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2021年8月15日 (日)

アフガニスタンからのアメリカ撤退:予測可能な影響

2021年8月10日
ドミトリー・ボカレフ
New Eastern Outlook

 アフガニスタンからのアメリカ軍撤退開始のニュースは、世界中で多くの放送局によって熱狂的に報じられた。ワシントンによるこの決定の恩恵について、多くの肯定的な記事がある。アメリカ兵が国外で死ぬことはなくなる。アメリカ経済は戦闘活動の膨大な負担から解放される。アフガニスタンの人々は自力で、より明るい未来を作る可能性を得る。撤退を支持する人々は極めてアメリカ兵が去ることに、さほど困惑しなかったが(ロシア連邦で活動を禁止されている)タリバン・テロ組織は留まるのだ。世界中で、様々な専門家が、アメリカが去った後、このテロリスト軍は兵器を置き、何年もの間猛烈に戦ってきた人々である合法的なアフガニスタン政府と平和な対話に入るだろうと実に本気で述べていた。とうとう、彼らは民主選挙に参加し、その結果に基づき、政府機関で、いくつかの職に着くことが可能なのだ。

 アフガニスタン政府が、長年アメリカの銃剣によって維持されていた事実は忘れ去られている。彼らは、タリバンが、この土地で最も強力な勢力であることも好んで忘れている。その発端以来、タリバンは彼らが要求する全てを武力で手に入れてきた。タリバンは、アフガニスタン民主政治の、いくつかの職位で満足しないのは確実だ。

 長い内戦によって疲弊したアフガニスタンから親ソ連政権を支援するソ連軍が去った1990年代初期、タリバンは生まれた。ソ連による支援がない状態で、政府は、すぐ打倒され(現状にも、類似性が引き出せる)、アフガニスタンの実権は急進的イスラム主義者、彼らから見て、シャリア法律に違反する誰であれ無慈悲に破壊し始めたムジャヒディンに引き継がれた。

 だがムジャヒディンには国を運営できる統一指導部がなく、ムジャヒディン派閥は互いに戦い始めた。

 アフガニスタンは混乱と貧困に陥り、工場は停止状態となり、麻薬生産が人々にとって主要収入源の一つになった。そこにタリバンが登場したのだ。組織の中核は、アフガニスタンの主要民族集団、パシュトゥーン族の宗教学校の急進化した学生で構成されており、タリバンに重要な、広範囲にわたる支持者をもたらした。パシュトゥーン族は、パキスタンの人口の大部分も占めており、タリバンがアフガン-パキスタン国境を越え、両国で活動し、保護されるのを容易にした。

 パキスタンとサウジアラビアに気前良く支援される、若い急進化した多数のタリバン兵は、断片的なムジャヒディン集団を、素早く服従させるか、破壊した。1996年、タリバンはアフガニスタンの首都カーブルを占拠した。アフガニスタン領の4分の3がタリバン支配下になった。この全国の少数派人種が暮す北部だけが、北部同盟の支配下で残っており、それに、残ったムジャヒディン集団が加わった。

 タリバン占領地では、タリバンの急進的イデオロギーに反する全ての法律、秩序、文化的現象が廃止された。様々な「違反者」の無数の死刑が執行された。タリバン法廷が評決する姦通罪に問われた女性の投石や生き埋めによる死刑は国際社会が無視することができない現象になった。

 だが、それが大いに生活の古いアフガンの方法と調和していたから、大半のアフガンの住民が新しい命令を受け入れた。

 1996年、タリバンは(ロシアで活動を禁止されている)テロ組織アルカイダ指導者オサマ・ビンラディンのアフガニスタン亡命を認めた。2001年9月11日、アルカイダはアメリカで約3,000人を殺害したテロ攻撃を実行した。これに対応して、2001年10月7日、アメリカはNATOパートナーと、彼らと同盟する北部同盟は、(いずれもロシア連邦で活動を禁止されている)タリバンとアルカイダに対し、アフガニスタンで戦闘活動を始めた。タリバン政権は打倒され、その後、現在のアフガン政府が作られた。

 だが、タリバンとアルカイダは存続し、アメリカ率いる国際軍隊とアフガニスタン政府軍に対する彼らの戦争は続いた。何千人もの人々がタリバン戦士の手にかかって亡くなった。タリバンは、軍人や官僚だけでなく、女性や子供も容赦せず、アフガニスタン民間人を恐怖に陥れ続けた。過去数十年で、2007年の英語を学ぶ男子生徒の死刑執行、2010年の、政府のため、スパイ活動をした7歳の少年の死刑執行や、2014年のパキスタン、ペシャワールでの学校攻撃で、145人(うち96人が14歳以下)を殺害したタリバンの行為などに、世界は特に衝撃を受けた。タリバンは、いわゆる戦いの一環として、多くの他の類似行為を行っている。2018年だけで、6,100人がタリバンに殺害された。

 2018年、アメリカがタリバンと共に交渉の席につき、この組織は、ほぼ合法的な政治的勢力と見なすよう世界に示唆したのは、多くの人々にとって、なおさら驚くべきことだった。2020年2月、更に一層驚くべき事が起きた。アメリカとタリバン間で講和条約が署名されたのだ。この条約で、アメリカはアフガニスタンから軍隊を撤退させ始めるとを誓った。タリバンは彼らのテロ活動を減らすとを約束して答えた。アメリカがまもなく当事者としての責任を果たし始めたが、タリバンは、アフガニスタン軍と一般人を攻撃し、テロ活動を続けた。講和条約調印後わずか3カ月、2020年夏始めまでに、何百人もの人々がタリバン兵に殺害された。2020年中、アフガニスタンでは争いと殺害が行われた。2021年も暴力は続いた。

 現在、タリバンはアフガニスタン領のかなりの地域、アメリカ侵略が始まった2001年以来占領していなかった地域を支配している。様々なアフガニスタン地域でタリバンと政府軍間の血みどろの戦いが行われている。外国から武器を供与され、支援され続けているタリバンは概して成功しているが、アフガニスタン軍はCovid-19流行にひき起こされた経済危機の影響を受けている。アフガニスタン兵はアメリカから受け取った装置を敵に残して、降伏したり、大挙して脱走したりしている。5月初旬から2021年7月始めまでに、タリバンは50の地区を攻略し、全てのアフガニスタン主要都市に近い戦略拠点に入った。

 だが、これもアメリカ計画に大きな影響を与えなかった。彼らはすでに軍隊を撤退しつつあった。7月8日、ジョー・バイデン大統領は、2021年8月31日、米軍は最終的にアフガニスタンを撤退すると発表した。バイデンによれば、アメリカは、アルカイダとその指導者オサマ・ビンラディンを排除することで、この国で望んでいた全てを達成した。そして、大統領によれば、アフガニスタン人の未来はアフガニスタン人にしか決められない。

 これはどちらかと言うと奇妙な声明だ。もしアメリカの狙いがオサマ・ビンラディンの排除なら、米軍はこれまで10年間アフガニスタンで何をしていたのだろう?結局、オサマ・ビンラディンは2011年に殺害されていたのだ。もし目的がアルカイダの破壊だったら、ジョー・バイデンは考え違いをしている。この組織が依然存在している。2021年7月21日、バイデン演説の三週間後、アフガニスタンのアシュラフ・ガニ大統領が、タリバンはアルカイダや他のテロ集団と強い結びつきを持っており、タリバンはアフガニスタンを世界中の反抗分子のための安全な避難所に変えるつもりだと報告した。加えて、アフガニスタン・メディアは、経験豊富なアルカイダ過激派戦士が若いタリバン兵を訓練し、彼らの作戦の一部を指揮していると報じている。アルカイダには、故オサマ・ビンラディンに置き換わる、新指導者アイマン・アル・ザワヒリがいる。だから、ビンラディンとアルカイダが破壊されたからアフガニスタンには他にいかなる仕事もないので、アメリカは去るべき時だというバイデンの言葉には、いささか当惑させられる。

 最終的に、バイデン前任者の一人、バラク・オバマの言葉はどうだろう? 2009年12月1日、アフガニスタンに更に30,000人の兵士を送る際「我々はタリバンの勢いを逆転させ、彼らに政府を打倒する力を与えるのを拒否しなくてはならないと言ったのだ。「彼らがアフガニスタンの未来に対する主な責任を負えるよう、我々はアフガニスタン保安部隊と政府の能力を強化しなくてはならない。」これらの目標は今達成されたのだろうか? タリバンがアフガニスタン政府軍を積極的に攻撃している様子から評価すれば、否だ。

 タリバンが民主的プロセスに平和裡に関与するため、どこかの時点で止めるのを当てにしても無意味だ。勝ち始めた時に戦うのを止める人々など、ほとんどいない。

 バイデンの言葉に応えるかのように、2021年7月27日、タリバンは送電線を爆破し、アフガンの首都カーブルに停電をもたらした。7月29日、彼らはアフガニスタンのナンガルハール州で検問所を攻撃し、少なくとも8人の兵士を殺害した。同じ頃、インターネットに、タリバン兵士の「新しい写真」が現れた。以前全ての写真は古いソ連の短機関銃と機関銃で武装した伝統的なアフガニスタン衣装の人々が写っていた。今や一般兵士が最新技術で装備されてるのがわかる。防弾チョッキ、ビデオカメラつきヘルメット、照準望遠鏡つき軽量機関銃や典型的なNATOひざ当てや、ひじ当てさえ。この人々は最新の特殊部隊のように見える。もちろん、これら写真は「平和共存」や「民主選挙」の考えを示唆していない。

 すると、アメリカはなぜ去るのだろう? 一つ目の最も簡単な答えは、疲弊して諦めたからだ。アフガニスタンでの20年の戦争で、何千人ものアメリカ人が亡くなり、ワシントンは、ほぼ一兆ドル消費した。もちろん命の損失を財政上の損失とは比較できない。それでも、2020年、アメリカを覆い尽くした大規模社会不安は、アメリカ国内には限界の重い負担がかかっていることを示している。もしワシントンが国内の社会、経済開発の代わりに外国での戦争に金を使い続ければ、アメリカ国家は潰れかねない。それでアメリカは、いかなる実際の結果も達成せずに、アフガニスタン作戦を締めくくるのを強いられているのだ。

 二つ目の選択肢は更に不快だ。おそらくアメリカは、競争相手、ロシアと中国に、この極めて深刻な問題を引き渡すため、意図的に不安定なアフガニスタンを置き去りにするのだ。アフガニスタンは、タリバンに制圧され、国際テロ集団の避難所から、テロの本当の要塞へと変化し、中央アジア全体にテロの脅威を広め、近隣諸国にとって深刻な問題になりかねない。ロシアと中国は、重要な資源をその解決に捧げなければなるまい。これらの国々がアフガニスタンに注意をそらされている間、アメリカはアジア太平洋地域における立場の強化に、力を向け直すだろう。近年アメリカは中国との猛烈な競争をしている。

 たとえアフガニスタンが世界共同体から失われても、ロシアと中国は、上海協力機構や集団的安全保障条約組織CSTOなどの組織を通して、お互いや、他の国々と協力を進展させ続ければ、この脅威が中央アジア中に広がるのを阻止する十分な力を持っている。アメリカは、たとえアジア太平洋地域でその狙いを実現するのに成功しても、抑制されないままにされていたアフガニスタン・テロリストは、アメリカ自身を含め、他の国々での活動を拡大しかねない。そういうことにならないよう願うが、我々は、このような進展の可能性を完全に排除してはならない。

 ドミトリー・ボカレフは政治評論家、オンライン誌「New Eastern Outlook」独占記事。

記事原文のurl:https://journal-neo.org/2021/08/10/u-s-withdrawal-from-afghanistan-a-predictable-effect/

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