中東でアメリカに報復するフランス
2021年12月9日
Salman Rafi Sheikh
New Eastern Outlook
最近G-20会議の際のアメリカとフランス大統領会談が、AUKUSショックの後、フランス・アメリカの絆を「復活させた」と言われたが、いくつかの最近の進展が、AUKUSによって起こされた溝は、一回の会談で橋を架けるにはあまりに深いことを明確にした。実際、今明白になり始めた会談の結果は、決してほころびた結びつきの修復ではなかった。最近のフランスのマクロン大統領によるUAEとサウジアラビアを含む中東訪問は、最近まで主にアメリカの領域だった地域で、フランスが、いかに積極的に、意図的に、その軍の影響力を拡大する方法を模索しているかを示している。より重要なのは、それは見掛け以上に、より直接アメリカの影響力を削ぐ形で、その影響力を拡大している点だ。UAEとのフランスの兵器取り引きと、彼のサウジアアラビア訪問は、サウジアラビア人ジャーナリストのジャマル・カショギの残忍な殺人を巡り、ムハンマド・ビン・サルマンを巻き込む論争(MB)が勃発して以来、欧米首脳による最初の訪問で、F-35取り引きを最終的にまとめ上げるのにバイデン政権が不本意で、UAE-アメリカのつながりが多くの緊張下にあり、イスタンブールのサウジアラビア領事館でのジャマル殺人に、MBが直接責任があると多くのサウジアラビア人が考えているものに対するバイデン政権の積極的試みのため、アメリカ・サウジアラビア関係が史上最低になっている時点で行われているのだ。
UAE指導者との会談で、フランス大統領は、UAEに80機のラファエル戦闘機と12機の軍用ヘリコプターの購入を認める儲かる190億米ドルの商談をまとめた。この商談は、しばらくの間フランスの軍需複合体を活気づける可能性が高いが、湾岸アラブ諸国に、防衛強化に、より多くの注意を払うよう促して、中東からのアメリカ撤退、そして/あるいは軍事的離脱に続く速い変化を経験している、この市場をフランス産業が開拓する入り口としても機能するようにも意図されている。だから、AUKUSが「裏切り行為」だったとすれば、UAEとフランスの兵器商談は、F-35供給を巡るアメリカの強情さに増大するアラブ首長国連邦のいら立ちに付け込んだように思われる。
フランスと首長国連邦の両指導者の商談調印式出席は、この商談の重要性を強調するのみならず、商談がまとまった文脈も強調している。
現状では、イエメン戦争におけるUAEの疑わしい役割を巡り、商談を最終的にまとめるのにバイデン政権は気が進まなかったのに対し、フランスも過去10年、UAEへの自身の軍用品供給で同じ問題に直面していたにもかかわらず、この商談を最終的にまとめ上げた。UAEとアメリカ間で進行中の争いがなければ、UAEは、2011年にそうしたように、ラファエルの制空権と能力に疑いを表明し続けたか、F-35を確保することが可能だったろう。同様に、アメリカとフランス間の摩擦がなければ、フランスは7,000の雇用を生み出し、事業を今後10年続ける儲かる商談のため、アメリカとUAE間の摩擦を使用しなかったろう。
だが、UAEが、そこに潜在的利益を見いださなければ、フランスはこの商談はできなかっただろう。第一に、ラファエルに依存すれば、もしアメリカ-UAEの絆が、それ以上悪化し、アメリカが将来課す可能性がある、どんな制裁も回避できるのだ。第二に、UAEがアブラハム合意の手続き完了で、F-35を買えると期待していたが、このジェット機の所有は、アブダビに、その使用の完全な支配権を与えないのだ。アメリカはアブダビに制限を課しているのだ。言い換えれば、実際のF-35のそこそこの機種に対し、莫大な金を支払った後でさえ、ワシントンはジェット機の制御を維持するのだ。だがフランスは、アブダビに拒否できない申し出をするため、どんな使用制限も除害するだけ十分賢明だった。
フランスとの商談は、単純に言えば、UAEにバイデン政権が課していた拘束から抜け出ることを可能にしたのだ。いくつかの報道が示す通り、アメリカはF-35と引き換えに、アブダビに中国との関係を切るよう圧力をかけていた。そうするのをUAEが拒絶したことが、バイデン政権が取り引きを「再検討する」と決定した根本的な理由だ。だがフランスとの商談は、UAEが、購入源を多様化することで、この地域の地政学で、アメリカに対する立場を強くすることを可能にして、アメリカの圧力戦術を直接くじいたのだ。
この商談の地政学的影響は、ジャマル・カショギ殺人にMBが関与しているというCIA報告以来、リヤドが直面していた孤立に対し、マクロンのサウジアラビア訪問が残した影響と、さほど異ならない。マクロン訪問は、単純に言えば、リヤドが孤立を克服するため待っていた重要な飛躍的進展と見られている。
商談署名でのマクロン本人の出席とほとんど同様に、MBに迎えられる彼の写真には強力な象徴的意味がある。サウジアラビアの事実上の支配者であるMBとジョー・バイデンが、まだ話をしていない事実との明確な対比だ。UAEとの彼の商談のように、マクロンとMBの会談も、ワシントンがMBにかけていた圧力を打ち消したのだ。訪問中、少なくとも27の異なる合意と覚え書きが署名された。イエメンに関しても、フランスはサウジアラビアの「和平提案」を全面支援し、イエメンでの戦争を終わらせるためアメリカが王国にかけてきた圧力を打ち消す可能性がある。
二つの訪問は、フランスがアメリカに代わる選択肢の役割を果たすのみならず、中東からのアメリカ撤退が生み出すギャップを、フランスの一流防衛産業が進んで埋め、直面する手強い課題克服を支援できる勢力として湾岸アラブ諸国に認めさせるのに役だった。
これら訪問中にフランスが採用した明らかな反米姿勢は、AUKUSで引き起こされた溝が素早く埋めるには余りに深いことを明らかにしている。実際、それは既に、欧米同盟関係を究極的衰退と終局的な崩壊への道に向かわせている。中東におけるフランスの成功は、ヨーロッパを世界の中で自立した当事者として確立するマクロンの決意を強め、更にNATOそして/あるいはアメリカ依存に代わる選択肢として、大陸防衛のためのヨーロッパ防衛軍を推進することを可能にするだろう。
Salman Rafi Sheikhは国際関係とパキスタンの外交、国内問題専門家。オンライン誌New Eastern Outlook独占記事。
記事原文のurl:https://journal-neo.org/2021/12/09/the-french-retaliate-against-the-us-in-the-middle-east/
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東京新聞 本音のコラム 今日は前川喜平氏 「ふざけんな!」
森友文書改ざんを強いられて自殺された赤木さんの夫人が起こしていた訴訟に対し、国は「認諾」というとてつもなく実に卑劣な対応にでた。賠償金を支払って、裁判を強制的に終わらせたのだ。裁判が続き証人喚問されるうち、本丸の夫人や夫に焦点が当たりかねないのか恐れたのか。赤木夫人は、このインチキな国に対し「ふざけんな!」と言われたのだ。今年の流行語大賞は「認諾」のはず。
来週の12月20日(月)午後7時から、永井幸寿弁護士に危険きわまりないこの「緊急事態条項」について岩上安身が単独インタビューを行います。フルオープンで公開しますので、知人、ご友人をお誘いの上ぜひ御覧になってください。
視聴URL: https://www.youtube.com/user/IWJMovie/featured
※(再掲)改憲で緊急事態条項が通れば「国民に『お前らの財産没収します!』なんてこともできます!」と明石順平弁護士が危惧!~岩上安身によるインタビュー 第937回 ゲスト 『データが語る日本財政の未来』著者 明石順平弁護士 第3弾
https://iwj.co.jp/wj/open/archives/447524※【エッセンス版】改憲で緊急事態条項が通れば「国民に『お前らの財産没収します!』なんてこともできます!」と明石順平弁護士が危惧!岩上安身によるインタビュー 第937回 ゲスト 明石順平弁護士 第3弾
https://www.youtube.com/watch?v=DSyU3bKBn5Y※【矢野論文について・切り抜き5】岩上安身による弁護士 宇都宮健児氏、エコノミスト 田代秀敏氏インタビュー
https://www.youtube.com/watch?v=pHZl0wcn5-c
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