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2022年11月12日 (土)

ドイツのオラフ・ショルツ首相中国訪問

2022年11月10日
ウラジーミル・テレホフ
New Eastern Outlook

 11月4日、ドイツのオラフ・ショルツ首相は習近平中国国家主席と李克強首相との会談をするため北京に飛んだが、グレート・ゲームの現在の状態を考えれば注目に値する進展だ。この訪問は多くの理由で驚くべきことであり、導入として数語説明が必要だ。

 第一に、この訪問が、多くの公式文書でさえ使用されている肩書き「欧米の主な地政学敵」中国との通信回線の閉塞と要約できる「西側諸国全体」と我々が呼ぶものの政策の主な傾向に反している事実を無視するのは不可能だ。その傾向は、どちらかと言えば、中国発展の重要な瞬間を記念した最近の中国共産党の第20回全国大会の終わりの後いっそう明白になった。

 その背景に対し、ドイツ企業幹部の集団が同伴した主要西欧諸国の一つの首相が多くが「世界の無法者ナンバー1」と見ている国の指導者との会談するため中国を訪問すると決めた。それは冷戦期間中ジャーナリストに人気の「西側諸国全体」という言葉はどのような「組織」も示さず、実際は非常に異なる国々の緩い組み分けを示すに過ぎない。その組み分けはNATOやEUなどの多くの組織を含んではいるが。

 さらに「西側諸国全体」の益々明確な分裂(あるものは他のものより更に深い)が個々の国々の間でも、それぞれの国の国内政治でも起きている。この結論はオラフ・ショルツの北京訪問を取り巻く多くの状況によって裏付けられる。

 この催しはかなり前から多分計画されていた可能性が高いが、著者の意見では、この訪問の主な理由はロシアとドイツ間でバルト海底を通るガスパイプラインを破壊した爆発だっただろう。その問題に関して首相自身の声明は非常に曖昧だったが、彼の政権には損害で天の邪鬼な喜びを感じているように思われる多くの人物がいる。アンナレーナ・ベアボック外務大臣は来年からロシアの石油とガスへの依存を終わらせるドイツの以前の決定に言及をして言った。「我々は辛抱強くなければならない」。

 (あっという間にちょっとしたミームになった)彼女の反応は多くの疑問を引き起こす。そもそも一体何に対して辛抱強くなのか? 国際政治的市場で売るために支配している国民の命と血を提供した「独立」国政府の非現実的な夢を満足させるためだろうか? そして、結局「我々」とは一体誰だろう?

 アンナレーナ・ベアボック自身は前トランポリン・チャンピオンとして暖かい状態でいるのに何も問題がないだろう。だがドイツ経済の主な駆動力、産業部門は安いガス源を必要とする。栓をひねるだけで、消費者が必要なだけ手に入れられるよう準備されているべき資源だ。だが栓は(1つの大いにありそうな説によれば)は近くの「同盟国」に爆破されたように思われる。

 それ以降「西側諸国全体」という用語がもう適用できないのは明確だ。実際ドイツの政治的エリート集団の中でさえどんな集団的団結について話をするのは困難だ。結局オラフ・ショルツが北京にいた間に、G7国外務大臣はミュンスターで会合していた。アンナレーナ・ベアボックが主催国代表として会議と支援の催しを率いた。

 G7外務大臣会議は予定されていた催しだったが、それを首相の北京訪問に対する一種の対位的手法と見る点で評論家全員意見が一致していた。例えばミュンスター・サミット中に日本とドイツの外務大臣と防衛大臣は公然と反中国が狙いの初の2+2フォーマットで会談した

 同様に重要なのは、控えめに言っても中国とロシア両方との関係で問題を抱えている国日本へのドイツ大統領フランク-ウォルターシュタインマイアーによる最近の公式訪問だ。この訪問は11月1-3日で、オラフ・ショルツの北京訪問前日に終えた。岸田文雄首相との協議で両国は「ウクライナへのロシア侵略に対する対応を統一すると誓約し」ヨーロッパとインド・太平洋地域での安全保障は「切り離せない」ことを強調した。

 訪問中フランク-ウォルターシュタインマイアーと妻は天皇皇后両陛下に迎えられた。プロトコルに従って、このような儀式会談の会話が中立的主題に限定され、今回の場合彼らは来るFIFAワールドカップについて話した。天皇皇后両陛下が外国賓客を迎えることは非常にまれで、この名誉がドイツ大統領に与えられた事実は両国間関係で画期的出来事であることは指摘されるべきだ。

 オラフ・ショルツの北京訪問日程は両国代表が発言した通り一瞬も自由時間なしで極めて多忙だった。全ての出来事は僅か数時間内に起きた。現時点で一定の説明が必要だ。

 当然、中国への短い訪問の間に、この客は何か新しいことをしたと主張できなかった(そして、そうしようとしなかった)。これまで20年間ドイツと中国間関係を発展させるために既に非常に多くの仕事がなされた。ドイツに関しては、この過程の主な駆動力はオラフ・ショルツの前任者アンゲラ・メルケルだった。

 首相時代に彼女は中国を12回訪問した。それぞれの訪問前、中国指導部に中国の人権「乱用」問題を提起させて彼女の仕事を複雑にしようとする「西側諸国全体」のプロパガンダ機構の大部分から彼女は心理的圧力を受けていた。

 2019年9月、彼女の最後の中国訪問は、当時明らかにすぐれない健康状態で苦しんでいたため特に困難だった。訪問中「香港活動家」が香港街頭暴動の最近の発生を抑制するため北京がとった(筆者自身は非常に穏やかだと考えている)措置を彼女に非難させようとした。そして彼女の以前の中国訪問で、彼女は何らかの形で「西側諸国全体」主要国の一つのトップである事実に縛られたとすれば、この訪問でこの事実は見過ごされた。

 さらに、ドイツがその訪問までの期間に中国の最も重要な貿易相手国になっており「西側諸国全体」のパートナー圧力に直面してのアンゲラ・メルケルの回復力と(相対的な)独立が北京がなぜ常に顕著な敬意で彼女に対処したかの説明になる。

 それ盤を整えるために何年も過ごした前任者の努力のおかげで、オラフ・ショルツはドイツが今非常に実り多い関係を享受している国を訪問できたのだ。概してオラフ・ショルツが北京で会った幹部はドイツの既存路線の遵守を確認することだけ要請し、訪問はほとんど形式的なものだった。中国政治での画期的な催しである最近の中国共産党の第20回全国会議や依然中国の最も重要なヨーロッパ・パートナーであるドイツ指導部の変化のいずれも二国間関係に影響を与えるまい。

 しかし当然オラフ・ショルツは前任者同様、彼の国が少なくとも(まだ継続中の組織である)「西側諸国全体」の一部を形成する事実に口先だけ支持せざるをえなかった。

 重要なことは、オラフ・ショルツの中国訪問に対し、日本の主要新聞「読売新聞」編集者は「ドイツが中国との経済協力推進を余りに熱心に望んでいるように思える」と懸念を表明した。だが論説は国際情勢に関するドイツ首相発言を認めている。「ショルツはウクライナ紛争に関しロシアに対する中国の支持に警告し、北京の人権問題についても懸念を表明した。」

 結論として、現在の著者の考えは、ドイツ首相のドイツがそこと親密な関係を持っていると人が一見予想しない国中国訪問決定の背後にあった問題に戻ろう。最近まで、その豊富な天然資源で、ドイツ、フランスとイタリアの産業の技術的可能性があるロシアより自然な提携を想像することは困難だった。だが、ある世界強国は、提携が政治的ではないにせよ経済的に確立したコングロマリットに発展することに不満だった。ガスパイプライン爆破、保護障壁を作るため東ヨーロッパ国境周辺の住民の利用や犯罪的なキーウ政権を支える支援は全て、そうした協力に悪影響を及ぼす計画の一環だ。

 ヨーロッパにおけるこれらすべての否定的要素を考えれば、オラフ・ショルツが彼の国の問題に対して他の地域で何らかの解決を見いだそうと努めているのは明確だ。その狙いを念頭に、中国は有望パートナーのままだ。とりわけ、これの実り多い関係の基盤がドイツ前の首相によって慎重に準備されたものなのだ。

 だがドイツは既存路線を追い続けるだろうが、これが「西側諸国全体」のパートナーとドイツ内の彼の「支持者」によってドイツ首相に押し付けられている敵意を背景にしているのは明確だ。既に筆者はドイツのパートナーによって始められた攻撃について説明した、ドイツ政治家の敵対的な動きが出現するまで長くかからなかった。

 ウラジーミル・テレホフは、アジア太平洋地域問題専門家。オンライン誌New Eastern Outlook独占記事。

記事原文のurl:https://journal-neo.org/2022/11/10/olaf-scholz-germany-s-chancellor-visits-china/

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