ロシア・ウクライナ紛争で、トルコが全当事者に働きかけている理由
2022年4月1日
Salman Rafi Sheikh
New Eastern Outlook
先月、ウクライナでロシアが軍事行動を開始して以来、トルコはロシアとウクライナ間で重要な調停者になろうとしている。現状、調停を促進する役割に関する限り、多少成功さえしている。この役割と、これまでの成功は、それを囲む地域、すなわちアジアとヨーロッパ大陸間の独特な地理的位置を、重要な平衡装置として活用し、トルコの立場を作り出すエルドアン政権の長年の追求に合致している。実際、ロシア・ウクライナ紛争を巡るトルコ地政学の多くが、世界的に影響力を行使できる当事者としての地位強化を意図している。エルドアン体制にとって、これはトルコ地政学が、トルコの地位は、その地理だけに限定されず世界的である新オスマン主義という政治構想を実現するための重要な一歩だ。現状、ロシア・ウクライナ危機を利用して、トルコはその地政学的な働き掛けの活動を次第に拡大しつつあるのだ。
一方では、トルコはロシアとウクライナ間を調停しており、他方、ウクライナ軍はロシア軍に対し、トルコが供給する兵器を使用している。そしてウクライナに武器を供給しながら、アンカラはロシアを制裁するアメリカ/NATOの要求を受け入れるのを拒否した。最も重要なことに、トルコは、そもそもワシントンがロシアを包囲すべく、連合の東方向拡大を要求して、現在の危機を引き起こしたアメリカ率いる軍事同盟NATOで二番目に大きな軍事力でありながら、この役割を演じているのだ。
だが、トルコにとって、NATO加盟国であることは障害ではなかった。それどころか、トルコは、ウクライナと(アンカラは売り手)とロシア(アンカラは買い手)との軍事的つながりを活用して、ロシアとウクライナ両国に何度か呼びかけたが、両国を交渉の席につけることができなかったフランスのエマニュエル・マクロンを含め、主要なヨーロッパ当事者たちより遙かに有効な役割を演ずるすることが可能だった。アンカラにとっては、まだ具体的な結果がないとは言え、トルコがロシアとウクライナ両国を交渉の席に招くのが可能だった事実は、EUとアメリカ両方に対する外交的資格証明を強固にする上で、それ自体、大きな外交的勝利だ。
トルコにとって、この外交上の成功は、ロシア・ウクライナ紛争終焉後に起きることに直接影響する可能性がある。エルドアン大統領顧問で報道官のイブラヒム・カリンが最近こう述べた。「これが全て終わったら、世界規模で出現すべき新たな安全保障構造がなければならない。この世界規模安全保障構造の構造化のされ方は、今後何十年間も世界のあり方を形成するだろう。我々がこの戦争に終止符を打つため我々がとる全ての措置、全ての動きが、この新たな安全保障構造に影響を与えるだろう。」
トルコは、言い換えれば実に明確な将来構想を持って外交戦略に携わっているのだ。
だがトルコの綱渡り芸は、いくつか他の国家的理由も考慮したものだ。トルコの経済状態は、この紛争に硬派な姿勢をとれるだけ十分安定している状態からほど遠い。トルコが、NATO加盟国としてロシアに制裁を課せば、多くを失う立場にある。例えば、トルコ・リラは過去一年で、価値が47パーセント下落し、物価は驚異的に54パーセントも値上がりした。もしアンカラがロシアの反感を買えば、ロシアの報復は、トルコを一層不安定な領域に押しやりかねない。現状、ロシアは、アンカラに天然ガスの45パーセントと、小麦の70パーセントとを供給している。トルコで、小麦は、おそらく石油と同じぐらい重要だ。2021年最後の一ヶ月の報道が示した通り、急騰するパン価格で、パン作りは、多くのトルコ人に手が届かないものとなり、抗議が起きている。トルコのロシアのS-400防空システム購入を含めモスクワ・アンカラの間の深い軍事的絆は、さておきだ。
だがロシアとの絆に慎重に対処するのは確かにトルコにとって極めて重要だが、より大きな地政学的配慮には、それ自身価値があるのは依然変わらない。これを考慮願いたい。権力の座について以来、ジョー・バイデンは、独裁者として、エルドアンには首尾一貫して近づかず回避さえしている。彼はバイデンのいわゆる「民主主義サミット」に招待されなかった。主にS-400システム購入でロシアとの軍事取引から手を引くのをアンカラが拒否したことで、これまで3年間トルコ-アメリカ関係が形成されている。そのためロシア・ウクライナ紛争に関与することでアンカラは事実上アメリカ/EUに対する態度を逆転させたのだ。それでトルコは欧米に対して失っていた重要性を復活させるのが可能だった。
これはアンカラの欧州連合加入可能性というトルコ政治を復活させた。エルドアンが最近言った通り、トルコはウクライナ包摂によるEU拡大を支持している。同時に、彼はEUに、ウクライナに示したのと同様、トルコの何十年にもなる申し込みに対する「同じ敏感さ」を示すようヨーロッパ・ブロックに要求した。1987年にトルコはEU加盟を申請し、加盟交渉は2005年に始まった。だが交渉は、2007年、ドイツとフランスの反対と、分裂しているキプロス島のキプロス共和国(ギリシャ共同体)による反対のため行き詰まった。
最近ウクライナのゼレンスキーが、EUにウクライナのEU即刻加盟を考慮するよう要求した際、欧州会議が即座に対応し、ウクライナのEU加盟候補国要求決議を採択した。アンカラは自身にも同じことを期待しているのだ。
だから、トルコは、ロシア・ウクライナ協議主催で目に見える以上の大きなものを狙っているのだ。現在の安全保障(NATO)と経済構造(EU)に対する多くの変化をほぼ確実にもたらすだろうとアンカラが考えている未来を見据え、ロシア-ウクライナ紛争後に、紛争に関与した双方の組織で形成される、どんな新しい場においても、トルコは重要な立場を確保するようにしている。それが進行中の状況下で、トルコの新オスマン・トルコ政権にとって、失われた栄光を可能な最も具体的な形で実現する彼らの成功の基準だ。
Salman Rafi Sheikhは国際関係とパキスタンの外交、国内問題専門家。オンライン誌New Eastern Outlook独占記事。
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The SakerにGonzalo Lira氏の、巨大ハイテク企業による言論弾圧発言がある。
Gonzalo Lira: “YouTube bans any open discussion about the Bucha false flag”
1984年のApple Macintosh発売広告、同僚と、この衝撃を何度も語り合ったものだ。何度も書くが、独裁者が戯言を語る巨大スクリーンを囚人のような大勢の連中が拝聴している。そこに運動着姿の若い女性が走り込み、ハンマーを巨大画面に投げつける。画面が吹き飛び「Apple Macintoshが、こういう1984の世界を防ぎます」という趣旨の売り文句だった。
悲しい現実、巨大ハイテク企業こそ、こういう1984の世界を実現している。
スティーブ・ジョブズの講演をサンフランシスコのコンベンション・センターで何度か聞いた。ビル・ゲーツとは対照的な人物に思えた。彼はお墓の中で、身をよじらせているのではあるまいか。
このコマーシャルを巡る詳しい逸話映像もある。
MT Rainey on the iconic Apple '1984' Super Bowl ad and her career as a master planner
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コメント
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いつも、欠かさず読んでいます。
私は、露宇紛争について、これまでのアメリカを中心とする連合による資源を有する国々への暴力や略奪を見てきた結果、露側の立場を支持しています。マスコミの影響は強く、一流の学者、共産党や、労組、いつも拝読している左派系ブログまでもが、これまでの経緯や、ナチズムの本質を見ずに、ウクライナ支持一色で、悲しくなります。これからも、新しい情報、お願いします。
投稿: Kim | 2022年4月 7日 (木) 19時16分