2022年7月16日
トニー・コックス
RT
ウクライナへの支持を作り出すアメリカのキャンペーンは、第二次世界大戦中のスターリンのソビエト政権をもてはやしたプロパガンダ攻勢を思い出させる。
トニー・コックスは、ブルームバーグや他の主要日刊紙数紙で書き、編集しているアメリカ人ジャーナリスト。
2022年、ゼレンスキー、1942年、スターリン:アメリカ・プロパガンダ機関は簡単に英雄を作れるが、素早く話を書き換えられる
ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領とキエフ軍との突然のアメリカ情事は、特定の地政学的状況の同盟者を称揚した古いキャンペーンを思い出させる。ソ連独裁者ジョセフ・スターリンだ。
ジョージア出身独裁者の全盛期のように、アメリカの政治支配体制とメディア娯楽複合体は、彼らが好む戦闘員連中を、支援しなければならない英雄的友人として描き出して東ヨーロッパの危機に対処した。実際、ゼレンスキーやウクライナの防衛者は、邪悪な侵略者から民主主義を救うために戦う自由の闘士として表現された。キーウが、野党活動を禁止し、放送局を閉鎖し、政権批判者たちを沈黙させているのに。
例えばニューズウィークやAP通信のようなメディアやは、ゼレンスキーを「大胆な英雄」「現代のチャーチル」と称賛した。イギリスのウィンストン・チャーチル首相との比較はゼレンスキーを「ありそうにない英雄」と報じたCNNにとって十分熱烈ではなかった。
結局、リベラルなネットワークは、チャーチルは「民主主義の純粋な信者というより帝国主義者」だと論じた。ゼレンスキーは、主要野党政党幹部を逮捕したり、批判的なTVやオンライン・メディアを禁止したりするなどの行動をしたにもかかわらず、最大の勝利の直後、投票で、大統領の座を失った男よりも偉大な民主主義者として扱われている。
80年前、チャーチルと、アメリカのフランクリン・ルーズベルト大統領は、ナチ指導者アドルフ・ヒトラーがソ連を攻撃して、不可侵条約を破る前に、憎まれる敵スターリンの欧米大衆のイメージを美化する上で、同様な手強い課題に直面した。アメリカ人歴史家アルバート・マリンが、第二次世界大戦前後の赤の恐怖に関する2021年の著書「A Time of Fear(恐れの時」で書いたように、「一人の大量殺人犯と戦うため、もう一人の大量殺人犯の助けを借りること」には相当な社会的懸念があった。当時の小話は、スターリンとヒトラーの主な違いは口ひげの大きさだというものだった。「それ以外は、彼らは同じ冷酷な怪物だった」とマリンは言った。
だが連合国は、自身の軍隊の負担を大いに減らし、そこでドイツ軍死傷者の90%が生じることになる東部戦線に枢軸軍を貼り付けたままにする上で、ソ連に対する支援を有効とみなした。ホワイトハウスは、ソビエト社会主義共和国連邦への戦時支援で今のドルで約1900億ドルに等しい113億ドルを提供すると同時に、ソ連政権のイメージを磨き上げるために戦時情報局(OWI)宣伝部隊を使った。
今回の紛争と同様、マスコミが多くの力仕事をした。スターリンは「ジョー叔父さん」、信頼できる同盟者、勇敢な指導者として描き出された。彼は1943年1月に、グルジア人総指令官を「マン・オブ・ザ・イヤー」に指命したタイム誌での3回を含め、主要雑誌の表紙に登場した。
同じ年遅く、コリアーズ誌は、ソビエト社会主義共和国連邦が「我々自身のものや、イギリスの民主主義に似ているものに」発展しているという疑わしい主張の特集記事を掲載した。これは、当時スターリンが、政治的脅威と見なした人々を排除する試みで、約百万人を抹殺した大粛正の5年後だった。
ニューヨーク・タイムズも同意し、1944年に「ソ連のマルクス主義思考は終わった。資本主義体制は競合する体制と言った方が適切だ。」と断言している
ライフ誌は、ウラジーミル・レーニンを「残忍な能力がない専制政治から1億4000万人の人々を救い出すのにひたむきだった、正常で、分別ある男」と呼んだのを含め、現在と過去のソ連指導者を称賛した。レーニンの死から、ほぼ10年間、アメリカ政府がソビエト社会主義共和国連邦を認めなかったことを考えると奇妙な絶賛だった。ライフ誌は、「アメリカ人のように見え、アメリカ人のように服を着て、アメリカ人のように考える」「注目に値する民族」と呼んで、ソ連市民を称賛した。
スターリンの残忍な秘密警察NKVDは「裏切り者を追跡する」仕事の「FBIに似た国家警察」として描かれた。ライフ誌は「もしソ連指導者が我々に何かを語ったら、我々はそれを額面通りに受け取れる。」と付け加えた。
OWIはソ連赤軍を宣伝する努力もした。ほほ笑んでいる明らかにロシア人の兵士を見せる1942年の宣伝ポスターには「この男はあなたの友人だ。彼は自由のために戦う。」という説明文がつけられていた。
ヘルメットをかぶり、ライフル銃をもってほほ笑むロシア兵士の写真。© ウィキペディア
今日に早送りすると、ウクライナ軍への称賛も同様に大げさだ。例えば、国防総省は非常にキエフ軍に感銘を受けており、彼らの英雄的行為が、次世代の兵士に研究されるよう幹部が提案した。4月には、ロシア軍と戦う上で、ウクライナ戦士は、その回復力のかどで「軍事史に記されるだろう」とロイド・オースティン国防長官が言った。
先月のロシアのシェヴェロドネチク占領のような敗北でさえ、国防総省はウクライナ要員の優れた闘争能力を称賛した。ウクライナ軍が撤退した際、「彼らは自ら進んで[そう]すると決めた」と未確認のアメリカ当局者が言ったと引用された。
だが、ウクライナ軍の現在の肖像画には、ロシアが2月に軍事攻撃を開始する前に、支配体制メディアが一層公然と報じていたネオ・ナチ分子の本格的ぼかし作業が必要だ。ロイターが2018年に指摘したように、ウクライナの志願民兵の多くがナチのシンボルを使っており、ヒトラー信奉者を兵卒に採用している。
それら集団は他の標的に加え、反ファシスト・デモ、政府の会議、放送局、外国人学生や少数人種を攻撃したとロイターが指摘した。2019年、約40人のアメリカ上院議員が、アゾフ大隊を含め、それら民兵の一部をテロ組織に指定するよう要求する手紙に署名した。
だが、ウクライナは今やメディアのお気に入りで、主要メディアは、ウクライナのファシスト分子を認めて、典型的に彼らを取り繕っている。例えば、3月にNBCニュースは、ゼレンスキーはユダヤ人なので、キエフでは「最近大量殺人や民族浄化」がなかったし、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領が、モスクワの軍事攻撃は、部分的には旧ソビエト共和国の「非ナチ化」を狙っていると主張するのは「ばかばかしい」と主張した。
1960年12月、アメリカ、カリフォルニア州、ロサンゼルス、ビバリーヒルズのフォックス・ウィルシャー・シアター前で、共産主義支持者反対のプラカードを掲げる抗議行動参加者 ©American Stock Archive/Archive Photos/Getty Images
ジョー・バイデン大統領や他のアメリカ幹部は、典型的にゼレンスキーがユダヤ人であることを、その証明として引用し、ウクライナにナチ問題があるという考え方を馬鹿にした。「プーチンは、厚かましくも、ウクライナを非ナチ化すると言っている」とバイデンが3月に言った。「このウソは単なる身勝手ではなく、節度に欠けている。」
だが、2014年にアメリカが支援したクーデターで民主的に選出された指導体制が打倒された後、ウクライナは、アゾフ大隊を含めネオナチ民兵を国家警備隊に組み込んだのが事実だ。それら戦士はロシア軍と戦う上での英雄的行為とされることで称賛されており、欧米メディアは、誤って主張されているマリウポリでの化学兵器攻撃のようなアゾフのプロパガンダを拡大した。実際、ロシア攻撃が始まった直後、ユーザーがネオ・ナチを称賛するのを可能にするためFacebookは規則を変更した。
公然のファシスト分子擁護の新たな波で、長年のネオナチの恐怖を誇大宣伝するアメリカの政治的言説にならって、ウクライナには、第二次世界大戦時代のナチ協力者を崇拝する銅像や、通りの名や、デモ行進がある。ジェームズ・クライバーン(サウスカロライナ州選出)とジェリー・ナードラー(ニューヨーク州選出)を含む民主党議員は、当時の大統領ドナルド・トランプをヒットラーになぞらえていた。
ナチ協力者ステパン・バンデラを追悼するため、ウクライナのキーウを行進する極右集団 © Sputnik/Efrem Lukatsky
現在の危機の前、ヨーロッパで最も貧しく、最も腐敗した国の一つとして位置付けられるウクライナについてアメリカ人は、ほとんど何も知らなかった。2014年クーデターの際、ウクライナが大きなニュース記事になった際、ワシントン・ポストは、アメリカ人の6人のうち、たった一人しか、ウクライナを地図で見つけられないのを見いだした。平均的な推測は1,800マイルも外れていた。
にもかかわらず、ロシア戦車が国境を越えて侵入した途端に、アメリカ人はゼレンスキーとウクライナに関する新しい物語を早々と受け入れた。 ピュー研究所の世論調査で、アメリカ人の72%が「世界情勢で正しいことをする」ことで、ゼレンスキーを信頼していることが分かった。実際、ウクライナ大統領は支持率48%で、バイデンを含め、調査での他のあらゆる世界首脳より上位だった。
大きな負債をかかえたアメリカ政府が、キーウに何百億ドルにも相当する支援金を注ぎ込み、40年で最高のインフレ率の要因になった対ロシア制裁を率いているのを考えれば、ゼレンスキーとウクライナを国民に売り込むのは重要だ。ロシア大統領の警告を信じることが可能なら、ウクライナに武器を供給し、モスクワを罰する作戦は、アメリカ人と他の人類に、核による全滅の危険の可能性をもたらしている。
バイデンのそれほど危険の大きいウクライナ政策を批判する人々は、ロシアの手先やら裏切り者と烙印を押される。メディアの中でも、ニューヨーク・タイムズとUSAトゥデーは、反対は「極右」言説だと切って捨てた。このような意見は、アメリカに資金供給されたウクライナの生物学研究所に関する「根拠がない」主張を含め、戦争に関するクレムリンの「紛らわしい主張」を繰り返していると「タイムズ」は言うのだ。
フォックスニュース司会者で、バイデン批判者のタッカー・カールソンを「ローリング・ストーン」は「プーチンの提灯もち」と呼び、MSNBCは、アメリカがロシアのような「超保守主義と白人民族主義の原則を持つ」のを望んで、彼はモスクワの主張の要点に共鳴していると示唆した。
ハリウッドは「ウクライナを支持する」時流に敏速に乗った。俳優のベン・スティラーとショーン・ペンは、スティラーがウクライナ大統領に「あなたは私の英雄だ。」とまで言い、キエフのゼレンスキーを訪問するに至った。ペンは、組織者が、催しに参加するようゼレンスキーに依頼しなければ、3月のアカデミー賞ショーをボイコットし、彼の2つのオスカーを溶解すると脅した。
結果的にそうなったのだが、ゼレンスキーはリモート出演できなかったが、ロサンゼルスでの授与式典は、ウクライナのために黙祷し、義援金を観客に要請した。4月にウクライナ大統領はグラミー賞で録音演説をした。
ゼレンスキーには娯楽産業の支援を疑う理由がなかった。3月の演説で、彼はウクライナ国民に「ハリウッドスターから政治家まで全世界が皆様を称賛している。」と言った。
3月、いくつかの主要スタジオがウクライナに対する支持を示すため、ロシアでの映画公開を止めたと発表した。イギリスでは、最近注目を浴び始めたキエフへの敬意を示すべく修正する必要があるため、大当たりのはずのガイ・リッチーの「オペレーション・フォーチュン」と呼ばれる映画公開が遅れていると報じられている。物語のギャングがウクライナ人だったのが分かったのだが、それは、もはや許されない。
アメリカ人にスターリンとソ連人を売りこむキャンペーンでもハリウッドは重要な柱だった。各スタジオは親ソ連映画制作を急いだ。「スターリングラードから来た少年」「ロシアの歌」や「モスクワは反撃する」。多くの場合、台本に対しOWIの承認を得ていた。「炎のロシア戦線(原題は、デイズ・オブ・グローリー)」では「ウラジーミル」としてグレゴリー・ペックを主演させ、ソ連のゲリラ戦士が民主主義の擁護者として描かれた。「ザ・バトル・オブ・ロシア(ロシアの戦い』」は、一般市民を、指導者に献身的な愛国者として描写するのを呼び物にしたが、かつてソ連の人々は「我々ではなく、彼らの故国のために戦った」と認めた指導者スターリンにとってさえ、余りにこじつけな主題だ。
ルーズベルトは前駐ソ連アメリカ大使ジョセフ・デイヴイスの本に基づく「Mission to Moscowモスクワへのミッション」と呼ばれる映画を制作するよう要求した。映画はスターリンを、子供好きで、優しく賢明な指導者として描いた。それは、スターリンが政敵を粛正するために使った1936年-1938年のモスクワ見せしめ裁判を、裏切り者の正体をあばくため、それを必要な措置として描いて美化した。シカゴで映画を見た観客に語り、デイヴイスが「ソ連政府の名誉の言葉は聖書と同じぐらい確実だ。」と言ったとされる。
武器貸与法プログラムの下でワシントンに派遣されていて、後に亡命した、ウクライナ生まれのソ連技術者ビクター・クラウチェンコは、戦時中アメリカ全土を旅行して、このようなだまされやすさを聞くと、身がすくんだ。彼の1946年の著書「I Chose Freedom(私は自由を選んだ)」で、クラウチェンコはこう想起している。‘ロシア国民に対する業績のため、ソ連の独裁体制が大いに称賛されるのを、私は千回も、苛立ちながら黙って聞かなければならなかった。アメリカ人の心に対するスターリンの掌握は、ほとんどロシア人の心の掌握と同じぐらい強固だと私は驚きながら悟った。」
戦争が終わった途端、ジョー叔父さんや赤軍を宣伝する必要はなくなった。ヒトラーが打倒された途端、一時的同盟者は、あっという間に疎遠になった。議会委員会が共産主義者と名指された人を裏切り者として追い詰め捕まえ、ハリウッドが愛国的忠誠を証明する圧力に直面する状態で、ソ連関連の映画は「The Red Menace(赤い脅威)」や「Behind the Iron Curtain(鉄のカーテンの背後で)」などの題名で分かるように、決定的に暗い調子のものだった。
ヨーロッパでの戦争が終わって僅か10カ月後、1946年3月に行われたアメリカ世論調査が、アメリカ人の60%が、ソビエト社会主義共和国連邦に対する政策で、政府が余りにも弱気だったと考えていたことを示し、他方、僅か3%が、余りにも厳しかったと言った。65%-25%の差で、回答者は、ソ連人は彼らが欲しいものを手に入れるため戦争に行くと信じていた。同年末の世論調査で、一層友好的に感じたと言った僅か2%と対照的に、アメリカ人の62%が、ソ連に対する彼らの感情は、さほど友好的でなくなったと言っていることを示した。
おそらく、もうハネムーン期間ではないが、アメリカ・ウクライナ関係は依然良好だ。先月、今年早々、ロシアは攻撃を開始する用意ができているいうワシントンの警告を、ゼレンスキーが「聞きたがらなかった」とバイデンが言った際、一部観察者が絆が擦り切れ始めているのではと疑った。ウクライナ当局者はこの主張を「ばかばかしい」と呼んだ。フォックス・ビジネス司会者チャールズ・ペインやポッドキャスト主催者ジャック・パソウビクなどのバイデン批判者はゼレンスキーが「責任を」なすりつけられたと言った。
国内で、紛争の経済的影響が増加して、ウクライナ支援に対するアメリカ国民の支持が衰え始めた。今月初めの調査会社モーニング・コンサルトの世論調査で、3月の90%から下がって、アメリカ人の81%が、ウクライナでのロシア攻勢を、少なくとも「いくぶん」懸念していることを示した。4月の55%から下がって、回答者(46%)の半分以下が、たとえ燃料価格が上昇しても、政府はロシア石油に制裁を課すべきだと言った。4月の50%から下がって、32%の共和党を含め、アメリカ人有権者のたった43%しか、ウクライナの保護をアメリカの責任と見ていない。
2022年6月16日、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領とフランスのエマニュエルマクロン大統領が、キーウで記者会見を行った後、握手する。©セルゲイSUPINSKY/アドバンスドフォーマットプログラム
にもかかわらず、先週、バイデン政権は「何カ月も何年も」ウクライナに武器を送り続ける計画だと国防総省当局者が記者団に言った。先月末、アントニー・ブリンケン国務長官は、政権は長期にわたりキエフを支持すると堅く決めていると繰り返した。「我々はウクライナが必要とするだけの期間、自衛に必要な支援を与えているし、そうし続ける」と彼は言った。
5月に、ブリンケンは過去と現在の英雄的なアメリカの同盟国を結びつけた。「過去を勉強する人々は、ゼレンスキー大統領とウクライナの勇敢な人々が、第二次世界大戦で勝利した人々の精神の具現化だと知っている。」
本欄で表明される声明、見解や意見は単に著者のものであり、必ずしもRTのものを意味しない。
記事原文のurl:https://www.rt.com/russia/558778-us-campaign-stalin-regime/
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マイク・ホィットニー氏の文章を翻訳した当ブログ記事『ウクライナを売った男』検索エンジンによって隠蔽されている。素晴らしい記事と思うのだが。野党を禁止するこの男の演説を聴いてスタンディング・オベーションした野党議員は狂気の沙汰。洗脳呆導番組に抗して、蟷螂の斧の思いで翻訳しても、誰にも読まれない運命。是非ご一読を。
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