「ロシア・プロパガンダ」というのは不従順という意味
2022年8月6日
ケイトリン・ジョンストン
❖
言説支配が危機にさらされた時の人々の反応を注目していると言説支配がどれほど重要か分かる。
ロシア軍に対するウクライナ軍の戦術で民間人の命を危険にさらす手口に関する短い批判記事を一つ書き、欧米帝国主義の積極的推進を邪魔したかどで、帝国擁護者連中が、アムネスティー・インターナショナルに激怒している。
アムネスティーは、この広範囲に文書化されている問題に初めて脚光を当てたことからはほど遠い。ウクライナ軍が、非戦闘員を保護する適切な処置をとらずに、意図的に自身を一般住民の間に配備していたのは、戦争が始まって以来、主流欧米報道機関や国際連合両方により、繰り返し発言され、報告されている懸念だ。
にもかかわらず「ウクライナ軍が、学校や病院を含め、人口が多い住宅地域に基地を設置し、兵器を操作し、一般人を危険にさらした」というアムネスティーの主張は、ウクライナ当局や、評論家や、ソーシャルメディアで洗脳された一般庶民や、ゼレンスキー大統領自身からさえ非難を招いた。
これら激怒に共通する批判は、アムネスティーが、ロシア・プロパガンダを推進しているやら、ロシア・プロパガンダに影響をされているやら、自身ロシア・プロパガンダの手段になっているということだ。
「この組織が、ロシア言説に対する支持のように聞こえる材料を作り」一般人を守ろうとする努力で「この調査がロシア・プロパガンダの手段になった」と言う報告の結果、アムネスティー・インターナショナルのウクライナ支部長が辞任した。
「アムネスティーのような組織が、この偽情報やプロパガンダ攻勢に参加するとは残念だ」とゼレンスキー顧問ミハイロ・ポドリャークがTwitterで書いた。
「アムネスティー・インターナショナルは、このごみ記事で地獄に落ちる」と人権財団理事長のガルリ・カスパロフがTwitterで書いた。「それとも、プーチンの戦争が地獄に変えようとしているウクライナに行け。ナヴァーリヌイに関する連中の行動同様、クレムリン・プロパガンダをアムネスティー声明に変えるロシアの影響の悪臭がする。」
デイリー・メイルは、アムネスティー報告を「ウラジーミル・プーチンのプロパガンダ機関のクーデター」と呼んだ。
「この組織はロシア・プロパガンダに多大な支援をしている」とNATOプロパガンダ・メディア、キーウ・インディペンデント最高執行責任者オレクシー・ソローキンがTwitterで書いた。
「恥ずかしい被害者非難だ。ロシアはウクライナを侵略し、そこで口に出せない戦争犯罪を行っている。ロシアのウソを拡声しないでくれ」とアメリカ政府ヘルシンキ委員会のポール・マサロがTwitterで書いた。
Pathetic. Amnesty International can go to hell for this garbage. Or go to Ukraine, which Putin's war is trying to turn into hell. As with their actions on Navalny, it reeks of Russian influence turning Kremlin propaganda into Amnesty statements. https://t.co/KOC0S0NJOt
— Garry Kasparov (@Kasparov63) August 4, 2022
これら非難の背後にある基本前提は、もちろん、ウクライナが、ロシアに対し、プロパガンダ攻勢で勝利するのを支援するのがアムネスティー・インターナショナルの仕事だということだ。戦争に関するアムネスティーの報告は、実際、終始、ウクライナに優位なように圧倒的に偏っていたから、それは奇妙だ。
「戦争開始以来、この集団がウクライナについて書いた初の批判的記事であることを考えれば、アムネスティーに向けられた怒りは驚くべきものだ」とUnHerdが報じている。「これまで6カ月にわたり、アムネスティーは、ウクライナに関する40の記事を出版したが、ほぼ全てがロシア侵略を非難しており、最新記事のたった一つが、ウクライナに批判的と描写可能な例外だ。」
現在、あらゆる憤激をひき起こしているアムネスティー報告でさえ、「ロシア軍による無差別攻撃」や「戦争犯罪」を引合いに出して、ウクライナでのロシアの行為を繰り返し非難しており、「国際的に禁止されているクラスター兵器を含む本質的に無差別兵器」使用をしたかどで、ロシアを非難し、有罪と見ている。
だが公式方針への99パーセントの忠誠さえ、帝国スピン・ドクターや帝国の有用なばか者にとっては不十分なのだ。100パーセント遵守しないものは何であれロシア・プロパガンダとして扱われる。
Zelensky now implies that Amnesty International has now fallen under the spell of Kremlin propaganda for pointing out the obvious that Western press would not report & that is Ukrainian forces have been using civilians as shields.
— Ajamu Baraka (@ajamubaraka) August 5, 2022
だがそれは、まさに2016年以来、常に増大する熱意で、欧米人の意識にたたき込まれている概念なのだ。誰であれ、アメリカ外交政策に反対するのは、ロシア・プロパガンダだ。シリアに対する欧米の干渉主義を支持しない? あなたはロシア・プロパガンダを、とうとうとまくし立てている。核戦争を懸念している? ロシア・プロパガンダだ。アメリカ一極支配のための戦いは、この全ての危険な瀬戸際外交に値すると思わない? ロシア・プロパガンダだ。経済的結果が益々多くの世界中の人々の生活を一層厳しくしている出口戦略がない高価な代理戦争という考えはが好きではない? ロシア・プロパガンダだ。
毎日何度も、何年間も、私自身、ロシア・プロパガンダ行商人と非難されている。私がロシア・メディアをほとんど見ておらず、ロシアからビタ一文も受け取らず、一度もロシア政府や、他のいかなる政府でも働いたことがないにもかかわらず。私が誰でもそうするよう常時歓迎しているので、ロシア・メディアが時折彼ら自身の考えで、私の記事を広めると決めるが、私は文字通り、アメリカ人の夫とオンラインで意見を書いているオーストラリア人女性に過ぎない。アメリカ外交政策と私の意見が違うだけで「ロシア・プロパガンダ」と見なされているに過ぎない。
欧米帝国のウクライナ政策への批判は「ロシア・プロパガンダ」だと言う人々の誰かに、彼らがロシアのプロパガンダ屋と思わない、欧米のウクライナ政策を批判している人物を挙げるよう聞いて頂きたい。彼らは挙げることができないはずだ。彼らにとって、ウクライナに関する意見が自国政府と違うこと自体、ロシア・プロパガンダなのだ。
帝国擁護者連中にとって、一体何がウクライナに関する「ロシア・プロパガンダ」にあたるか決定する基準は、言われていることが本当か、正当かとは全く無関係だ。文字通り、ウクライナに関する自国政府の決定に服従する問題に過ぎない。
So the @amnesty basically accused Ukraine of endangering civilians by continuing to resist Russian advances.
— Oleksiy Sorokin (@mrsorokaa) August 4, 2022
The organization gives a huge assist to Russian propaganda.
何がプロパガンダと見なされるかの基準が、自国政府と意見が一致するかどうかによって完全に定義されるなら、その基準自身、プロパガンダだ。
それが、まさにウクライナでの欧米干渉主義への批判で起きていることだ。ロシア・プロパガンダとみなされるためにはロシア発でなくても良く、情報源はロシア政府と関係している必要がない。偽でさえなくとも良い。そうなるため必要なのは非服従だけだ。
今年六月、マテのシリア報告に、一つのウソもを引合いに出せなかったにもかかわらず、ガーディアンが「ロシアが支援している」という主張を早急に削除しなければならなかったにもかかわらず、「ロシアが支援するシリア陰謀論者ネットワーク」の中で、ジャーナリストのアーロン・マテが「最も多産な偽情報流布者」だというNATOが支持する主張を、ガーディアンが発表した時、我々はこれが実証されるのを見た。
今年六月、ウクライナの戦争に関する「偽情報」に関し、オンラインで流布されている「5つの主要言説」を警告するカルガリー大学の要旨説明ペーパーでも例証された。
1.NATO拡張主義がロシア侵略を合法化すると、ほのめかすこと
2.NATOを、ロシアに対しウクライナを代理として使う攻撃的同盟として描写すること
3.組織やとエリートの中に、一般的な不信感を醸成すること
4.ウクライナがファシスト国家だとか、ファシストの大規模な影響を受けていると示唆すること
5.カナダのリベラル政府、特にトルドー首相の具体的不信を促進すること
上記ポイントの、それぞれに、様々な強さの議論があるが、それら全てが意見の問題で、いずれも「偽情報」の、いかなる、まともな定義も満たさないことが自明なのが一層重要だ。それら自体は「ロシア」や「プロパガンダ」と呼ぶことはできない。
“We are moving into a situation where dissent from officially sanctioned opinion can be pathologized & criminalised. Pressures for increasing censorship of dissenting opinion are becoming normalised.” Academics should be resisting this, not assisting it.https://t.co/R1tRb34D6W
— Tim Hayward (@Tim_Hayward_) July 31, 2022
ロシア・プロパガンダは確かに存在し、ロシア政府は確かに能力があり、どんな程度であれ、欧米の考え方に、戦略的に優位な影響を与える上で権益がある。だが、その能力は、特に欧米諸組織が我々の心に対して持っている飛躍的に大きな影響力と比較して、実に非常に限定されている。
ロシアは少数のトロールと、禁止される前でさえ、欧米人が見つけるのに苦労したいくつかのメディアがある。アメリカに中央集権化した帝国には、億万長者メディアや、シリコンバレーや、ハリウッドや教育制度がある。両国を比較するのは、ろうそくと太陽を比較するようなもので、ロシアは太陽ではない。だが、それが我々が、我々の心に対する影響を懸念するよう意図されているものなのだ。
現実は、我々の暮らし丸ごと、アメリカ帝国に好都合なプロパガンダの中を泳いでいるのだ。それは実に至るところに存在しているため、人々はそれに気付きさえしない。ある問題に対するアメリカ外交政策対する支持を主張するのは、洗脳されていることとは全く無関係だと主張するのは、ウェストボロのバプテスト教会で育てられて、同性愛の罪深さで教会に同意するのは全く偶然の一致だと主張する人物と同じだ。それは我々の心の中に染み渡り、我々の社会を形づくるが、我々全員が事実上実在しない「ロシア・プロパガンダ」問題について幻覚症状を起こすのを連中は望んでいるのだ。
これは思考を破壊する動きで、重大問題だ。そのどんな部分にであれ反対する誰でも、ロシア・プロパガンダ屋や、クレムリンの有用なばか者として切り捨てられる中、世界の二大核保有国間の危険なエスカレーションへの同意をでっちあげるため、プロパガンダが、我々の心に押し込まれるのは良くないことだ。
Ten Times Empire Managers Showed Us That They Want To Control Our Thoughts
— Caitlin Johnstone (@caitoz) May 29, 2022
The single most under-appreciated aspect of our society is the fact that immensely powerful people are continuously working to manipulate the thoughts we think about our world.https://t.co/s9gIfQGb39
我々は、この重大な岐路にもっと配慮すべきだが、帝国言説管理者が設定する、これらの動きは、その代わり、我々が、ごく僅かしか配慮しないようにしているのだ。
古いジョーク:(この部分、意味がわからないので省略。ご教示いただければ幸い。)
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記事原文のurl:https://caitlinjohnstone.com/2022/08/06/russian-propaganda-just-means-disobedience/
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The Jimmy Dore Showも、この話題を取り上げている。彼女の記事に出てくる人々の動画もある。
櫻井ジャーナル
植草一秀の『知られざる真実』
デモクラシータイムス
安倍ブランドの虚飾~統一教会と国葬/北方領土とアベノミクス【山田厚史の闇と死角】20220810 53:37
日刊IWJガイド
「旧統一教会の名称変更をめぐり、前川喜平氏が反論!『宗教法人審議会で認証しないという選択肢は、2015年の時点でもあった』!」2022.8.12号~No.3620号はじめに~旧統一教会の名称変更をめぐり「受理を拒めば違法」との文科省の見解に、前川喜平元文科次官が「受理する、しないという話と、認証する、しないという話は、別。宗教法人審議会に諮問した上で、認証しないという決定をするという選択肢は、2015年の時点でもあったはず」と指摘!「当時の文科次官は科学技術庁出身。私の上は実質的に下村大臣しかいなかった」と下村氏の関与と法的責任に言及!!
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コメント
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御参考までに、下記の冗談についての私の理解を述べます。
Old joke:
A Russian and an American get on a plane in Moscow and get to talking.
The Russian says he works for the Kremlin and he’s on his way to go
learn American propaganda techniques.
ここまで↑は、不明な点はないと思います。問題の次のやりとりを日本語での
冗談として翻訳するほどの力量はないので、無粋に冗談の内容だけ説明します。
“What American propaganda techniques?” asks the American.
という文の解釈が複数あり得ることが、冗談のタネになっています。
アメリカ人の質問意図としては:
「どのようなアメリカのプロパガンダ技術を学ぶ御予定で?」なのでしょう。
しかし、ロシア人側の解釈としては:
「一体、どんなプロパガンダ技術が、アメリカにあるって言うんですか?」
と言われたと思ったので、
“Exactly,” the Russian replies.
「そう、まさにそれです。」と(下記のような意味で)応じたという話です。
「あなたがたった今、実演して下さった、まさにその技術を学ぶ予定です」。
# ここでの、"Exactly". は、「相手の発言を肯定する応答」と解釈できます。、
つまり、
アメリカの発表には「プロパガンダを行うのは常にロシアなど他国であり、
アメリカは事実を伝えているだけで、プロパガンダなどしていない」という
暗黙の前提があることを、
「その発表姿勢こそ、アメリカ式のプロパガンダに他ならない」と揶揄する
内容になっています。
投稿: 橋本 剛 | 2022年8月12日 (金) 21時58分