなく、より多く綿密な調査が必要な主張だ。もし皆様が諜報関係高官が偶然か意図的かにかかわらず何か重要なことを間違えるのを想像できないなら皆様は、まず疑問視し確認する必要がある余りに多くのことを当然のことと受け取っているのだ。
情報を伝えるべき大衆紙が出来て以来ずっと、多くの政府諜報関係高官はジャーナリストに情報を伝えてきたが、その情報は公職にある情報提供者がそう言ったからといって信頼すべきではない。彼らが欠陥がある情報に頼るため、あるいは彼らが知っていると思うことについて結論に達する上で余りに急いたため、諜報関係高官が物事を間違える可能性は常にある。
APの情報提供者が彼らにウソをついていたか全く間違っていたかにかかわらず、この様な挑発的な深刻な主張は公表前に徹底的に確認されるべきだった。この場合AP報道は「確認するには余りに良い」話と、編集者が調べる努力の必要性を感じない当局への忖度文化の組み合わせだったように思われる。
"If you can’t imagine that an intelligence official could get something important wrong, whether by accident or on purpose, you are taking far too many things for granted that need to be questioned and checked out first." https://t.co/u6VWdxsOG3 https://t.co/4D7S9PisM3
— Daniel Larison (@DanielLarison) November 22, 2022
実際、報道機関がアメリカ憲法でこのような明示的な保護を受ける唯一の理由は彼らが権力者連中の責任を問うと思われているためだ。もし非常に影響力がある通信社の編集者が、それら当局者を匿名で守りながら、疑いもせずに何であれ官僚から聞かされたことをオウム返しするだけなら、彼らは権力者連中の責任を問うておらず、実際国家の宣伝屋と意味ある違いはない。
連中は国家の宣伝屋で、それがジュリアン・アサンジが刑務所で悩み暮らす中連中がAPニュース編集室でラテをすすっている理由だ。
Jacobinのブランコ・マーセティックが言う通り、これはAPが危険な結果をもたらしかねないウソの主張を広めるアメリカ官僚を匿名で擁護した初めてのことからはほど遠い。後に虚偽と分かったアラブ首長国連邦海岸沖で4隻の石油タンカーにイランが攻撃したという当局者の証拠なしの主張を報じた時や「イラクとアフガニスタンからのアメリカ軍撤退にイランがつけこもうとするかもしれない」というもう一つの匿名主張のように。
Irresponsible journalism from the AP, but this strikes me as quite damning and suggests it's more than just one reporter that's the problem. After all, this isn't even close to the first time the AP has published a false, war-baiting claim by a anon official. pic.twitter.com/id4bWr4zdz
— Branko Marcetic (@BMarchetich) November 22, 2022
それで要約すると
- APにウソの話を伝えた有力官僚は説明責任を全く問われない。
- 話を聞いてすぐ記事を発表すべきかどうか尋ねたAP編集者は説明責任を全く問われない。
- アメリカ諜報関係高官が間違っているとは想像できないと言った二人目のAP編集者は説明責任を全く問われない。
- この記事を書いた記者にはまれに見る説明責任
正気の社会なら権力と責任は密接に関連している。大惨事はその発生に関与した最も有力な人々が責任を負わされるはずだ。我々の社会でそれは一般にまさに正反対で、一般庶民が全ての責任を負わされるが何の権力もないのだ。
我々の支配者は我々にウソをつき、我々を洗脳し、我々を危険にさらし、我々を貧しくし、ジャーナリズムを破壊し、戦争を始め、我々の生物圏を殺し、我々の世界を暗く混乱させるが彼らはそのために何のお咎めも受けない。連中があらゆる力を持ち、何の責任も負わないままでい続けるのを我々は許すことはできない。これは逆さまであり終わらせなければならない。
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宗主国のための敵基地攻撃能力を宣伝する属国大本営広報部、この話題は報じているのだろうか?
ウソ情報を自社記者に伝えたアメリカ政府高官は匿名で守る宗主国の主要大本営広報部AP。属国マスコミ宗主国報道オウム返しがお仕事。
同じ話題Redactedも論じている。
This is about to get much worse as U.S. & U.K. push for major escalation of weapons
The Jimmy Dore Showも。
Corp News PROTECTING Official Who Lied About Poland Bombing 8:03
国会バーチャル演説に議員が拍手したこの人物、ポーランドにミサイル発射しただけでなく、ザポリージャ原子力発電所攻撃も継続中。原発はそのまま核兵器。
下記シンポジウム、長いが必見。
新外交イニシアティブ(ND)シンポジウム
2022.11.24 「日本の安全保障の選択肢 -抑止の限界と外交の可能性-」 1:57:21
中野晃一上智大国際教養学部教授、羽場久美子青山学院大学名誉教授、松岡美里帝京大学准教
デモクラシータイムス
宗主国は属国の経済活動を制限しながら武器を売りつけ代理戦争の盾にするだけ。
今朝の孫崎享氏メルマガ題名
バイデン政権が対中半導体規制を強化。同盟国の追随は日本等に限定。独は間隙をぬい中国での市場確立を狙う。米国内も半導体業界が強固なロビーイング活動を開始、日本は対米追随で対中規制強化の方向だが、気づけば米が復帰し、独進出済の事態の危険
「六ヶ所再処理工場がミサイル攻撃を受ければ、日本の総人口の約71%が避難を強いられる! 残されるのは、住めない荒廃した土地だけ!」
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