NATOに虐待的対応を止めるように言うロシア
Finian Cunningham
2021年10月21日
Strategic Culture Foundation
現実上、相手方が身勝手に、あなたの足下に放尿しながら、握手しようと申し出た際、対話とパートナーシップの幻想を終わらせるロシアは正しい。
ロシアは、アメリカ率いる北大西洋条約機構に、エセ外交を止めるよう言って、関係正常化の上で、ほとんど何の目的も達しなかった冷戦後約30年間の協議と代表部を終わらせた。
モスクワはドアをバタンと閉めたかもしれないが、鍵はかかっていない。ロシアは、今後、関係改善で一歩進めるのはNATO次第だと言って、将来いつか新しい関係を追求する可能性があることをモスクワは示唆したのだ。
NATOは外交チャネルを切断するロシアの決定を「残念」だと表明した。ドイツのハイコ・マース外務大臣は、ロシアは、意思疎通を冷戦時代の氷のような深みに陥れ、既に緊張している関係を一層悪化させたと断言した。
ロシアのセルゲイ・ラブロフ外務大臣は、今週ロシアは、アメリカ主導の軍事同盟が本部を置くベルギーの首都ブリュッセルのNATO代表部を閉鎖したと発表した。ロシアはモスクワの情報部も閉じるとNATOに通知した。今後は必要な意思疎通は、ベルギーのロシア大使の事務所省を通して行われる。
NATOとロシア間で高まる緊張の中、情報伝達回線を断つのは無謀な動きに思われるかもしれない。確かに、誤解や計算違いを防ぐためには、出来る限り多くの伝達回線を維持するほうが良いかもしれない。
だが真実は、ロシアとNATOとの、この絆は、ずっと前から虐待的関係の惨めなレベルに悪化していたのだ。だから、この状況を考えれば、モスクワが離脱するのは正しい。固執すれば、NATO側から一層軽蔑されるだけだ。それは一層危険だろう。
1991年のソ連崩壊後、ロシアとNATOは対話と協力をすることに同意した。1997年のロシア-NATO Founding法で頂点に達した。代表部は、それぞれの首都におかれていた。
だが初期の約束に違反して、NATO連合は、加盟国に、ロシア領域と国境を接するいくつかの旧ワルシャワ条約諸国を含めるべく東方に拡大した。NATOは、モスクワが、ロシアの国家安全保障を危険にさらす「越えてはならない一線」だと非難している旧ソビエト共和国のジョージアとウクライナを加盟国30カ国のメンバーに加えようと目をつけている。
ロシア西国境周辺へのNATOの容赦ない拡大は、核戦争を阻止する戦略上のバランスを大いに乱した。状況は前冷戦の絶頂時により一層不安定なのは確実だ。
加えて、アメリカは、ロシア領土を包囲しながら、相前後して、様々な核兵器禁止条約を放棄した。2002年、弾道弾迎撃ミサイル制限条約はアメリカに一方的に廃止されたが、2019年の中距離核戦力条約と2020年のオープンスカイ条約も同様だ。
この全てアメリカと同盟諸国による、ロシア-NATO Foundation Act露骨な拒絶だ。
踏んだりけったりで、その間終始、NATOはロシアとのやりとりを、ロシアの悪意ある行為とされていることの偏った非難におとしめた。モスクワは、「ウクライナ侵略」や、「クリミア半島併合」や、マレーシア定期航空便「撃墜」や、化学兵器での競争相手「暗殺」や、チェコ共和国での火薬庫を爆破や他のことで欧米民主主義国家を「脅迫した」と非難した。ここで明白なパターンは、反感を買うべく、プロパガンダを作り出すことだ。
もしNATOが適切なパートナーとしてロシア関係で行動していれば、代表部は証拠や反証拠の論証的討論で、主張を論じることが可能なはずだ。実際のところ、NATOは近年、ほんのわずかもロシア代表部に関与しなかった。ロシアが反ばくすべきどんな適法手続きもなしに、告発が既成事実として提示される。ロシアとNATOのやりとりは、被告が適法手続きや、原告を反対尋問するのを禁止される、中世の尋問に、より似ている。
ロシアにとっての我慢の限界は、今月早々NATOによる、ブリュッセル代表部からの8人のロシア外交官追放だった。どんな証拠もなしに、NATOは「未申告のスパイ」だと言ってロシア当局者を非難し、即座に彼らを追放した。
今週、ブリュッセルのNATOロシア代表部の完全閉鎖は、モスクワのNATO代表部閉鎖も、ロシア外務省によって「報復」と説明された。ドイツのハイコ・マース外相は、異様に「関係を悪化させた」とロシアを非難する代わりに、頭を砂から出して、歴史的現実を多少反省するべきなのだ。例えばウクライナ紛争を引き起こした、2014年のキエフでのクーデターを支持したのはロシアだったのだろうか?ロシアは、アメリカとメキシコの国境にミサイル・システムを配備しているだろうか?
関係を凍結させたと言ってロシアを非難するのは、話が逆の典型だ。ワシントンとNATO同盟諸国こそが常にサーモスタットを低温に設定していたのに、傲慢にも、凍り付くような寒い結果にはならないと考えているのだ。
何年間も、NATOからは、容赦ないロシア嫌悪と、根拠がない主張以外の何の互恵的なやりとりもなかった。心理戦争に加えて、アメリカ/NATOハイブリッド戦争は、ポーランドとルーマニアに新ミサイル・システムを配備し、ロシア国家安全保障に対する核の脅威も開始している。
ロシアのセルゲイ・ショイグ国防大臣が今週指摘したように、ロシア国境付近へのNATO軍用機の飛行は去年と比較し30パーセント増加した。今週黒海でロシアのジェット機がロシア領空から核兵器搭載可能なアメリカB-1B爆撃機二機を追い払うためスクランブル発進した。
現実には、ワシントンとNATO同盟諸国が、益々失礼な非合理的態度でロシアを扱っているのだ。ロシアが、パートナーシップとされるものから、敵対的な、本当に明らかに敵対的なものになった組織と、ニセの対話関係を維持するのは、それ自体益々軽蔑を招くだけだ。このような関係に止まるのは、離脱するより危険だ。
保全を危険にさらすことからかけ離れて、NATOから歩き去るロシアの決定は正しいことだ。現実的に、相手方が身勝手に、あなたの足下に放尿しようとしながら、握手しようと申し出ている時、対話とパートナーシップの幻想を終わらせるのは正しい。
Finian Cunninghamは主要報道機関の元編集者・記者。国際問題について多く書いており、記事は複数言語で刊行されている。
個々の寄稿者の意見は必ずしもStrategic Culture Foundationのものを意味しない。
記事原文のurl:https://www.strategic-culture.org/news/2021/10/21/russia-tells-nato-to-shove-abusive-relationship/
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