« ロシアと中国とのアメリカ二正面作戦 | トップページ | アメリカは、いかにEUを分裂させているか »

2022年9月17日 (土)

いい大人がウクライナ侵略は「挑発されたわけではない」と言うのは問題だ

2022年9月7日
ケイトリン・ジョンストン

この記事を英語音声で聞く。

 Useful Idiotsポッドキャストに対する最近のインタビューで、ノーム・チョムスキーが、誰かが主流のニュース・メディアで、ウクライナのロシアの侵略に言及する時は常に、「挑発されたわけではない」という言葉を我々が聞く唯一の理由は、それが絶対挑発されたからで、連中がそれを知っているからだという主張を繰り返した。

 もし皆様が立派な作家で、主要雑誌に書きたいと望むなら、ロシアのウクライナ侵略について話をする際、それを「挑発されたわけではないロシアのウクライナ侵略」と呼ばなければならないとチョムスキーは言った。「それは非常に面白い言葉だ。それは決して以前は使われなかった。振り返れば、まったく挑発されなかったイラクがあるが、誰も今まで、それを「挑発されたわけではないイラク侵略」と呼ばなかった。実際私は、この表現が常に使われたかどうか知らない。使われていたなら、極めたわずかだ。今Googleを見ると何十万もヒットする。出版される全ての記事は、挑発されたわけではないウクライナ侵略について語らなければならない。」

 「なぜか? なぜなら彼らは完全にそれが挑発された」ことを知っているからだとチョムスキーは言った。「それはそれを正当化しないが、大規模に挑発されていたのだ。幹部外交官連中やCIA長官さえ、30年間これについて話している。」

 チョムスキーはここでもちろん正しい。帝国メディアと彼らの洗脳された工業ロボットはこの戦争の関係で愚かに泣き声を上げ、半年間「挑発されたわけではない」という言葉を使っているが、彼らの誰も今まで正直な答えがない一つの疑問はこれだ。ウクライナ侵略が挑発されたわけではなかったら、なぜ何年も実に多くの欧米専門家が欧米政府の行動はウクライナ侵略を引き起こすと警告していたのだろう?

 チョムスキーが言っている通り、それが実態だからだ。今年二月に侵略が始まった数日後、アルノー・バートランドという人が、数年間、ロシアとの危険な対立がその国境に向かうNATO進歩、ウクライナ干渉主義や様々の他の侵略のために起きると警告していた様々な欧米外交官や専門家や学者の極めて広く流布しているTwitterのスレッドをまとめた。それは「欧米はウクライナを甘く誘惑しているが、最終結果はウクライナの破壊だ」と2015年に、はっきり警告していたジョン・ミアシャイマーや、「NATOをロシアの玄関先に動かして、我々は201世紀対決の計画を立てた」と1999年に警告していたパット・ブキャナンのような例を含んでいる。

 帝国擁護者は、ウクライナ侵略がNATO拡張主義(連中の主張は、一般にロシアの戦争理由についてウラジーミル・プーチンが言ったことを露骨に歪曲した説明に基づいている)には無関係だと主張するのが好きだが、それは愚かだ。この威嚇がモスクワにとって扇動的挑発だと十分過ぎるほど知っていたにもかかわらず、2008年にウクライナのNATO加盟可能性を言って、話題にし、議題から外すのを拒否し、アメリカ戦争機構は侵略直前までこの威嚇であざけり続けていた。

https://twitter.com/RnaudBertrand/status/1498491107902062592?s=20

 アメリカ帝国が、2014年に激しい蜂起を積極的に煽動しキーウの現行政権を追い出し、この国を、アメリカ/EUに友好的な地域と、モスクワに友好的な住民に分裂させたことは言うまでもない。これは(そこに暮らす人々に圧倒的に支持された)クリミア半島併合とロシアに後援されるドンバスの分離主義者に対する8年間の残忍な戦争を招いた。それら分離主義者に対するウクライナ攻撃は、侵略直前まで日々急増したことが知られており、これが(アメリカ諜報機関によれば、ぎりぎり最後の決定だった)侵略するというプーチンの最終判断をもたらしたと論じられている

 アメリカ勢力連合は、条約をシュレッダーにかけ、冷戦エスカレーションを強化する代わりに、ウクライナの中立を尊重し、戦争機構をロシア国境から下げ、モスクワと心から緊張緩和を追求するなど、わずかな低コストの譲歩で、この戦争を極めて容易に阻止できたはずだ。もし彼が、そうする公約で元来選出されたように、ミンスク合意を尊重し、ロシアとの平和を追求し始めたら、彼をリンチにかけると公然と脅した反モスクワ極右国家主義者からゼレンスキー大統領を守ることで、おそらくこの戦争を阻止できたはずだ。

 その代わり、アメリカ連合は、承知の上で反対の路線を選択した。ウクライナに武器を注ぎこみながら、ウクライナの正式NATO加盟の可能性を言い続け、益々ウクライナを事実上のNATO加盟国にして、アメリカ戦争機構と更に親密にし、ドンバス分離主義者に対するウクライナの攻撃を、命令したり、奨励したり、大目に見たのだ。

 帝国はなぜ平和への挑発を選んだのだろう? 2020年1月、戦争への道が舗装されていた時、アダム・シフ下院議員が、この疑問にかなり良い答えを与えた。「我々がここでロシアと戦わなくてもよいように、我々はあそこでロシアと戦える」。もし皆様が、ウクライナの人々を愛するから、アメリカ帝国が良き友人ウクライナを助けていて、彼らが自由と民主主義を持つことを望んでいるという子供じみた考えを放棄すれば、アメリカが、そうするのは戦略地政学的権益のため、彼らの命や財産が浪費されないため、都合の良い代理戦争をひき起こしたと見るのは難しくない。

 数日前、ブライアン・バーレティックが、まさに題名そのものの「ロシアを拡張させ、有利な立場で競合する」という題の国防総省に資金供給された2019年のランド研究所論文に関する良い映像を発表した。米軍が注文したこの論文は、帝国が、アメリカ人の命を犠牲にしたり、核紛争をひき起こしたりせず、長年の地政学の敵を瀬戸際に押しやるため、代理戦争や経済戦争や他の冷戦戦術をどのように使えるかを詳述している。それはウクライナに何百回も言及し、明示的に制裁や、ヨーロッパでのロシアのエネルギー権益攻撃のように我々が現在見ている経済戦争戦術(後者はEU諸属国に対するアメリカ支配を強化するためにも使われているとバーレティックは指摘している)を論じている。

 論文はモスクワから攻撃的反応を引き出すため、「満場一致というNATOの必要条件が、予見できる将来、ウクライナ加盟をありそうもなくしているが、ワシントンがこの可能性を推進すれば、このような進展を事前に防ぐ努力を強化するようロシアを仕向けながら、ウクライナの決心を強化できる。」と言って、ウクライナとNATO加盟で恫喝をし続けることさえ明らかに提唱している。

 バイデン大統領は、全く隠すことなくモスクワの政権転覆を主張し、この戦争をロシアを「弱める」ために使う計画だとロイド・オースティン国防長官は公然と言い、他のアメリカ当局者たちも本当に、そういう政策だとマスコミに述べている。バイデン政権の発言は、アメリカ連合が、アフガニスタンシリア両国で、アメリカの代理勢力に対しロシアを意図的に軍事的泥沼に引き込もうとしていたワシントンの周知の実績と一致する、今後何年もこの戦争を続けことに絶えず専念しているのを明らかにしている。

 だから、全てのいんちきな懸念や愛国心の高揚の背後で、アメリカに中央集権化した帝国は、この紛争から、まさに欲するものを確実に得ているのだ。それは軍事的、財政的にロシアに過剰拡張させ、世界中で、その言説を推進し、アメリカ干渉政策のイメージを修復しインターネット検閲を強化し、軍事拡張し、ヨーロッパ諸属国支配を強化し、どのみち軍産複合体につぎ込まれる帝国資金で、その費用をまかなうのだ。

 それが、紛争初期に平和がもたらされる危険がありそうに見えた時、帝国が、たとえ彼が戦争を終える用意があるとしても、欧米パートナーはそうではないとゼレンスキーに言うためボリス・ジョンソンを送り込んだ理由だ。

 

 皆様おわかりの通り、この戦争が「挑発されたわけではない」という考えは、ばか者と子供用の空っぽのおとぎ話だ。インターネットが使えて機能する脳を持った良い大人が、こんなことで弁解のしようはないのだ。もし中国がメキシコでのクーデターを支持し、絶えずアメリカ併合を求めるバハ・カリフォルニアの英語話者分離主義者を砲撃しながら、アメリカ国境沿いに北京に武器を配らせる忠実な家臣がメキシコシティーにいたら、ワシントンはこれを挑発と見なし、反撃するのは確実だ。皆様はそれは本当ではないと私に言えるが、我々には皆様がウソをついていると分かる。

 だがチョムスキーが言う通り、マスコミは依然この「挑発されたわけではない」たわごとをとうとうと喋っている。

 「挑発されたわけではないウクライナ侵略の後、欧米の強力な団結した反撃でロシアは不意を打たれたと広く考えられている」と本記事のわずか数分前に公開されたCNBC記事は言う。

 「本年早々の挑発されたわけではないウクライナ侵略後、モスクワに対する国際的反撃に直面してさえ、外交訪問は中国にとってロシア関係の重要性を示している」とCNN最新記事にある。

 数時間前に公開された別のCNN記事で「それは挑発されたわけではない主権国家に対する攻撃だった」と情報提供者が言ったとされている。

 チョムスキーが言う通り、ウクライナ侵略が言及される時は常にこの説で連中が我々をしく攻撃するのは実に異常だ。マイケル・ジャクソンではお決まりで、彼の名に言及する際、MTV司会者は彼を「マイケル・ジャクソン、ポップスの王」と何回呼ぶかノルマがあったのと同様、毎回そうしているように思われる。

 専門家が何年もの間警告していた現在我々をこういう状況に導いたアメリカ/NATO/ウクライナ行動に関する周知のことをマスメディアでは話すことは許されない。彼が悪で自由を憎むから、他と無関係に、全く挑発されない状態で、プーチンがウクライナを攻撃したと言うことしか人々は許されない。そして皆様は、あらゆる機会に「挑発されたわけではない」という言葉を言いながら、そうしなければならない。

 

 2022年に、挑発などたいしたことでないふりをするよう大量の帝国擁護がされているため、この戦争が挑発されたものだという事実を皆様が話すと帝国擁護者連中は腹を立てる。オーウェルの二重思考の何らかのトリックのおかげで、我々全員が知り理解して暮らしてきたこの概念が、今や突然クレムリンの異常な、ばかばかしい発明なのだ。

 まずいことを承知の上でやると決めたことをすれば我々全員有罪だ。もし私が何か悪いことをするよう誰かを挑発すると決めたら、彼らには良くないことをすると決めた罪があるが、私にも彼らを挑発した罪がある。私はここで何も新しいことは言っていない。これは卑劣か、巧妙な悪党が登場するあらゆる映画や芝居の背後にある筋書きで、それは古代から我々の物語の一部だ。イアーゴーは友人を助けようとした無辜の傍観者に過ぎないと考えてシェークスピアのオセロ劇から出てきた人は今までいない。

 我々の大半は兄妹がいる子供として、相手を大泣きさせるため、テーブルの下で相手を蹴るなどして、挑発は現実のものだと知っており、以来ずっとそれを理解している。だが2022年には、皆この極めて基本的な幼稚園レベルの概念が何か奇異な外国のたわ言のふりをしている。それは強烈に愚かで、止める必要がある。

 ロシアは侵入するようアメリカ帝国に挑発されたと言うのは、レイプ被害者が、ピッタリしたスカートをはいて、レイプ犯を挑発した、あるいは酷く殴られた妻が、夫に服従せずに、虐待者を挑発したようなものだとも帝国擁護者連中は主張する。複数のレイプや虐待の経験者として、十分に立証されている侵略に関し、今までで最も強力な帝国を非難するのを、レイプや家庭内暴力被害者を非難することに例えるのは極端に攻撃的だと私は言わざるを得ない。哀れな地球規模の帝国は、レイプ被害者とは比較にならず、もし皆様がそう思っておられるなら、皆様の世界観全体を再考する頃合いだ。

 2022年9月に良い大人が、いまだにウクライナ侵略は挑発されなかったと言うのは問題だ。皆様には頭脳があり、指先であらゆるインターネット情報が得られる。それを活用頂きたい。

__________________________

 私の記事は完全に読者の支持によるものなので、本記事を良いと思われたら共有し、FacebookTwitterSoundcloudあるいは、YouTubeをフォローするか、Ko-fiPatreonPaypalのチップ入れにいくらか投げ銭していただきたい。更に多く読みたいとご希望なら、私の本を購入可能だ。私が発表する記事を読めるようにする最善の方法は、私のウェブサイトか、Substackでメーリングリストを購読することで、そうすれば私が掲載する全てのものについて電子メールで通知が行く。人種差別サイト以外、どなたでも無料で、お好きなあらゆる方法で、この記事のどの部分でも(あるいは私が書いた他のあらゆる記事でも)再配布、使用、翻訳されるのを私は無条件に許可している。私が一体誰で、私がどういう立場で、この場で何をしようとしているのかなどについて、より詳細をお知りになりたい場合には、ここをクリック願いたい。全ての記事はアメリカ人の夫ティム・フォーリーとの共同執筆。

 ビットコイン寄付:1Ac7PCQXoQoLA9Sh8fhAgiU3PHA2EX5Zm2

 ウクライナ大統領府画像の大きさを調整(表示 4.0 国際 (CC BY 4.0) )。

 気に入っていただけただろうか? Patreonで、ケイトリン・ジョンストン支援のために、1秒時間をかけて頂きたい!

記事原文のurl:https://caitlinjohnstone.com/2022/09/07/its-not-okay-for-grown-adults-to-say-the-ukraine-invasion-was-unprovoked/

----------

 デモクラシータイムス

原発回帰の舞台裏(古賀茂明さん)【山田厚史のここがききたい】22220909 47:02

 今朝の孫崎享氏メルマガ題名

日本経済の凋落 驚きのグラフ、東京五輪、新幹線前の1960年日本のGDPは世界の5.4%、その後日本経済は拡大。では今は何%だと思いますか。何と、5.1%です。貴方の認識と一致していますか。

 日刊ゲンダイDIGITAL 孫崎享

安倍元首相の国葬とエリザベス女王の葬儀 運命のいたずらか必然の皮肉か

 日刊IWJガイド

「重大局面!! ウクライナ軍とロシア軍の接触線全域にウクライナ軍が、ザポリージャ原発に届く多連装ロケットシステム『M777』を集結!」2022.9.17号~No.3656号

はじめに~重大局面!! いつまで日本のマスメディアはザポリージャ原発を攻撃している「主体」がウクライナ軍であることをぼかし続けるのか!? ウクライナ軍が米国供与の多連装ロケットシステム「M777」を、ウクライナ軍とロシア軍のせめぎあうザポリージャ地域内の最前線付近に集めていると、ザポリージャ州軍民管理局のウラジミール・ロゴフ氏が報告! ザポリージャ原発はさらなる攻撃対象に!? 攻撃が続けば、史上最大級の核惨事となる危険性が大!!

<インタビュー報告>日本のメディアがまったく指摘しない国内総生産と国内総所得の3ポイントを超える乖離!「頑張って働いた分が海外に流出し、働けど働けど暮らしは楽にならず」の日本はこれからどうなるのか!「急速な円安は『アベノミクス』の経済的帰結!? 通貨も株式も国債も売られる『日本売り』が起きている!」岩上安身によるエコノミスト田代秀敏氏への緊急インタビューをお送りしました!

« ロシアと中国とのアメリカ二正面作戦 | トップページ | アメリカは、いかにEUを分裂させているか »

アメリカ」カテゴリの記事

アメリカ軍・軍事産業」カテゴリの記事

NATO」カテゴリの記事

ロシア」カテゴリの記事

Caitlin Johnstone」カテゴリの記事

ウクライナ」カテゴリの記事

コメント

 実に、正論です。
 ノーム・チョムスキーは、全く、正しい。
 私も、そう思います。

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

« ロシアと中国とのアメリカ二正面作戦 | トップページ | アメリカは、いかにEUを分裂させているか »

お勧め

  • IWJ
    岩上安身責任編集 – IWJ Independent Web Journal

カテゴリー

ブックマーク

最近のトラックバック

無料ブログはココログ