ヘロイン取り引き崩壊はアフガニスタンにおけるアメリカ敗北の主な恩恵
2021年9月7日
ジェームズ・オニール
New Eastern Outlook
40年後、アメリカによるアフガニスタン占領は最終的に終わった。この国におけるアメリカの関与は、1980年に始まったソ連による占領に応えて始まったので、私は40年と言う。ソ連が1989年に撤退した後でさえ、ソ連による占領に反対するムジャーヒド戦士をアメリカは支援し、決して本当に止めなかった。アメリカの期待に反し、アフガニスタン政府は、更に三年続いた。
それは完全にアメリカの世界観と一貫しているが、彼らは2021年にアフガニスタンから撤退するだけではなく、破壊の小道を残さざるを得なかった。カブール空港を機能させていた施設は全て破壊された。この無慈悲な破壊を、執念深いと呼ぶのは控えめな表現だ。
アフガニスタンからの撤退が、世界に広く認められたアメリカの決定からほど遠いことはよく知られている。この決定は間違っていたと強く主張し続ける強い勢力があったし、あるのだ。この抵抗の要素は私利だ。タリバンが、ケシ畑を破壊する1990年の政策を繰り返せば、アメリカは不正収入の重要な源を失う立場にあるのだ。
2001年のアメリカ侵略時、世界に大変な殺戮をもたらすヘロインの源であるケシ畑は、ほとんど、もっぱらタリバンが支配し損ねた領域にのみ存在し、元々のケシ畑の5%以下しか残っていなかった。今タリバンが実質的にアフガニスタン領の95%以上を支配しており、残っている小さな地域は、ケシ栽培能力が知られていない。
既にカーブルの新政権に接近しているロシアと中国両政府は、ケシ栽培と、今年世界ヘロイン生産高の90%以上になったものの生産に対し、タリバンが同じ非寛容政策を追求するよう期待しているのを明確にしている。
アメリカ撤退の帰結的意味についての議論で、欧米メディアがほとんど全くケシと、ヘロイン生産を無視しているのは注目に値する。この沈黙の理由を理解するのは、さほど困難ではない。欧米メディアは、アフガニスタンにおけるアメリカの関与が「民主主義構築」の動きだったという意見を長い間支持してきたのだ。
ヘロインの世界最大供給元だと認めるのは、欧米が描こうと努力した利他的イメージと適合しなかったのだ。欧米メディアの侵略描写で、ほぼ完全に欠如しているのは、2001年のアメリカ侵略による最も初期の結果の一つは、ケシ生産と、それ故ヘロイン供給の急速な増加だった事実だ。欧米の言説で同様に欠如しているのは、この生産が、栽培のみならず、生ケシのヘロインへの加工と、更に、世界中への物流を、CIAが断固手中に収めた、ほぼ、もっぱらアメリカ事業に過ぎなかった事実だ。そういうわけで、それは、多くの国々の政府に影響を与える彼らの世界計画の一環として使われるCIAの不正資金の重要な貢献者だったのだ。
このヘロインまん延の結果、苦しんだ三国は、中国とイランとロシアだ。そのために新タリバン政権への、これら三国の支持条件が、彼らが前回権力の座にあった時、タリバンのヘロインに対する執念深い嫌悪を再開させることなのは、ほとんど驚くべきことではない。欧米メディアは、この話題に関する新アフガニスタン政権の見解に、ほぼ完全に沈黙している。だが彼らが前回、権力の座にあった時の彼らの敵意が、どんな形であれ弱まったと信じるべき理由はほとんどない。
生産管理は、これまで何千人ものアメリカ請負業者、すなわち傭兵の監督下にあった。またしても、欧米メディアは、アメリカ撤退計画の一部ではなく、おそらく残留するままでいる、これら何千人もの人々の運命については、驚くほど静かだ。新政府下で、連中が、どれほど長い間持続するかは結論の出せない問題だが、彼らは非常に長い時間、い続けるのを許されることはありそうもない。連中がヘロイン生産に協力した地元指揮官連中の平均寿命は短い。彼らはタリバンによる権力奪取に抵抗し続けると予想されるが、それは崩壊の運命にある抵抗だと思われる。
ケシ栽培の差し迫った破壊は、代替物という明白な問題を提起する。この産業を養えるだけの十分なケシ栽培に適した場所は世界中ごくわずかだ。裁培業者は主にインドシナの前の生産地域から排除されており、近いうちに中国政府が栽培再開を大目に見ることはありそうにない。
ケシ栽培代替源の欠如は、供給を拒否される中毒者たちの世界的な問題を生み出す可能性が高い。供給損失の影響への対処は、とりわけ、両国とも近年中毒が激増しているパキスタンとイラン政府にとって深刻な治療問題をもたらすだろう。
長期的には、供給を奪われた中毒者の問題に対処するのは、絶えず増加する中毒者に対処するより小さな問題だ。それゆえ、アフガニスタンからの強制されたアメリカ撤退の主な恩恵の一つは、ヘロイン中毒の世界的流行の低減だろう。近年の成長と繁栄が、もっぱらアメリカの責任である、この恐ろしい商売の崩壊に、さほど多からぬ涙が流されるだろう。欧米メディアが、この事実を論じるのを嫌がっても重要性が減るわけではない。
ジェームズ・オニールは、オーストラリアを本拠とする元法廷弁護士で地政学専門家。オンライン誌New Eastern Outlook独占記事。
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怪物連中のでまかせを見聞きするのは時間の無駄。国会を開いて、PCR検査拡大など本格的コロナ対策を論じるべき。
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