民主主義サミットからオリンピック・ボイコットまで-衰退しつつあるアメリカ権力
2022年1月7日
Brian Berletic
New Eastern Outlook
ここ数ヶ月、アメリカは世界舞台で中国に地政学的権力を振るおうと試みた。
まず、アメリカは2022年北京オリンピック・ゲームの広範囲にわたる外交的ボイコットを引き起こそうと試みた。アメリカ外交官が北京大会に参加しないと発表した後、オーストラリアとイギリスとカナダが続いた。ニュージーランドは「ほぼCovidの関係から」外交官を派遣しないと北京に通知するだろうとブルームバーグが報じた。
欧米メディアは、これを中国への厳しい打撃と描写しようと試みているが、ひと握りの欧米諸国が、ゲームを頓挫させたり混乱させたりするため、できる限りのことをするだろうとは大方が予想していた。最近まで、世界中でアメリカ外交政策を推進する有力パートナーだったフランスさえ含め、欧米や他の国々はボイコットしないと言っている。
国際連合がオリンピック休戦署名を集める中、英米ボイコットが行われたのだ。シドニー・モーニング・ヘラルド紙は記事でこう報じている。「オーストラリアは外交的ボイコットを重視するので、北京オリンピックのための「休戦」署名を拒否する。」
1993年に、それが復活して以来、通常イスラエルと北朝鮮が休戦に署名しない唯一の国々だ。だが国連総会は、木曜日、20の国の支持なしで、この決議を通過させた。
アメリカ、インド、オーストラリアと日本という「クアッド」メンバーのいずれもこの決議を支持せず、オーストラリア、ニュージーランド、カナダ、イギリスとアメリカで構成されるファイブ・アイズ諜報共有ネットワーク・メンバーのうちニュージーランドだけが、この決議に署名した。
20カ国は多いと思われるかもしれないが、総計193の国連加盟国の約10%だ。アメリカと同盟諸国が中国に突きつけた非難の重大性を考えると、世界の国々の90%が中国を孤立させるアメリカの試みに心を動かさず、納得せず、逆にアメリカが自身を孤立させているだけのように思われる。
ワシントンが自ら計画した「民主主義サミット」でも中国は標的だった。台湾代表の招待は、ワシントンの勢力圏外の北京や他の国々を「無視する」ことを意図していた。だが、またしても、ことは裏目に出た。
招かれなかった国々の多くは懸念を全く表明しなかった。前シンガポール外務外大臣ジョージ・ヨーは中国の環球時報インタビューで「シンガポール民主政治の目的はアメリカの基準を満たすことではなく、シンガポール人に奉仕することだ」と述べた。
だがこの催しは「バーチャル」で、コンピュータを点けるだけで参加できるのに、ワシントンに招待されながら出席を断った国々があったのは実に恥ずかしいことだ。
パキスタンも、これらの国々の一つだった。招待されたが辞退したのだ。ガーディアンは「緊急問題:民主主義が脅かされているとサミットでバイデンが述べた」という見出し記事で」こう主張している。
木曜日、外務省が突然発表して、パキスタンは理由を言わずサミットから抜けた。イスラマバードの外務省筋は中国が招待されないのでパキスタンは参加しないと述べた。
パキスタンには、ワシントンの地政学ゲーム、この最近のバーチャル集会は、明らかにアメリカの戦略地政学的権益を支持するよう設計されているので、特にこの「サミット」に関して術中にはまらない多くの理由がある。
パキスタンは軍事とインフラ協力両方で中国を友好国の一つで、重要なパートナーと見なしている。「民主主義サミット」は明らかに主に中国を狙っていて、パキスタンの出席拒否は、イスラマバードが、近未来、中期的未来に世界がどうなると見ているかについて明確なサインを送ったのだ。
隣接のアフガニスタンの20年におよぶワシントンによる軍事占領や中国人技術者や彼らを守るパキスタン保安部隊に標的を定めるパキスタン南西バルチスタン州のテロリストに対するアメリカの国家的支援は明らかにパキスタン参加を少しも魅力的にしなかった。
世界権力の中心は明らかに移動しており、外交政策と手法でアメリカに責任があるのだ。
アメリカは道徳的に優位な立場を奪還しようと試みているが、世界的優位は皮肉にも近代史上最も露骨な非倫理的なプロパガンダ攻勢の一つによって追求されている。それは、経済的手段と軍事的恫喝によっても追求されている。
中国が世界平和と安定性に対する脅威だというワシントンの主張は、明らかに世界的舞台で否定し難く平和と安定を脅かしているアメリカ自身の行動で損なわれる。
中国が必然的にアメリカや他の西洋諸国をしのぐのを防ぐために、アメリカが一体どこまでやるのか知るのは困難だが、一つ確実なのは、アメリカの影響力が明確に目に見える形で凋落していることだ。かつてワシントンは、そのグローバルパワーと決意を実証するため、標的した敵に対し、国連で世界中の国々を集結するのが容易だったのに、今や更なる弱体化の、ぶざまで暴露な実証と化している。
Brian Berleticは、バンコクを本拠とする地政学研究者、著者。オンライン誌New Eastern Outlook独占記事。
記事原文のurl:https://journal-neo.org/2022/01/07/from-summits-to-boycotts-america-s-waning-influence/
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東京新聞朝刊一面に納得。
米軍特権際立つ日本
RTの驚く記事を読んで翻訳掲載しようと考えていたが、既にブログ『私の闇の奥』で翻訳掲載済み。『アメリカ・インディアン悲史』『アメリカン・ドリームという悪夢―建国神話の偽善と二つの原罪』を拝読して卑劣な行動にあきれていたが。想像を超える。
元のRT記事https://www.rt.com/usa/543541-us-nuclear-tests-shoshone-nation/ には、もう一つ衝撃的題名記事のリンクがある。
‘I wish my tribal ancestors had not helped the Pilgrims survive their first year’
「移住者が最初の年に生き残るのを部族の先祖が助けなければよかったのにと思う」
この記事には、ネトウヨというか宗主国ゲス勢揃いという感じのゴミ・コメントがてんこもり。
藤永氏翻訳の核爆弾実験記事には著者インタビュー映像リンクがないので貼り付けておこう。
ポーランド、ウクライナ、ロシアとユダヤ人、なじみのない歴史をまなぶ希な機会。
【戦争前夜! 地政学上の要衝ウクライナにはびこる反ユダヤ主義の歴史シリーズ特集 3(ソ連邦崩壊後)】本日午後7時から2014年収録「動乱のウクライナ ~岩上安身によるインタビュー 第413回 ゲスト 大阪大学助教(※収録当時)・赤尾光春氏 第3夜(後編)」を公共性に鑑み全編フルオープンで再配信します!
視聴URL: https://www.youtube.com/user/IWJMovie/featured
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イアン・ザバルテは現在、先住民の間で核廃棄物反対運動をしているグループから第一線を退いています。なぜなら彼もMe tooの加害者であったことがかつてあり、その被害者が何十年も経った後に名乗り出て、それを重く見た他の女性リーダーから説明を求められているためです。
個人のことと彼が社会問題に取り組んでいることを切り離した方が良いのか?私は反対運動をしている人が必ずしも聖人である必要はないと思いますが、レイプによって受けたキズが何十年経とうが癒えることは非常に難しいのもわかるので、きちんと謝罪し解決した上で、またセカンドチャンスで帰ってきてほしいです。4年ほど前に直接本人にも会ったことがあり、彼がメディアに大きく取り上げられても、なんとなく彼の全体像が見えないのが薄っぺらに感じてしまいます。
アルジャジーラでも以前取り上げられていたことがあるので、ご参考までに下記リンクです:
Al Jazeera, 29 Aug 2020
"A message from the most bombed nation on earth"
YouTubeもあり
Ian Zabarte on ‘the most bombed nation on Earth’
https://www.aljazeera.com/opinions/2020/8/29/a-message-from-the-most-bombed-nation-on-earth
投稿: 玉山ともよ | 2022年1月16日 (日) 12時54分