アメリカ・NATO協議がロシアに対する更なる攻撃の隠れ蓑だったら?
Finian Cunningham
2021年12月27日
Strategic Culture Foundation
ロシアの正当な安全保障上の懸念に対する迅速な対応がなければ、次の段階は一層強固な軍事-専門領域を伴うものになる。
アメリカとNATO同盟諸国が、ロシアの緊急な安全保障提案に一体どう返答するか、時計がカチカチいっているのは極めて明確だ。
モスクワにとって、もし今度の協議が、迅速に強固な安全保障を生み出さなければ、アメリカとNATOは、この協議をロシアに対し長期的軍事力増強を続けるための隠れ蓑に使っているという疑惑をもたらす。
ロシア戦略の堪忍袋の緒も切れる。長年のアメリカとNATOによるロシア領に対する容赦ない侵害で、モスクワは、断固、尊重されるべき越えてはならない一線を宣言するに至った。要するに、これ以上、アメリカ率いる軍事ブロックによる東方向拡大をするな、第二、隣接する国からのアメリカ攻撃兵器の撤去だ。
長い冷戦後ゲームの最新段階は、ウクライナに代理させての威嚇だ。1990年代末期以来、東方向への拡大はしないというロシアへの保証を破棄するNATOによる悪意と後戻りに対して、モスクワが余りに無頓着だったと批判することは可能だ。だがNATOに支援されたキエフ政権が、東ウクライナのロシア人と、ロシアの国家安全保障でロシアを脅迫するのは我慢の限界だ。遅れても、やらないよりましだ。
12月17日に公表されたロシアが要求した安全保障パッケージで、アメリカとNATOが1月に協議を行うことに同意する結果になった。
ロシアのセルゲイ・リャブコフ外務次官は、モスクワの安全保障要求項目は虚勢ではないとを警告した。
ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は、アメリカとNATOが、しかるべき対応をしなければ、国家安全保障を保証するため様々な技術的、軍事的措置をとると述べた。
明らかに、モスクワは、越えてはならない一線を実現する上で明白な進展を確保するため、限定した時間枠を協議に意識的に設定したのだ。ワシントンとヨーロッパ同盟諸国は、NATOを後退させるための法的拘束力がある動きをする必要があるだろう。大きな試練は、ウクライナや他の旧ソ連共和国がNATOに加入するのを不可能にするというモスクワの要求にアメリカが同意するかどうかだ。
バイデン政権とNATOは、これまでのところ、ロシアのこの規定を甘受するのを考慮から排除している。アメリカが、ウクライナのNATO加盟を禁じると明示的に宣言することはありそうもないように思われる。ワシントンは、2008年からしているように、加入を延期し続けるかもしれないが、将来いつの日かウクライナの同盟加盟を拒否するという明示的な、法的拘束力がある約束を期待するのは無理なように思われる。
だから、アメリカとNATO加盟諸国が、ロシアの重要な越えてはならない一線を尊重する意志を持っていないのであれば、協議するという彼らの意図には疑問が生じる。
ロシアに対し攻撃的な政策を続けるため、アメリカとNATOが協議を隠れ蓑として利用しかねない懸念をプーチン大統領は皮肉っぽく発言した。
週末、ロシア・メディアにプーチンはこう語った。「彼ら[NATO]は際限なくおしゃべりし、交渉の必要性について際限なく話し、我々の隣人[ウクライナ]を近代的兵器システムで強化する以外、何もせず、ロシアに対する脅威を増大するだろうから、我々は何か鮮やか、何らかの方法で対処するよう強いられるだあろう。」
クレムリンは明確な越えてはならない一線を発表して、迅速な回答を要求するという極めて異例の処置をとった。だがアメリカとNATOの不誠実さと二枚舌の歴史的実績を考えれば、態度が本当に変化すると期待するのは徒労に思われる。プーチン本人が上記発言で、それを認めているように思われる。
バイデン政権はロシアとの協議について話をしているが、終始実行しているのはウクライナへの兵器や軍事顧問や攻撃能力の供給だ。極端に反ロシアのキエフ政権にとって、これは、モスクワに対する侵略をかき立てる次から次の青信号に等しい。
2014年、CIAが支援したキエフでのクーデター以来、ワシントンはウクライナに25億ドル以上の兵器を与えている。バイデン政権は、来年だけでも、軍事支援で少なくとも更に3億ドル用意している。アフガニスタン用に意図した軍需品の向け先を変える計画がある。我々がここで目にしているのは、ロシアの戸口で、数年にわたり続き、勢いを増している戦争遂行のためのアメリカによる大規模動員だ。外見上明白な遅ればせながらの協議の申し出は、疾走する重装甲車の運転手の停止するという弱々しい手信号のようだ。
更に気がかりなのは、ウクライナ軍に更に多くの戦場の機密情報を提供する国防総省の動きだ。先週ニューヨーク・タイムズ報道がアメリカが既にロシアの軍隊編成について、キエフ政権と「使用可能な」機密情報を共有していることを明らかにした。バイデン政権が検討しているのはウクライナを「守る」という名目で標的設定を強化することだ。
ニューヨーク・タイムズ報道は、こう言って懸念を装っている。「使用可能な機密情報を提供することの一つの潜在的な問題は、それがウクライナに[ロシアに対し]先制攻撃するように仕向けかねないことだとアメリカ当局者が認めている。」
実際、これはワシントンにとっては「潜在的問題」ではない。それは意図的な計算だ。国防総省は、ロシアを不安定化するため政権につけたロシア嫌いのキエフ政権を兵器として利用しているのだ。それは故ズビグネフ・ブレジンスキーのような帝国政策立案者の下で、数十年も遡る戦略目標だ。そして今「グレート・ゲーム」は、ワシントンがロシア自身に標的を定めるはずである、自国国境内にいるロシア軍に標的を定める機密情報を手先の政権に提供するまでに至ったのだ。
この悪意に満ちた背景が、アメリカとNATOパートナーの協議はロシアに対する攻撃の長期的方針のための実に極悪非道な隠れ蓑以外何ものでもないと推論させるのだ。
アメリカとNATOによる容赦ない特有の裏切り行為を考えれば、提案された協議が危険な分岐点となるのをロシア指導部は十分過ぎるほど知っていると思われる。ロシアの正当な安全保障上の懸念に対する迅速な対応がなければ、次の段階は一層強固な軍事-専門領域を伴うものになる。モスクワが既に、ほとんど避けられないのを知った上で、ありそうな結果を計算して待ち構えている領域に。
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NHK解説委員室 解説アーカイブス
「ソビエト連邦崩壊30年 変わるユーラシアの地政学」(時論公論)
啓発されて『ソ連を崩壊させた男 エリツィン』を拝読した。帯に「ソ連崩壊-ロシア連邦誕生30周年」とある。
ソ連を笑ってはいられない。三十年で三流国家に転落した国もある。
植草一秀の『知られざる真実』
政治・経済の破綻を宗主国の鉄砲玉となって戦争でごまかすと固く決めた支配層。憲法擁護派は風前の灯火。
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