中国の核兵器強化を恐れるアメリカ ソ連ミサイル・ギャップ誇大宣伝の繰り返し
Finian Cunningham
2021年7月31日
Strategic Culture Foundation
中国は、軍国主義に依存するアメリカ資本主義経済を維持するための、ソ連の「ミサイルギャップ」に相当する人騒がせネタにされている。
今週、ヨーロッパ報道機関も繰り返しているが、アメリカ・メディア報道が、中国が核兵器発射のため地下サイロの大規模強化に着手している懸念を強調した。
商業衛星データを引用するアメリカ・メディアが、西部地域の新彊と甘粛で何百ものサイロが建設中だと報道している。アメリカ軍当局者と国務省の外交官が、中国の核兵器備蓄の拡大とされるものを「深く憂慮している」と言ったとされている。
北京は新たな核サイロに関する報道について、まだ発言していない。いくつかの中国メディア報道は、掘削は全く別のもののためかもしれないと言う。大規模風力発電施設建設。環球時報は、アメリカの主張を「偽物」と、はねつけた。
文脈が極めて重要だ。当初、アメリカの見出しは、曖昧で、極めて限定されており、この情報が決定的からほど遠いことを示していた。
ウォールストリート・ジャーナルはこう報じていた。「中国は核弾頭ミサイルのため新たなサイロを作っているように思われると研究者たちが言う」。
CNNは、こう大見出しを付けていた。「中国は核能力を拡大しているように思われると、新報告書でアメリカ研究者が述べる。」
確かな情報が欠如しているにもかかわらず、国防総省と外務官僚が「深く憂慮する」と言うのをやめることはなく、推測報道に、事実の外見を付け足したのだ。
別の考え方もある。中国が新たなサイロで核備蓄を拡大していたら、それが何だろう?中華人民共和国は350発に達する核弾頭備蓄を持っている。ストックホルム国際平和研究所によれば、アメリカは、およそ5,550の弾頭を備蓄している。
アメリカの核攻撃能力は中国の15倍だ。だから国防総省が言うように、たとえ中国が核兵器備蓄を二倍にすることを計画しても、その増加は、アメリカの破壊能力の、ごくわずに過ぎない。
北京は核備蓄を減少する責任はワシントンにあると主張している。今週アメリカとロシアは、トランプ政権以来、ワシントンが保留した取り組みである軍縮協議をジュネーブで再開した。ワシントンとモスクワは、世界全体の核弾頭の90パーセント以上を保有しており、イギリスやフランスのような他の小規模核保有国とともに中国が議論に参加する前に、軍備縮小義務を継続する必要がある。
この文脈で、もう一つ配慮すべきなのは、アメリカ合州国の中国に対する敵意が増大していることだ。バイデン政権は、前任者トランプとオバマの攻撃的政策を続けている。反抗的な中国領の島、台湾の武装、南シナ海への軍艦航行、人権侵害、大量虐殺、貿易上の悪質行為、サイバー攻撃、Covid-19流行を巡り、メディアによって、中国を中傷している。この全てが、中国との戦争を受け入れさせるため、中国との対決をかき立てて、アメリカ世論を煽りたてているのを物語っている。
議会聴聞会で、国防総省当局者たちは、近い将来、中国との戦争は十分あり得ると思うと述べた。
この文脈を考えれば、戦争を考えるアメリカの計算を転換させるため、中国が核防御を拡大しようとするのは合理的だ。問題は中国の軍事力増強とされていることではない。戦争のリスクを煽っているのは、北京に対する敵意というワシントンの犯罪的政策だ。
だが、もう一つ鍵となる要因がある。アメリカは1兆ドルの核兵器備蓄強化を進めているのだ。それはオバマ下で始まり、トランプと、今バイデンの下で続けられている。これは中国の核能力拡大とされているものを、大局的に見ることを可能にする。アメリカは既に中国の核能力を小さく見せる核を保有しているのに、アメリカは中国に対する挑発的脅威を拡張しているのだ。
更に、潜水艦発射弾道ミサイル、サイロ発射大陸間弾道ミサイル、核搭載戦略爆撃機というワシントン核戦力三本柱の強化は財政的に制御できない状態で突き進んでいる。
無党派の連邦議会予算事務局による最近の報告書が、1兆ドルの核兵器強化は「仰天するほど高価な」予算超過でふくれ上がっていると警告した。わずか2年で、経費は予算を1400億ドル超過しているが、核兵器強化計画は合計30年続く予定だ。
涙がこぼれるような税金の浪費は、一部のアメリカ議員を核兵器出費の大幅削減を要求するようにさせた。エド・マーキー上院議員や他の人々は「アメリカの膨張した核兵器予算」を非難した。アメリカ民間インフラのぼろぼろ状態を考えれば、法外な軍事出費に対する大衆の反対は、国防総省や産業複合体にとって、大きな政治問題になりかねない。
中国のサイロ拡大とされていることに対するアメリカ・メディアの誇大宣伝は、冷戦中のソ連との「ミサイル・ギャップ」とされるものの繰り返しを見ているようだ。1950年代と60代、ワシントンと従順な商業メディアは、核弾頭ミサイル数で、ソ連がアメリカを抜いたことを示すと主張するCIAデータで活気づいた。後に「ミサイル・ギャップ」は実在しないことが分かった。だが、それが引き起こした恐怖は、今日に至るまで、ワシントンによる構造的、習慣的な莫大な軍事支出を、国民に受け入れさせている。財源の、この歪められた割り当ては、アメリカ社会の寄生的枯渇だ。いかなる合理的、民主的精神も、この奇怪な優先度を忌み嫌うはずだ。
現在、中国は、軍国主義に依存するアメリカ資本主義経済を維持するための、ソ連「ミサイル・ギャップ」に相当する人騒がせネタになっている。
Finian Cunninghamは主要報道機関の元編集者・記者。国際問題について多く書いており、記事は複数言語で刊行されている。
個々の寄稿者の意見は必ずしもStrategic Culture Foundationのものを意味しない。
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