主要競争相手のEUを、アメリカはどのように殺しつつあるのか
2022年7月24日
ウラジーミル・ダニーロフ
New Eastern Outlook
そこから新世界への大規模移民が始まったヨーロッパの歴史的「継子」であるアメリカが、母国に対するしっと深い態度を常に明らかにしているのは誰にとっても意外な事実ではない。この過程は、経済、貿易と世界支配で、アメリカがヨーロッパと厳しく競い合う路線を進めている最近10年、特に悪化した。
ヨーロッパ諸国のエリートと国家経済の弱体化政策を追求することで、アメリカはヨーロッパを競争相手から排除するのに成功した。唯一の「世界の所有者」になろうとする取り組みで、ワシントンは古いヨーロッパを破壊し、新たな政治エリート集団を率い、もっぱらホワイトハウスが後がまに座る狙いで、当時存在していた意見のバランスを無くし、最終的にヨーロッパ諸国を弱めるのに成功した。結果的に、今日欧州会議と、EUのアメリカ子分に採択された法律の両方が、ホワイトハウスから来る指示を絶対に守ることを狙っている。これら指示は、ヨーロッパの主権さえ反映せず、それらの多くがヨーロッパ住民の利益に大いに反する。残念ながら、これら新しい「アメリカの波」政治家連中はヨーロッパ政策で主役を務める人たちだ。ワシントンはEUの意志決定機関に、このような従順な操り人形を仕込む上で手段を選ばない。これを確認するには、アメリカに不利な決定をしようとした時に中傷されたIMF前専務理事ドミニク・ストロスカーンを想起すれば十分だ。そう、後に彼は中傷され、無罪なことがわかったが、ホワイトハウスは好ましくない政治家を排除するのに成功した。不幸にして、これは単独例ではない。ストロスカーン以外にも、非常に多くのヨーロッパ政治家が類似の圧力を受けたし、受けている。
明白なナチをキーウ政権につけて、ワシントンに作り出されたウクライナ危機後、アメリカは多数の対ロシア制裁を課するよう欧州連合に要求している。アメリカは自身に寛大で、自身の経済がひどく影響されかねない分野では積極的ではなく、ワシントンは、ヨーロッパのパートナーと比較して、これら制裁による影響をさほど受けていない。特にヨーロッパは、競争相手としての欧州連合を弱体化するためワシントンが推進している政策で苦しんでいる。2022年のサンクトペテルブルグ国際経済フォーラムで、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領が強調したように、この背景で、ヨーロッパの経済、社会問題が、どれほど悪化したかを我々は目にしており、商品、食料品、電気、自動車燃料の価格が上昇し、ヨーロッパ人の生活の質は低下し、企業は競争力を失っている。専門家の推計によれば、制裁の結果、EUが苦しんでいる直接の損害だけでも、来年4000億ドルを超えるかもしれない。これらの代償は欧州連合の住民と企業が直接負担し、いくつかのユーロ地域国のインフレは、既に20%を超えている。
アメリカは半ば餓死状態で、言いなりになる、ワシントンのどんな指示にも従順なヨーロッパが必要だ。これがアメリカによってEUの様々な構造に埋め込まれた政治家がしていることなのだ。今最も複雑な状況は、エネルギー部門で起きている。
ご承知のとおり、炭化水素市場の再配分は、長年アメリカ地政学の主な動因だった。この市場を支配するため、アメリカはいくつか戦争を始め、クーデターや他の紛争を引き起こしてきた。エネルギー事業で、ガスのシェア増大の見通しが際立って増加している事実から判断して、ガス市場で世界優位を獲得する(昔、グローバル石油市場で、アメリカの勝利で起きたように、ワシントンの計画によれば、優位を強化する可能性は有望だ)アメリカの関心も増した。この分野で、ヨーロッパ市場が演じる重要な役割に基づいて、ホワイトハウスは、アメリカが支配するヨーロッパ政治家とメディアを通して、全く人為的な口実の下、EUのロシア・エネルギー依存の脅威とされるものに対する闘いを始めた。結果として、ヨーロッパへのロシア・ガス供給に対する人工的な障害が作られ始めた。ウルスラフォン・デア・ライエン欧州委員会委員長や、シャルル・ミシェル欧州理事会議長や、ジョセップ・ボレル欧州連合外務・安全保障政策上級代表のような、ブリュッセルのワシントンの手先が追求する政策のおかげで、アメリカ属国状態に陥った欧州連合は、ガスや全体的なエネルギーの危機に陥った。アメリカのベーカー・ヒューズ社が、全てのロシアのLNGプロジェクトに対するサービス提供を停止する決定を発表した後、ヨーロッパと関係するロシア・ガス・プロジェクトから、サービス技術者を引き上げた為、ヨーロッパ市場は大変な混乱に投げこまれた。安いロシアのパイプライン・ガスの供給減少による損失を、アメリカLNGで埋め合わせると約束し、ヨーロッパへのこのエネルギー資源の主要供給元になろうとして、欧州連合にアメリカは厳しい条件を提示している。フォーブスによれば、アジアの消費者による需要に勝つため、ヨーロッパはエネルギー資源に対し追加料金を支払うべきなのだ。
ところが、ワシントンは、実際はこの仕事に対処せず、7月にヨーロッパをより大きな不幸に会わせた。テキサス州フリーポートLNGプラントでの事故のため、このプラントからヨーロッパに、LNGの68%を出荷する輸出ターミナルは約3カ月間稼働しない予定だ。ヨーロッパ・ガス市場の状況は、ノルド・ストリーム用ガスタービンの修理、保守と返却をオタワが妨害し、アメリカとカナダの不正な制裁共謀のおかげで、ヨーロッパにおけるロシア・ガス供給が強制的に減少させられた。
これら全てがヨーロッパ取引所のガソリン価格上昇を一層加速させ、ほぼ25%上昇した。従って、ガス取引所価格は何倍にも増大し、EU加盟国で増大する社会的緊張をもたらした。ドイツ・メディア報道によれば、ドイツの消費者ガソリン価格は三倍に上昇するかもしれず、多くの企業が閉鎖し、倒産する。
そのため、ワシントンが放った「ガス戦争」の、あからさまに挑発的な反ヨーロッパ政策に関し、ヨーロッパにとって、突然のひらめきは避けられない。
世界が大いに期待し、米ドルの主要ライバルと見なされたユーロの最近の価値低落は、アメリカとEUが、明白に激しい競合になった。これは既にヨーロッパ諸国に対する深刻な影響をもたらし、中国共産党中央党校国際戦略研究所教授Lyan Yabinが書いている通り、世界経済発展は失敗に終わるだろう。
近年、移民の流れが、アメリカと旧世界間の戦争のもう一つの戦場に変わった。しかしながら、以前は、アメリカの軍事行動の対象になった国々や地域から(第一波は、中東と北アフリカ地域)ヨーロッパに来る何千人もの難民だったが、最近は、ウクライナ難民だ。国連難民高等弁務官のデータによれば、ワシントンが触発したウクライナにおけるネオ・ナチの猛威に帰する彼らの人数は、800万人を超えた。結果的に、ロシアは現在のキーウ当局が追求する政策に対処するため、特別軍事行動を開始するよう強いられた。この関連で、2017年に、シリアからの難民の巨大な流れがヨーロッパに押し寄せた時、欧州連合が、世論の圧力の下、長い間、中東からの何十万もの移民を受け入れるのを拒否していたのを想起する価値がある。だが、CIAと密接につながるアメリカのコンサルティング企業マッキンゼー社は、ヨーロッパ当局を踏み潰し、百万人もの新移民をヨーロッパに受け入れ配置する事業計画を開発した。今ウクライナ難民でも、類似の状況がおきている。EUは自国の社会問題解決を犠牲に、かなりの資金を使わなければならない。
ウラジーミル・ダニーロフは政治評論家、オンライン誌「New Eastern Outlook」独占記事。
記事原文のurl:https://journal-neo.org/2022/07/24/how-the-us-is-killing-its-principal-competitor-the-eu/
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もちろん日本もこの政策の対象。傀儡統一教会公明カルト与党のおかげで、しっかり衰退させられている。
今朝の孫崎享氏メルマガ題名
山上容疑者の安倍殺害で、統一教会問題が浮上。自民党幹事長、総務会長は党との関係を否定。だが個人レベルで見ると関与。具体的に岸防衛相は関係を認める。安倍元首相の関与の証言も出る。名称変更への下村文科相(当時)の関与も争点
植草一秀の『知られざる真実』
デモクラシータイムス
「第12期末まで残り2日! 今期の不足額はあと362万7411円です! IWJの赤字解消を防ぐため、IWJに緊急のご支援を!!」2022.7.30号
はじめに~<岩上安身による櫻井義秀教授インタビュー報告!!>「間接的には日本国自体が統一教会の被害者なんです。自民党政治家等が開き直ることで被害が拡大している」!「安倍元総理殺害をきっかけに統一教会問題が再燃! 韓国最大の反日カルトと自民党とがズブズブの関係の不可解!!『多国籍企業』のような宗教組織の正体とは!? 岩上安身による北海道大学大学院文学研究科・文学部 櫻井義秀教授インタビュー」を公共性に鑑み、フルオープンでお送りしました。
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