ウクライナ戦争で「クールエイドを飲む」
2022年7月9日
Moon of Alabama
2004年夏、パトリック・ラング大佐(退役)が、人々の集団思考がイラク戦争を導いた様子を説明する「クールエイドを飲む」を発表した。この慣用句には不吉な背景がある。
[アメリカの自称「救世主」ジム・ジョーンズ]は広場に彼の信奉者を集め、状況を説明した。少数の生存者がいたが、その後全員、この村で普及していた「集団思考」という文脈の中で、それは非常に合理的に聞こえたと言った。ジム・ジョーンズは居合わせた全員に、致死量の毒を含むクールエイドの大樽から飲むよう誘った。ほぼ全員、物理的強要なしで、そうした。親は子供に毒を与え、次に自身それを飲んだ。最終的にジョーンズが飲んだ。彼と一緒に何百人も亡くなった。
多くの人々は一度もその物語を聞いたことがないか忘れている。この慣用句の意味は変化した。
今日「クールエイドを飲む」は何を意味するだろう? 今日それは、当該人物が、人格を放棄し、今日の政策立案が象徴している集団思考に屈したことを意味する。この人物は「解決の一部ではなく、問題の一部」になったのだ。
「問題」は何だったのか?自分は比類なく正しい世界観の「持ち主」だという信念を心から抱く人々の小集団が、第43代ブッシュ政権でアメリカ外交政策を支配しようと努めて、意見が違う全員を排除する慣行を通してそうするのに成功したのだ。政府から追い出すことができなかった人々は、彼らが樽から飲むまで、いじめ、卑劣な手段で攻撃した。
ウクライナでの戦争に関し、パット自身クールエイドをすすった。それは明らかに彼の判断を曇らせた。
彼のブログの最新コメントで、パットはこう書いている。
Chuba
愛国心や他のいかなる感情によっても、私は決して分析を混乱させない。ロシアは攻撃の「限界点」を過ぎ、幸運の突然の逆転を味わっている。
「攻撃の限界点」というのは、カール・フォン・クラウゼビッツによる著書「戦争論」に記述されている用語だ。1780年生まれのクラウゼビッツはプロイセン軍に勤めた。彼は、後に、参謀総長としてプロイセン軍に戻る前、対ナポレオン戦争でロシア帝国陸軍に参加した。
クラウゼビッツは多数の軍事行動に関係した職業軍人だったが、彼は仕事にフリードリヒ大王とナポレオンの作戦を言及の枠組みに利用し、主に戦争の検討に関心を持った軍事理論家として有名だ。
今日でさえどんな軍将校にとっても「戦争論」は依然必読書だ。
攻撃の限界点は第7巻「攻撃」第5章「攻撃の限界点」で論じられている。
攻撃の成功は、物理的勢力同様、士気も含む勢力という理解の上で、現在の優越の結果だ。前章で、我々は攻撃力が次第に消耗することを示した。優位も同時に増すかも知れないが、ほとんどの場合、それは減少する。攻撃者は、今後平和交渉のためになる予想される優位を得ようとする。だが、その間、彼はそのために、当座は彼の軍隊の一定量を消費しなければならない。もし攻撃側の優勢が、毎日減少しても、和平がまとまるまで維持されれば、目的は達成される。直接の和平をもたらす戦略上の攻撃があるが、このような例はまれだ。それどころか、大半は、逆に、残る勢力が防御を維持し、平和を待つのに十分な点に至る。その点を越えると、基準は逆転し、反動がある。このような反動の暴力は、攻撃力より一般にずっと大きい。これを我々は、攻撃の限界点と呼ぶ。
クラウゼビッツの記述では、攻撃側は、戦いの開始時点では、物理的、士気的に勢力が優位だ。だが攻撃するにつれ、通常防御側より多く損失する不利がある。(経験則の一つは、攻撃側は戦いに勝つためには、防衛側に対して3対1の戦力比が必要だ。)防御側より多くの敗北を喫すると、攻撃側の相対的な優位が長い間には衰えることを意味する。
戦闘(あるいは戦争)が進むにつれ、実際の戦力比は、3対1から、2対1に、次に1対1、あるいはそれ以下に縮む。攻撃側が相手側を遠ざけておくため必要最小勢力まで下がる点に至る。それ以降は、攻撃の限界点だ。その点に達する前に、戦闘あるいは戦争が終わらなければ、それはおそらく攻撃者の敗北で終わるだろう。
パット・ラングは、ロシアは、攻撃の限界点に達しており、もはや優位持たない点まで消耗し、今その運が逆転する可能性が高いと主張している。だが、それはクラウゼビッツが確かに最初心に思い描いた、クラウゼビッツが参加したような典型的な戦争、ナポレオンやヒトラーのモスクワへ向かう行進を我々が見ていると仮定している。
ウクライナでの戦争は「特別軍事行動」で、いくつかの理由で全く典型的ではない。
ロシアはウクライナ軍より小さな勢力で攻撃した。総計で約120大隊、それぞれ1,000人の兵士、ロシア戦術群(大隊戦術群)プラス、ルガンスクとドネツク人民共和国の約50,000人の兵士が参戦した。戦争の始め、ウクライナ軍には250,000人の兵士がおり、更に数十万人動員した。
ロシアはウクライナより遙かに精巧な武器を使う。戦略目標と同様、前線後部での供給や到着する軍隊に達する長距離兵器と巡航ミサイルだ。それは優れた、ほとんど突き破れない航空防衛と、アメリカ高官が「涙がでるほどだ」と述べた電子戦能力を持っている。ロシアは砲撃能力における強い優位と、何年にもわたり高い発射速度を十分維持できる砲弾を持っている。ロシアは新しい武器と供給に関し「欧米」を上回って製造できる。
この全てが、戦場でのロシアの優位が時間とともに増大する非常に常ならぬ結果をもたらした。戦いの始まりには、1対1だったかもしれないが、それ以来約2対1、あるいはそれ以上に増加した。
彼の最近の要旨説明(ビデオ)で、オーストリア軍士官学校校長ライズナー大佐が、時間とともに軍の比率がどう変化したか示している。7時10分に彼はこの図を示す。
彼は4月、ドンバスの戦いの初め、勢力比は、81のウクライナの大隊戦術群に対し、ロシア大隊戦術群は93だったと説明する。6月26日、軍の比率は、ロシア大隊戦術群108対ウクライナの大隊60だった。ウクライナ側が既に能力の25%を失う中、ロシアは参戦部隊の規模を拡大していた。それでオーストリア軍によれば、「特別軍事行動」開始時の軍隊比は1.15対1で、6月26日には、1.8対1だ。
我々が見ているのは、クラウゼビッツが攻撃の限界点への道と描写した勢力比減の逆だ。
ウクライナ軍高官による最近の話がウクライナ軍自然減の高い比率を裏付けている。彼は「欧米」武器送付は、ウクライナの損失の10から15%しか満たさないと言う。実際「欧米」は、それら損失を満たす十分な新兵器や弾薬をもはや製造できない。
Foreign Affairsで、バリー・ポーゼン教授が、ウクライナ勝利という信じ難い理論について書いている。
ウクライナ支持者は勝利の為の二つの方法を提案した。一つ目はウクライナによるものだ。欧米の支援で、ウクライナは、自然減を通して、軍隊を消耗するか、抜け目なく策略で勝って、戦場でロシアを破ることができるとこの議論は言う。2番目はモスクワによるものだ。若干の戦場での勝利と経済圧力の組み合わせで、欧米はロシアのウラジーミル・プーチン大統領に戦争を終わらせるよう説得するか、周囲の誰かに、彼に強制的に取って代わるよう説得できる。
だがこの両方の勝利理論は、あてにならない基礎に基づいている。ウクライナで、ロシア軍は多分占領地域の大部分を守るのに十分強い。ロシア経済は十分に自給で、プーチン大統領の権力掌握は同様、それら戦勝を断念するよう強要できないほど十分強い。
・・・
ウクライナ大統領や支援者は、勝利が目前であるかのよう語る。だがそうした意見は益々空想に思われる。従ってウクライナと欧米は彼らの野心を戦争に勝利する戦略から現実的取り組みに向けた移行を再考すべきだ。戦いを終わらせる外交的妥協を見いだして。
ダニエル・デイビス中佐(退役)もポーゼンに同意している。
要するに、ウクライナが時間稼ぎをしても、ロシアのウクライナ内での整然とした攻勢を止める結果をもたらせると期待できる正当な軍事的道はない。まして逆転をや。全ての町と都市を争い続ければ、ウクライナ人犠牲者が増え続け、都市部の壊滅を保証することだ。結局、ロシアは依然、戦術的勝利を実現する可能性が高い。
これら物理的現実を考慮に入れて、アメリカと西洋の政策が変化することが必要だ。ウクライナに言葉の支援を与え続け、最終的にキーウが戦争に勝つと主張しても、結果を変える可能性はなく、ワシントンにとっての政策失敗に終わる可能性が高い。
ポーゼン教授はロシア戦力の高い損失を示すため様々な組織が出す偽数値を批判している。
戦争当初、ウクライナ支援者連中は、ロシアが要員の自然減で負け得ると主張した。単純な数値が崩壊の間際のロシア軍を語っているように思われた。4月、イギリス国防省は、15,000人のロシア兵士がウクライナで死亡したと推定した。負傷者数は、第二次世界大戦中の平均と同じぐらい高く三倍と想定すると、約60,000人のロシア兵が任務から叩き出されことを意味する。最初の欧米の推計は、ウクライナ前線のロシア勢力の大きさを、120の大隊戦術群軍に、合計120,000人とした。もしこれらの死傷者推計が正しければ、大半のロシア戦闘部隊の力は50パーセント以下、専門家が戦闘部隊を少なくとも一時的に役に立たなくするという数字以下に下がったはずだ。
これら初期推計は今や過度に楽天的に見える。もしそれらが正確だったら、ロシア軍は今までに崩壊しているはずなのだ。逆に、ドンバスでは、遅いが着実に侵攻している。
イギリス国防省が発表する数値や他の主張はネオコン戦争研究所によりアメリカで繰り返される。ほとんど全てのアメリカ・メディアが、この二つの情報源の一方を引用する。
連中はクールエイドのパット・ラングに奉仕しており、彼らの周囲の戦闘準備した連中はロシア作戦の初めから飲んでいたのだ。
彼らはロシアは戦争を強化できないとも推測していた。ロシア大統領は彼らと意見が違う。
今日彼らが戦場で我々を打倒することを望んでいるというのを我々は耳にする。私に何と言うことができるだろう? 連中にやらせてみよう。我々は既に欧米が「最後のウクライナ人まで」我々と戦うことを望んでいるのを聞いた。これはウクライナ国民にとって悲劇だが、そうなりつつあるように思われる。だが概して全員、我々が、まだ本格的に何も始めていないのを知るべきだ。
同時に、我々は和平会談を拒絶していないが、それを拒絶している人々は、それが更に長く続けば、それだけ我々と交渉するのがより困難になることを知るべきだ。
例によって、イギリス国防省はそれをクールエイドを更に提供するために使った。
土曜日「ウクライナでの取り組みをロシア軍が「始めてさえいない」という2022年7月7日のプーチン大統領の主張にもかかわらず、その強化の多くは、時代遅れか、不適当な装備で派遣される、その場しのぎの集団だ」とイギリス国防省の評価が述べた。
国防省が示した一つの兆候は、新しいロシア軍がMT-LB汎用装軌装甲車両とともに派遣されるという期待だった。最初1950年代に大砲を牽引するよう意図されたMT-LBは重武装されておらず、その部隊を守るため機関銃しか取り付けられない。
前線でMT-LBを見ないと私は請け合う。全く見ないのではないかと思う。ロシアはまだ送る必要があれば送れる本物の何千もの戦車を持っているのだ。
クールエイドを飲んだ全員、この戦争が、あれこれのウクライナの町やら、ウクライナそのもの以上のものであるのを忘れている。
プーチンはこう述べていた。
だが私はここで、あなた方にはっきりさせたいことがある。彼らは、まさに我々の特別軍事作戦の初めから負けることを悟るべきだった、なぜならこの作戦はアメリカ風世界秩序の根本的崩壊の始まりを意味するのだから。これはリベラル・グローバリズムというアメリカの自己中心主義、偽善的二重基準や、背後で覇権を得ようとする取り組み以外の何もない、自身の必要のため作り出した自分の利益のみを追求する規則ではなく、国際法と国と文明社会の本当の主権に基づいた、自身の価値観と伝統で、自分の意思で自身の歴史的な運命を生きに、民主主義、公正と平等を基盤に協力する本当の多極世界への移行の始まりなのだ。
全員がこの過程は止めることができないのを理解すべきだ。歴史路線は止められず、世界の他の国々に新世界秩序を押しつける西側諸国全体の試みは消える運命にある。
ワシントンやロンドンがクールエイドを出さなければ、事態は変わるだろう。それは避けておいた方が良いのだ。
記事原文のurl:https://www.moonofalabama.org/2022/07/drinking-the-kool-aid-on-the-war-in-ukraine.html#more
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傀儡与党に投票した、かなりの数の日本人、ウクライナ戦争でも「クールエイドを飲んで」いるとしか思えない。自分の死刑執行人を選ぶ愚かさ。
大相撲を楽しく見ているが、間に大本営広報部呆導があるのが難点。そのたび毎にリモコン操作で音声を消す煩雑さ。
日本には人民寺院のかわりに、話題のカルトが長年健在。政権と一体化さえする見事さ。人を不幸にする点で同類。
The Jimmy Dore Show メキシコ大統領、バイデンに石油価格対策伝授。国境近くのガソリンスタンドに配給を増やす。国境を越えてガソリンを買いにおいでください。
Mexican President Lectures Biden About How To Lower Gas Prices
Redactedも同じ話題。
Mexico just did the UNTHINKABLE at meeting with Biden | Redacted with Natali and Clayton Morris
デモクラシータイムス
「岸田総理、世界的なインフレは全部ロシアのせい!? 電力逼迫を口実に原発最大9基再稼働!/IWJはピンチ! 緊急のご支援を!!」
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