AUKUS協定の後遺症
2021年9月20日
Moon of Alabama
AUKUS協定は、オーストラリアが最終的に原子力潜水艦を入手するため、アメリカとイギリスの申し出を受け入れ、フランスへのディーゼル潜水艦注文を中止するのを可能にした。
オーストラリアが実際原子力潜水艦に支払う資金を見いだすのは全く明確ではない。これらは従来型より50-100%高価だ。オーストラリアは、この価格の少なくとも60%が、オーストラリアでの製造に環流するようにしたいと望んでいる。だが、オーストラリアには原子力技術で事業経験を持った企業がない。アメリカやイギリスが、オーストラリアに、このような能力を着けさせることは、ありそうもない。
想定されている新潜水艦のいずれも、2040年前に配備される可能性は極めて小さい。その頃までに、台湾は北京支配下となっている可能性が高く、南シナ海での中国海軍の優位は一層増大しているだろう。だから、これまで発表されている時間枠と潜水艦の目的は疑問の余地がある。
それは本当の計画は違うものだという可能性のためかもしれない。
モリソン政府は、イギリスかアメリカから原子力潜水艦の短期賃貸を考慮しているが、連合は原子力兵器がオーストラリアに本拠地を置けないと強く主張している。
日曜日、サイモンバーミンガム貿易・観光・投資大臣と、ピーター・ダットン国防大臣は個別インタビューで、AUKUS同盟国からの潜水艦賃貸は、オーストラリアが可能性として、204t0年代に自身のものを入手するまで、一時しのぎ解決策であり得ると確認した。
「手短に言えばイエスだ」とダットンは、潜水艦の賃貸について、スカイニュースで問われて答えた。
バーミンガムは、賃貸取り決めは、必ずしも「パートナー諸国の潜水艦の数と能力を増やさない」だろうが、訓練と情報共有には役立つだろうと述べた。
「そうすることで我々が水兵を訓練する機会が得られ、活動のしかたに関する技能と知識を得られる可能性がある」と彼がABCに言った。
パースで、これら潜水艦の運用に必要なインフラ強化の基盤になるだろう。我々の水兵が技能と訓練と知識を得るため、可能性として、イギリスやアメリカの艦船で働くような、将来我々の海軍間の賃貸取り決めや、より大規模な統合運用が実現すると私は思う。」
そこで、パースはアメリカ原子力潜水艦の常駐基地になれるよう強化されることになるが、そうした原潜は核兵器を搭載している。
「賃貸」潜水艦、あるいは少なくとも、その推進機関部分は、もちろん依然アメリカか、イギリス水兵により要員配置されるだろう。オーストラリアは、既存潜水艦の乗組員維持にてこずっている。「賃貸」潜水艦のために使える少数の要員は、それを動かすのに十分ではあるまい。オーストラリアは、確実にアメリカに指揮される潜水艦艦内のお客になる特典に対して支払うことになるだろう。
オーストラリア政府は、アメリカから多数のスタンドオフ型ミサイルや長距離兵器購入を計画している。軍は、これにより一層アメリカの対中国戦争計画に統合されるだろう。
私は前の記事で、こう書いた。
これはアメリカにとっては巨大ながら短期勝利で、イギリスにとってブービー賞で、オーストラリアにとって、戦略上の主権と予算管理権の喪失だ。
オーストラリアの主権喪失は明白だ。新計画は、以前の反中国の動きと同様、良くない経済的結果をもたらすだろう。EUとの自由貿易協定協議は中断されるだろう。
「我々の加盟国の一国が容認できない方法で扱われたので、我々は、何がなぜ起きたか知りたい」とウルスラ・フォン・デア・ライエン[欧州委員会委員長]が述べ、「いつもどおり仕事を続ける前に」状況が明確にされなければならないと付け加えた。
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欧州委員会によれば、2020年、欧州連合は、3番目に大きなオーストラリアの貿易相手だった。その年両者間の商品貿易は360億(420億ドル)で、2019年、サービス貿易は260億(300億ドル)だった。
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EU貿易協定に対する脅威は、最近最大の貿易相手国、中国との関係が悪化し、オーストラリアが新しい輸出市場を開発すると思われている時に到来した。オーストラリアの石炭、ワイン、大麦と牛肉は全てが、既に中国との貿易摩擦によって影響を受けているが、AUKUSは北京の反感を更に買ったと専門家は言う。
中国は依然オーストラリア最大の貿易相手国だ。中国へのオーストラリアの主要輸出品は鉄鉱石だ。だがその貿易も今や深刻な問題だ。
最大顧客の中国が、鉄鋼生産を削減し、三ヶ月連続して炭素排出を減らす動きを強化する中、オーストラリアの最大輸出品、鉄鉱石価格は急落し続けている。
5月に記録破りの1トン230ドルになった後、主要製鉄原料は価格が半額に落ち、今や1トン110ドルを下回って取り引きされ、ASX、オーストラリア証券取引所の採鉱大手企業BHP、リオティントやフォーテスキューの株価を直撃している。
中国の鉄鉱石需要と、そのため価格がなぜ下がっているかについては更に理由がある。資金繰りで苦しむ中国の不動産業者、恒大集団の倒産寸前状態は、中国の建築ブームに足踏みをもたらすだろう。中国は古いインフラから益々多くの鋼鉄をリサイクルして、新工場建築を継続しながら、より少ない鉄鉱石しか必要ないのだ。中国が依然必要としている鉄鉱石は、間もなくアフリカから来ることになる。
中国の供給源多様化最大の焦点はギニアだ。西アフリカの貧困ながらに鉱物が豊富な国だ。シマンドと呼ばれる丘の110キロの範囲には未採掘高品質鉄鉱石の世界最大の埋蔵量があると言われる。
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シマンド開発プロジェクトは四ブロックに分かれている。中国は、そのそれぞれに直接、間接に権益を持っている。その区域には、品位65.5%以上の推定24億トンの鉱石があると考えられている。「シマンド鉄鉱石埋蔵の採掘は、国際市場を変え、ギニアをオーストラリアやブラジルと並ぶ鉄鉱石輸出大国に押し上げるだろう」と、ロンドン大学東洋アフリカ研究所中国研究所の研究員ローレン・ジョンストンが日経に語った。
もし中国がシマンドの埋蔵を解き放ち、国際鉄鉱石価格の下落を促進させれば、「それは益々、発展途上諸国間の動的関係に推進される選択的な一次産品市場になるだろう」とジョンストンは述べた。
中国は、クアッド加盟国オーストラリアと商売するより、このような場所で商売するほうが、ずっと容易だと気がつくはずだ。
(ギニアでの最近のクーデターは、これら計画を変えない可能性は少ない。)
中国勃興で拍車をかけられたオーストラリアの採掘ブームは終わっている。オーストラリアは予算を削減しなければならず、新たな経済モデルを求める必要がある。
私はなぜ、アメリカにとって、これは「巨大ながら短期の勝利」と呼んだのか?
アメリカがオーストラリアに潜水艦基地を得、それを使うため金を支払われる点では勝利だ。中国に対し冷戦を行うつもりなら、これは結構なように見える。これが必要な戦略かどうかは疑わしく、成功し得るかも確実ではない。もちろん武器製造業者は依然それを好むだろう。
だが、それを巡り、アメリカは、現在と、将来可能性あるパートナーの多くを失うという意味では、短期的勝利だ。クアッド・パートナーのインドと日本の立場を二番手に貶めた。彼らに対する究極的に極悪非道な計画ということで、インドネシア、マレーシアとシンガポールの疑念を強めた。
特にインドネシアとマレーシアは、アメリカとイギリスの助けを借りて原子力潜水艦艦隊を獲得するオーストラリア計画に対し、強い反対を表明した。この地域でオーストラリアの最も信頼できる同盟国シンガポールさえ懸念を表明した。
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どちらかと言えば、AUKUSの動きは「地域の一部」だというオーストラリアのスローガンが実際は「空言」だという広く見なされている認識を補強した。オーストラリアはアングロサクソン系同盟諸国アメリカとイギリスを最優先する意図をしっかり示したのだ。
前フランス駐在イギリス大使が、NATOにとっての問題を予測している。
ワシントンの原子力潜水艦を好んで、パリとのディーゼル潜水艦契約を破棄するキャンベラの決定は同盟諸国を分裂させ、大西洋両岸の提携を弱めたとピーター・リケッツは述べた。
「この動きは、NATOとNATO同盟諸国に対するフランスの信頼に確実に悪影響を及ぼし、従って、ヨーロッパの戦略的自立に向かう、彼らの意欲を強くすると思う」と彼はAFPに語った。
「NATOは信頼に依存しているのだから、NATOに損害を与えるだけだと私は思う。早急に修復作業を始める必要がある。」
月曜日、国連総会に合わせて、欧州連合の外務大臣たちは、アメリカ、オーストラリアとイギリス間で署名された新防衛協定を論じる予定だ。
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2003年-2006年、NATO常任代表だったリケッツは、フランスが、今回の口論を対アメリカとイギリス関係での「転機」と見なすだろうと述べた。「アメリカは、ヨーロッパの防衛同盟諸国に益々背を向け、中国との対決に焦点を当てているという、私がパリで得た感覚は強まった」と彼は補足した。
フランスやドイツや他のヨーロッパ諸国は中国の経済パートナーになりたいと望んでいる。彼らは新冷戦を始めるアメリカの取り組みを、他の問題からの全く無用な逸脱と見ている。ヨーロッパを、その計画に「一致させる」アメリカの取り組みは益々困難になるだろう。
全体的に、アメリカは、人口四倍の中国を服従させる絶望的な取り組みで、基地と小さなパートナーを獲得したが、世界の他の広大な地域で信頼と支援を失った。それは長期的に影響をもたらす戦略的失敗だ。
記事原文のurl:https://www.moonofalabama.org/2021/09/the-fallout-from-the-aukus-deal.html#more
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昨日は下記番組を拝聴した。
デモクラシータイムス
日刊ゲンダイDIGITAL
日刊IWJガイド 岩上氏が総理会見記事を書かれている。末席に座らされ質問できず。ご苦労さま。見損ねた下記番組を拝聴予定。
【タイムリー再配信1002・IWJ_Youtube Live】20:00~「コロナ『冬の第6波』に向けて日本はコロナとどう向き合うのか~オリパラ強行開催が残した課題と感染症に強い社会づくりへ向けた新しい政治 岩上安身による日本女医会理事・青木正美医師、日本女医会前会長・前田佳子医師インタビュー(電磁パルス編)」
視聴URL: https://www.youtube.com/user/IWJMovie/featured
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