ミシェル・バチェレ国連人権高等弁務官、中華人民共和国を訪問
2022年6月13日
ウラジーミル・テレホフ
New Eastern Outlook
人類を、ほぼ世界的大惨事の瀬戸際にもたらした「ザ・グレート・ゲーム」の現段階を考慮すると、5月末、ミシェル・バチェレ国連人権高等弁務官の一週間の中国訪問(外見上、全く「人道的」だ)は一体どれほど重要なのだろう?
上記の「重要性」は存在するのみならず、極めて大きく目につく。これは地域の主要当事者、とりわけアメリカが、この出来事に払った様々な注目で裏付けられ、何よりも長年(しかし近年益々強烈に)「人権遵守」(OHR)が、アメリカの地政学上の主敵、今回の場合、中華人民共和国に対する戦いで、極めて重要な道具として使われている。
例えば、大中東地域で、この役割で、自身を人権の主要侵害者であることをほとんど明らかに示しているのが、それら権利の(内容の解釈者であると同時に)ある種の守護者であることは再度指摘されるべきだ。そして今日の政治で、主要当事者たちに偽善は常にあるが、現在の規模は無意識のうちに、この疑問を引き起こす。現在、人類は一体どんな種類の時間を暮らしているのだろう?
まさにミシェル・バチェレの中国訪問という事実は、当該「守護者」陣営に動揺をもたらした。(これまで17年にわたる)長年、主要国際人権機関へのこの国代表の欠如が、人権遵守に関して「北京に隠すべきものがある」有力な証拠として提示された。そして近年、ワシントンは決定的に正確に中華人民共和国が、どこで何を「隠ぺい」しているか指摘した。
この点に関し、アメリカ議会は特に熱狂的だ。この国の政府と「国際社会」、主に中華人民共和国のチベットと新彊ウイグル族自治地域(XUAR)という二つの自治地域の人権「違反」に焦点を合わせることを要求する一連の法律が成立している。中国指導部に承認された新疆ウイグル自治区を訪問するミシェル・バチェレの機会が、彼女自身と彼女が率いる組織が誰かの(さほど誠実でない)政治的ゲームの道具になるのを望んでいない重要な証拠の一つだ。
だが例えば、カシミール問題に関する彼女の以前の行動の一部から逆の印象も作れる。それでも、このミシェル・バチェレの最後の努力としての行動は、インド指導部による、むしろ厳しい拒絶に遭遇した。ちなみに、アメリカの誰かが(法外な熱意、あるいは悪意から)それが、カシミール問題に起因するインド問題の引き金を引くことになりかねないと考えたことを指摘しておこう。これはインドへのアメリカ指導部の対応を混乱させた。
「大量虐殺」という用語は、新疆ウイグル自治区に対する北京の一般政策や、特に(自治地域の重要な経済部門)綿生産に影響を与える局面や、ウイグル過激派戦士の武装集団が実行するテロ行為の見せかけによる極端な分離主義の形式と戦う問題をアメリカが定義するために使っている。
「綿花プランテーションの強制労働」という文言の慎重な一貫性を指摘せずにはいられない。それはアメリカでは、無意識に、南部州における比較的最近までのアフリカ系アメリカ人奴隷労働への連想を引き起こす。だが出版された新彊ウイグル族自治地域プランテーションの写真では、広大な場所には全く誰もおらず、あきらかに「強制」労働で良い金を稼いでいるらしい、まさにウイグル族が運転するコンバインしか見えない。同じウイグル族は(非常に成功裏に)テロ集団と戦っている特殊部隊の中核になっている。
自治地域の包括的開発に、中国指導部が優先的に注意を払っていることは指摘すべきで、例えば、そこでの、これまで20年あるいは30年にわたる経済成長率は、国全体の経済成長を際だって超えている。今年まさにその新彊ウイグル族自治地域でのインフラ計画実施は記録的な量の投資に支援される。
この全てを、試験済みで確実な「制裁」措置を使って、主要な敵国に対し、極めて特定された戦いしているワシントンは考慮に入れない。ここで、戦いは新彊ウイグル族自治地域の人権「問題」とつながっている。上記の制裁は、この自治地域で生産された綿で服を縫おうとしている国際ブランドだけではなく、上記プランテーションでの「強制」労働と無関係な産業も攻撃するのだ。
特に、新疆ウイグル自治区で製造されたソーラーパネルの輸入は困難だ。つまり、アメリカで実に大はやりの「グリーン電力」産業に、この装置を導入する方法にさえ障壁が作られるのだ。5月27日、ドイツ副首相で経済・気候保護大臣のロバート・ハーベックは、ドイツ政府は、新彊ウイグル族自治地域に、この企業が組み立て工場を建設し、約10年操業していた巨大自動車企業フォルクスワーゲンの投資保証を撤回したと発表した。ドイツ大手企業の一社に、実際非常に収益が上がる中国市場を撤退するよう強いるこの決定の背後に本当は誰がいるのか疑いの余地はない。この決定は、ミシェル・バチェレの中華人民共和国滞在中に(全て、新彊ウイグル族自治地域における人権に関する「受け入れられた標準の侵害」という同じ口実の下で)採択された。
5月28日、ミシェル・バチェレの中国訪問と、彼らの客の「訪問を制限し、操作する」中国指導部の「意図」対し、アントニー・ブリンケン国務長官は「懸念」を表明した。しかしながら、アメリカ国務長官は、いわゆる事後に、主要な地政学上の敵国による、この注目に値する行動に気付かずにいられなかったというだけの理由で、彼女の中国訪問に用心深い態度を表明したのだ。
それでも、新疆ウイグル自治区訪問中、ミシェル・バチェレ自身は「制限」の兆候を見なかった。彼女と代表団のメンバーは、プロの「人権擁護運動家」によれば「大量虐殺」が行われている人々のあらゆる部門の代表と会い話をする機会を持った。ミシェル・バチェレの活動に対する中華人民共和国指導部の前向きな姿勢は、習近平中国国家主席とバチェレの(ビデオ)会談で示された。
最後の記者会見で、ミシェル・バチェレは、二つの点に注目した。第一は、新彊ウイグル族自治地域訪問は「調査」ではなく、第二に、参加者構成の承認と、中華人民共和国のこの自治地域住民との会談形式を決めたのは代表団メンバー自身だったと指摘された。
国連人権高等弁務官の中華人民共和国訪問の全体評価として、主な結果は、主要地政学上の敵国と戦うことを目指すアメリカ・プロパガンダ船の側面に相当な大穴を開けたことだ。
ウラジーミル・テレホフは、アジア太平洋地域問題専門家。オンライン誌New Eastern Outlook独占記事。
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寺島メソッド翻訳NEWS
下記記事の翻訳。
耕助のブログ
は、下記The Saker掲載記事翻訳 日本在住の外国人女性、良く観察しておられる。
耕助のブログ Peter Koenig氏の記事Who Owns the World?翻訳。日本語字幕ビデオへのリンクもある。
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