ルスキーは、アメリカがやめたところから持ち直すのが可能だろうか?
2022年6月15日
フィル・バトラー
New Eastern Outlook
ウラジーミル・プーチンの国に対する欧米企業の戦争の一部として、マクドナルドがロシアでの事業を閉鎖したとき、私の家族は、このファーストフード・チェーンのボイコットを始めた。少し辛かったが、皆様が考えるかもしれない理由からではない。家族の誰もマクドナルドの食べ物が常に起こすMcBurps(油じみたげっぷ)をさみしく思ってはいない。だが我々は、ささやかな家族の習慣が懐かしいのだ。月に1回か2回のミッキーディーズだ。伝統。価値。昔ながらの成功方法だ。おわかりだろう。
いや、ちょっと待て。卑劣なルスキーは何かたくらんでいるかもしれない。注意しろ。
あのころはよかった!
有名な金色アーチの下で食べるため、親が私を初めて連れて行った時のことを覚えている。それは1960年代初期で、マクドナルドのバーガーとフライド・ポテトは多くの理由で忘れ難かった。おいしくて、象徴的で。フロリダがそれほど有名だった果てしない柑橘類の木立ちに向かうオーランドのコロニアル・ドライブで、大きなアーチは見ものだった。うわーっ。アメリカ企業が、地球にとっての最終戦争をするおかげで、ほぼ60年にわたる顧客ロイヤルティも水の泡だ。どういうわけか、欧米企業がロシアから撤退するのは、我々のリーダーが作り出したウクライナ混乱のいかにもふさわしい報いだ。だが、やはり、それは我々を悲しくする。
ロシア人が魅力的な新しい名前フクスナ・イ・トーチカ(つまり「美味しい、以上終わり」という意味)でモスクワで閉鎖したマクドナルド・フランチャイズを再開した今、多分安いハンバーガーは、アメリカ超資本主義(そしてアメリカの覇権)が、なぜ終わらなければならなかったかの教訓(多分象徴)になり得る。ご存じだろうが、ブランド化は仕方がないとして、究極的に、食事客は購入できる価格で、美味しい食事が欲しいだけなのだ。私は間違っているだろうか?
そもそも、私の同国人のごくわずかしか、これらフランチャイズが、アメリカでどのように最初に設立されたか知らない。昔は立地が、あらゆる店で成功の重要要素だった。有名な7 Elevenコンビニチェーン(最初はトートム・ストアズだった)創業者ジョー・C・トンプソンにお聞き願いたい。この有名チェーンの店名が、アメリカが、かつてはどうだったかについて多くを物語っている。早朝から夜遅くまで開いていると店は人目を引いたのだ。これらの物語、特にマクドナルドの歴史は、皮肉なことに、いわゆる「アメリカの価値観」が率いるものが、世界で、どのようにまずくなったかについて、我々にとって大きな教訓だ。もう少しお付き合い願いたい。これは実に面白く、実に重要だ。
大昔の1954年、ミルクセーキミキサーのセールスマン、レイ・クロックが、顧客であるディックとマック・マクドナルド兄弟が経営するカリフォルニア州サンバナディノのレストランを訪問した。働き者のクロックは、この小さな軽食レストランが、非常に能率的で効果的なのに驚いた。マクドナルド兄弟は、バーガー、フライド・ポテトと飲み物という少数品目に集中し、限定メニューでやっていた。この集中のおかげで、高品質の食物と速いサービスの大量生産が可能だった。兄弟が、フランチャイズの新しい代理人を探していることがわかった。それで、クロックは機会をつかんだのだ。1955年、彼はマクドナルド株式会社の先駆マクドナルド・システム社を設立した。数年後、この企業家は、マクドナルドという名と事業基盤の独占権を買った。1958年までに、マクドナルドは一億個目のハンバーガーを売っており、これから先はいわゆる「ご存じの通り」。
ほとんどの人々が気付かなかったが、数十年後何かが酷くまずくいことになった。
連中は我々の頭をおかしくした
最初のマクドナルド・メニューは9品目で、15セントのハンバーガー、19セントの「誘惑的チーズバーガー」、20セントの三種のシェイクと、更なるおいしい品目だ。だが、1973年の悪名高いOPEC石油通商停止の時までには、マクドナルドやアメリカの多くが劇的に変化していた。ベトナム戦争時代は、我が国の軍産複合体最初の開幕だっただけでなく、ビジネスエリートは「専業主婦」や宗教的理由や休息のための日曜休日のような考えを消滅させ、更に一兆億もの物事を変貌させたのだ。
例えば、1860年、女性のわずか7.5%しか家庭から出て働いていなかったのを皆様ご存じだろうか。1980年までに、その割合は52%に上昇した。2010年時点で、女性のほぼ70%が家の外で働いている。彼女たちの仕事は、インフレーションや税金に対応し、生活費を家にもたらすためだけではない。世界経済フォーラムの陰にいる億万長者連中が利益を得る全てを生産し、後に消費するためだ。他にもっと良い言葉がないのだが、奴隷だ。彼女らの子供は、公立学校と呼ばれる州営教育搾取工場の世話を受け、最新の狂信的傾向で洗脳される。偉大なウソの、いわば次段階(あるいは後退)のため「育てられる」。
マクドナルドの主題に戻ると、73年までに、ファーストフードの巨人は、2つのクォーター・パウンダーバーガー、フィレオフィッシュ、より大きなフライド・ポテト、ホット・アップルパイ、トリプル・リップル・アイスクリームと、私の好物ビッグマックを加えた。だが、それからKFC、バーガーキング、ハーディー、クリスタル、バーガー・シェフ、デイリー・クィーン、ラムズ、アーサー・トリーチャーのフィッシュ&チップ、ビッグ・ボーイや数十の他社が競争していた。当時の全ての他の企業と同様、唯一の成長方法はメニューの拡張だった。あるいは、彼らはそう推測したのだ。1970年代、あらゆるもののアメリカ・メニューは頭が変になった。自動車からテレビから、その中間の全てまで、我々は恒常的不満状態に洗脳された。余りに多くの選択!余りに多過ぎる選択!
アメリカ人にとって、十分満足する唯一の方法は「もっと多く」だった!我々は何であれ新しいもの、出来たてほやほやのもので幸せになると彼らは我々に言った。我々は、生活とは本当に何か、すっかり忘れたのだ。皆様がバスケットボールをするなら、バスター・ブラウンかキニーシューズ、おそらく、コンバース・オールスターが高品質の象徴だったが、存在の最も重要な局面ではなかった。1960年代初期、私は約一ダースのチョコレートバー、4あるいは5種のコーラ製品、基本的に自動車メーカー四社、RCAヴィクター、蓄音機で、ご主人の声を聞いている犬(ニッパー)のTVとレコード・プレーヤーブランド・ロゴを覚えている。よろしいか?3つのテレビチャンネルには我々が今見る300より多くの番組があったのだ。50歳以下の誰もこれを分からないだろうが、我が国が日没の中に消えゆく中、それはまだ考慮すべき重要な点だ。
おい、ちょっと待て!
運命のいたずらと言えば、1973年には、別の類似もある。結局、1973年のアラブ・イスラエル戦争は、石油輸出国機構(OPEC)のアラブのメンバーがアメリカに禁輸を課す理由だった。この動きは、イスラエル軍に再供給し、戦後の和平交渉で影響力を獲得するアメリカの決定に対する報復だった。興味深いことに、当時の大統領リチャード・ニクソンは、石油輸入に頼るアメリカの脆弱さを改め、全国的な燃料不足の重圧を緩和するため国内生産を引き上げる新エネルギー戦略を発表した。結局、ニクソンと当時の国務長官ヘンリー・キッシンジャーが(今も彼が依然ゲームにいるのは実に皮肉だ)1974年1月18日、最初のエジプト-イスラエル撤退協定をまとめるのを支援したが、これはOPECに貿易禁止を撤廃するよう説得するのに十分だった。
私はここで、もう一つの「偶然の一致」の皮肉、大半の人々が一度も聞いたことがない国際エネルギー機関(IEA)を作る上での、ヘンリー・キッシンジャーの役割を含めなければならない。パリに本拠地がある、この自立した政府間組織は、1973年の石油危機後、1974年に、加盟国の政策顧問役を務める経済協力開発機構(OECD)の枠組みを利用した。結果として、国際エネルギー機関は、世界中の指導者に、既に2006年までに「ピークオイル」に達していたと知らせた。これら専門家は、アメリカ指導部にも、需要に後れをとらずについていくため、アメリカは2035年までに約40兆ドル投資しなければならないと知らせた。ゼロを数えるのが嫌いな人のため、これは4万、億ドルだ。あるいは年間欧州連合国内総生産(GDP)の二倍だ。
その歴史を通じて、国際エネルギー機関は、石油市場を強化するため石油備蓄を放出した。お聞き願いたい。最初は湾岸戦争時、1991年だった。それから2005年、1カ月間、一日200万バレルの放出は、大型ハリケーン「カトリーナ」後のアメリカ生産を助けた。2011年は、リビア政権を転覆するための対カダフィ戦争が介入の原因だった。そして今、ロシアのウクライナ軍事介入は、キッシンジャーが作った国際エネルギー機関がEUと一致協力して行動する最近の要因だ。私にはIEAを詳しく論じる時間も場所もないが、この政府機関の事務局長ファティ・ビロルは、世界経済フォーラム(ダボス)エネルギー諮問委員会会長でもある。つまり我々が直面している進行中の問題の主要画策者だ。彼らの計画だけが、今我々全員にとって悲惨な、もう一つの選択メニューだ。
マクドナルドが1960年代初期に指数関数的成長を始めた時、とてつもなく大きい利益のパイをひったくるため、競争相手が至る所から襲いかかった。ベトナムと、ロックンロール文化シフトが、国内とイギリスを変え、常に革新的な多数の選択に対する要求が、欧米で未曾有の富を作った。70代初期には、アメリカは、財政的にも文化的にも高い地位に急上昇した。世界中が我々のようになりたいと望んだ。第二次世界大戦後、同盟諸国の分裂によって、世界の半分は事実上封鎖された。中国とソ連は効果的に分割され、必要とされるときはいつでも、スケープゴートとして使われた。いわゆる「自由主義世界秩序」には大きな可能性があり、それを運営しているエリートは貪欲で暴走した。我々全員その内情に通じていたが、どんな国や集団もそうだったように、服従へと引き込まれた。
すると我々はある種70代の企業策略の病める再来の目撃者なのだろうか?
「いつもの通りの生活」は、60代と70年代に育った我々にとって一種奇妙なおとぎ話だった。再び、私はこれを深く追求する時間がない。だが我々は、自動車、大形TV、ボート、RV、4x4を買い、料理して肥満になるべく、電子レンジ、グリルとトースターオーブンを買い増す金を得るため、1日12時間、週7日喜んで働いていると言えば十分だ。
ロシアは、それを改めることができるだろうか?
最終的に、もし皆様がトリップアドバイザーで、私が子供時代に愛したオーランド・マクドナルドの評価を探せば、私がまさにここで議論した通り、余りに多くの選択に「コロニアル・ドライブのゲットー・マクドナルド」というような苦情を見て衝撃を受けるだろう。どうやら、世界の最も有名なハンバーガー屋は、特に記載のない限り、無料を期待する怒っている顧客にモッツァレラ・チーズ・スティックを出す。今時、朝食を8分待つことが、アメリカ人を狂わせる様子を私は語るつもりはない。
要点は、回り道に思われるだろうが、我々がそうさせたから、我々の帝国は崩壊しているのだ。アメリカを偉大にした全てを我々は忘れたのだ。単純な考え、正しい幸福の追求、200ドルのバスケットボール・シューズで飛ぶマイケル・ジョーダンのように我々通り過ぎるどんな偽ものも受け取らないことだ。彼らは我々を永久に惨めにしたのに、我々はそれを愛したのだ。今やロシア人や、誰であれ真面目で、いくらか金を持った人々が我々の崩壊する商業主義の残骸を再建できる。ロシア人は、フクスナ・イ・トーチカ(つまり、美味しい、以上終わり)で正道を行っていると私は思う。もし彼らが正しく味が良いハンバーガーと濃い冷たいシェイクをきちんと出しさえすれば。そのうえ、プーチン政権は、バーガーキング、KFC、あるいは他の競争相手の売却や再開可能性について、軽率に決めるまい。
ヨーロッパについては?私は古いマクドナルドや、フクスナ・イ・トーチカの新しいフランチャイズが来る破産を引き継ぐことに賭ける。
フィル・バトラーは政策研究者、評論家、政治学者、東ヨーロッパ専門家で「Putin’s Praetorians(プーチンの近衛兵)」という最近のベストセラーや他の本の著者。オンライン誌New Eastern Outlook独占記事。
記事原文のurl:https://journal-neo.org/2022/06/15/can-the-ruskies-pick-up-where-america-left-off/
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ルスキーというのは、ロシア語で、ロシアの、ロシア人の、ロシア的なというような意味。Wikipediaを多少改変複写する。
「露助」もロシア語の形容詞「ルースキー(русский、英: Russky)」に由来し[1]、ロシア語圏で「ロシアの」を意味する言葉が日本語化されたもので、元は特に差別的な言葉ではなかった。
手元にある(60年前の)本を思い出し、拾い読みしたところ、こういう記述があった。この記事の内容と直結するのでは?
ところで、消費への執着が家庭の連帯にたいして、なんらかの影響をもつものであることも否定できない事実である。たとえば皿洗い機、乾燥機、種々のインスタント食品などは家庭生活に次のような二つの作用をおよぼしているようだ。(もっとも、これは下層ホワイトカラーと労働者階級にたいして、であるが)。その一位は家族の金に対する執着を強くする傾向があるということであり、もう一つは主婦から、昔からの時間をくう家事の数々をうばいとることで、彼女たちのいわば権利を剥奪する傾きがあるということだ。そうしてこの両方とも―つまり金への執着と家事労働からの解放は―彼女たちが仕事を求めて外に出ていく結果を導く。
1961年刊 パッカード著作集 3 浪費をつくり出す人々 270ページ
パッカードの著作、表記こそ古めかしいが、事実は変わっていない。
アメリカ・マスコミと政治家のロシア憎悪言動は戦争を招くと警告する本The War with Russia?著者故スティーブン・コーエン氏の夫人でThe Nation編集者カトリーナ・ヴァンデンホイヴルが、ウクライナ状況について、政府主張に反対する主張を排除する現状を「Intellectual No-Fly Zone」と呼んでいる。知的行禁止区域。
The Jimmy Dore Show
この表現、彼女の発明ではないようで、この題名の記事もある。
Matt Taibbi: America’s Intellectual No-Fly Zone
From left to right, from Chomsky to Carlson, war-skeptical voices are being denounced at levels not seen since Iraq.
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