ウクライナでのエルドアンの平和維持活動は機能するだろうか?
クラウディオ・ギャロ
2022年2月10日
Strategic Culture Foundation
彼の外交的離れ技は、実際の平和構築過程より、ボールが、まさにネット上にある間に、商売を守ることを狙っているように見える。
日々、欧米メディアは虚報を伝える。「彼らはやって来る、彼らは3メートルの所、2メートル、1メートルだ」。手抜きをして、首位を占めるブルームバーグは既に侵略を演じている。ニュースを予測しようではないか?実際、ウクライナでは、ウッディー・アレンの2005年の映画『マッチ・ポイント』の最初の場面のように、テニスボールが、まさにネット上にある瞬間、ショットが凍結したままなのだ。危険と機会に満ちた、この停止時間は、国際的スポットライトを浴び、もちろん国内でのイメージを押し上げるリーダー役を求める一部の人物を惹きつける。推測は容易だが、我々はトルコ大統領レジェップ・タイイップ・エルドアンの話をしているのだ。
先週彼は、ドンバスを威嚇するために使うウクライナへの致命的なトルコ・ドローン販売成約に成功し、同時に、自身をモスクワ・キエフ間の平和調停者として提示するのに成功した。エルドアンの政治的身分証明書は彼に多少の画策の余地を与えるには十分規格外だ。だがトルコの予知不可能さ、この国を非同盟主義劣化版として見る可能性は、その信頼性を裏付けられる権力の立場というより、その弱点と矛盾から生じる。
NATOで、アンカラは、アメリカに続き二番目に大きな軍事力だが、アメリカのパトリオット・ミサイルを拒絶し、ロシアからS-400航空防衛システムを買っている。いささか修辞的に、トルコの誰かが、この選択を「西洋からの国の解放」と歓迎した。ロシアからのガス輸入は重要で、経済的結びつきには産業、建設投資と観光事業がある。ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は、彼の国を訪問するようにというエルドアン大統領の招待を受け入れたところだ。北京冬季オリンピックから戻った後、今月彼の訪問日時をクレムリンが発表するとトルコ人は思っている。
それゆえ、モスクワとの関係は常に良いわけではない。時々ひどい関係になる。2015年11月、シリアで、トルコがロシアのSu-24戦闘爆撃機を撃墜した。トルコ兵器(またもやドローン)が2020年の戦争でアゼルバイジャンがアルメニアからナゴルノ-カラバフを奪還するための猛攻に役立った。ロシアにとって戦略的地域だ。イラン最高指導者アヤトラアリ・ハメネイの国際問題顧問アリー・アクバル・ヴェラヤティはトルコが「火に油を注いで」いると言った。最近、いくつかの報道が、12月、カザフスタンにおける暴力的反乱へのトルコ秘密情報機関の、さほど内密ではない関与を示唆している。
何年ものブリュッセルの密室政治の後、ヨーロッパに対する愛と嫌悪の関与は恨みであせた。それで、ここ10年、ヨーロッパ精神を犠牲にしてトルコのアジア精神は劇的に増大した。
NATOとの繋がりは依然強いが、アンカラはアメリカのグローバル警察下より、自身の汎チュルクの旗の下にアジアのチュルク系住民を集めるのを好んでいる。シリアにおけるイスラム国指導者イブラヒム・ハシミ・クラシの最近の殺害も、東部のNATO同盟国に対するアメリカのメッセージと見られる。クルド主導下のシリア民主軍(SDF)の言葉によれば、トルコは「北シリア地域を、ダーイシュ指導者のための安全地帯に変えた」。
アンカラは宿敵の声明を否定したが、対ISIS戦争に参加しないという最初の選択が多くを物語っている。
テルアビブとの関係も同様にジグザグだ。特にイスラエル国防軍の銃撃でトルコ人9人が死亡した2010年のマビマルマラ号事件以来イスラエル-トルコ関係は張り詰めている。2018年5月、トルコはガザ境界でのイスラエル軍とパレスチナ人の致命的衝突後、アンカラのイスラエル大使を追放した。トルコ外交官もイスラエルを退去しなければならなかった。これまで二年間、トルコはイスラエルとの結びつきを復活させようとしていた。数日前、エルドアンは、3月中旬のイスラエルのアイザック・ハーツォグ大統領公式訪問を発表した。経済的困難に押されて、トルコは経済と、同時に、中東でと、アメリカとの政治的立場を改善するためイスラエルと関係を正常化するかもしれない。特にこの新しい雰囲気で、本物か否か言うには余りにも早いが、アブラハム合意によってもたらされる湾岸諸国経済の開放にアンカラは賭けている。
トルコの地政学的立場に対するエルドアンの思惑は、汎トルコ-新オスマントルコ・イデオロギーの夢想によって部分的に制約されている。それでも彼の動きは十分に深刻なトルコの経済問題を終了する衝動に方向付けられている。トルコの年間インフレはほぼ49%にまで上昇して、20年の最高に達し、食品のような基本的なものさえ買う人々の能力を損なっている。トルコ統計研究所は消費者物価指数が、1月前月より11%よりわずかに多く上がったと述べた。このデータによれば食料品価格の年間増加は55%以上だった。
トルコの野党は繰り返し、統計研究所の独立とデータを問題にしている。独立したインフレーション・リサーチ・グループはトルコの実際の年間インフレを衝撃的な114.87%と推計している。財政的苦難が広がるにつれ、大統領が、銀行政策担当者や大学総長や高等裁判所裁判官まで任命する最近の職権集中への批判を引き起こした。
アンカラのいわゆる「ドローン外交」はこの文脈で理解すると、わかりやすい。最初の成功は2020年のリビアだった。バイラクタルTB2は、カタールが購入し、トルコ要員が運用し、トリポリに本拠がある国民合意政府(GNA)がトリポリに対するハリファ・ハフタル陸軍元帥の攻撃を止めるのに役だった。ドローンはエルドアンの義理の息子、セルチュク・バイラクタルが所有するイスタンブールを本拠とするバイカル社が生産している。European Council on Foreign Relationsのフェデリコ・ボルサリはバイラクタル家は重要な資産になったと述べた。「それらの最も重要な効果はトルコにもたらした経済的機会と政治的影響力かもしれない」と指摘した。
更に今モスクワがトルコにいらだっているのは、トルコ航空宇宙企業が製造したアンカラの長航続時間無人飛行機を生産するためのキエフ付近のドローン工場建設計画だ。
ドローンは無敵ではない。とりわけ最も重要な利点は比較的低コストだ。それらに対して最も使われる防衛の一つは電子対策だ。ロシアは新しいトールM2SAMミサイル・システムを持っている。ドローンに対し特別に開発された致命的な短距離航空防衛ミサイルシステムだ。だが多くの場合「ナッツを割るのにハンマーを使う」ようなものだ。ロシア地上部隊指揮官オレグ・サリューコフ大将がロシースカヤ・ガゼータにこう述べた。「誘導航空防衛ミサイル一機の費用は小型無人飛行機の費用を遙かに上回る。この理由から、このシステムのため比較的高価でない小型ミサイルが開発中だ」。
エルドアン大統領の平和維持の試みは結構だが、ロシアによるクリミア半島併合を合法と認めず(それでも、2008年、彼は素早くコソボ独立を認めた)、ウクライナを完全武装させながら追求するのは挑戦的だ。何より、彼はNATOから、いかなる譲歩も引き出せる立場にないように思われる。彼の外交上の離れ技は、実際の平和構築過程というより、ボールがまさにネット上にあるうちに彼の事業を守ることを目指しているように見える。
クラウディオ・ギャロは元ラ・スタンパ外国版編集長でロンドン記者。彼は以前アジアタイムズ、Enduring AmericaとRT.comに書いた。彼の主な関心は中東政治と西洋哲学。
個々の寄稿者の意見は必ずしもStrategic Culture Foundationのものを意味しない。
記事原文のurl:https://www.strategic-culture.org/news/2022/02/10/will-erdogan-peacekeeping-in-ukraine-work/
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デモクラシータイムス
日刊IWJガイド ウクライナについて詳しい記事
「ゼレンスキー大統領、BBCのインタビューに『NATO加盟が問題ではなくウクライナ人の独立、命、未来の問題だ』とはぐらかす」2022.2.21号~No.3448号
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