長い急降下へ向かうアメリカ・サウジアラビア関係
2022年4月20日
Salman Rafi Sheikh
New Eastern Outlook
不慮のことと思うが、ロシア・ウクライナ戦争は、中東におけるアメリカの影響力の限界を激しく暴露した。一方で、ワシントンはOPEC諸国に石油生産増加を強い損ね、他方、この地域は既に、ワシントンから自立した共同安全保障構造の立ち上げを構想している。実際、アメリカの主流メディア報道が強調したように、上昇する石油価格を抑えるため戦略石油備蓄を使うバイデンの決定は、ロシアも加盟しているOPEC-plus協定を破り毎日の石油生産を増やすのをサウジアラビアが拒否したことで強いられたのだ。これはジョー・バイデンがホワイトハウス入りして以来の、アメリカ・サウジアラビア関係の極めてひどい状態の現れだ。リヤドとのワシントンの結びつきをバイデンが見直したり、格下げしたりさせるアメリカ政府内や公的機関の圧力が高まり、更に悪化する可能性が高い。
4月第2週、米下院外交委員会と下院情報委員会の幹部と20人の他の民主党議員が、進行中のロシア・ウクライナ紛争で、アメリカの方針に従うことをサウジアラビアが拒否したことを考慮して、リヤドとのアメリカの関係を「再検討する」ようホワイトハウスのバイデン政権に要求する書簡を書いた。
これら下院議員は、ジョー・バイデンに、アメリカが「組織的に、無慈悲に自国民を押さえ付けて、世界中の批判者を標的にし、イエメンで残忍な戦争を実行し、中東と北アフリカ全体で独裁政権を強化し、アメリカの国益に反する動きをして、我々の価値観を奉じるアメリカの信頼性を傷つけるサウジアラビア君主国家を継続的に無条件に支持」していることを想起させた」。
手紙は更に、サウジアラビア皇太子のおかげで、この「再検討」が一層重要になっていると付け加えた。
「ロシアのウクライナ侵略と、それに続く石油危機を議論するためのアメリカ政府からの電話を拒絶した。全国的にアメリカのために即座に価格を下げるはずの最初の措置として、より多くの石油生産する我々政府の要請を受け入れる代わりに、サウジアラビア君主国家は、北京と協議して、ドルの力を弱める提案である、中国への石油販売の一部を元建てにする議論することを選んだ。」
サウジアラビア政策について批判的ではあるが、この手紙は、変化しつつある世界の地政学と、世界最大の石油生産国の一つが、どのようにそれに対応しているかに関する、おそらく非常に適切な分析だ。この対応、続いた各政権が、2020年まで、様々な地政学的冒険で、サウジアラビアにあらゆる可能な支援を提供したアメリカの多く人々にとって確かに非常に衝撃的だ。
だが、ジョー・バイデンが大統領となり、彼が「アジア基軸2.0」を開始しようと努めるにつれ、サウジアラビアを含め中東はアメリカ地政学にとって卓越した重要性を失った。アメリカは国際紛争の焦点を中東から東南アジアへと移行しようと努めていた。反中国地政学に向けた、だが、この移行は、ヨーロッパがロシアとの関係を再検討することも可能にし、それがノルド・ストリーム-2が可能になり、益々多くのヨーロッパ諸国がNATOとアメリカから独立したヨーロッパの安全保障インフラについて話をし始めた理由だ。だが、ヨーロッパの再検討はアメリカには受け入れられなかった。それ故の、ヨーロッパに対する「ロシアの脅威」を復活させるため、ウクライナにまでNATOを拡大することに対するワシントンの支持なのだ。これは、多くのヨーロッパ諸国、例えばスウェーデンやフィンランドが、NATO加盟を求め、ドイツなどの既存のNATO加盟国が、その一部がアメリカ製F-35ジェット購入に使われる防衛予算を増やして、アメリカに役だっている.
だが、アメリカは両方のいいとこ取りはできない。ヨーロッパを支配下に引き戻すことはできたが、中東からの撤退は、中東がアメリカと合致しない外交政策を追求することを可能にした。アメリカは、単純に言えば、中東の同盟諸国を失ったのだ。これが石油価格下落を助けるため、イラン石油が国際市場に出ることを可能にするイランとの合意に対するワシントン攻勢の背後にある一つの主要理由だ。
だがイランが支援するフーシ反政府派が過去何度もサウジアラビア本土を攻撃したことがあるので、イランとアメリカの取り引きは、アメリカ・サウジアラビア関係を悩ませる問題リストを増やすだけだ。だがサウジアラビアが支援する停戦と、サウジアラビアが支持するイエメン大統領の権限移譲は、前述の手紙が示唆する通り、リヤドが、もはやアメリカからどんな直接支援も受けないことを考えれば、アメリカから永久に去り「東」に向かって動くために、肩の荷を下ろすのをいとわない可能性を示している。
だがこの変化は、上で強調した通り、アメリカの政策に原因がある。進行中のイランとワシントンの交渉は、アメリカが何十年間も維持し率いた、この地域安全保障構造を解体しようと努めていることをリヤドにはっきり示している。それに応じ、リヤドは、ゆっくりながら着実にイスラエルとの関係を再定義する方向に動いている。リヤドは、まだUAEのようにイスラエルを公式に承認していないが、ウクライナ-ロシア戦争に続く中国とロシアへの移行は、この移行が永久ではないにせよ長期的である事実を雄弁に物語る。
もし、最近の世論調査で最低の支持率に達したバイデン政権が、サウジアラビアに対して、この手紙で示唆されたような行動をとれば、この移行を永久的にするかもしれない。もしサウジアラビアがOPEC-plus協定に固執し、アメリカ要求を受け入れるのを拒否しても、同様に、この移行を永久的にするだろう。
Salman Rafi Sheikhは国際関係とパキスタンの外交、国内問題専門家。オンライン誌New Eastern Outlook独占記事。
記事原文のurl:https://journal-neo.org/2022/04/20/us-saudia-ties-set-for-a-long-nosedive/
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『耕助のブログ』 Finian Cunningham氏記事の翻訳を拝読。
植草一秀の『知られざる真実』
デモクラシータイムス
所詮属国「踏まれても蹴られても ついていきます下駄の雪」
IWJ、一貫して「緊急事態条項」問題を指摘し続けておられるが、大本営広報部が揃って推進する以上、自分で自分の首を絞める崩壊の運命は時間の問題?
「日経世論調査で緊急事態条項に賛成49%、産経世論調査で72.4%! 憲法審査会で自公維国が改憲に意欲! 民放連はCM規制強化に反対」
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