OPEC-アメリカ合州国:新たな政策、新たな決定
2022年10月28日
ビクトル・ミーヒン
New Eastern Outlook
生産を一日200万バレル削減するというOPECと同盟諸国による決定に対するジョー・バイデン政権の反応は、産油国、特にサウジアラビアとの増大する緊張を保障するのは十分明らかだ。決定が広く予想されており実際石油価格に大きな影響を与えなかったが、ワシントンは最初の要請で石油生産を増やすというアメリカの要請に彼らが従う気がなかったというペルシャ湾岸同盟諸国の明確な信号だと受け止めた。民主党員と共和党員はそれを湾州が欧米が率いるウクライナでの戦争へのアメリカと西洋の姿勢に反対しロシアを支持する兆しと見た。欧米政治家は進行中の出来事の現実を理解せず、アラブ諸国がヨーロッパのように海の向こう側から命令に従わずに、今や自身の権益を確保することを熱心に望んでいるのをどんな形であれ理解できないのだ。
OPEC当局者たちは、この決定は純粋に技術的なもので国際市場で安定性を維持することを目指していると強調する。だがウィーンでのOPEC+会議にロシアのアレクサンドル・ノヴァク副首相が出席していたため、アメリカは激怒していた。OPEC+はサウジアラビアと非OPEC産油国ロシアに率いられたOPECメンバー連合だ。それでロシアのエネルギー大臣ノヴァクは彼の立場上会議に出席しなければならず、彼はアメリカ制裁の下にあるが、彼はEU制裁の適用は受けない。OPEC情報提供者は週刊アル・アハラムにアメリカがオーストリアに彼を禁止するよう圧力をかけようとしたと言ったが、OPEC+メンバーは満場一致でそこから組織本部を移転すると恫喝した。ロシア代表が出席たか否かにかかわらず、予想される世界的景気下降のため需要が下落すると予想されるから、会議は生産高減少に落ち着くはずだった。実際、供給需要関係は市場での供給過剰、石油価格恐慌を避ける予防策として大規模削減を必要としたのかもしれない。
ジッダでバイデンがサウジアラビア皇太子モハンメッド・ビン・サルマン・アル・サウドと会ってから二ヶ月以上後に、この決定がされたので、アメリカの一部はそれを現アメリカ政権のペルシャ湾政策失敗と見た。欧米が率いるウクライナ戦争とロシアに対する不当な経済制裁とは別に、政権与党民主党は来月の中間国会議員選挙を懸念している。世論調査が共和党が下院と上院両方で過半数を獲得しかねないことを示唆している中、給油所での高いガソリン価格がその暗い見通しを悪化させている。
OPEC+決定が、当時アラブ人がイスラエルを破り占領地の一部を自由にした1973年の10月戦争記念日、ユダヤの最後の審判の日と一致したのは興味深い。これは現在のエネルギー危機を当時アラブ諸国がイスラエルを支援する国への石油輸出を減らした1970年代のオイル・ショックと比較するよう多くの欧米アナリストに仕向けた。それは特有な状況だった、しかし類似は思わせぶりで、欧米アナリストが言うように、おそらくアラブ諸国は1970年代と同じ戦略を使うことが可能なのだ。
OPEC+決定直後、ベテランS&Pの Global Commodity Insightアナリストであるロジャー・ディヴァンが削減は「石油の武器化」を表すと言い、会議のタイミングと場所は意図的な信号だったと示唆した。「ロシアが既にヨーロッパへのガス輸出を武器化する中、アメリカ制裁と冬への準備段階で石油供給を締めつける議論下にあるロシア副首相の出席はサウジアラビアの敵対的な姿勢で更に石油価変動のリスクが増す明確な信号を送っている。」この評論家はアラブの石油政策の結果を計算し、欧米にとって厳しい時期だと予測している。
だが、これは起きなかった。それにも拘わらず、この動きは湾岸諸国の政策が欧米にとって有利でない方向に変化したことを示すかもしれない。首長国教授アブドゥルハーレク・アブドゥッラーはワシントンの一部は新しい湾岸諸国湾があるのを理解していない。我々はもはやワシントンから命令されない。」とファイナンシャル・タイムズに、述べた。アブドゥルハーレク発言は、いささか誇張かもしれないが、アメリカがペルシャ湾で自動的に思いどおりにできた日々は終わっている。本当に新時代が明け、ジョー・バイデン政権と、それ以降の政権がアラブ人との間で「礼儀正しい政策」を確立可能かどうかまだ不明だ。どう見ても、ワシントンが完全に「大物アメリカ人クラブ」に決定される外交政策路線を変更する可能性はありそうもない。
会議後UAEのスハイル・アルマズルーイ・エネルギー相はウィーンで記者団にOPECが産油国が新たな石油供給に投資し続けることを保証する処置をとったと述べた。彼が付け加えた、「ヨーロッパで、彼らは自身の物語を持っており、ロシアで、彼らは違う物語を持っている。我々はこの国あるいはその国を支持できない。」この意見は明らかにゆっくりながら確実に外交政策舞台への道を見いだしつつあるアラブ政治の動きを示している。サウジアラビアのアブドルアジーズ・ビン・サルマン・ビン・アブドルアジーズ・アール・サウード・エネルギー大臣は、いかなる政治目的も否定した。彼は間接的に、この決定がアメリカや他の消費国に対する攻撃と関係があるという考えを拒絶し、ロシア防衛のためではなく、彼ら自身の利益のためだと述べた。「どうしてこれが戦争挑発だろう? 悪意はどこにある?」
だがジョー・バイデン大統領は既に石油生産削減の決定に「失望しており」供給を増やす「選択肢」を考えると述べた。大統領報道官は、OPECが「ロシアと団結した」と言い、より率直だった。2人の政府高官、ジェイク・サリバン国家安全保障担当補佐官とブライアン・ディーズ国家経済委員会部長がホワイトハウスが方針を変え、どんな価格操作でも石油カルテルに法的責任を負わせる(NOPECと呼ばれる)超党派的法律を支持する共同声明を発表した。どうやら、これら紳士はOPECが国際組織であり、合衆国管轄に何も関係を持っていないことを完全に忘れているようだ。
もう一つのバイデン政権の選択肢は1984年以来最低レベルにある戦略的備蓄から、よりも多くの石油を放出することだ。以前に発表された何千万バレルもの生産レベルは市場に影響を与えなかったが、新しい量が供給過剰を引き起こし新たなOPEC削減を正当化しかねない。NOPECプロジェクトは20年以上の間ペルシャ湾石油生産国に圧力をかけ従わせるため使われたが、それは一度も議会で成立したことがない。湾岸諸国によるロビー活動のためではなく、アメリカ石油企業による猛烈な反対のためだ。もしこの恫喝が実行されたら、今回は彼らが再びそうする保証はない。
アメリカの反動とペルシャ湾アラブの国を完全支配したい願望に応えて、サウジアラビアのエネルギー大臣はブルームバーグテレビ・インタビューでロシア輸出価格を制限するアメリカ計画は、OPEC+を2年で最大の減産をさせかねない不確実性に貢献すると警告した。価格上限がどのように導入されるかに関する「詳細と明快さの欠如」は今後二カ月が「市場や参与者がどのように反応するか分からない不確実期間だ」という感覚を強化するとアブドゥル・アジズ・ビン・サルマン・アル・サウド殿下は述べた。一部の湾岸現地アナリストが緊張は全面的エネルギー危機にはエスカレートしないと予測している。彼らはアメリカと湾岸諸国間の「戦略的関係」を指摘し、状況は11月のアメリカ中間選挙後自然に「落ち着く」とさえ示唆している。
ビクトル・ミーヒンは、ロシア自然科学アカデミー客員。オンライン誌New Eastern Outlook独占記事。
記事原文のurl:https://journal-neo.org/2022/10/28/opec-usa-new-policy-new-decisions/
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用あって繁華街に出掛けた。ハロウィーンにあわせた仮装の人々が多数出ていた。広い街路ゆえ事故皆無に見えた。
おりしもNHK 100分 de 名著ル・ボン『群衆心理』 2022年11月発売中。2021年9月の再放送。十年以上昔友人に教えられて『群衆心理』 (講談社学術文庫)を読んだのを思い出した。
今朝の孫崎享氏メルマガ題名
元ブラジル大統領ルラ勝利。以前の大統領職から580 日間の投獄、今、その逆へと、驚くべき政治的復活。ラテンアメリカ全体に一連の左派の勝利を広げた。 2018年以来、この地域の7カ国のうち6カ国で左派の指導者が選出。ブラジルがこれに加わる。
ウクライナの次は日本だというのは妄想ではなく宗主国の予定だと下記シンポジウムを拝見して確信した。
デモクラシータイムス
アホダノミクスの断末魔!浜矩子さん【ここが聞きたい】22221027 39:26
特別企画
「ノーモア沖縄戦 命どぅ宝の会」
~戦争をとめる!やらせない~
二度と沖縄を戦場にさせない、琉球弧の島々を攻撃の対象にさせないための「10・21シンポジウム」 1:43:38出演:山城博治(「ノーモア沖縄戦 命どぅ宝の会」共同代表)
三上智恵(ジャーナリスト、映画監督)
永田浩三(武蔵大学教授)
司会:鈴木耕(一般社団法人マガジン9代表理事)
主催:大木晴子(明日も晴れ 新宿西口反戦意思表示・有志)2022年10月21日 LOFT9 Shibuya にて収録
■ノーモア沖縄戦 命どぅ宝の会
■ブックレット『また「沖縄が戦場になる」って本当ですか?』自衛隊は中国と戦わされるとシンポジウムの皆様が言っておられた。自衛隊、日本政府の指揮下にはない。
「台湾有事を見据え、日本政府が米インド太平洋軍司令官との『統合司令部』と『統合司令官』新設の方針! 政府は、自衛隊の指揮権を放棄!?」
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コメント
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本当にびっくり! 戦争国家とは知っておりましたが、これほどアメリカの歴史が戦争で埋められているとは。世界で最も残酷な国はアメリカだと藤永茂先生のお言葉。その通りですね。これをコピーして知り合いに読んでもらいます。そうせずにはいられません。
投稿: nobara | 2022年11月 1日 (火) 18時27分
まだ ない様
「アメリカは、その歴史のうち93% - 1776年以来239年中222年間が戦争」という翻訳記事はお読み頂いているでしょうか?まだであれば是非ご一読ください。
http://eigokiji.cocolog-nifty.com/blog/2015/02/93---1776239222.html
投稿: メタボ・カモ | 2022年10月31日 (月) 14時01分
アメリカ合衆国は、連続して10年間、戦争をしなかったことがない程の、野蛮な資本主義帝国です。
しかし、産油国全てを爆撃して、油田を独り占めすることまでは、できないようです。
投稿: まだ ない | 2022年10月31日 (月) 13時21分