« カザフスタン後、カラー革命時代は終わった | トップページ | カザフスタンの混乱:誰にとっての好機? »

2022年1月20日 (木)

中国と中南米:地歩を失いつつあるワシントン

2022年1月13日
ピョートル・コノワロフ
New Eastern Outlook

 近年展開している世界的な中国-アメリカ対決は、世界経済や、すべての地域のあらゆる局面に影響を与えている。中国はアメリカの伝統的影響圏である中南米を含め、あらゆる地域でアメリカを頑固に圧迫している。

 今のところ、アメリカは中南米諸国の主要貿易相手国で彼らの多くに命令しようと努め続けている。アメリカにある35の独立国の33カ国(キューバとニカラグアは、それぞれ2009年と2021年に加盟から脱退した)を含む米州機構さえワシントンに本部を置いている。

 アメリカの支配的地位は、中南米の多くの国家にとって、以前も満足なものでなかったし、今もそうだ。だが、アメリカのように力がある国際的プレーヤーに対する依存を克服するのは困難だ。この難題解決には、新パートナー諸国を支援し、彼らを旧宗主国の制裁から守ることが可能な、同様の影響力をもった誰か他の当事者と絆を確立することが必要だ。最近、中南米諸国の大部分が属する小さな貧しいアメリカと付き合うことを望まない国々は、中国の勢力圏に移行しつつある。

 中国は長年、中南米諸国との関係を発展させてきた。世界中の社会主義政権を支援したソ連崩壊以来、社会主義世界の新リーダーとして、中国はソビエト社会主義共和国連邦なきあとの空間を次第に満たして、キューバとの関係を強化し始めた。

 21世紀最初の10年は中国と中南米間の貿易と経済関係の急速な発展が目立った。2004年-2005年、北京はキューバのニッケル産業に大規模投資をした。2006年にチリと自由貿易協定に署名し、いくつかの措置をとり、おかげで中南米諸国と中国の貿易総計が2000年から2009年までに、100億ドルから1300億ドルへと拡大した。

 2010年、中南米諸国は、アメリカとカナダ以外のアメリカ中の独立国家を含む中南米・カリブ諸国共同体(CELAC)を設立した。組織の目標は、中南米諸国の統合とアメリカの影響力の縮小だと明示的に宣言されていた。興味深いことに、三つの国がCELACの暫定集団指導体制に入った。その指導者ウゴ・チャベスは自身を共産主義者と呼び、社会主義傾向の政策を追求するベネズエラ、南アメリカで最も経済的に発展した国の一つ、チリと、社会主義国家で、アメリカの長年の敵キューバだ。この三国全てが中国の信頼できるパートナーだ。

 そのおかげで北京、彼らの各国と二国間関係ではなく、全ての中南米の諸国と協力することが可能になる中国ラテンアメリカ・カリブ諸国共同体フォーラムが、2014年7月17日に設立されたのは驚くべきことではない。ブラジルで開催された第一回サミットは中華人民共和国指導者習近平が出席した。1週間後、習近平はキューバの首都ハバナに到着し、キューバ指導者ラウル・カストロと会った。そこでラウル・カストロは中国-キューバ関係が歴史上最良な期間を進むだろうと述べた。

 まもなく、中国が、中南米、特にキューバに深く入り込んで、貿易や経済活動以上のこともすることが可能だと信じる理由ができた。2018年、キューバのベフカル地域の特定な物体の人工衛星画像が公開された。専門家によれば、これは米軍の活動を監視するのを可能にする電子情報収集ステーションだ。キューバは自力で、このような施設を建設することはできず、最もありそうな建設者は中国だと考えられている。

 2021年12月4日、中国-ラテンアメリカ・カリブ諸国共同体フォーラムの3回閣僚会議が行われた。中華人民共和国の習近平主席がビデオリンク経由で催しに参加した。
 フォーラムの長年の存在で、参加諸国が中国とラテンアメリカ・カリブ諸国共同体間の団結と協力を熱心に強化したと中国主席は指摘した。中国ラテンアメリカ・カリブ諸国共同体フォーラムは国際的相互作用のため不可欠な場となった。中国とラテンアメリカ・カリブ諸国共同体間関係は全ての国にとっての平等と互恵の新時代に入った。

 世界が不安定と転換の時期を進む中、習近平によれば、中国とラテンアメリカ・カリブ諸国共同体州はCOVID-19流行の影響を克服し、国民の健康を保証しなければならない。

 中国主席は世界的開発構想へのラテンアメリカ・カリブ諸国共同体の参加を歓迎した。2021年9月、彼は第76回国連総会で、中国と彼らの共同事業は現在のグローバル危機をしのぎ、「人類運命共同体、人類共有の家」作ると述べた。

 習近平によれば、中国とラテンアメリカ・カリブ諸国共体は「平等と互恵と共同開発に基づく協力のための包括的パートナー」だ。

 中国指導部は中国とラテンアメリカとカリブ海諸国間の関係を発展させる新計画を展開するよう呼びかけた。そしてこの協力を彼らの国民の幸福と人類の進歩のため推進力とした。

 中国-中南米協力の過去と未来の業績を示唆する習近平の希望にあふれた演説は、催しに参加したラテンアメリカ・カリブ諸国共同体の指導者たちに大いに影響を与えた。

 12月10日、ラテンアメリカ・カリブ諸国共同体の一国ニカラグアは、台湾との外交関係を切断し、あらゆる公式の接触や接点も終え、中華人民共和国を「すべての中国の唯一のと法定代理人で、台湾はその領土の不可欠な部分」と認めたことが分かった。

 よく知られている通り、それは部分的に認めていた中華民国台湾との関係を切断し、それを中華人民共和国の一部として認めること、中華人民共和国を唯一の本当の中国として認めることは北京がパートナーに要求する主要条件の一つだ。このような動きは、世界中の国々にとって、巨大な中国市場へのアクセスと、大規模融資や投資への道を開く。

 中南米諸国にとって、中華人民共和国は、既にアメリカ合州国に続く第二位の貿易相手国だ。関係は着実に発展し続け、中華人民共和国は、まもなくこの地域でトップレベルのプレーヤーになるかもしれない。キューバにおける中国の無線諜報ステーションの存在が確認されれば、ほとんど、そうなっていることを意味する。キューバとニカラグアでの革命は、当時、戦略上重要な安全保障地域の支配を失ったアメリカ合州国の地政学的敗北と呼ばれた。中南米地域支配の完全な喪失が、アメリカ合州国にとって何を意味するかは、まだわからない。

 ピョートル・コノワロフは政治評論家。オンライン誌New Eastern Outlook独占記事。

記事原文のurl:https://journal-neo.org/2022/01/13/china-and-latin-america-washington-is-losing-ground/

----------

 『魂を撮ろう ユージン・スミスとアイリーンの水俣』を読了。
 東京新聞書評で知ったように記憶している。『女帝』を読んでいるので素晴らしい本だろうと期待していた。期待以上。日本の公害政策の酷さを再確認。二人の主人公の育つ過程の丹念な記述から始まる。
 被害者運動を「分割して支配する」狡猾さ。
 第一組合と、暴力団まがいの第二組合。ユージンは酷い怪我を負わされるが不起訴。強きを助ける警察。
 産業公害時に常に動員される御用学者。
「産官学とメディアの結託」という小見出しもある。
 第六章には驚いた。自主交渉派のリーダー川本輝夫氏に公害等調整委員会が示した「調停を望んだ人たちの委任状の束」人々の署名と捺印があるものだ。
 276ページで急展開する。

「本人にゃ見せんとか、ええっ?」
書類がついに患者側に渡ると、部屋中が騒然となった。
「私の名前が書いてあるが書いた覚えはない」「ハンコをついた覚えもない」「この人はすでに死んでいる。どうして判が押せるか」

 愛知県知事リコール不正署名事件そっくり。

 第七章 撮る者と撮られる者 で、有名な写真の公開にまつわる事情が語られる。

 水俣病に関する本を読んだのは三冊目?
 原田正純『水俣病』
 宇井純『公害の政治学―水俣病を追って』

 UIチャンネル

時事放談(2022年1月) 鳩山友紀夫×孫崎享

« カザフスタン後、カラー革命時代は終わった | トップページ | カザフスタンの混乱:誰にとっての好機? »

アメリカ」カテゴリの記事

中南米」カテゴリの記事

読書」カテゴリの記事

中国」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

« カザフスタン後、カラー革命時代は終わった | トップページ | カザフスタンの混乱:誰にとっての好機? »

お勧め

  • IWJ
    岩上安身責任編集 – IWJ Independent Web Journal

カテゴリー

ブックマーク

最近のトラックバック

無料ブログはココログ