« リトアニアを巡って第三次世界大戦を戦おう:言説のマトリックスの端からのメモ | トップページ | ウクライナにはCIA要員が、うようよいると認めた欧米当局 »

2022年6月27日 (月)

カリーニングラードを封鎖するNATO

2022年6月23日
クリストファー・ブラック
New Eastern Outlook

 ウクライナにおけるロシア作戦の成功で、我々はNATOが、彼らの戦略上の敗北に対応して、彼らの攻勢を、ロシアに対する強烈な経済とプロパガンダ戦争のみならず、バルト地域におけるロシアの立場へと移行ことを懸念しなければならない。

 6月20日、NATO加盟国リトアニアにより、カリーニングラードに課され、彼らの非合法な「制裁」を実施するという口実で、欧州連合に承認された封鎖は、封鎖を終わらせるためのロシアによる即座の行動を招く、ロシアに対する直接的戦争行為であるが、しばらく公然と表現されているNATOの論理によるものだ。

 2016年2月、アメリカにあるNATOシンクタンク大西洋協議会は「危険な状態にある同盟」という報告書を公表した。

 その報告書で、彼らはこう述べている。

 「ロシアのクリミア半島侵略と、東ウクライナの分離主義者に対する支持と侵略はヨーロッパの冷戦後の和解を実質的に破棄した。ロシアは今事実上の戦略敵だ。プーチンがロシアをNATOとの衝突進路に置きかねない国際的動態を作ったので、更に一層危険なことに、脅威は実存的な可能性がある。バルト諸国におけるこの衝突の中心には、かなりの数のロシア語話者住民がいる」

 文書は、NATO諸国は、第二次世界大戦の終わりに確立したカリーニングラードに対するロシアの主権を認めず、ロシアがヨーロッパの冷戦和解を「破棄した」ことを示す言葉を使っている。

 NATOは絶えず、この地域におけるプレゼンスを強化している。米軍第2騎連隊兵士が率いる多国籍戦隊がポーランドに配置され、今やカリーニングラードとの国境から遠からぬ場所に第82空挺師団も加わっている。今カナダ軍部隊が他のNATO軍とともにラトビアのリガ付近にいる。この部隊は「可能性があるロシア攻撃を阻止する」ためを装うNATOの(強化された前方プレゼンス)の一部で、6月19日、アメリカ雑誌ポリティコは650人のドイツ兵が他のNATO部隊に合流し「ロシア攻撃から」守るため今リトアニアにいると報じた。

 これはもちろん、まさに「危険な状態にある同盟」報告書で、NATO軍をポーランドに配備するよう要請した同盟の要求と一致している。

 最近ポーランドに配備されたアメリカ第82空挺師団へのバイデン訪問が、本当にウクライナでの出来事を狙ったものか、カリーニングラードでロシアに対し、もう一つの脅威を作るためなのかどうかと疑わざるを得ない。この師団の動きと彼らの目的を報告することに対する報道規制は異様に秘密だ。これは、3月10日インタビューでの、ポーランド軍前指揮官ワルデマル・スクシプチャク大将による声明に関連づけられると推測できる。

 この地域は歴史的にプロイセンとポーランドに属するが「飛び領土は1945年以来ロシア占有下にあり」「我々はロシアに占拠されている領域について論争する権利がある」と強調している。このような主張には歴史的基礎がないが、この発言は突然現れたものではない。それは明らかに、ロシアの反応を引き起こし、ロシアは「外国領を占拠して」いるという考えに慣れた欧米の人々を引きつけ、欧米大衆をこの地域を占領する動きを支持するよう操ることを意図したものだ。

 「まずカリーニングラードに対処することは必須だ」

 いくつかのアメリカ・シンクタンクが占領を主張し、もし同盟が、ロシアから現地と優位を奪い、ロシアのバルチック艦隊の母港を使いたいなら、この地域の占領は重要だと述べている。

 彼らはカリーニングラードを侵略するには、NATOは「肝を据え」なければならないと強調し「ロシア・プロパガンダが「母国の神聖な領土」を吹聴し、ロシア指導部が核報復で威嚇するだろう」と指摘している。

 この報告は、アメリカのシンクタンクが、ロシアのカリーニングラードを紛争で「無力化する」よう提案した初めてのことではない。

 2017年、ランド社はカリーニングラード紛争の可能性に関する報告を公表し、ロシアがカリーニングラードに対する攻撃を「ロシア本土に対する攻撃」として扱うかどうか問うている。

 ロシアがウクライナで作戦を始める、わずか数日前、アメリカのB52H戦略爆撃機がロシアのバルチック艦隊カリーニングラード基地の爆撃シミュレーションを行った。以前、ロシアとNATO航空機は、この地域領空で遭遇したことがあり、一つの事件では、ロシアのジェット戦闘機が、セルゲイ・ショイグ国防大臣がその区域を飛行した際、彼が搭乗している飛行機の近くに接近したスペイン空軍航空機を追い払ったことがある。

 3月10日、同じジェームズタウン財団が再び、アメリカとNATOが、住民の間で不穏状態を起こすことを狙って、リトアニアとポーランドで道路と鉄道リンクを閉鎖し、そこへの天然ガス・パイプラインも切断し、カリーニングラード州封鎖から始め、占領すべきだと述べた。直接攻撃が続く可能性がある。

 3月28日に国防総省はこう発表した。

 ドイツ政府との調整で、6機の米海軍EA-18Gグラウラー航空機が「即応能力を強化し、NATOの集団防衛姿勢を強化し、我々の同盟国とパートナー国と更に統合航空能力を強化する」目的で、ドイツのシュパングダーレム空軍基地に到着予定だ。

 文書にはこうある。

 「これらグラウラーは電子戦任務飛行が専門で、一連のジャミング・センサーを使って敵レーダーを混乱させ、敵が航空防衛作戦を行う能力の抑制を大いに支援する。」

 「彼らはウクライナのロシア軍に対抗して配備されていない。彼らは完全に東側面で、NATOの阻止と防衛力を強化する我々の取り組みに沿って配備されている。」

 これら航空機は、明らかに、対カリーニングラード作戦の場合、ロシア航空防衛を抑制するのに有用で、ロシアにとって直接の脅威を意味する。

 これら全てのアメリカとNATOシンクタンクは彼らの侵略に関する考えを「ロシアの敵対的計画」に対する応答として粉飾しているが、本当の理由は、ロシアの北海と大西洋へのアクセスを守る主な海軍基地からロシアを排除し、サンペテルブルグ市へのアプローチを脅かし、支配し、市と、それを通す輸出と輸入の封鎖だ。第二次世界大戦でのナチによるレニングラード包囲攻撃の記憶が即座に心に浮かぶ。

 ウクライナにおけるロシア作戦の成功と、それに対し、NATOが経済戦争とプロパガンダ以外対応できず、ロシアのガスと石油供給に対する支払い拒否で、これから起きるヨーロッパの危機に対し、彼らは自分で引き起こした危機の責任をロシアになすりつけようとすると予想できる。彼らの計画で、カリーニングラード州は明らかに焦点なのだ。

 1日後、タスが報じている通り、ロシア外務省が反応した。

 「6月21日、マルクス・エデラー駐モスクワEU大使がロシア外務省に召喚された。カリーニングラード地域と他のロシア連邦との間の貨物通過に対する一方的な対ロシア制裁の実施に関し、EU代表者に強硬な抗議が表明された。EUの対応する法律、政治義務に違反し、緊張のエスカレーションを招くこのような行動は承認し難いと指摘した」とロシア外務省は述べた。

 「我々は即刻カリーニングラード通過の正常機能を復活させるよう要求した。さもなければ報復措置が行われる。」

 カリーニングラードは海から供給できること、そうすることの困難さや、封鎖の侮辱について、ロシアや他のメディアにいくつか初期的意見があるが、それは私が述べたように、リトアニアにる戦争行為であり、「報復措置」として他にはあり得ない、ロシアによるリトアニアに対する直接行動の可能性を高める。この封鎖はロシアに対して行われている一般的な経済戦争とは異なる。これはNATOによる主要ロシア都市と軍事基地包囲攻撃の始まりであり、サンペテルブルグに対する直接の脅威だ。それは容認できない。

 もちろん危険は、この封鎖がNATO加盟国を攻撃するようロシアを挑発するのを狙っていることで、NATOがNATO条約第5条を発動させるので、ロシアは攻撃しないと言っている。だが、ウクライナへの武器供給だけでなく、ロシアの都市にこの封鎖を押し付けるため、リトアニアを使って、NATOに攻撃されており、全て白紙だとロシアは正当に主張可能だ。どうなるか見よう。

 NATOが、ソビエト社会主義共和国連邦を押しつぶすため作られたことを我々は知っている。その創設は、NATOが1999年にユーゴスラビア(と中国)を攻撃した時、成功裏に脇へ押しやった国際連合の否定だった。それは彼らの独立を維持しようとしている世界の全ての社会主義諸国や、資本主義諸国や、混合経済や、ロシアや中国や、その主権と自身の運命を決定する民族の自由を維持しようとする全ての国に対する、欧米資本の武装した握りこぶしだ。NATOギャングの無謀な犯罪的侵略が、カリーニングラード封鎖の愚行が我々を、それに導きかねない世界大戦を引き起こす前に、世界がそれに抵抗できるよう、正体をあばくのは我々の仕事だ。

 クリストファー・ブラックはトロントを本拠とする国際刑事専門弁護士。彼は多くの注目を集める戦争犯罪訴訟で知られており、最近小説「Beneath the Clouds」を出版した。彼は、国際法、政治や世界の出来事について評論を書いている。オンライン誌「New Eastern Outlook」独占記事。

記事原文のurl:https://journal-neo.org/2022/06/23/nato-blockades-kaliningrad/

----------

 櫻井ジャーナル

米国の手先として中露との戦争の準備を進める日本で憲法改定の動きが強まる必然

 ハワード・ジンが語った通り、ゲーリングがドイツ人に戦争を支持させただましのテクニック、参院選挙でそのまま通用する悲しさ。

ハワード・ジン「歴史の効用とテロリズムに対する戦争」を語る 2007/3/31 該当部分だけ複写する。是非全文お読み願いたい。

 ゲーリングは言っています。「もちろん国民は戦争を望んではいない。なぜ畑にいる貧しいまぬけが、自分の命を戦争にさらそうなどと望むだろう?だが、結局、政策を決定するのは国家指導者だ。国民はいつでも指導者達の命令に従わせることができる。連中に、我々は攻撃されているのだと言って、平和主義者は愛国心に欠けると非難するだけで良いのだ。これはどこの国でも同様に機能する。」

 私には最後の行が興味深いものでした。「これはどこの国でも同様に機能する。」つまり、ここで、彼らはナチスです。あれはファシスト体制です。アメリカはデモクラシーです。けれども、自分の国を何制度と呼ぼうと、これはどこの国でも同様に機能するのです。自分の国を全体主義国家と呼ぼうと、あるいは自国をデモクラシーと呼ぼうと、同じように機能するのです。つまり、国家指導者達は国民を、丸め込んだり、無理強いしたり、唆したりして戦争をさせることができるのです。国民を脅かし、国民が危険な状態にあると言い、もしも支持しなければ、非愛国的と見なされるぞと国民を脅迫し、無理強いして。そして、これが9/11直後にこの国で本当に起きたことなのです。これがブッシュがイラクの大量破壊兵器という妖怪をよみがえらせた直後に起きて、しばらくの間アメリカ国民がこれを支持するようにさせたわけです。

« リトアニアを巡って第三次世界大戦を戦おう:言説のマトリックスの端からのメモ | トップページ | ウクライナにはCIA要員が、うようよいると認めた欧米当局 »

アメリカ軍・軍事産業」カテゴリの記事

NATO」カテゴリの記事

ロシア」カテゴリの記事

ウクライナ」カテゴリの記事

コメント

どの国にも鼻息の荒い好戦的な人たちや国粋主義の人たちがいて、盛んに危機を演出し敵意を煽り、またいつの時代にも、金になると踏んで尤もらしい国防を説く者もいる。しかしそんな一部の人たちを除けば殆んどの人は、暮らしも人の絆も破壊する戦争など望んでいません。

歴史を紐解けば、人の心に不安や猜疑心を芽生えさせ、不穏な排外主義に駆り立てていくものは、経済と社会の行き詰まりであることに思い至ります。しかしエネルギーも資源も食糧も海外依存、しかも少子高齢化が止まらない島国が、自ら破滅を招くような挑発合戦など望んではならないことは明らかです。

今や経済や金融、貿易や外交の枠組みが変貌し大転換を迎えつつある世界の現実をこそマスコミは伝えるべきなのに、足踏みし後戻りを始めたかの如く、過去の巻き戻しのような報道が日々繰り返されるばかりです。
それでも、この長い閉塞の根茎を詳らかにし現状を変えようと熱く訴える人がいる。その声が、どうか18歳を迎えた若い方々の元に届くことを心から願います。

 NATOは、建前としては防衛同盟のはずですが、現在では、自ら対外侵略をする組織に変貌しています。
 米英を中心とするNATO侵略組織が、現在なお、肥大化して続いていることは、空恐ろしいことです。
 NATOは、軍産複合体の金儲けのためだけにあります。
 世界中の人々の、不幸の源です。

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

« リトアニアを巡って第三次世界大戦を戦おう:言説のマトリックスの端からのメモ | トップページ | ウクライナにはCIA要員が、うようよいると認めた欧米当局 »

お勧め

  • IWJ
    岩上安身責任編集 – IWJ Independent Web Journal

カテゴリー

ブックマーク

最近のトラックバック

無料ブログはココログ