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2022年2月12日 (土)

ロシア・アメリカ:「ウクライナ問題」でトルコのジグザグ作戦は成功するのだろうか

Erkin Öncan
2022年2月3日
Strategic Culture Foundation

 同時に一つ以上のテーブルにいることはできない、特に緊張が危険な水準にあるウクライナのような話題ではとErkin Öncanが書いている。

 この危機は、ロシア-ウクライナというより「ロシア-アメリカ/NATO危機」と呼ぶほうがふさわしいだろう。

 アメリカ合州国による指揮の下、欧米は全力でロシア封じ込め戦略を続けているが、欧米メディア(全くのプロパガンダ機関)は逆の言説を流し続けている。いわゆるロシア占領。

 欧米メディアで目玉にしている「ロシア占領」言説は実際にロシアが軍事的にとる措置には関係ない。この言説は欧米帝国の権益と直接つながっている。おまけに、この「侵略」プロパガンダは、ウクライナを一層欧米に依存させるはずだ。この状況は、NATOが同盟が加盟諸国によってさえ問題にされ始めた時期、まさに適切な時に、その血を新たにするのを可能にするのだ。

 欧米メディアは、成功裏に歴史上の任務を果たし、しばしば彼らが声に出すジャーナリズムの原則を踏み潰すことで、NATOの権益に沿ったニセ情報の取り組みを続けている。ロシアによる、いわゆるウクライナ侵略、クリミア半島「併合」、ウクライナを「分割する」ロシア人分離主義者など。

 NATOの歴史的役割

 19世紀にヨーロッパに蔓延した「共産主義の亡霊」や平等と自由という考えは、1900年代前半に起き始めた社会主義革命や民族解放運動の連鎖のおかげで「幽霊」以上になった。

 世界中の虐げられた国民の蜂起や革命は帝国主義体制の世界搾取に対する最大の障害になった。1950年代、帝国主義には、この障害を排除し、戦争と搾取の世界を確立する手段が必要だった。NATOだ。

 NATOは、帝国主義によって、世界中のあらゆる進歩的運動に対して、特にソビエト社会主義共和国連邦に対して、「共産主義の脅威」の口実の下、反対する姿勢をとるように作られた。この最大の侵略機構によって、自身の正当性をでっちあげるため使われる最大な議論が他でもない「ソ連による侵略の可能性」だった。

 今日、アメリカの指揮下で、NATOの言説と戦略は全く同じ形で進んでいる。唯一の相違は「ソビエト社会主義共和国連邦」が「ロシア連邦」に変わったことだ。ソ連はもう存在しないが、依然、侵略者とナチに包囲されているロシアがある。

 NATOとトルコ

 この状況で、最も奇妙な地域の当事者の一人がトルコだ。トルコはNATOメンバーとして、何年もの間NATOとアメリカの権益のために行動してきたが、特に過去五年間については、同じことを言うことはできない。

 トルコとアメリカ間の関係は最近悪化する傾向にあり、双方による「パートナーシップ」の果てしない声明にもかかわらず、お互いの権益に矛盾する措置が実際に行われているの明らかに見てとれる。

 ウクライナに対するトルコの姿勢を理解するために、簡単にトルコのNATO冒険を想起することは重要だ。

 1950年代、トルコは、ソビエト社会主義共和国連邦に気前よく助けられたケマル革命清算過程の始まりにあった。その位置ゆえに、この国は、この地域におけるアメリカ合衆国の「前哨基地」候補で、当時のメンデレス政権は、この前哨基地を守るための「完全な、うってつけ」だった。反共産主義プロパガンダと、頻繁に語られた「ソ連の脅威」はトルコが「リトル・アメリカ化」過程に入るパスワードだった。

 1952年2月18日にNATOに加入したトルコは、以来その戦略、すなわち、アメリカの軍事的、政治的権益に合わせて、国家安全保障戦略から「脅迫認識」まで、軍構造から軍事計画まで作り直されている。

 始まったこの「リトル・アメリカ」化過程で、国家情報組織(MIT)のような対ゲリラ組織や、アメリカ諜報機関に具体化されたSpecial War Departmentが生まれた。

 1952年に始まったトルコのNATO化過程は、時折の政治危機にもかかわらず、政権を掌握する政府の政治的性格にかかわらず、何年間も、トルコの地域と国際上の役割を決定する主因だった。だが、この長続きした「忠誠」(友情あるいは協力と呼ぶむきもある)は、2016年7月15日、エルドアンAKP政府に対する未遂クーデター後ひどく破損した。

 実際、エルドアン政府自身、欧州連合とアメリカへの親近感のメッセージと欧米陣営の権益と一致する政治的措置で、権力の座についたのだ。だが、欧米陣営と協力するエルドアン政権の熱意は揺るぎ始め、地域におけるアメリカの権益と矛盾するまでになった。

 トルコの国内政治で、AKPと、長年の「連立相手」で、アメリカが支援する原理主義者フェトフッラー・ギュレン率いる運動間の関係悪化をもたらした。(後にそれは「並行国家」、更にテロ組織と定義された)。これはアメリカとの分裂を強化した。

 他方、シリアに対し、アメリカがとった措置は「反アサド」という点で、エルドアン政権の支持を得たが、アメリカがシリア計画に、クルド人民防衛隊YPGを選び、大量武器提供と経済援助は、関係を損なうもう一つの重要な原因になった。クルド人民防衛隊はトルコ長年の敵クルド労働者党PKK支部と見なされ、テロ組織と指定されている。

 対米関係が緊張していた同じ歴史的時期、エルドアン政権は北の隣人ロシアを「調査し始めた」。ロシア戦闘機撃墜や、駐アンカラ・ロシア大使アンドレイ・カルロフ(エルドアン政権によって、これらの出来事はギュレン組織の活動とされた)殺害のような、大きな問題にもかかわらず、NATOにとって最も衝撃的なトルコによるロシアのS-400航空防衛システム購入を含め、様々な合意で、ロシアとの関係は改善し続けた。

 しかし、アメリカとロシアとのトルコの関係を分析する際、ロシアとの関係発展の可能性は、トルコとアメリカ間の緊張レベルに依存していると言える。トルコとアメリカ間でのS-400議論でさえ、エルドアン政権とそのスタッフは、繰り返し「トルコは自身の安全を保証するため、そうするよう強いられたのであり」NATO同盟国、特にアメリカは「同盟の精神に従って行動しなかった」と主張した。

 そのために、トルコは、ロシアにとって重要なパートナーとなる可能性があるにもかかわらず、アメリカとの関係を絶つ可能性に関し、ロシアとの関係を評価している。

 トルコはウクライナについて何ができるか?

 ウクライナ問題に関して、上述の態度がトルコ高官、特にエルドアンに見ることが可能だ。まず第一に「地域の当事者」の役割を引き受けたエルドアン政権は、バランス政策を使って、この方向への措置をとっても、結局その位置がNATO前線にあるのを想起させる。

 まさにこの理由で、バランス政策というより「ジグザグ政策」という定義が可能だ。

 ウクライナに対するエルドアン政権の第一の願いは「戦争」ではない。だがエルドアンはトルコがウクライナでの戦争を妨ぐため「全ての措置をとる」準備ができていると述べたが、同時に彼は「ウクライナの領土保全を尊重し」「クリミア半島へのロシア侵略に常に反対する」と宣言した。他方、この地域で戦争を欲しないエルドアン政権が、バイラクタル無人機をウクライナに売り続けているのを指摘することは重要だ。

 再び、エルドアンはこう言う。ウクライナ危機に関して「我々はその要求の一部がなぜ受け入れられないかロシアに言う必要がある」が、同時にシリアで、アメリカとNATOによるクルド人民防衛隊への武器支援物資を批判している。

 エルドアンとともに、トルコ政治でもう一人の重要人物、フルシ・アカル国防大臣はこう述べている。「NATOの価値観と責任を共有し、1952年以来、トルコは託された全ての義務と任務を成功裏に実行した。NATOは史上最も成功した防衛同盟だ。我々は、この同盟はこれまでのどの時期より、一層積極的で、活動的だと信じている。」

 エルドアンの、これらの見かけ上矛盾する声明は、アメリカとロシア間のジグザグとのみ関係があるわけではなく、直接彼の党と政治的伝統と関係しているのだ。「アメリカ主義」は、依然トルコ政界で非常に強い政治的傾向だ。トルコでの「ロシア政治」言説は、まだひどく、この国の過去50年続いた反ロシア言説に影響されている。トルコ政界では、かなりのレベルの「ロシア嫌い」を見ることができる。そのため、アメリカとロシアの間を行き来するトルコは、しばらくの間このバランスゲームを続けるように思われる。

 AKPに代表されるトルコの保守-右派政治は、このジグザグ政策を説明するため、しばしば、この言葉を使う。「我々はすべてのテーブルにつく。」この精神で活動して、AKP政権はそれが座る全てのテーブルから、最大の利益を得ることを目指している。

 だが、緊張が限界レベルにまで高まっている、特にウクライナのような話題で、同時に一つ以上のテーブルにいられるないのは明らかだ。しかも地域の全当事者は安全に座れる自身の椅子を持っているが、トルコは今のところテーブルの周りを歩いているのだ。

 ウクライナに対するトルコの姿勢は極めて重要だ。だが、ロシアに対する攻撃のレベルをNATOが日ごとに増すにつれ、ロシアとアメリカ間で調停者役を果たすことを望むトルコのいつもの戦略はうまく行くまい。ウクライナ問題はいつもの平和願望で延期するには余りに過熱している。トルコは何らかの形で誰につくか選択しなければなるまい。

 「地域と国際的な場で、作戦を先導する選手たらんと目指す」と言うエルドアン政権とAKPが、NATOとアメリカに「毎回もう一度チャンスを要求する」のをトルコの運命の指標にしている限り、この目標は決して実現するまい。

  Erkin Öncanは世界中の紛争地帯と社会運動に焦点を当てているトルコ人ジャーナリスト。Twitter:https://twitter.com/erknoncn Telegram:https://t.me/erknoncn

 個々の寄稿者の意見は必ずしも Strategic Culture Foundation のものを意味しない。

記事原文のurl:https://www.strategic-culture.org/news/2022/02/03/between-russia-and-us-will-turkeys-zigzags-work-in-ukraine-crisis/

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