アフガニスタンでのアメリカ敗北はソ連の失敗より酷い。これがどのように起きたのか?
ポール・ロビンソン
2021年8月13日
Information Clearing House
アフガニスタンで衰えつつあるアメリカ駐留部隊最後の兵士が荷物をまとめて出て行く中、30年以上前、この国からのソ連撤退を思わせるものがある。だが、実はワシントンの敗北は遥かに深刻なのだ。
1979年12月、アフガニスタンで政権の座にある不人気なアフガニスタン人民民主党(PDPA)政権を支援するため、ソ連軍がアフガニスタンに入った。彼らは間もなく、ムジャーヒディーン・ゲリラに対する血まみれの戦争の泥沼にはまっているのに気がついた。
9年後、ソ連は十分に流血したと判断し、1988年5月に撤退を始めた。ソビエト軍最後の分遣隊は翌年2月、橋を渡って、ソビエト社会主義共和国連邦に帰還した。
12年後、アメリカ軍がタリバンと戦うため到着した。他のNATO諸国の軍隊がそれに続いた。彼らは共に、ソ連より長く駐留したが、今や撤退しつつある。ジョー・バイデン大統領は、アメリカ軍は、8月末までにアフガニスタンを撤退すると約束した。
アメリカが、その最長の戦争から撤退を完了する中、敵は進撃中だ。これまでの一週間で、タリバンは、いずれも木曜日に陥落した二番目と三番目の大都市、カンダハルとヘラートを含め、アフガニスタンの34州の首都のうち12を攻略した。
タリバン前進の勢いは注目に値する。一部の場所では、政府軍は戦いせずに逃走した。ガズニ州知事は、その地域からの自由な脱出と引き換えに、彼の都市を放棄したと言われている。アメリカに訓練された政府軍は逃げたり、一団となって脱走したり、ある場合には、タリバンに寝返った。それは総崩れだと言って良かろうが、アメリカ軍は、まだ完全に去っていない。政府は首都カブールを固持するのは可能かもしれないが、それすら、もう確実ではない。
要するに、アフガニスタンでのアメリカとNATOの20年戦争は不名誉な失敗で終わったのだ。丸ごと絶対に。もちろんソ連も戦争に破れたが、それほど出し抜けではなかった。
最後のソ連部隊が、アフガニスタンとウズベク・ソビエト社会主義共和国を結びつける友好橋を渡った後、ムジャーヒディーンは手っ取り早く政府軍を打倒することが可能だと確信し、大攻撃を開始した。彼らの攻勢は完全に失敗した。アフガニスタン軍は一歩も引かず、主要人口集中地区の一つも敵の手に落ちなかった。アフガニスタン人民民主党(PDPA)体制が最終的に倒れたのは、二年後、ボリス・エリツィンのソ連後のロシア政府がアフガニスタンに資金力を止めた時のことだった。
これまでの一週間に起きたこととの対比は、これ以上明白になり得ない。ソ連が去った後でさえ、彼らが訓練し、武装させた軍隊は、激しく成功裏に戦った。現在、アメリカと同盟国が何千億ドルもの経費で訓練し、武装させた軍隊は、ごく僅かな抵抗の努力だけで四方八方に散ったのだ。
だが公正のために言えば、問題は、軍事演習や機関銃の木箱ではない。現在のアフガニスタン軍には、両方ともたっぷりある。彼らはタリバンに数で勝り、補給はより豊富だ。問題は士気だ。簡単に言えば、彼らの多くが政府に命を捧げたいと思っていないのだ。
アフガニスタン人民民主党(PDPA)には、収賄や、無能さや、党派的内輪もめやに対する当然の悪評や、宗教や私企業に対するマルクス主義攻撃など、アフガニスタン国民を遠ざけた、独断的、反生産的政策があった。一方、アフガニスタン人民民主党(PDPA)の敵、タリバンの先駆者ムジャーヒディーンは、先進的なスティンガー・ミサイル供給の約束を含め、アメリカの大規模支援を享受していた。
ソ連に支援された政府の方が、現政府より良く戦った事実には、従って一つしか説明しようがない。アフガニスタン人は、社会主義PDPAに配慮したほど、現在の支配者に配慮していないのだ。それは重要なことを物語っている。
そこで、アメリカとNATOが、なぜカーブルでそれほど長い間政権を支援して過ごしたのか、カーブル政権がなぜそれほど嫌われるようになったかの疑問が生じる。
最初の疑問への答えは、主に威信だ。現政権を据えた欧米諸国は、彼らの評判は、その存続に結びついていると感じて、支える価値がないことが明確になった時でさえ、それを放棄することを拒否したのだ。
二つ目の疑問への答えは、現政府のひどさの多くが、欧米諸国に追求された政策によるものだということだ。
1992年にナジブラが打倒された後、アフガニスタンでは、麻薬密売軍閥指導者が権力を求めて戦い、アフガニスタン国民にあらゆる種類の残虐行為を行った邪悪な内戦を経験した。タリバンは、残忍ながら、買収されずに公正を実施して出現すると、多くのアフガニスタン人が安堵のため息をついて、彼ら支持した。
周知の通り、カナダ人将軍リック・ヒラーは、タリバンは「忌まわしい殺人犯で人間のくず」だと述べている。彼が言い損ねたのは、タリバンの敵は、時々に、もっと酷いことだった。アメリカと同盟諸国が、アフガニスタンに侵攻した際、これらの敵は故郷に戻り、今回は欧米列強の支持を得て、連中の犯罪的な手口をを再開したのだ。予想通り、現地の人は、さほど感銘しなかった。
その後、欧米列強はアフガニスタンに湯水のように金を注ぎ込んだ。適切な管理がない貧しい国に現金を注げば、結果は大規模収賄だ。アフガニスタンはそうなった。
単にこれは政府の権威を失墜させただけでなく、支援金の多くがタリバンの手中に流れた。アフガニスタンでアメリカ出費の会計監査責任を負う米国当局者ジョン・ソプコが言う通り「アフガニスタンでのアメリカ・サプライチェーンの最後はタリバンだ」。誰がタリバンを武装させ、支払ったか知りたいと望むなら、答えはアメリカがそうしたのだ。
ソ連はイデオロギーと人的資源で戦争の流れを変えられると考えていた。欧米は、金と資源を注ぎ込むことで、アフガニスタンで勝てると想像した。だがナポレオンが言った通り「戦争において、士気と身体能力の比は三対一だ」。今週のアフガニスタンでの出来事が、この要点を証明している。
ポール・ロビンソンはオタワ大学のロシアとソ連史教授、軍の歴史と軍の倫理について書いており、Irrussianalityブログの著者。
記事原文のurl:http://www.informationclearinghouse.info/56715.htm
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この記事を訳した日
アフガニスタン反政府武装勢力 タリバン勝利宣言 大統領は出国
昨日の記事に下記リンクを貼り損ねた。昨日昼はNHK BSで、当時フィリピンで暮らしておられた方々や、特攻隊の方々のドキュメンタリーを見ていた。
植草一秀の『知られざる真実』 8月15日は「無条件降伏広報の日」
今回記事のコメント欄に「この記事は極めて偏っている。ソ連軍は侵略したのではなく、ナジブラ政権に招請されたのだ。等々。」という趣旨の投稿がある。念の為コピーしておく。
This article is heavily biassed.
A few points:
the USSR was invited into Afghanistan by its leader, Mohammad
Najibullah, it was NOT an invasion;
the Afghan government was being attacked by Takfiri fanatics at the
instigation of the USA;
the CIA's Osama bin Laden played a crucial role, as did Saudi Arabia and
Pakistan, in recruiting, training, arming and financing these fanatics
that eventully morphed into al Ciada;
it was a plan to give the USSR its own 'Vietnam';
CORRUPTION was and is endemic in Afghanistan, as it is throughout the
world: like GREED it is part of human nature;
Afghanistan was part of the US anti-communist drive so that it could
become sole hegemon a-la-PNAC.
It failed.
下記ビデオを見ていて小林多喜二殺害を思い出した。入管は成り立ちとして、特高の末裔なのだ。ウイシュマさんは多喜二を殺害した組織、特高に殺されたも同然と納得。中国のウイグル問題を批判する資格があるのだろうかとビデオを見て思う。2時間もあるが、強制収容所官僚の自己弁護説明はともあれ、議員、弁護士、ご遺族やフロアの皆様の真摯な質問と特高「いい加減な回答」部分は必見。
IWJの記事から映像は見られる。
あらためて、IWJの入管問題関係インタビューの数を数えてみた。何と34本。
以前拝見した岩上氏の山添拓参議院議員インタビューを、再度拝聴した。
アメと鞭?この死の収容所、外国人労働者を都合よく使い捨てにする技能実習生制度を支えている。
下記も、お二人による、以前のもので、長い(2時間14分)が必見。怒りがこみあげてくる。
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