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2022年4月15日 (金)

次段階の混乱に入りつつあるパキスタン

2022年4月10日
ウラジーミル・テレホフ
New Eastern Outlook

 報道機関が、4月3日にイムラン・カーン首相が着手したパキスタン国民議会下院解散の試みについて報じている。これまでの数週間にわたり拡大していたパキスタンにおける(もう一つの)状況悪化が質的に新たな水準に達した証拠だ。

 パキスタン国内の政治が多かれ少なかれ、常に様々な程度の混乱状態にあるにもかかわらず、これが起きた。現代パキスタンは(「植民地時代後の期間」のほぼ全てのアジア諸国に共通の)最も多様な性格の国内問題のあらゆるものを経験している。

 最有力イスラム教二宗派(シーア派、スンニ派)間の凄まじい対立に言及するだけで十分だ。現代パキスタン国民は、それぞれの歴史を持った異なる部族で構成されており、分離主義運動が(例えば、バルチ族間で)出現する基盤となっている。だが、これら全ての部族と、彼らが支援する各政党は、イムラン・カーンを攻撃する現在の過程で結束しているように思われる。少なくとも議会内では。

 この状態で、パキスタンの一体性を実際に保証しているのは軍と治安部隊だ。2018年夏、一見民主的な選挙手順の背後で、ロンドン上流階級内で人生のかなりの時間を過ごしたクリケット選手として有名なイムラン・カーン率いる中道政党パキスタン正義運動(PTI)の勝利をもたらしたのは、これら軍だった。どうやら、パキスタン軍当局幹部はPTIと指導部を、酷い汚職と部族間論争で八方塞がりで、激化する諸問題を解決できない国の狭い政界に必要とされる何らかの「新鮮な血」と考えたようだ。内政と外交の両方で。

 第二に、インドとの長期対決は(両国とも核兵器を保有している事実を忘れぬよう)益々厄介になった。更に関連する国家負担の過酷さは経済的要因のせいだけではない。バルチスタン分離主義者の武装行動の背後にはインドの治安部隊がいるという疑いがある。

 2018年の選挙と、PTI率いる連立政府が権力の座につく6カ月前、パキスタン軍将官たちは(インド側との直接接触を通して)インドとの関係で緊張を大幅に減らす最終目的で、構想を立ち上げていた。この構想の更なる発展は、何らかの「新鮮な」民間勢力にあてがう必要があった。イムラン・カーン率いる政府は(もちろん両党相互の欲望の上に実現されただけだが)多くの成功はないにせよ、インドとパキスタンの関係を悪化させたように思われない。そして現在の状況で、これは成功だ。

 デリーは、何であれ最近パキスタンで起きることに対し、自然の興味を示している。更に、わずか一カ月前、極めて不快な事件が起きていた。インド・ミサイルがパキスタン領に落ちたのだが、インド国防省によれば「技術障害のため偶然」発射された。幸い誰も怪我をせず、当初の、この事件に対する、とりわけイムラン・カーンのどちらかと言えば激しい反応は早々と薄れた。

 これは、またしても近年の一般的傾向と一致しており、少なくとも二国間関係の緊張を減らす両国の試みと結び付いている。この傾向は、欧米諸国にとって、極めて重要な地域において、ワシントン(とブリュッセル)の反中国、反ロシア策謀の余地を確実に狭めつつある。3月下旬の集会で、イムラン・カーンは(ウクライナ危機に関連して)「アメリカの圧力にもかかわらず」EUからの類似の要求でも、インドがロシア・エネルギーを購入し続けている事実に肯定的な態度を表明した。

 イムラン・カーン率いる政府が、外圧にもかかわらず、この状況について類似の意見を持っていることは繰り返す価値がある。この点「私は誰にも屈従しなかったし、私の国も屈従させない」とパキスタン首相は述べていた

 2月下旬モスクワで開催されたロシア連邦のウラジーミル・プーチン大統領とイムラン・カーンの画期的会談に言及したいと筆者は考える。この会談は、冷戦中(特にアフガニスタンでのソ連の作戦中)ほとんど敵対的だった両国関係の改善を目指す近年の全般的政治路線と一致している。この路線は、パキスタンの主要同盟国で、アメリカ第一番の地政学上の敵である中国とロシア連邦の和睦のプロセスと非常に一致する。

 一般に、「アメリカ合州国の友と敵」会計簿の特別ページで、ワシントンが「反米」と見なすはずのパキスタン首相に最近行われた行動のリストは、どうやら終わったのだ。

 とりわけ最も説得力があるのは、アメリカに対する一連の「罪」から「イムラン・カーン問題」に対する抜本的解決手順に着手する引き金は、上記の彼のモスクワ訪問だったと思われる。訪問中の他の問題の議論に加えて、ロシアの参加で実行されるパキスタン・ストリーム・ガスパイプライン建設プロジェクトが更なる刺激になった。

 即座に多数の対ロシア制裁が続いた、ロシアによるウクライナ特別作戦開始時に訪問が行われた事実を、どうやらワシントンは、あからさまな挑戦と見なしたのだ。そしてこの厳しい時期に、冷戦中の主要アジア同盟諸国の一つで、今やほとんど中国の同盟国の指導者が「侵略者」を訪問したのだ。しかも彼らはエネルギー分野で協力を進展させようとしている。この間、他の「文明世界」諸国は「侵略者」との、ほぼ全ての事業、主にエネルギー部門で、停止している。これは認めがたい。

 この点に関し、外部勢力の支援を得て、陰謀が、彼の暗殺さえ準備されていたことに関するイムラン・カーンの言葉が(「追い詰められた政治家」の)根拠のない感情だったのは、ありそうにない。だが、この話題に関する証拠書類が明らかにされていないので、アメリカは、もちろん全てを否定し、ひどい実績で彼らの首相を「見捨てた」パキスタン治安部隊を明白に示唆している。

 一般的に言って、似たような状況が以前フィリピンで起きて、2016年、前(完全な親米)大統領と交替した後、新指導者ロドリゴ・ドゥテルテは、当初国の外交政策路線を劇的に変える意図を発表したが、「突然」多くの重大な問題に直面したのだ。

 この記事を書いている時点で、パキスタンで起きた政治危機は最高潮にあった。(依然平和的な)対決の中、紛争当事者双方が、憲法の特定の条項と、それら条項の彼らの解釈に言及したため、それは「憲法」危機と呼ばれた。どちらかと言えば異質な野党が団結したのは、現行政府不信任を表現する問題の投票手続きを議会指導部が「不法に」混乱させた証拠だ。イムラン・カーンの反対派は(2013-2017の期間)首相の座にあった上記部族の一つの代表、ナワズ・シャリフの弟シャバス・シャリフに率いられた自身の「政府」を組織した。

 報道されているように、イムラン・カーンは「一時的に」(少なくとも3カ月間)首相役を務め続けるだろう。最高裁判所は進展中の対立に関与するはずだ。イムラン・カーンが国への訴えで強く要求した早期議会選挙が行われるか否かはまだ明らかではない。

 軍部は、今日極めて重要な役割を果たすパキスタンでのこの「完全に政治的な」(しかし劣らず危険な)混乱への彼らの非関与について発言した。それでも、一部専門家は、軍が過去に常に事実だったように、紛争に直接関与していると考えている。

 それで筆者は、事実上の核保有国における政治的危機の更なる進展を、強い関心をもって見守り続けるつもりだ。

 ウラジーミル・テレホフは、アジア太平洋地域問題専門家。オンライン誌New Eastern Outlook独占記事。

記事原文のurl:https://journal-neo.org/2022/04/10/pakistan-is-entering-another-phase-of-turbulence/

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