もう一つの日本代表団が台湾訪問
2022年8月9日
ウラジーミル・テレホフ
New Eastern Outlook
ここ数ヶ月で行われた(おそらく計画された)世界政治上最も注目を集める動きは、ハリウッド・スリラー風アメリカ下院議長ナンシー・ペロシ議員による台湾訪問だったと言っても決して誇張ではない。だが、この訪問の前や最中や後、世界中のメディアが立てた情報騒音は、その背後のさほど重要ではない他のいくつかの出来事に対する厚いスクリーンとなって、台湾問題自体や東アジア地域全体を評価する見地から、状況はほとんど気付かれないままになっている。
少なくとも7月27日に台湾を訪問し、ペロシの飛行機が台北空港に着陸する2日前に去った日本人政治家集団の、4日間の台湾滞在という事実を指摘するのは意味があるだろう。2000年代末に、メンバーの二人が(次々に、それぞれ一年の任期で)国防大臣の地位を占めていたので、この4人々の代表団の構成は注目に値する。2人の他の客は前国防次官だった。今日、4人全員国会議員だ。
代表団を率いた石破は、日本政治では華々しいとは言えないにせよ非常に著名な人物だ。彼は2007年-2008年、国防大臣で、翌年は農林大臣だった。与党自民党の極右派閥を率いて、石破は終始一貫、2013年-2020年、首相を勤めた安倍晋三の厳しい対抗者だった。
政治経歴上、石破は終始国軍建設問題に特別な注意を払っている。核兵器保有に対し公的に反対意見を述べているが、「緊急の場合に備えて」国は全ての資質と緊急展開の技術的可能性を持っているべきだと考えている。
台北空港到着時、台湾の同僚との来る会談中、彼が率いる代表団は「地域安全保障の保証問題」に特別な注意を払うつもりだと、出迎えた記者団に石破は述べた。
この点に関し、今年末までに、日本は国内と地域安全保障の様々な面で多くの長期文章を採択することを地元解説者が想起している。近年、台湾を巡る状況が、ほとんどの主要地域当事者間の関係上、主な刺激要因なので、政治的示威行為(反中国)に加え、台湾を訪問した代表団は、これら文書の起草者に有用な可能性がある「直接情報源」情報を得ることと要約できる応用課題を解決した。
日本代表団メンバーは、個別、あるいは集団で、専門家代表と会い、外交部と国防部と台湾議会を訪問した。訪問の主な出来事は彼女の事務所での蔡英文大統領による石破茂歓迎だった。
会談中、台湾大統領は多くの重要発言をした。特に彼女は台湾がIT産業の安定性を保証する分野で東京との協力を期待していると言った。いわゆる「第一列島線」における台湾の重要な位置も指摘された。この「列島線」(北は千島列島から始まり、南はフィリピン群島で終わる)は、アメリカに(「適切な時期に」)中国海軍の太平洋進出阻止を可能にする自然障壁と見なされていることは留意すべきだ。
1988年-2000年の期間、台湾大統領を勤め、戦後、民主的選挙手順の結果、初めて、台湾政権の頂点についた李登輝の墓地を日本代表団が参拝したのは注目すべきだ。2000年7月30日の彼の逝去以来、李登輝は台湾と日本で大いに崇拝されている。青年時代、彼は日本で学び、第二次世界大戦最終時期、彼は帝国陸軍で勤めた。故大統領は常に日本の台湾での駐留期間を褒め、日本との包括的関係の発展を提唱していた。
元台湾大統領の象徴的な名前は、石破代表団出国後のまさしく翌日に行われたもう一つの催しでも言及された。それは台湾「李登輝財団」が計画したフォーラムの追悼式典だ。このフォーラムは数カ月前に計画され、三週間前、殺人犯の手にかかって亡くなった元首相安倍晋三が演説をする予定だった。そのために、この催し全体が「台湾と李登輝の偉大な個人的友人」安倍の追悼となった。
式典は(事実上、台湾の日本大使館である)いわゆる「日本台湾交流協会」台北支部長と、蔡大統領が出席した。安倍晋三と李登輝を追悼する適切な言葉のほかに、極めて重要なことも言われた。すなわち前述の「協会」の長が、日本が事実上のリーダーである環太平洋経済連携協定(CPTPP)という包括的な進歩的な協定に入る台北の意図を助けることを約束したのだ。
日本代表団訪問で、いくつか論じられた話題に触れよう。第一に、この訪問は、台湾と日本が外交関係を切断した1972年以来、最高位の政治家を含んでいたことは強調されるべきだ。この点に関し、東京はアメリカと同様、台湾を訪問する人々の「政治的重み」を次第に増やす戦略に固執している。公式発言レベルでは、北京にとって極めて重要な「一つの中国原則」遵守公表が続いているが、日本政界の重要議員による実際の行動は、その意味を益々無内容にしている。
第二に、台湾と中国に関する実際的措置で、ワシントンと東京が包括的に調整しているのは明白だと思われる。確かに、台湾への日本とアメリカのこのように高レベルな代表団による最近の訪問の共時性は偶然ではなかった。実際、7月31日、ワシントンでの林芳正とアントニー・ブリンケン両国外務大臣の会談中に合意が確認されていた。
これら交渉は新しい二国間「2+2経済フォーラム」プラットホームの一環として行われた。これまで、様々な対の二国間形式での「2+2フォーマット」が、主に両国の防衛-政治的側面を論じる外務大臣と国防大臣で構成されていたことを想起願いたい。まさしくアメリカ-日本「2+2経済フォーラム」形成の事実は「大世界ゲーム」の現段階において経済的側面の重要性が増大していることを示している。
彼らの願望は「中国との率直な対話」を維持することだ宣言し、最初のアメリカ-日本「2+2経済フォーラム」の両国参加者が「台湾海峡両岸関係問題の平和的解決」の必要性を強調した。だがこの方式は、第一に、中国の見地から、「台湾海峡の両岸」の問題ではなく、その「州」の一つと問題を抱えている「一つの中国」を唱える北京にとって全く不適切だ。しかも第二に、この問題は「平和な」方法でしか解決できないものではない。
最終的に「グレート世界ゲーム」の現段階において、日本参加の重要性が増大する重要な事実に再度注目したい。台湾問題を含め、国際的な場における東京の行動はワシントンと絶対に協調する現行の慣行が、無期限に継続すると保証するのはほとんど不可能だ。
日本が、ある時点で、対中国政治全般で「兄」と協調するのは、日本の実際の権益と大きく矛盾するという結論に到達する可能性はある。
だが、同様に「兄」自身による政策急転換の可能性を排除することもできない。このような転換の一環として、アメリカという国の支配層第三位の人物よる最近の挑戦的台湾訪問は、思いがけない異常値に見えるはずだ。もし事実なら、これは現在の危うい世界状況に極めて大きな影響を与えるだろう。
ウラジーミル・テレホフは、アジア太平洋地域問題専門家。オンライン誌New Eastern Outlook独占記事。
記事原文のurl:https://journal-neo.org/2022/08/09/another-delegation-of-japan-visited-taiwan/
----------
この話題、この記事を読むまで全く知らなかった。日本の大本営広報は一切見ていないので。テレビは見ないが、東京新聞と赤旗のオンライン版を読んでいる。紙のように、くまなく読んではいないので見落としたのだろうか。
アメリカ、ニューヨーク州で講演中のサルマン・ラシュディが刺され、片目失明の可能性があるという。
彼の著書『悪魔の詩』を翻訳したかどで刺殺されたということになっているイスラム研究者殺害事件を思い出した。世論誘導サイトは彼が翻訳した『悪魔の詩』にしか触れていない。Cui Bono、誰が恩恵を得るかも問われていない。
ネットで下記記事を見つけた。
再読の勧めとあるが、Amazonを見ると、古書1,771円。昨日は8800円。手が届かなかったが、1,771円なら買えそう。
今朝の孫崎享氏メルマガ題名
引用「中国依存度が高い貿易立国・台湾 中国の「経済制裁」続々発動で窮地に」 (マネー・ポスト)より。2022年上半期の輸出額は2466億ドル。国別内訳では、中国が25%、香港が14%。一方、米国は15%、日本は7%、韓国は5%。中国は経済締め付けへ。
デモクラシータイムス
【横田一の現場直撃 No.176】◆教団名称変更 怪しいのは? ◆リニアに黄信号 静岡・岐阜・東京 ◆維新代表選、出来レース 20220815 1:01:05
はじめに~<本日の岩上安身によるインタビュー>3連続インタビュー2日目! 本日午後6時半から、ウクライナ紛争と米国の戦略について、岩上安身が国際政治学者の羽場久美子・神奈川大学教授/世界国際関係学会アジア太平洋会長にインタビューします! 冒頭のみオープン、その後は会員限定で生配信します!
全日本人必読!「台湾有事」を甘くみるな!!「日本を攻撃すると決めたら、日本全土を攻撃し、徹底的に叩きのめさなければならない」!! ペロシ訪台が巨大な緊急事態を引き起こしたらと仮定! 米CSISが中国の台湾侵攻をシミュレーションした22回のウォーゲームを実施中! IWJはゲームを詳細に報じた米『ブレーキング・ディフェンス』の記事を全文仮訳! ほとんどのゲームで日米中を待っている壊滅的なシナリオ!!
3連続インタビュー3日目! 明日17日午後6時半から、岩上安身による元・統一教会信者『となりのカルト』著者 榊あまね氏インタビュー第3弾を、冒頭のみオープン、その後は会員限定で生配信します!
« 中国はアメリカ合州国よりまし:物語のマトリックスの端からのメモ | トップページ | ウクライナ政府に批判的な報道をしたいとCBSが望んだが、ウクライナ政府はノーと言った »
「中国」カテゴリの記事
- 二つのパイプライン物語…ヨーロッパが失い、中国が得たロシアの戦略的ガス(2024.08.27)
- 台湾海峡を「地獄の光景」に変えるワシントン計画が根本的に間違いな理由(2024.07.05)
- 失敗に終わったゼレンスキー・サミット(2024.06.21)
コメント
« 中国はアメリカ合州国よりまし:物語のマトリックスの端からのメモ | トップページ | ウクライナ政府に批判的な報道をしたいとCBSが望んだが、ウクライナ政府はノーと言った »
石破が、旧統一教会と自民党との密接な関係を問われて、「信教の自由」を振りかざしてまともに答えなかったそうで、ただただあきれています。宗教とカルトの違いも分からないのかと思います。
投稿: nobara | 2022年8月18日 (木) 08時33分
なんで、台湾なんかを守るために、日本がノコノコ出かけるのでしょうか。
その発想自体が、とてつもなく、愚かです。
紛争の受益者は、アメリカ合衆国の軍産複合体だけです。
受益者は、地球の反対側で大儲けして昼寝しているのに、日本の一般市民は大損するのみ。
これほど、人を馬鹿にした話は、他にありません。
そんなに戦争したいのならば、北米大陸でやってくれ、と、思います。
投稿: まだ ない | 2022年8月17日 (水) 00時36分