NATO拡大に反対してトルコが実現しようとしていること
2022年5月31日
Salman Rafi Sheikh
New Eastern Outlook
NATOの内部分裂は、新しい現象ではなく、トルコのモスクワとの結びつきと、アメリカやNATOの他の国々との緊張が、その主な表れだ。スウェーデンとフィンランドという北欧二カ国を加えててのNATO拡大に対する最近のトルコの反対は、またしても、この組織が内的に統合された家からは、ほど遠いことを明らかにする。それでも、異議の背後にあるトルコの中核的目的は、地政学的というより政治的だ。言い変えれば、一部の欧米メディアの報道とは違って、NATOの主要目標が、常にモスクワである限りにおいて、NATO内の問題は、確実にロシアに有利だが、トルコの反対は、ロシアとのつながりと無関係だ。実際、ロシアのウラジーミル・プーチンは、この二国が加われば、予想すべき論理的措置に過ぎないロシアの対抗策をとると強調したが、両国のNATO加入の重要性を実際軽視した。
そのため、NATOを内部から危険にさらす、ロシアのいわゆる「秘密武器」であるどころか、アンカラは、近年、複数回NATO拡大を支持している。疑問は下記だ。アンカラはなぜ今反対しているのか?トルコの反対は、NATO拡大支持と引き換えに、欧米の保証を望む若干の政治的利益に結びついている。結果的に、アンカラは国益に従って、合意を基本とするNATOモデルを、自身の利益のため利用しているのだ。
何よりも、トルコは欧米がクルド人に対する政策を変えることを望んでいる。スウェーデンとフィンランドに対するトルコの異議申し出の根本的に重要な理由は、両国が何年も守っている特定クルド指導者に対する支持だ。5月16日、スウェーデンとフィンランド両国がPKKとギュレン主義集団に関係する19人の人々を引き渡すトルコの要請を拒絶した。トルコは従って、スウェーデンとフィンランドのNATO加盟申し出を、何年もの間支配し、排除しようと苦闘している二つの集団を標的にする有用な機会にしたいと望んだのだ。
二つ目は、より微妙ながら、さほど言及されず論じられない、トルコの異議の一部はアメリカの譲歩を引き出す、特にF-35戦闘機計画にトルコを含ませるアンカラの狙いだ。
S-400ミサイル防衛システムを購入するロシアとアンカラの取り引き後、アメリカはアンカラをF-35プログラムから追放した。その時以来、アンカラは常時、外交上、このプロジェクトにアンカラを含めるようアメリカを説得するため、できる限りのことをしてきた。アメリカがウクライナ(最近、米国議会はウクライナのために400億米ドルを承認した)にロシアと全面的紛争状態で、NATOを強化し、拡大するためワシントンが非常に熱心に進行中の問題を利用している今、トルコは中核的国益に役立つ形で、この危機を利用しようとしているのだ。
アンカラをF-35プロジェクトから追放するのに加え、アメリカはトルコ防衛産業に制裁を課した。これら制裁は、ロシア軍需産業が拡大し、アメリカ/NATOに挑戦するのを阻止するため制定された2017年の法律「敵対者に対する制裁措置法」(CAATSA)の下で課された。
トルコの反対は、スウェーデンとフィンランド両国に対するアメリカの支持と真っ向から対立する。5月19日、ジョー・バイデンは、ホワイトハウスで、スウェーデン、フィンランド両国指導者を歓迎し「アメリカが全面的、全体的、完全な支持」を申し出た。
現状、アメリカが実際に、その支持を拡張し、北欧の両国をNATOに加盟させるために克服すべき重大な障害は、トルコに拒否できない取り引きを提供することだ。だがアメリカは100機のF-35戦闘機という取り分に対するトルコ要求を受け入れるだろうか? ウクライナで継続中のロシアとの紛争を考えれば、これが起きることはありそうにない。
特に、ウクライナにおけるロシア軍事行動の始まりから、アンカラが果たしてきた役割は、ワシントンがアンカラ要求を受け入れるのを極めて困難にする。アンカラは単にロシアに対するアメリカ/EU制裁に加わるのを拒否しただけでなく、この問題に平和的解決を見いだすため、複数回ロシアとウクライナ当局者間会談を主催した。この役割は、しかしながら、アメリカ/EUにおける、反米/反西欧地政学だった。
一方、これらの停戦を実現し、永続性がある結果をもたらすための交渉失敗は、トルコが実際、ロシアに対する戦争を継続するため、プロセス全体を破壊したと言って、特定NATO加盟諸国を非難するよう仕向けた。先月トルコ外務大臣が「一部NATO加盟諸国はウクライナ戦争が終わることを望まない」と、ずばり言った。
言い換えれば、NATOでのトルコの重要性と役割は、F-35プログラムからの追放とアメリカ制裁以降、非常にわずかなものだった。この文脈で、反対する特権を使うことによって、NATO拡大を阻止し、トルコは実際、この組織の他の国々に、鍵となる地政学当事者として同盟内での重要性を認めるよう強いるべく、自己主張しているのだ。
この証拠は、トルコの政治経済学にも関係している。トルコ経済は危機の瀬戸際にある。インフレ率が空前で、4月には、ほぼ100パーセントに達し、史上最高だ。来年は選挙が予定されている。そのため、エルドアンにとっては、次の選挙に勝つため、欧米から譲歩を引き出すこと、特にアメリカに制裁解除させることが重要だ。
トルコの親エルドアン・メディアから既製の支持が得られるので、政権は欧米から多少の譲歩を引き出せば「欧米を屈服させる」アンカラ能力の成功を見せつけることができる。トルコでは、既にエルドアンは、欧米を直視することができる「絶対的指導者」として描写されている。もし欧米がエルドアンの関心の一部に対応することに同意すれば、2023年選挙に先行して、反エルドアン大同盟を築くべく結集して備えている野党に対し、彼には大きな余裕ができるだろう。
従って、アンカラには、NATO内で切り札を使う複数の理由があるのだ。欧米主流メディアの習慣的な単純化され過ぎた「ロシアの男」としてのエルドアン描写と違って、アンカラの反対によって起こされたNATO拡大の進行中の問題は、この同盟内におけるトルコ自身の疎外感に結びついている事実は依然変わらない。
Salman Rafi Sheikhは国際関係とパキスタンの外交、国内問題専門家。オンライン誌New Eastern Outlook独占記事。
記事原文のurl:https://journal-neo.org/2022/05/31/what-turkey-tries-to-achieve-by-opposing-nato-s-expansion/
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