アメリカ軍:民間人殺害装置
2022年1月31日
Salman Rafi Sheikh
New Eastern Outlook
2021年8月29日、アメリカがカブールでISISの隠れ家とされるものへの空爆を開始した際、無辜の一般人10人を殺害した。被害者は、7人の子供を含め、アメリカを本拠とする支援団体で働いていたゼマリ・アーマディと、その家族9人を含んでいた。当時、アメリカ当局は、早々攻撃は「確実な諜報情報」に従ったものだと確認したが、後に「うっかりミス」と認め、被害者の家族に経済的補償を提案した。これは容易に忘れ去れる孤立した事件ではない。実際、アメリカ軍、アメリカ戦争装置は、一般人にとって往々にして考えられているより遙かに致命的な実績が多々ある。最近の調査で、欧米主流メディアがしばしば報じる以上に、軍が非常に多くこのような「うっかりミス」をして、米軍による多数の民間人の死をもたらしていることを示した。だが実に皮肉なことに、アメリカ議会が命じ、アメリカの「闇の国家」と強く結びついているランド社が最近行った調査が、無辜の一般人殺害に対する米軍の連座がどれほど多いか示している。
報告が示している通り、アメリカ国防総省は、NGOなどの外部情報源によれば、民間人犠牲者の推計は、国防総省推計より遙かに多く、米軍の手による民間人死亡査定が誠実ではなかった。
例えば、シリアのラッカで、アメリカ率いる連合は、共同統合任務部隊報告によれば、62人を負傷させ、178人の一般人を殺した。これと比較して、地元シリアや、アムネスティー・インターナショナルを含め国際NGOコンソーシアムの評価では、4カ月の容赦がない砲撃が「家庭、企業やインフラを瓦礫と化し」、民間人犠牲者は774人から1,600人に及んだ。これらの死は、一般人を守るため必要な全ての処置をとっているという米軍の主張にもかかわらず起きている。
この文脈で、アメリカで、あらゆる騒ぎを引き起こした2021年のカブール事件は、アメリカ軍/国防総省内の、より深い問題を扱わずには済まない唯一の事件ではなかった。実際、それは、そもそも、議会が命じたランド社による調査を必要とした米軍/国防総省内部の正当性の深刻な危機なのだ。
この報告の調査結果が、米軍が戦争犯罪を行っていることをほのめかすが、報告書は国防総省の全体的「民間被害を査定し、調査し、回答する方法」における「かなりの弱点」を明らかにしている。
重要な所見には下記がある。
- 「空爆作戦には固有の民間被害発見の問題がある。」
- 「民間被害を検証する技術的手段の結果は不完全だ。」
- 「諜報努力は、より広範な民間の構図を理解するため利用可能な情報源を限定し、敵に焦点を合わせている。」
これら重要な欠陥は、報告の所見通り「事故に関係する個人が、しばしば決して調査結果を見ておらず、起きたことから教訓を学べなかった」事実によって悪化させられている。それ以上の民間被害を防ぐための調査を受け入れることに対する関心の欠如が意味するのは、米軍内には、積極的に「一般人被害」問題に取り組むための仕組み、あるいは本当の意欲がないことだ。要するに、これら調査は完全に無視され、なぜ様々な戦場で、米軍による民間人死亡の無数の事件がおきた理由を示している。
2019年、シリア、バグーズでのアメリカ空爆が、少なくとも70人の無辜の一般人を殺害した。ニューヨーク・タイムズ調査は、法務官が、この攻撃は戦争犯罪の可能性があるとしたのに、米軍が攻撃でひき起こされた大惨事を隠すあらゆる措置をとっていたことを示している。死者数を過小評価し、国防総省が、批判、責任追及、精査から隠す為、意図的に報告を引き延ばし、更に機密扱いして、アメリカの指導者たちが、民主主義、人権と自由を守るために派兵していると主張する合衆国戦争マシンが海外で起こしていたテロ行為を隠蔽したのだ。だから軍/国防総省内の危機は、世界「最良の」体制だという主張を問題にする、合衆国自身を巻き込んだ危機の反映だ。
2019年の国防総省の行動は「民間被害に対する国防総省の対応は歴史的に首尾一貫せず、混乱している」と言うランド報告の所見と大いに一致している。この首尾一貫性のなさが、アメリカ体制全体で根深いことは、様々なアメリカ政権がアフガニスタンでのアメリカの戦争犯罪を調査するのを阻止するため国際刑事裁判所(ICC)を恐喝していた手口からも明白だ。
ランド報告の調査結果は、米軍による未来の民間被害を防ぐための、このような調査を一層時宜を得たものにしているが、全体的な国防総省を強化することに関するランド報告の様々な勧告が将来民間人被害を防ぐのにいかに不十分かを示して、アメリカの「闇の国家」は、このような努力には反対のままだ。
端的に言えば、これらの民間人犠牲者の大部分が空爆作戦によってもたらされる事実は、国防総省内の作戦上の弱点同様、政治にも深く関係している。
アメリカ政策当局は、より多くの兵士を交戦地帯に送ることではなく、空爆作戦に依存しているが、これは必然的なこと、つまり永久に増加する戦争による兵士死者数が自分達の政治生命にもたらすリスクを最小化する手段なのだ。これら交戦地帯から戻ってくる遺体袋が皆無、あるいは限定されていれば、アメリカ指導者連中は、ワシントンの安全地帯で、楽々無謀に地政学ゲームができるのだ。だから、国防総省即刻改革の必要性という言説にもかかわらず、これら制度改革が、政治指導部に課され、無辜の一般人を全く無視して、国外で戦われるアメリカの戦争と直接結び付く、より広範で根深い政治問題に対処することは決してないだろう。
Salman Rafi Sheikhは国際関係とパキスタンの外交、国内問題専門家。オンライン誌New Eastern Outlook独占記事。
記事原文のurl:https://journal-neo.org/2022/01/31/us-military-a-civilian-killing-machine/
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