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2022年2月17日 (木)

ヨーロッパに遺書署名を要求するアメリカ大君主

Finian Cunningham
2022年2月12日
Strategic Culture Foundation

 ワシントンとロンドンがロシアとの核戦争という奈落の底に向かってヨーロッパと世界を押しやっているのは地獄のような危険だ。

 イギリスとアメリカは、ナチスドイツから西ヨーロッパを解放するためと喧伝された1944年6月の軍事侵略計画の現代版「大君主作戦」の再演をしている。今回、喧伝されている建前は、ロシアの天然ガスに対する「専制的」依存からの欧州連合「解放」だ。

 実際は、暗黙の狙いは、ヨーロッパに対するアメリカの専制的支配を維持することだ。その支配はアメリカ覇権とグローバルパワーを維持するために不可欠だ。究極的な代償は、「高貴な」アメリカ覇権者が、召し使いに払わせるのを全くいとわない経済破壊とヨーロッパにとっての戦争だ。

 今週、彼がホワイトハウス記者会見で、ドイツのオラフ・ショルツ首相を傲慢に代弁した際、アメリカのジョー・バイデン大統領は、その大君主の地位を見せつけた。仮説的なロシアによるウクライナ侵略の場合、ロシアからドイツへガスを輸送するパイプライン、ノルド・ストリーム2の運命についてバイデンは質問された。バイデンはドイツ首相と相談するため立ち止まりさえしなかった。彼は、ガスプロジェクトは終わると断言した。

 「もはやノルド・ストリーム2がない」とためらわずにバイデンは言った。「我々がそれに終止符を打つ。」

 ノルド・ストリーム2パイプラインの機能が、名目上アメリカではなく、ドイツ支配下にあることを考えれば、これがどのように可能なのか、アメリカ大統領は問われた。「我々がそうする。私は皆さんに約束する、我々はそれをすることが可能だ」とドイツ首相から、いかなる合意も探す兆しも見せずにバイデンは断言した。

 ワシントンの能力がヨーロッパの主権に優先するという自信は、アメリカ帝国の横柄さを暴露する憂慮すべき露呈だった。

 それはヨーロッパ「同盟諸国」に対するアメリカの軽蔑の極端な露呈だった。ショルツもドイツもヨーロッパも、バイデンによって影の薄い存在に見えさせられた。続く報道もそれを示した。

 ワシントンとロンドンは、ロシアがウクライナを侵略し、ヨーロッパの安全保障を危険にさらそうとしているという容赦ない非難で地政学的緊張を高めるのを率先している。英米のプロパガンダがそれを企てた方法は、このシナリオは、自分だけが気高い擁護者であるヨーロッパを脅迫するナチ攻撃の再演と思わせる。プーチンはヒットラーだ、クレムリンは第三帝国だ、外交は宥和だ、という具合に途方もないプロパガンダは続く。

 モスクワは繰り返し、ウクライナを侵略する意図はなく、実際アメリカ率いるNATO軍事同盟の年々のロシア境界への拡大で脅かされているのはロシアだと言っている。

 さらに緊張を高め、ワシントンとロンドンは、ロシアからドイツまでのガス・パイプライン、ノルド・ストリーム2を放棄する誓約を含め、ヨーロッパがモスクワに対し過酷な制裁を採用しなければならないと要求している。パイプラインは5年かかり、アメリカの絶えざる反対にもかかわらず完成に100億ユーロの投資がかかった。ワシントンと従僕のイギリスが企てたウクライナ危機は、ヨーロッパのエネルギー危機にもかかわらず、ガス供給がこれまで6カ月間の停止をもたらした。英米大君主が最終的に見たいと望んでいるのは、全てのガスプロジェクトの廃棄だ。たとえそれが支払えないガス代のため凍えるように寒いヨーロッパ家庭を意味しようとも、それが大詰めだ。大君主は気にかけない。

 それがアメリカとイギリスがウクライナを巡るロシアとの過度の危機を静めようとするあらゆる外交努力をぶち壊すべく全力を尽くしている理由だ。それ故、ワシントンとロンドンはウクライナに武器を注ぎ込み、紛争を拡大させる無謀な試みで、東ヨーロッパに落下傘部隊員を配備している。

 今週ホワイトハウス訪問中、ショルツ首相は「もしロシアがウクライナを侵略したら」、ノルド・ストリーム2を打ち切ると明言するようにという短気な要求を浴びせられた。明らかな甘言で、ドイツとアメリカが決意で団結していると主張させようとしたが、ショルツはそう発言するのを拒否した。ベルリンはロシアに対して十分敵対的でないというアメリカとイギリスの明白ないらだち感がある。

 フランスのエマニュエル・マクロン大統領がロシアのウラジーミル・プーチンとの外交協議のため今週モスクワを訪問した際も、彼らの軍国主義的「満場一致」が傷つけられたというワシントンとロンドンの紛れもないえん恨感覚があった。

 英米の威力の誇示が、ロシアとの戦争の場合、ヨーロッパのために「高貴な」遺書に署名する身勝手な挑発だとベルリンとパリが知っているのは疑いようがない。

 500億ユーロのAUKUS潜水艦契約で、アメリカ、イギリスとオーストラリアに去年ひどい仕打ちをくらわされたフランスのマクロンの苦い経験は、おそらく多少の健全な懐疑主義を引き起こすのに役だった。彼は4月のフランス大統領選挙も意識している。

 エネルギー貿易や、関係の全般的正常化のためのヨーロッパとロシア間の戦略的提携をワシントンが妨害したいと望んでいるというのが結論だ。目的はアメリカ覇権の維持と、ヨーロッパへ自身の一層高いガスと、もちろん、不安定が絶えず高まる状態で、NATO加盟諸国に武器の果てしない販売をすることだ。イギリスは、アメリカ政府のご機嫌を取り、アメリカ帝国権力のいつもの地政学的執事役を果たすのは相変わらずだ。

 エネルギー評論家は、ドイツとヨーロッパが大陸の消費量の少なくとも40パーセントを占めるロシア・ガスなしで経済的に切り抜けられないことを知っている。バイデンさえ、ホワイトハウス記者会見で、アメリカがロシア供給に取って代わることが可能なうふりはできなかった。もしヨーロッパへのロシアのガス輸出が、紛争あるいは、より深刻な制裁によって混乱させられれば、欧州連合の経済にとっての影響は破壊的だろう。ドイツ、フランスとEUはロシアの石油とガスなしで生き残る方法がない。アメリカとイギリスにとっては、ベルリンにノルド・ストリーム2中止に関し決定的声明をするよう要求するのは、一種の強要で恐喝だ。オペレーション大君主2世。

 だが、ワシントンとロンドンがロシアとの核戦争という奈落の底に向かってヨーロッパと世界を押しやっているのは地獄のような危険だ。それこそが、衰えつつある英米帝権の悪魔的な酷さだ。

 Finian Cunninghamは主要報道機関の元編集者・記者。国際問題について多く書いており、記事は複数言語で刊行されている。

個々の寄稿者の意見は必ずしもStrategic Culture Foundationのものを意味しない。

記事原文のurl:https://www.strategic-culture.org/news/2022/02/12/american-overlord-demands-europe-sign-suicide-note/

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 今朝の孫崎氏メルマガ題名

今日の台湾・ウクライナ問題の基本構図:2000年頃、米国の一極支配=「世界全体が実質的な米国勢力圏に」→米ルールで行動を強要。逆らえば、公然たる体制変革も(鳩山政権)。→中露が反発。米指導者壮大な野心持っても、実現する手段少→大きな結果は期待できず、

 旅行会社のツアーでもあるまいし。戦争開始日を言い立てる狂気の宗主国。

 日刊IWJガイド

はじめに~米国政府の空騒ぎは何だったのか!? ウクライナ時間2月16日午後8時29分現在、ロシア軍のウクライナ侵攻はなし! ロシア側いわく、「2月16日は西欧の戦争プロパガンダが失敗した日として歴史に残るだろう」!

 

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コメント

              米偵察衛星NROLを忘れてはいませんか

 2014年7月,マレ-シア旅客機MH17がウクライナ上空でウクライナ軍により撃墜されたとき,「地球上で知らざるものなし」と豪語していた米国の偵察衛星NROL38はこの撃墜劇を監視していたはずである。もちろんアメリカはこのときの映像を最高機密として提出しない。また同様にロシアの偵察衛星もはっきりした映像を出さない。米ロの情報戦に巻き込まれたのがMH17旅客機である。
 ところで再びウクライナに目を向けると,先日のロイタ-電によれば今月16日にロシア軍のウクライナ侵攻があると断言して外した。バイデン政権も同じ。イラク攻撃に関する情報がいかに出鱈目であったかという指摘に耳を貸さない米国。しかし偵察衛星NROL38(その他のNROL衛星)でロシア・ベラル-シ軍の演習がどうなっているかは分かっていても,御用メディアを使って侵攻があると騒ぎ立てさせた。そして今日,ウクライナ国境付近にいるロシア軍の数は,撤退しているにも拘らず19万人に増えた。米国の理数教育はロシアに負けている。国際学力テストPISAでG20にも入れないが,NROL38を使えば一目瞭然である。同様に新疆ウィグル自治区における強制収容所(100万人~300万人)があるか,ないかも分かる。
  2019年霜月,休暇を利用して新疆ウィグル自治区を訪れ,英国のBBCがあるとした強制収容所の上を飛んだことがある。ところが偶然にも搭乗機はBBCが指摘した場所の上空を通過した。その時眼下に見えた景色は美しい風景(1枚岩)であった。更地にした跡は全くない。BBCの偽情報を初めて知った。強制収容所はないのである。あるのは西側メディアによる偽情報だけである。
  4年前,シンガポ-ルの友人に住所を教えたことがある。すると彼は我が家の地図をGoogle地図で検索し,周りの道路にゴミ一つないことを確認して驚いていた。日本はきれいだ。NROL38偵察衛星ならもっと詳細に分かるに違いない。しかしマスメディアは米露の偵察衛星を話題にしない。バイデン政権は圧倒的な数の西側メディアを利用して偽の情報を流し,NROL38やその後継偵察衛星に触れない。

追記: BBCに招かれ一方的な批判,証拠なしの批判にさらされた中国駐英大使はその番組の中で「新疆を見ずして死ぬことなかれ。」と仰った記憶がある。まさにその通り。カナダ・ロッキ-山脈をバスで走ったことがあるがどこまで行っても同じ景色。対してパキスタンやアフガニスタンに抜ける道からは美しい景色をたくさん見ることができた。しかしロシアに行ったことはない。ソチやオデッサ,そして南のロストフ地方にも行ってみたい。

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