なぜトルコはシリア行きロシア航空機に対して領空閉鎖したのか?
2022年4月30日
ワレリー・クリコフ
New Eastern Outlook
4月23日、ラテンアメリカ歴訪中に、メヴリュット・チャヴシュオール外務大臣はトルコがシリア行きのロシア軍機と民間機に対し領空閉鎖したと発表した。だが彼は、この決定はトルコが反ロシア制裁に参加したことを意味しないと補足した。単にモスクワとアンカラ間で締結した国際航空路協定が3カ月に有効なだけだったためだ。4月末に期限が切れるが、レジェップ・タイイップ・エルドアン大統領が最近ロシアのウラジーミル・プーチン大統領に通知した通り、トルコは更新を計画していない。ロシアが軍隊をシリアに輸送するためトルコ領空を使わないことに両国は同意したとチャヴシュオール外務大臣が付け加えた。
アンカラのこの決定は、明らかに、ここ数ヶ月間に起きた様々な状況の重大な変化に関係している。
これらの一つは、イラクのクルド人武装集団だけでなく、シリアのクルド人も対象にしたトルコの新たな軍事行動だ。アンカラは明らかに、何らかの方法で、モスクワがその作戦の邪魔をするのを望んでいない。
この作戦、クルド人に対するアンカラの第三次特別作戦は、明らかに、アメリカが支援するシリア民主軍(SDF)に忠実なクルド部隊に向けられており、ワシントンの要請で行われていないことは指摘する必要がある。明らかに、トルコの軍事的野望を抑える試みで、ワシントンは何らかの反ロシア措置をとるよう強いて、その結果、トルコはロシアの軍用と民間航空機に領空を閉鎖したのだ。
アメリカ自身も、現地での攻勢を強化することを狙ってシリアでのロシア軍事行動を制限したいと考えており、ロシアとの対決で「第二戦線」を開こうと狙っているように見える。この目的で、4月23日、アメリカは、クルド支配下の石油をシリア領域から輸送するためのタンクローリーと「軍需物資や技術補給トラックの35台の軍用車隊」を送った。4月25日、もう一つのアメリカ軍用車列が、ハサカ県マリキヤのハラブ・アル・ジル飛行場に到着した。シリア・アラブ通信社(SANA)記者情報提供者によれば、4台の米軍装甲車両に守られた、箱やセメント板や発電機を積んだ36台の車で構成されていた。
シリアとの紛争での立場を強化しようとして、ワシントンは同盟国イスラエルにシリア領に軍事攻撃を開始するよう奨励したように思われる。4月27日朝、ダマスカス郊外の基地が1カ月で三度目のイスラエル・ロケットで攻撃された。
ワシントンは明らかに、モスクワが、ウクライナでの特別作戦のためフメイミム空軍基地とタルトゥース海軍基地からロシア軍とシリア人志願兵を配置転換するかもしれないと懸念している。
要するに、ロシアに対して領空閉鎖するトルコの決定が自身の利害とワシントンの利害両方と全く矛盾しないのは明確だ。
ここ数ヶ月、トルコは、ワシントンやモスクワの反感を買うことで、自身の利害関係に打撃を受けるのを避けようとする試みで綱渡りしていた。モントルー条約を遵守し、黒海でのNATOとロシア軍間の衝突を防ぐためできる限りのことをしているとモスクワに、あえて示すよう努めてきた。4月26日、トルコは二基目のロシア製S-400防空システム購入について、モスクワとの協議の新しい交渉を始めさえした。協議はトルコ防衛産業会長イスマイル・デミールが率い、彼は「アンカラはウクライナでの状況のせいで、武器供給問題に関しロシアとの協力を中止したいと思っていない」と宣言した。
アゾフスタリ製鉄所の危機を解決し、特に「そこに閉じ込められた文民と軍人」を避難させるよう、関係当事者全員にアンカラが強く促していることも指摘すべきだ。この動きは、明らかに自然に出た身振りや、人道的配慮ではない。結局、トルコは他のNATO加盟諸国ととも、キエフ体制に武器や他の軍装備品を供給し続けている。これらには既にロシア領内攻撃に使われたバイラクタルTB2ドローンも含まれる。
ロシア軍、ドネツク人民共和国軍/ルガンスク人民共和国軍によりアゾフスタリ製鉄所に閉じ込められた戦士の中には、トルコやヨーロッパからの何百人もの傭兵や、ドンバスでキエフ軍事行動を指揮するNATO加盟諸国幹部教官がいることが今や知られているので、アンカラの関心は理解できる。従って彼らがロシアの手に落ちたり、彼らの存在が国際社会に知られたり判断されたりして、モスクワが入手している文書証拠で既に明確だったこと、つまりウクライナでの戦争を煽りたてる上で、ワシントンとブリュッセルが演じた挑発的役割が裏付けられるのは明らかに「欧米全体」の利益にならない。それが、これまで数日、現状を調整する上で、欧米がアンカラに、ずっと大きな役割を許した理由だ。
シリア行きロシア航空機に対するトルコ領空閉鎖決定は、確実にモスクワとアンカラ間関係の進展に影響を与えるだろう。ロシア側は実に多くの方法で報復が可能だ。例えばトルコからの果物と野菜輸入を制限したり、あるいはトルコを訪問するロシア人観光客数を制限したりできる。結局、トルコ国家予算の18%がロシア観光客由来で、現在の経済的困窮という条件のもとで、この収入源を失う余裕はない。あるいはモスクワは、この地域で、主要ガス中枢としてウクライナに取って代わろうと、アンカラが推進しているトルコ・ストリーム・プロジェクトに対する処置をとることも可能だ。中央アジアを含め、トルコに対する影響力源はロシアには他にも色々あり、アンカラは、この事実を十分に意識していて、近年ロシアのサポートを失うのを避けるために見事な綱渡り芸をしている。
シリア行き代替航空路を見つけるのに、ロシアには何も問題ないことも想起すべきだ。モスクワは、軍装備品を含めあらゆる必要な供給を、カスピ海と、ロシア軍と民間航空機が、1日24時間、シリアでの二国間共同軍事行動と関係する目的のため領空使用を可能にする用意があるイランを経由して、輸送することが可能なのだ。
ワレリー・クリコフは政治評論家。オンライン誌New Eastern Outlook独占記事。
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偽情報管理委員会?なる奇妙な組織を作りたくなる気持ち、わからなくもない。下記のような正論をFoxニュースで言われてしまえば、政府のプロパガンダ効果は激減するだろう。
Tucker: This is why Democrats are taking us to war with Russia
西谷文和 路上のラジオ 水道橋博士に対する松井のスラップ訴訟はひどい。テレビ・芸能界が太鼓持ちだらけになる締め付けの仕組みを生々しく語るのにびっくり。
「『IWJ_Sokuho』露ラブロフ外相、インタビューで『ヒトラーにユダヤ人の血』『最も過激な反ユダヤ主義者はユダヤ人』と発言し猛反発!」
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