国際制裁の中のロシア休暇シーズンとタイ観光産業
2022年5月25日
ドミトリー・ボカレフ
2020年に世界に押し寄せたCOVID-19大流行は、経済の全ての部門に打撃を与えたが、観光事業は、おそらく最も強い打撃を受けた。それが直接、国際的な行き来の自由に依存し、なおかつ大半の国州とって戦略上重要な産業ではないので、検疫隔離制限で、観光事業は最初苦しむ。だが外国人観光客が重要な収入源である国もあり、国境閉鎖による観光事業の減少は、彼らの経済に深刻な打撃を与えている。
例えば、タイ王国は、東南アジアで最も人気が高いリゾートが、いくつかあり、そうした国の一つだ。2019年、観光客は、タイに、620億ドル以上、GDPの約20%をもたらした。2019年にタイを訪問した約4000万人の外国人のうち、140万人以上がロシアからで、タイに観光客を送る国として、ロシアが四位であることは指摘する価値がある。この国は、ロシア人にとって、大好きな目的地の一つなのだ。
2020年に、コロナ大流行が発生し、人々はタイに旅行するのをやめ、タイは訪問者を迎え入れるのをやめ、4月から2020年9月まで、タイの外国人観光産業収入レベルは、ほぼゼロだった。タイでは経済危機が進み、集団抗議活動が勃発した。
タイは観光事業なしで済ませられないことを悟り、2020年末、タイ政府は長い隔離期間を経験するのをいとわず外国の休日を楽しむ人には入国を認めた。
2021年中に制限は次第に撤廃された。特定の国のワクチン接種を受けた人々は年の終わりまでに国内での検疫隔離なしでタイ訪問を許された。もちろん、2021年には、観光事業は、世界的大流行の以前のような多くの金をもたらさなかったが、ロシアからを含め観光客の流れは増え始めた。
2022年1月、しばらくの間、ロシア連邦はタイ観光客数で、一位だった。一月に合計23,000人のロシア人がタイを訪問した。毎月の観光客全体の約20%だ。2月には、17,500人のロシア人がタイを訪問した。
2022年2月末に、ウクライナにおけるロシアの特別軍事作戦が始まり、未曾有の欧米西経済制裁も始まった。これはロシア航空会社にリースされた航空機のための世界中の空港における遅延も含まれる。結果として、一部のロシア航空会社が外国に飛ぶのを拒否し始めた。
2月の出来事の間、外国で立ち往生した多くのロシア人観光客が、彼らを国に戻すための特別便が手配されるのを待って、長期間、訪問国に閉じ込められる結果になった。
ルーブル変動、多数のロシア銀行がSWIFT国際決済体系から切断されたこと、ビザとマスターカードカードの停止発表は国外の多くのロシア人を現金不足にし追加の困難をもたらした。
このすべての結果、2022年3月始め、数千人のロシア人がタイで「閉じ込められた」。タイ当局は、ビザの無料延長を提供し、ホテル料金を下げ、金融取り引きのためにロシア人に中国のユニオンペイ支払いを提供して、観光客を支援すると決めた。
タイ、はアメリカの主要な東南アジア同盟国の一つで、ロシア制裁推進の主要創始国であるにもかかわらず、ロシア-タイ関係を損ないかねない制裁をバンコクはロシアに課さず、2022年3月に始まる48カ国を含むロシアに非友好的な国のリストには加えられなかった。紛争のエスカレーションは、コロナウイルス大流行から回復しつつある世界全体にとって好ましくない結果をもたらしかねず、そのためウクライナでの紛争は外交的手段を通して解決されるべきだと論じて、タイ指導部は立場を正当化した。
今状況は次第に安定しつつある。ルーブルは横ばいになり、リースでない飛行機を持ったロシアの航空会社は外国に飛んでいる。概して、ロシア連邦は、ロシア人がタイのリゾートで休暇を過ごすのをやめない形で制裁に抵抗している。例えば、ロシアからタイへの便は、タイ所有の飛行機や、アラブ企業によっても運行されている。ドバイ(UAE)あるいはドーハ(カタール)経由のモスクワ・プーケット便は毎日利用可能だ。そのため、制裁にもかかわらず、多数のロシア観光客が再びタイに飛ぶ準備をしており、タイは彼らを歓迎する準備をしている。更に、ロシア観光客到着の著しい増加に備えている。
2022年4月末、モスクワで、ロシア観光産業代表とタイ国政府観光庁(TAT)の会議があった。会議は、コロナ流行前そうだったものに、より近い条件にして、できる限りタイ入国検疫隔離制限を減らすタイ指導部の決定に焦点を当てていた。この催しで話した、TAT局長代理Ravivan Sangchanは、タイはロシア人観光客を期待しており、全ての客を歓迎すると述べた。TAT代表は、タイとロシア間で既に、ロシアのミール・カードをタイで支払いに使うことを可能にする交渉が進行中だとも述べた。催しの参加者たちは、ロシアからタイへの観光客の流れが、間もなく2019年の水準に戻るという希望を表明した。
2022年5月1日、タイの検疫隔離制限に対する上記変更が施行された。今入国時に、ワクチン接種を受けた人々はワクチン接種証明書を提出するだけで、予防接種をしていない人々は、PCR検査結果を提出する必要があるが隔離期間は不要だ。
上の情報から、いくつか結論を引き出すことができる。第一に、西側諸国によってロシアに課された大規模経済制裁は、依然それを企画した人々が望んだ効果をもたらしていない。国内政治危機や広範な不穏状態や、国家破壊を含め、ロシアで最大の社会的緊張を引き起こすのに十分な国民生活水準の低下。タイのリゾートで休日を楽しむロシア人の数から判断して、このレベルのロシアの社会的緊張はまだ遙か先のことだ。第二に、ロシア連邦を完全隔離し、再び「鉄のカーテン」で世界から区切るのは余りに困難だと分かったのだ。今の多極世界では、ロシアは興味を持った地域とのやりとりを維持する方法を見いだすことが可能だった。第三に、欧米、特にアメリカの影響は、アジアの同盟諸国にとってさえ、もはや無限ではない。上記のとおり、タイは東南アジアでアメリカの主要同盟国の一つだ。だがバンコクは、ワシントンのために、国益を損なうことはしなかった。タイはコロナウイルス問題の後、緊急に経済を再構築する必要があり、観光産業の復活なしでは、それは不可能だ。ロシアが大量の観光客を送り続ける限り、ワシントンから圧力を加えられてさえ、タイは他の国々の前例となる制裁に加わることはありそうにない。
ドミトリー・ボカレフは政治評論家。オンライン誌New Eastern Outlook独占記事。
----------
ゼレンスキー、ロシア観光客を受け入れているトルコを非難し、トルコが強烈に反論している。
The Jimmy Dore Show、日本でのバイデンの台湾防衛発言発言を取り上げている。
台湾はロシア侵攻阻止で健闘しているウクライナにならえとアメリカ当局。
遠藤誉氏
犠牲になるのはやがて日本だということに気が付いてほしいと切に望むばかりだ。
という結語に同意する。
« ウクライナ国民に隠蔽されている国家の赤恥 | トップページ | ウクライナ軍にとって、いかに事態がまずいかという主流メディアによる希な一瞥 »
「ロシア」カテゴリの記事
- 対シリア戦争を再燃させるアメリカと同盟諸国(2024.12.02)
- ロシアとの戦争でアメリカが負ける理由(2024.12.04)
- ロシア新形ミサイルが、いかにゲームを変えつつあるのか(2024.11.29)
- ドイツを消滅させたいと願うEU精神病院院長(2024.12.01)
「東南アジア」カテゴリの記事
- 全ての道(と鉄道)は中国に通じるが欧米は嬉しくない(2022.10.10)
- 国際制裁の中のロシア休暇シーズンとタイ観光産業(2022.05.28)
- 地域を「いじめている」と北京をアメリカが非難する中、ベトナム地下鉄を完成した中国(2021.11.26)
- 南シナ海でのアメリカ原子力潜水艦衝突のもみ消し 東アジアそして世界のための警鐘(2021.11.12)
- ワシントンの中国封じ込めの必死さを明らかにしたカマラ・ハリス(2021.09.11)
「ウクライナ」カテゴリの記事
- 対シリア戦争を再燃させるアメリカと同盟諸国(2024.12.02)
- ロシアとの戦争でアメリカが負ける理由(2024.12.04)
- ロシア新形ミサイルが、いかにゲームを変えつつあるのか(2024.11.29)
- 欧米帝国主義は常に嘘の溜まり場だったが、今やメディア・トイレは詰まっている(2024.11.30)
- ドイツを消滅させたいと願うEU精神病院院長(2024.12.01)
「タイ」カテゴリの記事
- ロイター、ワシントンの世界的偽情報キャンペーンを暴露:話の続き(2024.06.25)
- 国際制裁の中のロシア休暇シーズンとタイ観光産業(2022.05.28)
- タイをアメリカのようにするのを支援したがっているアメリカ傀儡(2019.07.28)
- タイ選挙後、新たな反中国傀儡を見いだした欧米(2019.04.11)
- タイは地域の指導者になれるのだろうか?(2017.10.15)
コメント
« ウクライナ国民に隠蔽されている国家の赤恥 | トップページ | ウクライナ軍にとって、いかに事態がまずいかという主流メディアによる希な一瞥 »
痛快な記事の翻訳ありがとうございます。タイも、ロシア制裁を強制する英米の圧力に負けない国なのですね。
老女の集まりに誘われてうっかりランチに参加しましたら、当然ウクライナのことが話題になリますが、プーチンの妻が何人目とか、娘はどの妻の実子だとか、レベルの低い会話になり、2度と行かないと決めました。「アメリカの影響力が弱まって、ロシア制裁に加わっているのは、世界の人口のたった6分の1よ」と私が言うと、「まあそれだけもあるの?もっと少ないかと思ったわ」とお答えになりました。
投稿: nobara | 2022年5月30日 (月) 07時19分