世界政治的権力の方向は断固東方に動いている
2022年9月21日
ジェームズ・オニール
New Eastern Outlook
最近ロシア大統領ウラジーミル・プーチンが演説したユーラシア経済フォーラムがウラジオストクで開催された。ウラジオストク自身ロシア極東における開発の重要な中心で、主題が「多極世界への道」である会議の主催者として適切だ。会議には68の異なる国々の代表が出席し、それ自体がロシアは世界共同体の孤立からほど遠いことを、欧米世界に対する辛辣な注意喚起だ。むしろ、中国とともに、それは完全に新たに発展しつつある、どの時代よりも西洋列強の役割への依存が少ない世界の中心なのだ。
会議でプーチンは、発展しつつある新世界秩序を説明する注目に値する演説をした。彼が「時代遅れの単極世界」と呼んだものは、彼が「新世界秩序」と呼んだものに置き換えられる過程にある。この新世界秩序は「公正と平等と、各国と国民が発展で独自の道を進む権利の尊重という基本原則に基づいている」。プーチンは「不可逆的過程」と表現したもので「まさにここアジア-太平洋地域が原動力の役割を果たして」姿を現しつつある「強力な政治的、経済的中心」と呼ぶものを続いて取り上げた。
プーチンの演説は、おそらく世界の過半数と言ってかまわないだろう国々を代表しての西側諸国全体に対する重大メッセージと解釈できる。演説には注目する価値がある多くの要点がある。予想通り、この演説は、現在ロシアに言及する際、ウクライナにおける現在の戦争の道に至った状況の絶え間ない歪曲説明しかしない欧米メディアに事実上無視された。演説で重要な点は下記だ。
- 主権国家としてのロシアはその権益を守る。これは様々な形で解釈可能だ。それは表向きウクライナでのロシアの動きで正当化されるロシア経済に対する未曾有の攻撃にそれとなく言及している。第二次世界大戦終焉以来、諸国に対する少なくとも70回の攻撃の恐ろしい実績にもかかわらず、類似の攻撃が今までアメリカに対してされたことがないのは注目に値する。ここで適用される二重基準は驚くほどだ。
- 欧米制裁が世界を脅かしている。これら制裁の最も興味深い特徴の一つは、制裁が制裁した側に逆噴射したことだ。経済の生存能力に対する最大の挑戦に直面しているのはヨーロッパだ。これは先進国世界全体に好ましくない結果をもたらすだろう。
- 世界全体の国際関係が変化した。これはおそらく世界の国々の圧倒的多数に対する優位を維持する試みでからの明らかにアメリカ発明の「規則に基づく国際秩序」という欧米の概念が最も良く体現している。
- ロシアはウクライナの穀物産品輸出に干渉したと不当に非難された。実際、穀物輸出は単にロシアの防御的作戦に影響されなかったのみならず、かなりのウクライナ穀物は発展途上国に行かず、ヨーロッパ内の他の国々に輸出されている。
- ロシアのエネルギー輸出価格を規定する欧米による試みは全く奇怪だ。それはロシアの輸出収入を制限する明らかな試みで、ロシアに対して行われている経済戦争の一環だ。アメリカを含めエネルギー輸出に支払われる世界価格を規定する力を持った国など存在しない。ロシア外貨収入に対する見え透いた攻撃の試みは失敗するだろう。
- 世界の支払い手段として米ドルの余命はいくばくもない。ロシア・ルーブルと中国元の使用は益々重要になりつつある。
- 世界における力のバランスの場に基本的変化が起きている。アジア・太平洋地域の役割は際立って増加し、それは続くだろう。
ユーラシア経済フォーラムのこの会議は、ウズベキスタン第二の都市サマルカンドにおける上海協力機構の次の会議より二週間先行するだけだ。
上海協力機構は欧米メディアから極めて僅かしか注目されないもう一つの組織だが、その発展には国際的重要性がある。そのような発展の一つはSCOとASEAN(東南アジア諸国連合)間のますます強い関係だ。
SCOは、少なくとも11カ国が現在参加を希望する状態で、現在非常に大きな注目を享受している。これでその規模は二倍以上になる。サウジアラビア、バーレーンとカタール三カ国が公式にSCOに加入申請している。他の加盟国になる可能性がある国々では、アフガニスタン、バングラデシュ、エジプト、シリアとトルコが最大だ。加盟諸国増加のおかげで、SCOはアジアの主要通商圏になるだろう。それは提携組織ネットワークも組織しており更に影響力を増すだろう。
この全てが表しているのはヨーロッパに支配される世界から離れる本格的再編成だ。世界の中心は明らかに東へと動いている。アジアが国際貿易の膨大な部分を占めており、アジア最南端に位置するオーストラリアのような国は、アメリカを中心とする外交政策を続けるか、地理的要請を認めて、予想可能な将来、世界を支配する新世界秩序へと政治的に移行するか決断しなければならないことを意味している。
これまでのところ、この地理的必要性が認識されている強い兆しはない。決定は何時までも長くは引き延ばせない。
ジェームズ・オニールは、オーストラリアを本拠とする元法廷弁護士で地政学専門家。オンライン誌New Eastern Outlook独占記事。
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またしても演説後、演壇上をうろうろ歩き回る宗主国大統領。認知症一目瞭然。
The Jimmy Dore Show
櫻井ジャーナル
TBS NEWS DIG
植草一秀の『知られざる真実』
寺島メソッド翻訳NEWS
「本日岩上安身による田代秀敏氏へのインタビュー、『「アベノミクス」の経済的帰結? 通貨も株式も国債も売られる「日本売り」が起きている』」
インドだけではなかった! 中国も、ロシア産ガス輸入を過去最高水準に拡大し、余剰分を欧州、日本、韓国、タイに転売し、「漁夫の利」を得ていると、香港『サウス・チャイナ・モーニング・ポスト』がスクープ! 対露制裁に参加した国が苦しみ、不参加の国々が利益を得る不条理! 米国の戦略は同盟国諸国を破滅に追いやっているだけ!!
【IWJ_YouTube Live】20:00~「岩上安身によるエコノミスト田代秀敏氏インタビュー」
視聴URL(冒頭以降は会員限定): https://iwj.co.jp/wj/open/archives/420867
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