今明らかになりつつあるヨーロッパによる対ロシア制裁の本当の代償
2022年6月20日
ジェームズ・オニール
New Eastern Outlook
先週火曜、ロシアのガスプロム社は、ドイツに送るノルド・ストリーム1パイプライン経由の天然ガスの流れを、以前計画されていた水準より40%削減すると発表した。この制約は修理に必要な装置の遅れが理由の正当なものだった。この遅れは、今年二月、ロシアのウクライナ侵略後、全般的制裁の一環として、ロシアとその企業に制裁が課された結果、ガスプロムに直接課された制約に帰因する。この発表の早速の影響でヨーロッパのガス価格は二桁急上昇した。ノルド・ストリーム1の必要な機械の一部を修理する上での問題は、ロシア所有権ゆえ、カナダ政府が必要な機械のドイツ返送許可を拒否したためだ。
ロシア・ガス減少の影響は、ロシアのプーチン大統領も発言した。彼は「ロシア・エネルギー資源の拒否は、ヨーロッパが世界で最も高いエネルギー経費を負担する地域になることを意味する」と言った。プーチンはヨーロッパは「経済学の基礎の法則を忘れたか、それらを無視するのを好んでいるように思われる」と発言した。ヨーロッパ人が今学んでいるのは苦い教訓だ。
ヨーロッパは、とうとうロシアに対する制裁実施に対する代償を支払い始めたように思われる。ヨーロッパ人が、無視すると決めたのは、基本経済学の単純な教訓だった。不可欠な品物の減少は、必然的にその商品が更に高くなる結果になる。ヨーロッパ市民にとって不愉快な結果になることは彼らの計算にはなかったように思われる。指導者の愚かさに対し支払うべき政治的代償があるのは不可避に思われる。今冬凍結する可能性に直面して、ヨーロッパ市民が冷静さを維持することはありそうもない。初めてのことではないが、ヨーロッパ指導体制が自国民の権利とニーズよりアメリカを尊重したことに対して支払う政治的代償があると予想できる。
おそらく、ロシアに課した制裁の最大の思いがけない結果は、ヨーロッパ政治指導部による判断の誤りだ。ロシアで政権転覆を実現するべく狙ったロシア経済を急降下に追いやるどころか、まさに反対のことが起きたのだ。三ヶ月前、アメリカ・ドルに対し100以上にまで下落したロシア・ルーブルは、一ドルに対し50ルーブルの為替レベルを達成するほど回復した。ルーブルは今や世界最強通貨の一つだ。その力そのものがロシア政界における懸念要因になっている。
ロシア経済の破壊を引き起こすどころか、全ての主要輸出品は海外市場で記録的水準の収益を達成している。ロシアの貿易黒字は今年最高記録に達し、生産可能な全ての石油とガスを売っている。自身の行動の結果を味わっているのはヨーロッパ経済だ。これは食料の記録的価格も含む。今やヨーロッパを含め、世界の多くの地域で飢饉が起きる重大な危険がある。それは自分たちの行動の帰結を熟慮せず、アメリカの要求に忠実に従ったヨーロッパの従順な政治指導者には予想できなかった結果なのだ。
アメリカの要求をドイツが無分別に遵守したもう一つの結果が、100億ドルも出費した後でのノルドストリーム2プロジェクト中止だ。今やドイツはエネルギー供給不足という、その決定の本当の代償に気がついている。本当の悲劇は、このどれも必要ではなかったことだ。それは純粋にドイツが闇雲にアメリカの要求を遵守した結果だ。今彼らは様々な点で、遵守に対する代償を支払っている。ロシアは今ドイツに代償を支払うよう強いている。古い諺どおり、ベッドを作ったのだから寝なければならない。自業自得だ。
ドイツのエネルギー経費急騰は輸出競争力に影響を与えるだろう。ヨーロッパ製品は常に高価だったが、対処は可能だった。供給を制限した後のエネルギー供給の莫大な経費は必然的に彼らの国際競争力を潰している。ウォール・ストリート・ジャーナルは、一部の生産者が世界のあちこちで、価格競争力に直面し、工場閉鎖を強いられていると指摘した。ウォール・ストリート・ジャーナルは、ヨーロッパの天然ガス価格は(それ自身到底低経費経済ではない)アメリカよりも三倍以上高いと指摘した。
典型的にアメリカを本拠とする報道機関として、ウォールストリート・ジャーナルは、ヨーロッパ産業の崩壊はロシアのせいだと読者に信じて欲しいのだ。それはばかばかしい主張だ。価格上昇は、アメリカとヨーロッパがロシアに押し付けた制裁が直接の原因だ。彼らは自分以外に責める相手はいない。避けられない結果として、今冬、ヨーロッパはエネルギー供給を配給制にしなければならないのだ。
それも同様に、ばかばかしい主張だが、ヨーロッパ人はロシアを非難する誘惑に駆られるだろう。ヨーロッパ人に迫りくる欠乏は、明らかに、全て自国民の福祉より、アメリカへの服従を優先した政治指導者の政治選択が原因だ。決してロシアのせいではない。
この狂った政策における一つの正気な発言は、いささか驚くべきことに、ヘンリー・キッシンジャー元国務長官のものだ。最近の世界の経済・政治指導者ダボス会議で話して、キッシンジャーは明らかにアメリカ介入の結果であるウクライナ戦争の速い終了を強く促した。そうはなるまいが、たとえ耳をかたむけられたにせよ遅すぎたかもしれない。
ロシアは既に他の場所として、東方、インドと中国にエネルギーを向け直し始めている。それは、世界の中心が、過去300年間支配してきた、アメリカ、イギリス、ヨーロッパ・クラブを着実に離れつつあるというロシア側の認識を反映している。
これは、簡単には起きがたい変化だ。
ジェームズ・オニールは、オーストラリアを本拠とする元法廷弁護士で地政学専門家。オンライン誌New Eastern Outlook独占記事。
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植草一秀の『知られざる真実』
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From peacemaker to warmonger: Tragic downfall of Ukraine's Volodymyr Zelensky
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