マシュー・エレット
2021年10月6日
Strategic Culture Foundation
2021年9月20日の第76回国連総会で、アントニオ・グテーレス国連事務総長は次のような緊急警告をした。
「私はここで警告を発します。世界は目を覚まさなければなりません。我々は崖っぷちにいて、間違った方向に向かいつつあります。世界は、これほど脅されたり、分裂したりしたことはありません。我々は人生最大の危機の連続に直面しています。一部の国々は余っています。他の国々は棚が空です。これは我々の世界の状態に対する道義的告発です。」
こうした言葉は、表面上は非常に事実に即しているように見えるが、世界経済の全体的メルトダウンや、14世紀の暗黒時代以来未曾有の人口水準崩壊の可能性を前に、問う価値がある。グテーレスがそれほど懸念している奈落の底に落ちる主要因は何だろう?
南の発展途上国の大多数を、貧しく、負債を負わせ、餓えさせ、分裂させ、戦争させ続ける金融業寡頭政治に管理された新植民地主義だろうか?
全面的核先制攻撃覇権のための英米一極主義者の衝動を懸念しているのだろうか?
あるいは欧米経済のふりをしている1200兆ドル金融バブルの内在的崩壊だろうか?
実際は、そのいずれでもない。
グテーレスの心の中で、全ての人間の共同行動や考えや伝統の全面的見直しを要求する実存的危機は(あなたが想像するかも知れない人為的なCO2に余り無関係な)人間が作り出した地球温暖化で起こされる地球の沸騰と生存率99.8%のコロナ流行で形成される。
グテーレスはどんな解決を構想しているのだろう?
グレート・リセットという魔法の杖だ
2020年6月、世界経済フォーラムが、その機能を国際連合と統合する戦略的提携に署名して、わずか数カ月後、グテーレスは彼の構想をこう述べた。
「グレート・リセットは、我々が直面している人類の悲劇は、我々に警鐘を鳴らしている事を認識させてくれるでしょう。私たちは、パンデミックハや気候変動、他の様々な地球規模の変化に直面しても、より平等で包括的かつ持続可能な経済と社会を構築しなければなりません」
これは、わずか数日前に世界経済フォーラムの主宰者クラウス・シュワブが言った言葉を焼き直しただけだった。
「世界は共同して行動しなければなりません、教育から社会契約や労働条件まで、我々の社会、経済のあらゆる面を速く修正するため、アメリカから中国まで、全ての国が参加しなくてはならず、石油やガスからハイテクまで、全ての産業が変わらなくてはなりません。要するに、我々には資本主義の「グレート・リセット」が必要なのです。」
これを読んで「だが、資本主義が自身を救うには余りに腐敗していることが証明され、倫理的価値によって推進される新たな体制が必要だというのが本当ではないだろうか?と人々は異論をさしはさみたくなるかもしれない
確かに、金を崇拝するのは、グテーレスやシュワブがしばしば言っている通り悪いことで、崖っぷちから逃れるには倫理的価値で動く新体制が必要だが、クラウスが言及した崩壊しつつある体制というのは本当に「資本主義」なのか、それとも何か手品なのか?
シュワブによる上記のグレート・リセット演説で述べられた「資本主義」というレッテルが貼られたものは、決して資本主義ではないというのが私の主張だ。
自己共食いの別名
資本主義が、その名に値するには、資本形成が必要だ。
ジョン・クィンシー・アダムスやエイブラハム・リンカーンやユリシーズ・グラントや、ウィリアム・マッキンリーやフランクリン・ルーズベルトやJFKのような民族主義政治家(そして世界的に、志を同じくする人々)の下で、アメリカは、これまで250年、資本主義の下で驚くべき進歩をした。政府の大規模制度融資、保護関税や社会福祉制度が、個人と自由企業体制の自由と、国のニーズを融合していた。
他方、1970年代に作られた消費社会カルトは何かを生み出すことと全く無関係で、前世代が作り出したものを食い尽くすばかりで、将来世代に、永続性があるものは皆無、支払い不能な負債、終わらない戦争、低賃金労働力中毒と衰えたインフラを残しただけだ。
1971年の金準備基準破壊で開始されたグローバル転換は、経済計画による国家体制を、近視眼的投機に推進される新たな反国家制度で置き換える意志に常に推進されていた。
この新たに自由化された体制で、良い市民たることは、オリガルヒのハチの巣が全てのメディア、科学、学界、企業や大西洋両岸の政府官公庁を支配する世界で、短期的利益崇拝で目のくらんだ腐敗した愚者の良い消費者であることを意味した。彼らが「資本主義」と呼んだものは、フランクリン・ルーズベルト、ジョン・F・ケネディやボビー・ケネディやマーティン・ルーサー・キング、エンリコ・マッテイや他の多くの愛国者の亡骸上に出現した略奪行為に過ぎなかった。
アメリカ合衆国内で、この体制転換を行ったネットワークは「三極委員会」と呼ばれる影響力を持った集団だった。
チェース・マンハッタン銀行頭取デイヴィッド・ロックフェラー、ヘンリー・キッシンジャーとズビグネフ・ブレジンスキーが共同で設立した、この集団のための宣言は1970年ブレジンスキーの著書「Between Two Ages: America's Role in the Technetronic Era」『テクネトロニック・エージ―21世紀の国際政治』で概説されていた。
この宣言で、ブレジンスキーはこう書いていた。
「テクトロニクス時代には、一層制御された社会が次第に出現する。このような社会は伝統的価値観に束縛されないエリートに支配されるはずだ。間もなく全国民に、ほぼ絶え間ない監視を行い、国民に関する最も個人的情報さえ含む最新完全ファイルを維持することが可能になるだろう。これらファイルは当局が瞬時に取り出せる。」
爆弾はセットされている
民族主義と科学的進歩に対する信頼という時代遅れの時代から、民族主義後の世界政府の新時代に至るためには、「二つの時代間」を介在する期間が作り出されなければならなかった。その中間の時代は、表面上、自身を資本主義と呼び、アメリカは世界規模で略奪するこの体制の「リヴァイアサン」のような執行者なのだ。
この時代に、どの国家にもはばかることのない国際金融超国家的コンソーシアムや大企業や諜報機関が、欧米を再度植民地化するため、グローバリゼーションの下で、益々体制を規制緩和し、諸国から実際の経済主権を全て剥奪し、彼らの主権を名ばかりのものにする。
この新秩序の下で出現した体制は、資本主義というより、精巧な時限爆弾だった。
架空の資本蓄積の加速に対する強調により、自己共食いのこの新体制は、社会を維持するのに必要な長期投資を殺し、常に増加する支払い不能な負債の山に基づく不確実なバブルを引き起こす。この爆弾は、1929年にニューヨークで、1923年には、解決として提供された「科学的に管理された」ファシスト統治のドイツが早々ポンとはじけたかつてのバブルのように爆発するはずだ。
三極委員会がアメリカ合衆国内を支配していた時に、クラウス・シュワブという名のキッシンジャーの元学生が世界経済フォーラムと呼ばれるスイスの新組織を共同設立した(元来European Management Fundという名前だった)。
この新組織は、1956年にオランダ王配(で世界自然保護基金共同創設者)ベルンハルトによって設立されたビルダーバーグ会議と共に、世界のエリートが世界を新ユートピアに向けて推進するよう意図された超国家作戦を計画し、調整するため影響力あるプラットホームの役を務めることとなった。
世界経済フォーラムの共同創設者(後に会長)は、モーリス・ストロングという名のロックフェラーの弟子のカナダ人で、採鉱経営者から、1960年代、カナダ自由党の主要管理者に出世し、1972年、ストックホルムでの国際連合初の環境保護会議を率いて新マルサス学派復活の国際リーダーになっていた。シュワブに、愛情を込めて「私の助言者」と表現されるモーリス・ストロングは、人生を通じて世界政府と人口制御が主要テーマだが、それを公然と支持したのはダボスでのことだった。1991年、ストロングは熟考し、ダボスグループに言及していた。
「もし世界首脳の小集団が、地球にとって主要な危険が、豊かな国の行動から来ると結論したらどうだろう?世界が生き残るために、それら豊かな国々は環境に対する彼らの影響を減らす協定に署名しなければならないだろう。彼らはそうするだろうか?この集団の結論は「ノー」だ。豊かな国はそうするまい。彼らは変わるまい。だから、地球を救うため、この集団が決める。地球に対する唯一の希望は工業化文明社会が崩壊することではないだろうか?それをもたらすのは我々の責任ではないか?」
頻繁に参加するWEFゲストの一人は2004年最初に「ダボス人」という言葉を造語した、もう一人の三極委員会メンバーだった。彼の名はサミュエル・P・ハンティントンで、1975年「民主主義の危機」と呼ばれる三極委員会研究に参加し、こう書いている。
「我々は経済成長には、望ましい制限の可能性があることを認識するに至った。民主主義の無限の拡張にも、望ましい限界の可能性があるが、権威に欠ける政府は、必要な犠牲を国民に課す能力をほとんど持っていない」。
ここであらゆるテクノ-封建制思想の特性を示す主題が提起されている。国家唯一の目的は超国家的エリートが施行することの補助役だ。1)文明の成長に対する制限 2)民主的な人々が自身や子供たちに故意に押し付けられるの認めないだろう過酷な犠牲。
新時代の間際に
今日、ダボス徒党の黄金襟のエリートが、反キリスト教科学的異教信仰の一環として、オンラインでもたらすべき宗教的任務とした新時代は「第四次産業革命」と呼ばれる。
要約しよう。ドルを変動相場制にして1971年に開始された混乱の期間は、決して資本主義ではなかった。
それは、まさにその本質から崩壊以外何もできず、資本主義を装う、常に社会ダーウィン説信奉者の一時的な略奪と快楽主義の時代に過ぎなかった。
この混乱の時代が始まって50年、大西洋両岸諸国は、経済的主権国家にしていた、あらゆるものを体系的に剥奪されている。
そう、依然自由を高く評価するアメリカやヨーロッパ地域の一部共和的勢力には、依然、混乱した生命の輝きがあるが、かつてケネディとドゴールの時代に享受された言わば政治的、経済的主権はなくなって久しい。民営化、産業外注化とインフラ萎縮が、非常に裕福な寡頭政治階級の手中へと政権委譲をもたらしたのだ。
今日、人類の擁護者は、ロシアと中国が率いる多極同盟や、未来を持ちたいと望む増えつつある国々で見いだせる。
これは、世界中で荒れ狂う炎から人類を救い出し、生きる価値のある未来をもたらすために必要な、本当の経済成長、民族主義、長期計画や科学的進歩の実存的価値を認める政治家たちが率いている国々だ。
怯えるグテーレスがこう言った際言及したのは、新たに出現しつつあるパラダイムだ。
「私は我々の世界が異なる二種の経済、貿易、財政、技術ルール、人工知能発展の二つの異なる手法、究極的に、異なる軍事、地政学戦略に忍び寄ってゆくのを恐れている。これは問題の処方箋だ。それは冷戦より遙かに予測不能で、遙かに危険なはずだ。」
未来の記事で、我々は「この寡頭政治徒党が、冷戦中、どのようにアメリカ内に定着し、新興のベビーブーマー世代を、ユダヤ・キリスト文明を民主的に壊す気にさせたのか?」という問題を更に深く調べる予定だ。
マシュー・J.L.エレットはジャーナリスト、講師でカナダのパトリオットレビュー創設者。
著者matthewehret.substack.comで連絡を取れる
個々の寄稿者の意見は必ずしもStrategic Culture Foundationのものを意味しない。
記事原文のurl:https://www.strategic-culture.org/news/2021/10/06/guterres-and-great-reset-how-capitalism-became-a-time-bomb/
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「新しい資本主義」というのを聞いて、この文章を連想した。
ウソつき戦争内閣。PCR検査強化や病床倍増ではなく、国防予算を2%に倍増。要員は外国人労働者を充当するのだろうか。それとも赤紙?敵基地攻撃能力ミサイルと一緒に、宗主国要員を雇用するのだろうか。宗主国兵器爆買いの一環として。不沈空母出動。
言うことはコロコロ変え、野党誹謗中傷には十分予算をつける。政党交付金で?
今日の孫崎氏メルマガ題名
野党議員への誹謗、自民党及びタカ派評論家見解をツイッター等で拡散ツイッターは会社が実施、かつ主要取引先に自民党と明記。この問題を森ゆうこ議員が国会で取り上げ。多くのメディアが報道を躊躇する中、東京新聞は「Dappiが自民党と取引⁉正体はIT企業」と報道
岩波書店の月刊誌『世界』11月号 特集1は反平等。特集2は 入管よ、変われ
メディア批評 167回(1)メディアウォールの向こうに沈黙の声を聴く(2)「お祭り」総裁選のお囃子メディア 「誤情報による攻撃」として、あの暴言弁護士問題に触れておられる。
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