サンクトペテルブルグ経済フォーラムに参加するアフガニスタン
2022年6月14日
ワレリー・クリコフ
New Eastern Outlook
今年のサンクトペテルブルグ国際経済フォーラム(SPIEF)にアフガニスタン代表が招待された。代表団はジャマル・ナシール・ガルワ駐モスクワ臨時代理大使が代理をつとめる。そういうわけで、ロシアは、国連とロシア連邦両方に、依然禁止されているタリバンとではなく、経済関係が、特定の条件下では有益であり得るアフガニスタンと協力することを示している。それが、SPIEFに公式招待されたのが(彼らの活動がロシア連邦で禁止されている)タリバンではなく、アフガニスタン商工会議所代表だった理由だ。ロシアの外国貿易におけるアフガニスタンの割合は、ごく僅かだ(上位100の取り引き相手でさえない。2020年、連邦関税局データによれば、241カ国中106位)が、モスクワはアフガニスタンの現在の実業家たちに、SPIEFが、ロシアのみならず、ビジネス問題についてパートナーと議論する適切な場所であることを示したのだ。
アフガン経済の酷い後進性にもかかわらず、ロシアは、ソ連時代から、この国の経済に関心を持っている。1985年、ロシアは(同社は今生産施設を持っていないが)そこに3つのカマス自動車工場を建てた。生産力、年間15,000台以上の小型車(自転車、モペット)生産工場だ。2015年以来、ロシア企業が、小さい水力発電所を建設するためアフガニスタンで営業している。2017年、ロシア国有エンジニアリング企業テクノプロムエクスポルトがカブール近くのナグル水力発電所改修入札に勝った。多くのロシア航空会社がアフガニスタンから貨物輸送をしている。産業を開発するため、ソ連の地質学者が1,500の鉱床を地図に表した。TAPI(トルクメニスタン-アフガニスタン-パキスタン-インド)ガスパイプラインは、アフガニスタンのためのみならず、中央アジアの全ての国にとって大プロジェクトで、タリバン指導部は既に、その継続的建設に対する支持を表明した。これまでのところ、この過程におけるロシアの役割は、パイプライン部分へのパイプ供給に限定されていたが、将来ロシア・ガス企業は、ロシアとトルクメニスタンを接続するソ連時代のパイプラインを使うことで、インドに天然ガスを輸出することが可能になるだろう。
アフガニスタンのみならず、全ての周辺諸国の経済は今大いに中央アジアの地政学状況に依存する。アフガニスタンでは、国と地域の治安情勢、つまりアフガニスタンに対する投資の保証に投資諸国が自信を持てた時、実際の投資市場が開かれる。その時までは、この国の危険は非常に大きいので、誰も本気でアフガン経済に投資するのは不可能だろう。
今日、アフガニスタンだけではなく、近隣隣国のロシア、中国、イラン、パキスタン、インド、中央アジア国家とトルコにとって、アフガニスタン状況の見込みと、地域安全保障対する多大な脅威を絶滅させる必要性に関し、多くの重大な問題がある。特に、国際テロ、麻薬密輸、組織犯罪、アフガニスタン領からの過激派や分離主義運動に対する支援や、タリバンが権力の座について以来の、近隣諸国での急進的イスラム至上主義の奨励。特にアフガニスタン内の特定の戦争をしている民族、政治集団に対する支援に関し、衝突を回避するため、前述の国々の立場を調整する客観的な必要がある。この点に関し、ソ連後の中央アジア諸国と集団的安全保障条約組織(CSTO)のみならずアフガニスタン間の協力は重要な助けになり得る。
対外援助と投資のために好ましい環境を作り出す意志を、タリバンが明らかしており、アフガン経済は、パキスタン、インド、中国、トルコとロシアにとって非常に有望な場所になり得る。例えば、ロシアにとって、アフガニスタンからの新産物輸出を含め、双方の貿易を拡大する機会があるかもしれない。例えば、赤い金として知られるアフガニスタンで生産される最も高価なスパイス、サフランだ。
今年4月、ロシアのセルゲイ・ラブロフ外務大臣の中国訪問の際、彼はアフガニスタン近隣諸国外相会議に出席した。ロシア、中国、イラン、パキスタン、タジキスタン、トルクメニスタンとウズベキスタンだ。会議で、ロシア外務大臣は、アフガニスタンの治安情勢が向上しつつあるが、まだ安定していないと述べた。一方、支配勢力としてのタリバンは、次第に支配することに慣れつつある。
ロシアとアフガン外務省レベルでは、既に関係が確立したと言うことができる。新当局がモスクワに派遣した最初のアフガン外交官は、ロシアで認可され、公式にカブール新当局を認めるロシアの過程の始まりであり得る。ロシアとの交流はタリバンにとって極めて重要で、これは互恵関係だ。
4月、カブールでのロシア民間防衛問題・非常事態・自然災害復旧省との会議で、アフガンのアブドゥル・ガニ・バラダル第一副首相代行は、ロシアとアフガニスタン関係発展を支持すると述べし、ワシントンが、この国に対し敵視政策を追求し続け、平和協定に違反したとアメリカを非難した。バラダルが指摘した通り、アメリカは、まずソ連時代のインフラを破壊し、次に、その過程で、できる限りの全てを破壊しながら、逃走した。中央銀行口座が凍結されている状態で、経済は今どん底だ。
アフガニスタンとの善隣関係構築はロシアにとっても役立つ。少なくとも、アメリカとNATOは長年、アフガニスタン領域から、これら相互の安全権益に打撃を与えようと努めていたのだ。例えば、ISIS(ロシア連邦で活動を禁止されているテロ集団)は欧米が据えた前のアフガン代理政権に保護されて繁栄したのだ。タリバンがカブールで権力の座について以来、このテロリストの悪の世界は「縮み」始めた。
彼らの取り引き成立の腕前と、少なくとも外見上、国際基準を満たす意志を広告しているタリバンは、国際的孤立を脱出するため、できる限りのことをしているのは明確だ。例えば、4月初旬、ビラル・カリミ報道官による声明を通して、タリバンは世界的民衆の期待への対応を示すべく、アフガニスタン全土でケシ栽培を厳しく禁止した。同時に、タリバンは国内生活を国際基準に一層近づけるという多くの約束を果たし損ね続けている。
モスクワとの関係を発展させるよう政策を適応させるというタリバンの意志には明らかに隠された狙いがあるのを、モスクワは十分承知している。カブールは、ロシアと中国は、決してアメリカと同じだけ多くの金をくれないだろうと信じており、ワシントンがタリバン政権を認め、資金供給するのを望んでいる。それが、金をロシアから引き出す衝動を感じているのが確実なタリバーンが、現在ロシア連邦より、アメリカと中国に一層興味を持っている理由だ。他方ロシアは、アメリカから、より多くの譲歩と恩恵を得ることを狙って、例えば彼らがワシントンと交渉する際、アメリカの興味を引き付け、しっと深くしようとするタリバンにとって「いざという場合の代替案」なのだ。
ワレリー・クリコフは政治評論家。オンライン誌New Eastern Outlook独占記事。
記事原文のurl:https://journal-neo.org/2022/06/14/afghans-are-coming-to-the-st-petersburg-economic-forum/
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The Sakerのゴンザロ・リラ氏の6月17日付け映像は、アメリカ国民への呼びかけ。約13分。字幕あり。
アメリカの命令で、リトアニアがロシアの飛び地カリーニングラードへのロシア列車を止め、ロシアを挑発し、ポーランド軍とともにロシアをNATOとの戦争に引きずり込もうとしている。アメリカはロシアと直接戦争したいのだ。政府に馬鹿なことを止めるよう行動してほしい。だが私はこの呼びかけは無駄だろうと思っている。なぜなら、アメリカ人は、いつも通りのことをするだろうから。つまり、何もしないから。
ドイツ人ジャーナリストJasmin Kosubekのミアシャイマー・インタビュー 約一時間。
Wrecking Ukraine: The cost of Winning the War with Geopolitics Expert John Mearsheimer
最後「あなたが間違っていて欲しいと思います。 」「私も間違っていて欲しいです。」で終わる。
日本の大本営広報部、彼にインタビューしたのだろうか?
「選挙」という文字を見ると憂鬱になるのだが、まれな例外もある。 東京新聞
参院選で、宗主国の醜の御楯として次のウクライナ化を確定する自殺願望、小生には理解不能。
白井聡氏新刊『長期腐敗体制』最終章、まさに維新と日本の民度について書かれていた。
「本日参院選公示! 世論調査では維新が立憲民主よりも高支持率!! 自民党の茂木幹事長は早くも『選挙後、早期の改憲』を表明!」
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