ジョー・バイデンと欧米「エネルギー危機」
2022年11月16日
Salman Rafi Sheikh
New Eastern Outlook
石油生産を大幅に削減するOPEC+決定は欧米(アメリカとEU)にとって決定的衝撃だった。アメリカではジョー・バイデンを含め民主党員はサウジアラビアを犯人として素早く指摘した。実際既に多くの民主党員がその行動のかどで王国に罰を課すよう要求している。既にアメリカ議会では一部の民主党員がワシントンに「石油生産大幅削減のさなか」アメリカ軍をサウジアラビアから撤退させる法案を提案している。だがバイデンを含め民主党員がサウジアラビアから撤退する信号を出している事実は、サウジアラビアとアメリカの関係を改善する上でのバイデン大統領の外交的失敗から注意を逸らすのを与党が助ける政治戦術以外の何ものでもない。実際現状では、そもそもバイデン政権がジャマル・カショギ殺人でムハンマド・ビン・サルマン(MBS)を直接巻き込んでサウジアラビアを遠ざけるのに責任があったのだ。
だがロシア・ウクライナ紛争が始まった直後、バイデンはモスクワに対しワシントンはリヤドの手助けが必要だと悟った。それを念頭に、彼は7月にサウジアラビアを訪問し、MBと暖かい会話をしたと報告した。だがその会話は今明白な通り、サウジアラビアを「のけ者」国家にする主張の殺人報告を公開した決定や、更にロシアに対する同盟者として参加させるためサウジアラビアを訪問することとなったのに、どんな意味ある結果ももたらし損ねたバイデン外交をアメリカの多くの人々が疑問視している。この大転換の失敗は民主党員や一部のホワイトハウス同盟者にバイデン訪問の目的が石油生産だったのを否定するよう仕向けた。今や連中はバイデンの失敗をごまかす手段として、訪問目的は「中東」とイスラエルとの関係だったと言っている。
この失敗を覆い隠すのは、この失敗や、それに続くエネルギー価格上昇が中間選挙で民主党に深刻なだ打撃をもたらすのではないかと懸念された限り重要だった。換言すれば、今やサウジアラビアが故意に民主党がアメリカ議会過半数を失い、バイデンが最終的に大統領選挙に負ける条件を作り出しているとバイデン政権は信じている。ホワイトハウスでは多くの人々が、リヤドが「ロシア連合」に参加した結果、サウジアラビアがこれをしていると信じている。
換言すれば、「エネルギー危機」を説明するため、民主党員は自身の狂気を認識する代わりにアメリカに深く根付いたロシア嫌悪を利用しているのだ。だが少なくともそれがサウジアラビア政策に影響を与えるかどうかという点で、この戦略がうまく行く可能性はありそうにない。実際リヤドはひるんでいない。彼らからの反撃が、これまでそうだった以上に、ワシントンが危機を管理するのを一層複雑で困難にする。
10月13日、リヤドは必ずやモスクワと協力して動いたというアメリカの主張をサウジアラビア当局が否定した。サウジアラビア当局は、背後に地政学的配慮があったのではなく、OPEC+決定はグループメンバーの満場一致で純粋に経済的なものだったと早々と指摘した。サウジアラビア当局は、バイデン政権が実際OPEC+決定を1カ月延期するようリヤドを説得しようとしたという驚異的暴露をして、バイデン訪問の目的は「石油」ではなく、訪問は失敗ではなかったというホワイトハウスのウソをさらけ出した。
サウジアラビアによる暴露は、アメリカ・サウジアラビアラビア関係が少なくとも今のシナリオでは石油に支えられているが、かつての最も近しい同盟国に外交方針に従わせることにワシントンが完全に失敗したのを明らかにしているだけではない。この失敗は、換言すれば、進行中のアメリカの世界的影響力の速い消失を示している。サウジアラビアラビアと中東から撤退する決定は、この文脈で、この落下を速めるだけだろう。
だが彼はサウジアラビアに対し更に攻撃的にしようと目指しているので、直接この落下にバイデンは貢献するように思われる。実際彼は最近のCNNインタビューでこう言った。「彼らがロシアと一緒にしたことに対し(サウジアラビア)には報いがあるだろう。私が何を考えているか心に思い描いているか説明するつもりはない。だが報いはあるはずだ。」ホワイトハウス当局者が後にバイデン政権がこれらのつながりがアメリカの国家安全保障の権益に合っているかどうか評価するため、サウジアラビアとアメリカのつながり見直すつもりだと明らかにした。
だがサウジアラビア説得の失敗は、ほかの場所にも、特にヨーロッパに影響がある。多くのヨーロッパ諸国がロシアに対する依存を減らし/終わらせるため既にアメリカからガスを購入している。だがアメリカ企業が極めて高い価格を請求する限りは彼らの「エネルギー危機」は終わらない。ドイツ経済大臣は輸入ガスに「過度な」価格を請求したとアメリカを非難した。これはヨーロッパの多くにアメリカは実際彼らを手玉に取ったと信じるよう仕向けている。
来る冬家庭に供給する十分なガスを得るべくヨーロッパ人は喜んで高い価格を支払うが産業に供給する十分なガスがない。この産業の下降は、ヨーロッパ経済に強い影響を与え、必然的に政治的結果が生じるだろう。経済的不安定は既にイギリスで政治不安を促進させている。もしそれが広まれば、ヨーロッパはアメリカとの同盟の条件と/あるいはロシア・ウクライナ紛争に対する姿勢を再検討するよう強いられかねない。バイデン政権が彼らの支持を利用して結局彼らに高いガスを売りつけ彼らの負担でアメリカ産業を回していたに過ぎないとヨーロッパ人が悟るにつれ、このような見直しが起きかねない。
換言すれば、バイデンのサウジアラビア外交失敗は、ワシントンが同盟諸国を引き留める大統領職の遙かに広範な失敗になりかねない。
Salman Rafi Sheikhは国際関係とパキスタンの外交、国内問題専門家。オンライン誌New Eastern Outlook独占記事。
記事原文のurl:https://journal-neo.org/2022/11/16/joe-biden-and-the-energy-crisis-in-the-west/
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マスクが買収して以来大混乱?
植草一秀の『知られざる真実』
今朝の孫崎享氏メルマガ題名
イーロン マスクがトランプTwitter アカウント復活させる。大統領選挙が始まる時に、トランプがオンラインでの注目を取り戻すのに役立つ重要な動き。マスクはツイッターで反応を聞く。15,085,458票参加。52%支持。発言制限は究極の手段。永久排除はやりすぎ
時折見ているyoutube番組の司会者「私のアカウントはいまだに復活していない」と言っている。
「日本の統一教会への強制捜査だけでなく、統一教会トップの韓鶴子総裁への『使用者責任』を問うべく、国際的な捜査協力体制を構築すべき!」
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