台湾の安全を保障せず、危うくするアメリカ-台湾武器取り引き
2021年8月11日
ジョセフ・トーマス
New Eastern Outlook
20年前、台湾にとってアメリカ合州国は最大の輸出市場で、香港と日本が二位と三位だった。日本とアメリカは、台湾最大の輸入相手でもあった。
20年後、数値は全く変わっている。現在、中国は、台湾の圧倒的な最大輸出入貿易相手国で、それを、遥かに統合されている香港と合わせれば、この貿易は、台湾の全欧米諸国との貿易を実に小さく見せる。
もし、お金が力なら、台湾と本土間の貿易は、ワシントンによる台湾掌握を揺るがせるほど大きな力だ。
この文脈で、ディフェンス・ニュースの「アメリカ政府、台湾への7億5000万ドルの兵器販売を承認」などの記事からは、ワシントンは前進しているようには見えず、むしろ「巻き返し」を演じる無駄な試みのように見える。アメリカは、一連の、でっちあげた脅威と保護の約束で、兵器を販売して、それが可能に見える唯一の方法で巻き返しているだけなのだ。
この最近の取り引きで台湾に提供された防衛力は、「もし」中国本土と台湾間で戦争が勃発すれば、ほとんど相違を生じないはずだ。だが、それは「もし」に過ぎない。現実には、台湾の本土との経済統合は長年進行中で、放火犯と消防士を演じるワシントン版地政学は、この不可避なことを遅らせるにすぎない。
ディフェンス・ニュース記事には、こうある。
アメリカ国務省は、台湾の自治のためのバイデン政権による最初の認可として、台湾への自走榴弾砲と砲弾用GPS誘導キット輸出を許可した。
水曜日午後、国防安全保障協力局、略称DSCAは、台湾向けに、40基のM109 155mm自走榴弾砲と関連機器と、サポートの承認を発表した。輸出の推計金額は7億5000万ドルだ。
台湾最大の貿易相手国に対する「防衛」巨額出費は明らかに非論理的で不経済だ。それは、台湾の実際の最大利益を支援するというより、台湾政治家が、アメリカの外交政策目的を支持して行うと考えられる類の政策だ。
この武器取り引きは、ワシントンと北京と、台湾と中国本土間で軋轢を引き起こしただけだ。
アメリカ合衆国さえ、台湾を国として認めていない
公式に、台湾は国ではない。ワシントンさえ、国として認めていない。具体的に、例えば、アメリカは台湾に大使館を持っていない。その代わり「米国在台湾協会」というものがある。公式には、台湾が、一つの中国の一部と認められる「一つの中国」政策を認め、「非公式に」事実上の大使館を通した武器取り引きや、アメリカの最近の台湾政治家と外交関係を、こっそり承認して、この基本政策を損なう、このゲームは台湾と大陸間の緊張の本当の源を明らかにしている。
米中関係全米委員会(NCUSCR)で読める公式談話では、アメリカ政策当局と政治家は、北京に対するこの表裏があるやり方や、本土-台湾関係に悪影響を及ぼすのを公然と自慢している。
だから「台湾問題」は、アメリカの外交政策目的、特に、中国を包囲し、封じ込めることを推進するため、ワシントンが使う将棋の駒なのだ。台湾にとって実際に最善のことには、ごくわずか、あるいは全く配慮されていない。
これが、アメリカの台湾政策が、台湾に、その経済繁栄の最大の源に向けるよう武器を供与し、台湾と、その経済繁栄の最大の源、中国本土との積極的な、やりとりを損なうことに焦点をあて続けている理由なのだ。
台北・北京間政治対話に、進行中の台湾の経済統合を反映させるアメリカの熱心な作業は、最善でも、再統一を複雑にし、できれば、完全に脱線させる潜在的発火点を作ることを意図した遅延作戦だ。もちろん、いずれのシナリオでも台湾は負ける。
次は何か?
ワシントンは本土による差し迫る侵略という言説を推進し続けている。アメリカ外交政策の明白な目標は、そのような宣言が、いかに現実から解離していようと、いかに人為的で、台湾の最大利益に反しようと、台湾政権による独立宣言につき進み続けることだ。
アメリカに支援される抗議行動が最終的に次第に消え、国家安全維持法が実質的に永久にそれらを終わらせる前に、香港への欧米の影響力を維持するアメリカの試みの繰り返しだ。
香港が「独立」領になるという考え方はばかばかしかった。それでもアメリカは何千人もの、大半は若い香港住民に、彼らの都市を破壊し、隣人を攻撃し、その過程で経済に損害を与えて、街頭で警察と戦うよう説得するのに成功した。結局は、多くの人々が、反対派を利用し、見捨てたワシントンのために役割を演じた報いとして、拘置所に入った。
独立派政治家について、台北でも同じ過程が起きている。香港より遥かに大きな台湾は、大陸の対応組織に比べれば、実にささやかなものとは言え、軍を含め、多くの機関を持っており、ワシントンの香港式戦略をずっと引き延ばし、その過程で台湾が味わう停滞を長引かせる能力を持っている。
だが時間は北京の味方だ。「独立宣言」さえ、大陸からの「侵略」を必要とするまい。中国は、台湾の人々が、アメリカが仕向ける「独立」の痛みと、政治的空想と、法律的、経済的現実との著しい対照を感じるまで待つことができるのだ。
ジョセフ・トーマスはバンコクを本拠とする地政学研究者、著者。オンライン誌「New Eastern Outlook」独占記事。
記事原文のurl:https://journal-neo.org/2021/08/11/us-taiwan-arms-deal-undermines-not-upholds-the-island-s-security/
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LITERAも、日刊ゲンダイDIGITALも、非人道性批判記事!
LITERA
30代コロナ自宅死に小池百合子が「若い人も基本を守れ」と説教!“自宅放置”を打ち出し、五輪のため医療崩壊を隠蔽していたくせに
日刊ゲンダイDIGITAL
適菜収氏記事 (新刊を最寄りの書店で探したが、置いていなかった。)
今日の孫崎氏のメルマガ題名
8月の世論の動向は極めて鮮明。①政権運営、存続の「危険水域」といわれる30%割れが幾つか発生。②東京五輪開催では約60%の人が開催を評価、評価しないは4割弱。⓷他方コロナ対策では6割が支持しないで支持が30%程度。後者が内閣支持率に直結
下記記者会見、この記事の話題と直結。
2021.8.11 日本外国特派員協会主催 柳澤協二氏(元内閣官房副長官補)、半田滋
氏(防衛ジャーナリスト)、猿田佐世氏(新外交イニシアティブ代表) 記者会見
―内容:台湾有事
https://www.youtube.com/watch?v=jdjVT0M8tKo
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