キエフのエルドアン、北京のプーチン:新オスマン主義は大ユーラシアにしっくり収まれるか?
2022年2月4日
Saker
ペペ・エスコバール:イスタンブールから。許諾を得て公表される報告。世界が北京でのプーチン-習サミットの重大な発表に注目する中、トルコのエルドアンはNATOとユーラシア間の痩せ細る綱を渡り続けている。Cradleと重複投稿。
中国の暦で壬寅(みずのえとら)の年は、ビッグバンで始まった。ロシアのウラジーミル・プーチン大統領と中国の習近平主席の北京におけるライブ・サミット、一方より小さなバンは、ウクライナのキエフにいるトルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領
。そして、そう、それはすべてつながっているのだ。
クレムリン対外政策顧問ユーリ・ウシャコフは、事前に、「安全保障問題を含め最も重要な世界問題に関し」ロシアと中国が同調する非常に重要な「新時代に入った国際関係に関する共同声明」をプーチン-習が発表することを明らかにしていた。
セルゲイ・ラブロフ外相と、サミット前休みなしに働いていた王毅外相は共同声明を完成させるため前日北京で会合した。王外相は一帯一路構想(BRI)のユーラシア経済連合(EAEU)との増大する相互接続を強調し、南の発展途上諸国の関心を引くBRICS協力やウクライナ、アフガニスタンや朝鮮半島に関する広範囲な議論に言及した。
ロシア-中国共同声明は(ここではロシア語)全く手抜きしていない。二つの世界大国は、サミットの重要な結論の中でも、NATO拡大に反対だ。国連と「国際関係における公正」を支持し、「主権国家の内政干渉」と戦い、「外部勢力」が国家安全保障に悪影響を及ぼすことに反対し、カラー革命には断固反対だ。
新華社が発表したプーチン論説が最高レベルにおける中国-ロシア議論の全範囲を詳述した。「国連において、グローバル問題における中心的調整役を強化し、国連憲章を中核に置いて、国際法制度への違反を阻止する」意欲から、「国家通貨による決済の慣行を首尾一貫して拡大し、一方的な[アメリカ]制裁の否定的影響を相殺するための仕組みを作る」ことに至るまで。
プーチンは中国を「国際的な場における我々の戦略パートナー」と断固定義し、彼と習は「主に世界の問題に対処する上で見方はほとんど同じ」だと強調した。
彼は言った。「この戦略的パートナーシップは持続可能で、本質的に貴重で、政治情勢によって影響されず、誰も標的にしていない。それは、お互いの根本的に重要な権益の尊重、国際法の厳守と国連憲章に支えられている。」
南の発展途上諸国と、可能性としては、今ウクライナを巡るこう着状態のため値上がりした燃料価格で凍てつく冬に直面しているヨーロッパの一部地域も、これをNATOの世界観と比較し損ねることはあるまい。
一方、エルドアンとゼレンスキーはキエフでトルコ-ウクライナ戦略的パートナーシップを再検討していた。
エルドアンはキエフでなかなかの偉業を成し遂げた。彼はウクライナで、正確に容赦ない戦争株式会社の言説に従わずに「「平和な外交的な解決」を主張したのだ。解決は「ミンスク合意の枠組みの中で、ウクライナの領土保全と国際法を基本に」見いだされるべきだとさえ彼は言った。
それはたまたま、まさにモスクワの見解と結び付く。クレムリン報道官ドミトリー・ペスコフは以前「もしトルコがキエフにミンスク合意を実行するよう促すことができれば、モスクワはこの進展を歓迎する。」と発言していた。
サルタンまたもや変化
それで優しい使者/和平調停者エルドアン出現だ。対外政策で一層洗練された新オスマン主義後の姿勢の模索と解釈できる魅力的な果てしない歴史物語の最近の意外な展開。
まあ、ことはそれほど単純ではない。エルドアンはキエフ訪問前でさえ、アンカラはプーチン-ゼレンスキー・ライブ会談あるいは「技術水準での協議」を主催する準備ができていると明言していた。
それは、北京での習との会談後、プーチンにアンカラ小旅行を勧める彼の示唆だった。「プーチン氏は、中国訪問後トルコを訪問すると我々に言った。」
エルドアンは実際1月下旬プーチンを招待した。クレムリンは期日はまだ設定されていなと認めている。
高レベルの戦略評議会の一環という表向きのキエフへのエルドアン訪問目的は、モスクワにとって非常に油断ならない他ならぬエルドアンの女婿セルチュク・バイラクタルが所有する企業Baykar Makinaが生産するバイラクタル・ドローン共同生産を含め、いわゆる新世代貿易協定に署名することだった。
そう、エルドアニスタンでは全て家族内だ。そして問題は-2018年以来ウクライナに売られたバイラクタルTBT2戦闘ドローンが、ドネツクの一番住民に対して使用され続けていることだ。ラブロフとプーチン自身さえ、それに関して、アンカラに対し非常に声高に主張している。
エルドアンの地政学綱渡りには、ロシアのS-400購入と、アメリカのF-35拒否を含むが、ロシアのガスと核科学技術を受け取りながら、バイラクタルをロシアの敵に売り、一月下旬には、トルコのフルシ・アカル防衛大臣が黒海でNATOを制限する上で非常に具体的な1936年のモントルー条約の支持さえ表明した。「今日の条件の下で[モントルー条約]をあきらめるのは問題外だ。」
ブリュッセルのNATO本部は喜ぶまい。
今まで、エルドアンと彼の公正発展党(AKP)は、地中海を黒海につなげエルドアンによれば「完全にトルコ主権下」におく、明らかにNATOの見地からは非常にうま味が多い取り引きだが、依然到底無理な計画のイスタンブール運河のため積極的にモントルー条約を無視していた。だが現実は、アンカラは、経済/金融の泥沼にはまりこみ運河を作る手段を持っていない。
地政学の綱渡りで、どちらに転ぶか分からないのが、汎テュルク主義、あるいは汎ツラニズムの吸引力具体化する旧テュルク評議会、現テュルク諸国機構(OTS)の本当の狙いだ。それは既に、「一つの民族、二つの国」にトルコ-アゼルバイジャンを団結させた去年のシュシャ宣言を越え、今やこの二国に加え、カザフスタン、ウズベキスタンとキルギスタンを取り込み、ハンガリー、アフガニスタン、トルクメニスタンに積極的に良いよっている。そして最後になるが決して軽んじるべきではない国がある。ウクライナだ。
昨年11月、OTSはイスタンブールの厳重に警備された島で会合した。彼らはタリバン・アフガニスタンの極めて複雑な政治環境が、テロや制御できない移民の新しい波に波及しかねない事実を詳細に論じた。将来決して飛び火させない現実的OTS措置だ。
小アジアとコーカサスと中央アジアを結びつける橋、あるいは南コーカサスと中央アジア間の善意の「対話」で、OTSは理論的に、黒海から新彊まであらゆる地域を見え透いたトルコ覇権下におくのだ。これは深刻なトロイの木馬要素を暗示する。NATOの存在だ。
OTSが、単にオブザーバーに過ぎないトルコではなくイラン同様「スタン諸国」を正式加盟国として結集する上海協力機構(SCO)とどのようにインタフェース接続するかは今のところ分からない。SCOの最大勢力はロシアと中国で、もちろん決して、例えば、カスピ海が欧米の捕食性政策に開放されることや、NATOが「後ろから指揮して」、ロシアとイランの勢力圏や、とりわけ「安全保障」圏を侵略するのを許すまい。
王宮の廊下での会話
トルコ中で完全に支配されている90%以上のエルドアン・メディアが、どのように評価しているかを検討するのは実に啓発的だ。アンカラおある1000部屋のサルタン風宮殿の廊下で渦巻いている本当の計算が一体何かを反映しているのだ。
彼らはロシアが「クリミア半島と併合された東ウクライナを侵略し」「黒海と東ヨーロッパにおける陣地を強化しよう」としていると見ている。同時に、彼らは、ロシアと中国を「包囲する」NATO戦略がトルコにも適用されており、帝国は、より大きい戦争での単なる「前線」として、トルコを手段として利用していると考えている。
だから「トルコの脅威は、今ロシアや中国の脅威と同じぐらい強い。」
戦争株式会社が是が非でも欲しているものを手に入れれば「黒海は東地中海に変えられるだろう。完全に黒海に定着したアメリカとヨーロッパは彼らが決して去らないことを意味する。」ことを彼らは理解しているように思われる。それは「中期的、長期的にトルコの破壊をもたらしかねない」。
そして、そこに重要な展開があるのだ。「ウクライナはロシアを止めることができない。だがトルコはそうできる。」エルドアンは、正にそれを演じているのだ。「アメリカとヨーロッパが黒海に定着するのを阻止しなければならない。トルコ-ロシア関係は維持しなければならない。」問題は「ウクライナの一体性と国防をどのように支持しなければならない」かだ。
上記の全てがエルドアンと完全に結び付く、キエフから戻ると、欧米はウクライナの危機を「悪化させる」ことを望んでいると、あらゆる修辞的銃口が炸裂し、燃え上がった。エルドアン・メディアは「ロシアに対してトルコを押しやるようゲームが設定されている」と描き出している。
エルドアンはこれまでのところ「規則に基づく国際秩序」に決して本当に異議を主張しなかった。彼は常に東と西に、二つの異なるメッセージを送るよう心がけてきた。アジアには、反帝国主義、植民地政策の恐ろしい結果、イスラエルのアパルトヘイト国家と欧米のイスラム恐怖症を強調していた。欧米に対しては、彼は文明社会対話の彼自身版で感銘を与えた(そして「独裁者」として烙印を押された)。
究極的に、エルドアンは欧米に毒されたわけではなく、その正反対だ。彼はアメリカが率いる秩序は、イスラムの土地資源を略奪する関心しかない新植民地権力と見ている。もちろん彼は文化的にハンディキャップを負っている。最善でも、コーランの節を記憶し、オスマントルコの軍楽を聞き、奇妙なトルコのポップ・スターと写真をとることに固執する程度だ。彼は本を読まない。全て本能なのだ。
イスタンブール、カパルチャルシュ・バザールのエルドアン新オスマン主義に関する会話は、どんなシンクタンク分析も打ち負かす。バザール商人たちは、それは常に不安定なものだと我々に言う。外国政策の上で、トルコはアメリカ属国でいることにうんざりしているという確信とも結びついて、親EUから、排除されるいらだちへと移行した。エルドアンが、本能的に、欧米共同の現在の、ひどい戦略上の大失敗を把握したかのようだ。それで今、ロシア-中国と何らかの戦略上の協力を構築しようとする彼が努力しているのだ。
だが彼は転向を経験したのだろうか?彼の有名な不安定さを考えると、全てが白紙に戻る。エルドアンは長期の記憶力があり、プーチンが、いつもの諜報機関の容疑者による2016年のクーデター未遂の企てを非難し、個人的に彼を支持した最初の世界首脳だったことを忘れていない。
エルドアンのトルコがロシアの戦略的パートナーになるにはまだ先が長い。それでも彼は地政学の風がどの方法に吹いているか知る才覚を持っている。そして、それはユーラシア統合、ロシアに概念化されたより大きいユーラシアパートナーシップを示しており、BRIやEAEUやSCOを通してあらわれたロシア-中国戦略的パートナーシップ優位だ。
トルコでは、ユーラシア主義ミニブームさえある。彼らは世俗的だ。ロシア-中国と全く同じように反NATO。西アジアで議論の余地ががないトラブル・メーカーである帝国をお考え願いたい。モスクワとテヘランとのより親密な結びつきを望んでいるのだ。
「Nostalgia for the Empire: The Politics of Neo-Ottomanism 帝国への郷愁:新オスマン主義の政治」という本で、M・ハカン・ヤヴズは「新オスマン主義はイスラム至上主義、オスマントルコの壮大さの残された記憶の言説と、その歴史的ルーツでトルコを地域大国として再編成したいという顕著な願望の相互関係のクモの巣を構成している」と論じている。
注目に値する言葉は「地域大国」だ。(朽ちつつある)欧米の単なる家臣ではなく、強い大ユーラシアにしっかり統合された強い「地域大国」になろうではないか?エルドアンがアンカラでのプーチンとの散歩に思い焦がれているのは少しも不思議ではない。
ペペ・エスコバールは独立地政学アナリスト、著者、ジャーナリスト
記事原文のurl:https://thesaker.is/erdogan-in-kiev-putin-in-beijing-can-neo-ottomanism-fit-into-greater-eurasia/
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デモクラシータイムス 経済安保の話題で大川原化工機事件にも触れておられる。
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