ウクライナとロシアとの戦争は実際どのようなものだろう
最近の声明では、キエフと欧米列強との実際の紛争結果について、モスクワは非常に現実的なように思われる。
アナトール・リーヴェン
20211月24日
Responsible Statecraft
最近アメリカ諜報機関は、ロシアが新年早々ウクライナ侵略を計画していると考えているという欧米メディア報道が新たに続いた。既に、これら報道はロシアが戦争した場合には重い経済的、政治的代償を支払うというNATOとワシントンによる警告をもたらした。
ロシアとしては、月曜日、ウラジーミル・プーチン大統領広報担当ドミトリー・ペスコフによれば「標的を定められた情報キャンペーン」を非難し、切迫しているという報道を否定した。「これは緊張のでっちあげだ。」
とは言え、これはウクライナ論争に関し、ロシアとの合理的妥協を見いだすためのアメリカと主要ヨーロッパ政府による決然とした本気の努力に至るはずだ。ウクライナでの戦争に起因するだろう世界的経済損害や、このような危機に中国がつけこむ手口は別として、欧米には本当に新しい戦争を回避する非常に強い理由がある。欧米は負けるのだ。
ロシアの計画に関する諜報情報は誇張で、想像か、でっちあげの可能性さえある。近年一連のこのような恐怖があったが、根拠がなかったり、ロシアが守る分離主義ドンバス地域へのウクライナ攻撃に対する、ウクライナへのロシアの警告だったりした。
ロシアにとっては、侵略の意欲をくじく極めて大きなものがある。欧州連合は既に問題を抱えたロシア経済に膨大な損害を与える大いに強化された制裁を課すだろう。ノルド・ストリーム・ガスパイプラインは放棄されるだろう。ロシアは中国への、ほとんど完全な依存を強いられるだろう。ウクライナ軍の一部が非常に激しく戦い、ロシアに重大な死傷者をもたらすかもしれない。もしロシアが広大な新領域を占領すれば、ロシアはドンバスとクリミアの親ロシア派住民ではなく、かなりの数の激怒した反抗的ウクライナ人を抑制する手強い課題に直面するはずだ。
他方、ここ数ヶ月、ウラジーミル・プーチン大統領とドミトリ・メドベジェフ前大統領による演説や論文で強調されるように、ウクライナに対するロシアの懸念は本格的な形で増大している。2014年のウクライナ革命直後の数年、ウクライナについてのロシアの感じ方は、ウクライナが非常に政治的、経済的に機能不全に陥っているので、決して実際欧州連合やNATOに加入するまいから、ロシアは、最終的に思慮あるウクライナ政府がロシアと妥当な和解を求めるまで待つ余裕があるという信念で占められていた。
だが今や、ロシア政府はウクライナへのアメリカ武器供給が、プーチンが2021年10月にヴァルダイ議論クラブでの発言で述べたような状況に導くことを懸念している。「[ウクライナの]NATO正式加盟は実現し損ねるかもしれないが、この領域での軍事的進展は既に進行中だ。そして、これは、本当にロシア連邦にとって脅威となる。」
モスクワは特に、2020年、ナゴルノカラバフでのアゼルバイジャン・アルメニア紛争でアゼリ勝利の鍵となる役割を演じたトルコのバイラクタル無人戦闘機を、ウクライナが獲得したのを警戒している。ロシア当局者は、これら新兵器が、ウクライナに、ドンバスを武力で奪還しようとして、準備ができていないロシア軍を打倒するよう勢いづかせるかもしれないことを恐れている。(ジョージアにとっては悲惨な結果ではあったが)ロシアが守っている南オセチアを武力で奪還しようとして、2008年8月、ジョージアのミハイル・サーカシビリ大統領が追求した戦略のように。ウクライナ軍が更に強化する前に、ロシアが先制し圧倒的勢力で攻撃する軍事的誘因となる。
より重要なのはウクライナ内での政治的、文化的変化だ。究極的なウクライナ-ロシア和睦に対するロシアの確信は、ウクライナ人とロシア人の間の深い歴史的、文化的、個人的結びつきに対する信念に基づいている。これは2021年7月、プーチンが彼のエッセイで触れた。これはウクライナ人とロシア人間の数え切れない結婚や、多数のウクライナ出身ロシア・エリートの存在や、ウクライナ国内のロシア出身の人々に象徴される。彼らは作家ニコライ・ゴーゴリ(ウクライナ語でミホラ・ホーホル)や映画監督セルゲイ(セルヒー)ボンダルチュクなどのロシアで働く歴史的ウクライナ文化人にも反射されている。
だが2021年、ウクライナ政府は、ウクライナにおけるロシアの政治的、文化的影響力を減らす重要な措置をとり、ウクライナ人のほぼ3分の1が第一言語として話すロシア語の使用を制限した。戦争となれば、ウクライナ軍は敵ロシアに極めて重大な損失を与えるだろう。彼らは2014年よりずっと良く装備し、訓練され、主要部隊は、しっかり反ロシア愛国心に吹き込まれている。それにもかかわらず、軍事的現実は、圧倒的なロシア勝利だ。ロシア軍は、ウクライナに対して、四対一と数で勝り(ロシアが予備軍を動員すれば、更に増える)、ロシア戦闘機は、ウクライナに対して十対一と数で勝る。ウクライナの800輌に対し、ロシアは約2,900台の戦車を持っており、ロシア戦車の400台以上が際立って近代化されたT90だ。そのうち何輌が実際使えるかは不明だが、ロシアには10,000台以上のしまいこまれた戦車がある。
アメリカとNATOは介入しない可能性が最も高い。これらの国々に対する多くのアメリカの誓約にもかかわらず、彼らが、2014年には、ウクライナを、2008年には、ジョージアを助けるため介入し損ねたように。ウクライナへの支援に関する、あらゆる欧米言説の後、ウクライナが壊滅される中、アメリカとNATOが座視して何もしなければ、アメリカの信頼性への打撃は非常に重大で、北京も、しっかり留意するはずだ。従って、アメリカ支配層の無謀なタカ派が、実際ウクライナで何らかの軍事介入を画策する可能性はあり得る。
もしこれが起きれば結果は壊滅的だ。核戦争のリスクは別として、ウクライナのみならず、アメリカとNATOがウクライナに即座に配備できる、あるいはそうするだろうどんな軍隊にも、ロシア軍は圧倒的に数で勝り、従ってNATOとの地上戦に勝つだろう。
ヨーロッパに本拠を置くアメリカ戦闘旅団は三つしかなく、機甲旅団は、そのうち一つだけだ。ロシアと戦うには余りにも少数だ。200機以上の戦闘機を持っているが、これらも、当初数では大きく劣るだろう。もしアメリカが本気でロシアと戦うを計画しているなら、これら武力を大きく増やす必要がある-それは(国内の必要性と政府債務を犠牲にしての)アメリカ軍事予算増加と、中国に対するアメリカの立場の弱体化を意味する。
理論上、アメリカのヨーロッパのNATO同盟諸国は何十万人もの「戦闘」部隊を持っている。だが誰も深刻に彼らの政府がウクライナで戦うため彼ら派兵するだろうか、あるいはヨーロッパ国民が、そうするのを許すだろうか?イギリスは、いつも通り忠実に参加するかもしれない。だが反復的削減のおかげで、イギリス軍が送り込めるのは、戦闘旅団二つだけで、しかも即座に送れるの一旅団しかない。
従ってアメリカは、ロシアの攻撃を撃退するどころか、失われたウクライナ領域を回復するため、本格的な血まみれの戦争を計画する可能性に直面するはずだ。これには世界大戦になるリスクもある。なぜなら、中国がアメリカとロシア間の戦争を利用し、同時に二つの戦争の危険でアメリカを脅すのは事実上確実だから。そして両方での敗北を。
まだ、この結果を避けるのは完全に可能だ。ドンバス紛争解決策の合理的基礎は、ミンスクIIプロトコルの形で、2015年から存在している。ウクライナ内のドンバスの完全自治、ウクライナ主権下ながら、ウクライナ部隊はなく、国連平和維持軍が保障する。ウクライナ内のロシア人の文化的、言語的保護については、基本原理の問題として欧米に支援されるべきだ。
同様に、(国から、ソ連と、欧米占領軍の撤退をもたらした)1955年のオーストリア国家条約は、この国を巡る戦略上のライバル関係を排除しながら、ウクライナが近代的自由市場民主政治として発展するのを自由にして、ウクライナの中立のための合理的な枠組みになる。(いずれにせよウクライナが決して取り戻せないだろう)クリミア半島に関しては、セルビアからの分離地域コソボを独立国家としてロシアが認めるお返しに、ロシア主権を欧米が認める外交的妥協が考えられる。
これらの妥協は、ワシントンにとって非常に苦痛を伴うだろうし、かなりの道義的勇気を必要とするだろう。だが、本当の愛国心にもとづく道義的勇気は、政治家と、ただの政治屋との違いの最重要要素だ。過去の世代の経験は、現代の欧米は、政治家を産み出す能力がないことを示唆している。バイデン大統領には、今その印象が間違っていることを証明する好機がある。
アナトール・リーヴェンはクインシー研究所Responsible Statecraftのロシアとヨーロッパ上席研究員。
彼は元カタールのジョージタウン大学とキングス・カレッジ・ロンドン戦争学学部教授。ロシアのヴァルダイ国際討論クラブの学術委員会委員で、イギリス外務・英連邦・開発省南アジア部門の諮問委員会委員。イギリス、ケンブリッジ大学からBAとPhDを取得。
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植草一秀の『知られざる真実』の最新記事、全面的に同意。
豪腕政治家とされる人物が導入した、とんでもない小選挙区制、政党交付金制度の旗振りをしたのは日本のマスコミ。日本を地獄に落とすと知っていて、小選挙区制度を推進したアメリカの手先連中が、思い通りの悲惨な結果を推進こそすれ、反省するわけがない。ケイトリン・ジョンストンさんの主張通り、マスコミは政府広報機関。日本に未来があるとすれば、主要テレビ局や新聞社の崩壊後だろう。到底ありそうもなく、主要テレビ局や新聞社の崩壊ではなく、日本そのものの崩壊が先だろう。
植草一秀氏のブログの下記最新記事から引用させていただこう。(改行は削除した。)
政治を特定の方向に誘導する役割を担っているのがメディア。
「マスゴミ」と呼ばれる存在。
政策破綻を優れた金融改革政策だと粉飾してしまえば国民は騙されてしまう。
先の大戦で日本軍が連戦連敗していたにもかかわらず、大本営とメディアは連戦連勝と報道した。
国民は大本営とメディアの誤情報を鵜呑みにした。
メディアコントロールによって政治を特定の方向に誘導することが常に行われている。
テレビメディアから権力批判の論者が一掃された。
メディアが異常露出させるのが橋下徹氏、吉村洋文氏、東国原英夫氏ら。
これらの人物が優れているわけではない。
メディアが流布したい発言を繰り返す要員であるから異常露出される。
世の中にはさまざまな意見、考え方がある。
人々が耳にする機会が増えれば、それぞれの主張が理解されやすい。
特定の主張だけが繰り返し流布されれば、その主張を支持する者が増える。
マスメディアの影響力は驚くべき大きさだ。
維新勢力が拡大した最大の要因はメディアの誇大宣伝にある。
衝撃的なのは、最新の田代氏インタビューでの岩上氏説明。耳が痛い正論を報じたがゆえに支持者が激減したという。素人は、てっきり田代氏による眼の覚めるような中国勃興実態の説明で支持者激増したと思っていた。岩上氏の個人的思想に共感して拝聴しているわけではなく、扱う話題が興味深いので拝聴しているだけなのだが。田代氏の話を聞いて文句をいったり、視聴をやめたりする心理がわからない。
素人による素人のための愚政。「抗原定量検査については、PCR検査と高い一致率を示すという調査研究もある」なら知りたいもの。
<IWJ取材報告3>「オミクロン株水際対策で、なぜPCR検査ではなく精度の劣る抗原検査なのか?」とのIWJ記者の質問に「抗原定量検査については、PCR検査と高い一致率を示すという調査研究もある」と後藤大臣~12.3 後藤茂之 厚生労働大臣 定例会見
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