エチオピアはバイデンのリビア2.0になるのか、それともアフリカ・ルネッサンスの原動力になるのか?
マシュー・エレット
2021年12月5日
Strategic Culture Foundation
エチオピアの状況は、欧米のメディア・スピン・ドクターを信じない限り、理解するのは、むしろ簡単だとマシュー・エレットが書いている。
「暗黒大陸」アフリカでの出来事の意味を理解しようとする多くの欧米人にとって、彼らの心と現実に多くの障壁がある。アフリカの問題は自ら招いたもの(あるいは中国の負債奴隷制度の結果)だと言う歪曲のフィルターがなければ、実際、欧米の我々は、非常に恐怖を覚えて、組織的変化を要求するかもしれないから、今回もそうに違いない。アフリカの苦境は、アフリカ自身の原因という部分は少なく、人口削減や肝要な資源利用の意図的なプログラムの部分こそが多いことを我々は理解するようになるかもしれないのだ。
この大陸は豊かな歴史と、10億以上の人々が暮らしているにもかかわらず、アフリカは一人当たり世界最低の電力と飲料水で苦しんでいる。(病気、水の入手、飢餓など)予防可能な原因で毎日不要に亡くなる30,000人の子供の大多数はアフリカだ。極端な貧困で暮らす3億4000万人のアフリカ人の生活水準は極端に低く、不十分な医療インフラや公衆衛生が、多くのアフリカ諸国において、1000人当たり80-100人という高い乳児死亡率をもたらしている。
こうしたいくつかの気まずい事実はある程度曖昧にされ、このうわべが維持されている。
最近、アフリカの問題は独裁政権や「民主主義が十分ではないこと」から起きているという考え方を維持しようと試みるエセ言説のガラス細工に、一石が投じられた。
11月23日、アメリカ、イギリス、フィンランドとフランス外交官が参加したズーム会議が匿名参加者に撮影され漏洩されて公開された。このズーム会議が重要なのは、会議の話題が、エチオピアにおける政権交代の必要性に関する物で、会議の主要話者が元エチオピア外務大臣(2010年-2012年)で、現在ティグレ人民解放戦線の広報担当ベルハネ・ゲブレ・クリストスだったことだ。会議自体(いずれもCIAフロント組織と証明済みの)全米民主主義基金とUSAID(アメリカ合衆国国際開発庁)と提携する、2020年11月3日、ティグレ人民解放戦線がエチオピア政府北部司令部を攻撃し、一年にわたる武力虐殺開始数日前に立ち上げられた完全な傀儡組織Peace and Development Center International主催だ。
電話会議の主要参加者は、他でならぬ(元アフリカ問題担当国防次官補代理)ビッキー・ハドルストン、(元駐ソマリア・アメリカ大使)ドナルド・山本、(元駐エチオピアEU大使)ティム・クラーク、(元駐エチオピア・イギリス大使)ロバート・デュワーや他の多くのルールに基づくお仲間連中だった。そこで強調されたのは、エチオピア政府再建のために、現在のアビィ・アハメドのエチオピア政府に対する国際的圧力をかけて、外国が支援するTPLF反政府派を合法的集団として扱うよう強制する必要性、あるいは、あらゆる必要な手段でアビィを直接追放するかだ。
TPLFが、エチオピアでの内戦画策に共謀し、少年兵を使い、テロを行っているのも判明しているにもかかわらず、オバマ時代にスーダンを分割し、リビアとシリアで人道的破壊をもたらした同じチームがバイデン政権を運営し、反政府勢力を支援し続けているのだ。過去数ヶ月にわたり、制裁や民間融資計画の中止の形で、何百万人もの生活に影響を与え、アジスアベバに、反政府派を正当な実力者として扱うよう終始要求している。
なぜエチオピアで政権転覆の取り組みなのか?
エチオピア状況は、欧米のメディア・スピン・ドクターを信じない限り理解するのはむしろ簡単だ。
まず、全てのサハラ以南アフリカ諸国で、エチオピアは唯一植民地化に成功裏に抵抗した国だ。エチオピアはアフリカで、経済的に最も主権を持った国で(2011年以来、青ナイルにグランドルネッサンス・ダムを造るための)大規模インフラ計画のため、ソブリン債を発行でき、中国と緊密に協力し、新興の一帯一路構想にも最も興味を持った国の一つだ。
近年、エチオピアは、ワシントンやブリュッセルやロンドンに膨大な影響を及ぼす人口減少ロビーに屈する圧力にも抵抗している。
人口削減策を拒否したのみならず、何世代もの中で、この大陸最大のインフラ計画建設を推進している。グランド・エチオピア・ルネッサンスダム(GERD)だ。完成すれば、このダムは1億1800万人の国民のためだけでなく、現在人口、2億5500万人のアフリカの角住民のため6200メガワット(mW)以上の発電をする。最も重要なのは、このダムは、アフリカ史上最大で、全住民に電力を供給し、アフリカ中の他の国々が見習う成功モデルとなり、大陸全体の産業発展の原動力になることだ。成功している中国による双方に利益がある協力モデルに導かれる多極秩序の成長で、アフリカの「貧困に対処する」考えは、産業発展により貧困を終わらせるより強い原動力に素早く取って代わられつつある。地球全体に脱炭素化体制を押しつけるCOP26の狂信的な動きのなか、この感覚は、南の発展途上諸国の指導者たちが、しっかり発言した。
(一帯一路構想の活動的なメンバーの)エチオピアは、近年アジスアベバに専門家訓練や、資金供給や外交的援助を提供している中国の最も親密な友人の一人だ。中国が支援するプロジェクトの中でも一番は、陸封のエチオピアを紅海の隣国と結び、世界銀行が、この国に決して認めなかった新しい工業回廊地帯をもたらす、756キロのアジスアベバ - ジブチ間標準軌鉄道だ。
偉大な汎アフリカの指導者ハイレ・セラシエ皇帝がグランド・ルネッサンス・ダム建設を構想した(そしてJFKのアメリカが工学調査を援助した)が、このプロジェクトはセラシエの追放後、1974年に潰され、シメニュー・ベケレの、たゆまぬ努力のおかげで、2011年、ようやく復活した。ベケレはエンジニアで、エチオピアのいくつかの主要水力発電ダム建設を組織し、2018年に彼の自動車で自殺するまで「GERDの代表」として知られるようになった国家建設者だった。欧米諸国政権がダム資金供給を拒否した時、エチオピアは、皮肉にもエイブラハム・リンカーンが、まさに南北戦争中、大陸横断鉄道資金を調達し、アメリカが第二次大戦の多くを支払ったのと同様、50億ドルの債券を購入するよう国民に呼びかけて、自身でそうすることに決めたのだ。
エチオピアにおける中国の存在は、お互いが恩恵を得る協力関係の可能性ゆえに、既に中東を失い始めていて、アフリカも失うのを恐れる多くの欧米ゲーム・マスターを怖がらせている。2021年3月、両国は「BRIの枠組みの下で大規模プロジェクトを守る」覚書に署名し、エチオピア長官は、こう述べた。
「エチオピアと中国は長い歴史、古代文明、素晴らしい文化を持った国です。我々の目標を実現する上で、中国とその大使館からの支援は、我々が長期的、戦略的協力を構築すし、我々の共同作業を継続する上で極めて大きな役割を演じており、今日の催しは、その重要な瞬間です。」
12月2日、中国の王毅外務大臣がアビィ首相を訪問し、中国はエチオピア主権を擁護すると再度誓約した。アビィの横に立って王毅はこう述べた。「中国はどんな国の内部問題にも干渉しない。我々はエチオピア内政にも干渉しない」。両国を分断しようと努める連中に対し「エチオピアと中国の友情は非常に堅固で決して壊せない」と王毅は述べた。
オバマの暗い時代に、ロシアがシリアでの政権転覆作戦を阻止し、今中国が中東を中で東西開発回廊という強力な構想を拡張していて、マッキンダー世界島の中心で一帯一路構想の拡大を破壊し損ねて、アフリカの角、エチオピアで、反政府戦士を利用して、あらゆる術策が展開されたのだ。
テロ主力が実態で、反政府は、おまけのTPLF
(現在、ティグレ防衛軍と改名されている)ティグレ人民解放戦線は、欧米のプロパガンダ機関が報道するような「民主的な人々」の運動ではない。
実際この集団は、漏洩したズーム会議が示す通り、マイ・カドラやラリベラなど占領した都市で、大規模残虐行為を行い、停戦協定に違反し、少年兵を使い、エチオピアで政権転覆を推進するため英米の既得権益集団と協力している現場を押さえられている。こうした主張を疑う誰であれ、エチオピアで暮らしている最も有能な調査ジャーナリストの一人、ジェフ・ピアスが厳密にまとめた記事を読めばわかるが、それはここにある。
実際わずか一カ月前の11月5日、TPLFは、ワシントンD.C.ナショナル・プレスクラブで新しい「エチオピア連邦統一軍事戦線」を発表した! この新しい反政府集団は、明らかに非民主的な作戦に正当性のうわべを作るため、一つの統括組織の下、エチオピアの多くの少数派民族の権益をまとめようと試みたのだ。この集団の報道発表にはこうある。「この統一戦線は我が国が直面する多数危機に対応して形成されつつある。エチオピアや、それ以外の民族に対するアビィ・アハメド支配の有害な影響を反転させるため。そして、この国における安全な権力移行のため大いに協力し、団結する必要性を認識して」。
ベルハネ・ゲブレ・クリストスは、記者会見でこう言って、アビィ政権を脅迫した。「我々はエチオピアの、このひどい状況を終わらせようとしているが、それはもっぱらアビィ政府によってもたらされたものだ。彼の時間は、もはやなくなりつつある。
全て認識の問題
これら集団のいずれも、アフリカ内であれ海外であれ、エチオピア国民は、欧米がしかけるプロパガンダを拒絶しており、現状では、連中の目的を実現する手段を持っていないのが現実だ。エチオピアの主権を擁護する世界中の抗議と、これら四散した反政府勢力との戦いでの政府の成功は、認識を支配する連中が、信じられて欲しいと願っているものと現実は,全く異なっていることを示している。
我々が何度も聞かされている、ベネズエラはフアン・グアイドの民主運動で倒れるやら、ナヴァルニーの民主勢力がプーチン独裁体制を追放するやら、シリア反政府勢力が「虐殺者アサド」を打倒するやら、香港や台湾が、悪の北京から自由を勝ち取るのは確実だやら、一極体制支配者連中は、だまされやすい市民を騙そうと何度もやり過ぎている現代の奇術師とほとんど変わらない本性をさらしている。
Geopolitics Pressが実に詳しく報じているが、シリアで実行された認識支配工作の「複製」は、「経済、情報、外交、物理的戦争の分野で、エチオピア政府に対し、まとまった多面的作戦を実行する」能力をアメリカ政府に与えるケニヤを本拠とする指揮統制融合センター(C2FC)という形をとっており、この(C2FC)は、ある程度の作戦上の自律性を持ってはいるが、作戦上、融合センターに組織的に依存する様々な下部の融合セルに、仕事の一部を委託しているのだ。
リビア2.0の危険
そうなるだろうが、もしこれが失敗すれば、控えているより大きな危険は、大西洋両岸の住民が非常に混乱していて、エチオピア危機の性質について誤った情報を与えられているので、人々は、この国で、9/11事件後、アフガニスタンとイラクで行われたようなアメリカ主導の攻撃に同意するだろう。2021年11月9日、Bloomberg論説で元Supreme Allied Commander of NATO, James Stavridis"中国の影響力に対抗し"新たなルアンダ風大虐殺が起きるのを避けるためアメリカが率いる軍隊が内戦に介入するよう主張している。
アフリカ問題アナリストのローレンス・フリーマンも、この見方に同意し、最近、11月18日、Addis Media Networkのインタビューで雄弁にこう語っている。
「エチオピアの敵は、自身の政府からエチオピア国民を保護するという口実で、人道的懸念を軍隊派遣の口実として利用するだろう。R2P、保護する責任として知られるこのドクトリンは、ジョージ・ソロスとトニー・ブレアが作り出したものだ。サマンサ・パワーやオバマ政権の他の連中が、カダフィ打倒やリビア破壊の正当化にR2Pを利用した。
筆者はこの話題で、エチオピアのPrime Mediaでインタビューをしており、ここで見ることができる。
マシュー・J.L.エレットは調査ジャーナリスト、講師でCanadian Patriot Review創設者。
著者はmatthewehret.substack.comで連絡できる。
個々の寄稿者の意見は必ずしもStrategic Culture Foundationのものを意味しない。
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どこまでも卑劣な国側。赤木さん裁判、不意打ち終了。
相澤冬樹氏 「ふざけんな!国との裁判いきなり終了。次なる手は?」
財務省の公文書改ざん事件で命を絶った職員の妻、赤木雅子さんの裁判。国はいきなり「認諾」と呼ばれる手続きをとり裁判を終わらせました。賠償は請求通り支払われますが、赤木雅子さんが求めていた上司らの証人尋問は行われず、真相解明にはほど遠い幕引きとなりました。それでも、真実を求める闘いは終わりません。
ゴミ・マスクは不良資産化させて、戦争好き日本のゼレンスキーはのさばり続ける。
日刊ゲンダイDIGITAL
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■<インタビュー告知>本日午後1時より、「『戦場で勝って戦争に負けた』9.11以来の米国の対テロ戦争! その『見果てぬ夢』の続きを中国との戦争で! 『米国が戦争し日本が巻き込まれていく』危険な日米同盟の一体化! 岩上安身による元内閣官房副長官補・国際地政学研究所理事長 柳澤協二氏インタビュー(2)」を生配信でお送りします。
【IWJ_YouTube Live】13:00~「岩上安身による元内閣官房副長官補・国際地政学研究所理事長 柳澤協二氏インタビュー」
視聴URL(冒頭以降は会員限定): https://iwj.co.jp/wj/open/archives/420867
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