ウクライナ戦争でのロシアの忍耐力は無限ではないのを欧米は間もなく思い知るだろう
2022年8月16日
ジェームズ・オニール
New Eastern Outlook
今年3月、ロシア軍がザポリージャ原子力発電所を占領した。それを奪還すべくウクライナ軍が必死の試みをしたが、以来ロシアが占領している。これらの試みには原発への爆撃や砲撃もあった。これを表現するのに、信じられないほど愚かだ、というのは控えめな表現だ。
このプラントは原子力発電所で、節度のない破壊は、現場から遙か遠くまで核物質の拡散を起こしかねない。占領しているロシア人や、原発付近に暮らす周囲のウクライナ人の命だけを危険にさらすわけでないと言うのは、きわめて控えめな表現だ。原発の破壊は、ウクライナ領土のみならず、ロシア、ポーランドとハンガリーを含む近隣諸国、広大な周辺地域の核汚染危機を引き起こしかねない。
これまでのところ命中はしていない原発への爆撃と砲撃に、ロシアは抗議している。ウクライナは、この地域の人々全員にとって明らかなリスクには鈍感なようで、周辺国でも、上記通り、同様だ。注目に値するウクライナの対応は、原発砲撃をロシアのせいにしていることだ。これは明らかに誤っているのみならず、誤りは証明済みだ。ロシアには絶対に原発を破壊する理由がない。自身の人々を危険にさらすのだから、なおさらだ。
ウクライナ人が砲撃する動機は明らかではない。彼らは原発奪還の願望を表明しているが、そうはなるまい。彼らの行動で原発が破壊された場合、原発の住民のみならず、汚染の可能性がある区域に暮らす何百万人もの人々の命と安全を、知りながら無視しているウクライナ人に、正気な人々は誰も、このように危険な施設を渡すまい。
この無謀な行為で、もちろん、ウクライナは勝手に行動しているわけではない。最後のウクライナ人まで戦いが続くのいとわないように思えるNATO諸国がウクライナを全力で支援しているのだ。信用を失ったゼレンスキー政権を支持する欧米大国からの兵器や「志願兵」や政治支援による介入で、ウクライナが、この戦争で勝利する現実的可能性はない。
ウクライナ政権を支持している、これら欧米列強は、際限なくウクライナの文脈では、悪い冗談以上の何ものでもない「ルールに基づく国際秩序」に献身している同じ勢力なのだ。最近ウクライナ政府は、ロシア語話者に呼びかける政党を含め、少なくとも9つの反政府政治団体の活動を禁止した。この集団は、母国語禁止を含め様々な制約を受けている。
これまで一週間ほど、ザポリージャ原子力発電所を攻撃しているミサイルを供給しているのは欧米列強だ。彼らは原発や、周辺地域や、近隣諸国への損害に対する一定の責任を負わなければならない。起きる核放射能汚染は、チェルノブイリや近年起きた福島大惨事両方より大きいと推定されている。これら核災害は、両方とも事故で、意図的に計画されたものではなかった。
対照的に、ザポリージャ大惨事は、意図的に画策された大惨事だ。国際連合の国際原子力機関IAEAは、ザポリージャに対する攻撃を「自殺的」だと非難した。しかしながら、国際連合は、原発攻撃のかどで、具体的に、ウクライナを糾弾しなかった。代わりに誰に責任があるかに関し「矛盾する報告」があったと主張した。これは国連責任の不名誉な放棄だ。誰が攻撃に責任があるかは極めて明白、ウクライナだ。原発に損害を与えることで考えられる動機がロシアにはなく、これは国連における憂慮すべき論理の欠如を示している。
キエフ政権は、アメリカのご主人と共に、原発で起きていることにロシアに責任があるという主張の主な源だ。原子力発電所に対する自身の極悪非道な計画の隠れ蓑として、ロシアは攻撃をウクライナのせいにしていると彼らは言う。それはウクライナ政権と連中のアメリカのご主人に予想される屁理屈だ。アメリカは常にロシアを批判する方法を探しており、この原子力発電所は、ロシア介入開始から間もなく、3月の原発占領というロシアの成功を、自分に有利な方向に変えようとする連中の典型例だ。
原子力発電所へのミサイル攻撃に対するウクライナの明らかな有責性を証明するものが一つある。証拠は、ミサイルがウクライナ軍支配下にある領域から発射されたことを明らかに示している。発射地点からミサイルを追跡するのは比較的単純な問題で、この証拠は明らかに攻撃に関するウクライナの有責性を示している。
原子力発電所に対する攻撃は、欧米の大規模な軍事的、政治的支援にもかかわらず、明らかに戦争で負けているウクライナ政府の絶望を実証している。ウクライナ政権が、どれほど酷いことをしているか、一週間ほど前、アムネスティー・インターナショナル報告で明らかになった。報告は、キエフ政権が、住宅地域と同様、学校や病院のような民間施設を、大砲の配置場所に使用していたのを実に明確に示した。ロシアが、これら武器センターを攻撃して反撃すると、ウクライナや、無味乾燥な欧米メディアに、民間施設への攻撃だと非難される。それはウクライナの確立された策略で、戦争に関して信じられないほど一方的な報道をし続けている欧米メディアの擁護者連中も、知っているに違いない。
ウクライナ軍の行動による脅威を強調するため、ロシアは、国連安全保障理事会を緊急集会のため召喚して、ウクライナ誤報の連発に反撃した。IAEA検査官が原発を訪問し、ウクライナの立場を報告できるようロシアは要請している。これは安全保障理事会のイギリスとアメリカ代表から、予想通りの反対に会った。彼らの破壊的姿勢自身が、複数の犯罪にもかかわらず、ウクライナを支持している欧米の本質を雄弁に物語っている。
現在、同盟国ウクライナを支援するアメリカがとる措置は無制限のように思われる。これまで、この戦争で、ウクライナ人を代理人として使う戦略で満足しているアメリカにとって、直接の危険はなかった。この戦略に直面して、ロシアの忍耐力がどれほど長い間持続するかは不明だ。ロシアに忍耐力を押しつけて、アメリカは満足しているように思われる。連中は、このような忍耐力が無限ではないと知ることになるかもしれない。
ジェームズ・オニールは、オーストラリアを本拠とする元法廷弁護士で地政学専門家。オンライン誌New Eastern Outlook独占記事。
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紛争の現状と、戦後のNATO、アメリカ、ロシア関係を語る約二時間の最新鼎談を昨夜聞いた。属国マスコミと全く違う観点(と想像する。テレビ呆導全く見ず、新聞は二紙のデジタル版しか読んでいないので、属国軍事専門家が何を言っているか全く知らない。)
グレン・ディーセンによるスコット・リッターとアレクサンダー・メルクーリスによるインタビュー 英語字幕あり。
Discussing Ukraine. Glenn Diesen interviews Scott Ritter and Alexander Mercouris
寺島メソッド翻訳NEWSにも、グレン・ディーセン教授記事翻訳がある。
今朝の孫崎享氏メルマガ題名
転載:忍び寄るインフレ課税、人々が資産をタンスに仕舞い込んでも、忍び寄るインフレはこっそりと財産を目減りさせる。2%物価上昇率が5年間続けば百万円5年後実質的に89.6万円。家計金融資産2005兆円→1816兆円に目減り。コロナ禍増加分吹飛ぶ。
植草一秀の『知られざる真実』
「本日午後6時半から、岩上安身による元文部科学事務次官・前川喜平氏インタビューを生配信します!」
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