アメリカとNATOの撤退後、アフガニスタンは他の全員にとっての問題になるのか?
2021年7月15日
ヘンリー・カメンズ
New Eastern Outlook
アフガニスタンの状況は映画「チャーリー・ウィルソンズ・ウォー」の最後に似ている。終盤では、面目を保つことはできず、勝利は得られない。アメリカとNATOパートナ諸国による20年の国造りの試みにもかかわらず、巨大な真空が残るのだ。
彼らが、ベトナムやペンタゴン・ペーパーのように、この戦争が遅かれ早かれ、どのように終わるか知らないわけではない。何が実現されたか、実現されなかったかにかかわらず、そうした場所は自分の裏庭ではないので、どちらだろうと気にかけず、結局常に、アメリカ軍は最後に撤退していた。
だが、この最後が、どれだけ最後で、アフガニスタン政府が、タリバンと何らかの妥協を見いだす能力への信頼を(持っているとすれば)一体誰が持っているのだろう?トルコが民主主義の灯、防衛最後の一線として、しゃしゃり出て、アフガニスタン国際空港の治安維持と運用をするのは、イエスをはりつけにするよう命じたユダヤのローマ代理人ポンテオ・ピラト並の「縁切り作業」と見なすことが可能だ。
トルコ軍は、NATO率いる「確固たる支援任務」の一環として、既に六年、カーブル空港を防衛している。だがトルコは全NATO加盟諸国で、一番好かれおらず、それゆえ常に信用できないと言われている国だ。
アフガニスタンは内陸国で、(ロシアで禁止されている)タリバンや他の戦士活動のため道路は益々危険となり、アフガニスタン空港は極めて重要な資産になっている。トルコに空港防衛を任せるのは、実質的に、のけものトルコが熱望すべきモデルと思われるほど、アフガニスタンが信頼性上、遥かに下位と考えられるかのように計算された侮辱だ。
トルコは、他のNATO加盟諸国のためではないが、アフガニスタン最後の外交懸け橋として残されたことが明確になっている。この状況を作った連中は二つの主なシナリオを考えている。
1.状況はめちゃめちゃになり、トルコは損害を受け、文句を言う連中を救うため、NATOによる救済措置が必要になる。
2.トルコは現地過激派戦士と、うまく話をするのに成功し、欧米の血と資産を何十年も流した後、この地域への影響力を獲得し、彼らもその一部なので、誰も欲しない黄塵地帯に放置されて、同様に野蛮と表現できる国になる。
ドミノ理論は健在だ
トルコがアフガニスタンで最新のスケープゴートになると同意した可能性は極めて低い。トルコは、そこに駐留した他の全ての国々同様、歴史を知っている。
アメリカ撤退の一つの理由は、トルコに身代わりになるよう強いて、自身の政策で、この30年、着実に損なったソフト・パワー影響力をいくらか取り戻し大喜びするためだ。アメリカは難関を脱して、勝つ可能性がより高い魅惑的プロジェクトに関与せず、またもや、最高の善人になろうと思っているのかもしれない。
運命のいたずらは、アフガニスタンが、おそらく現地住民の間で評判が傷つかなかった近年唯一のアメリカ介入だったことだ。米軍はイラクや他の場所で読者が挙げるのを思いつくニュースと同じように、侵略者や破壊者と見なされているわけではないのだ。
だが彼らは決して勝つことができないが、事態が非常にまずく、支配者が変わったと思って侵攻しただけだった。そうではなく、真実は依然真実で、アフガニスタンは常に、他者による、あるいは自身の、どの一つの地域による支配も受けないのだ。
イギリスが帝国権力の絶頂にあった時、アフガニスタンに三度戦争をしかけたが、一つも究極目標を達成できなかった。イギリス最初のアフガニスタン戦争はイギリス軍最大の敗北をもたらした。
最後に生き残ったイギリス兵だったがゆえに、1834年にジャララバードに馬に乗って入り降伏できたブライドン博士の物語をアフガニスタン人全員が知っているが、この事件はイギリスの歴史本では、ほとんど言及されない。理由の一つは、当時の陸軍最高司令官がイギリス軍の英雄の典型、他ならぬウェリントン公爵だったためだ。パデレフスキーがユダヤ人を迫害したのをポーランド人が認めることができないのと全く同様、イギリス人は軍事天才の権化の監督下で、これをしたのを認めることができないのだ。
1979年、もう一人のチトーやドブチェクが戸口に出現するのを恐れて、ソ連がアフガニスタンに侵攻した際、元イギリス首相ハロルド・マクミランは、唯一の結果は敗北なのだから、ソビエト社会主義共和国連邦が今までしたことの中で最も愚かな行為だと公に発言した。当時、マクミランは現代世界と全く関係のない幽霊のような遺物で、ソビエト社会主義共和国連邦は、決して倒れないほど、しっかり支配された、ほとんど阻止できない勢力としてと見なされていた。アフガニスタンは彼が正しいことを証明し、ソ連と違って、依然そこに存在しており、アフガニスタンの歴史は、まぐれの連続でなく、そういう運命であることを証明している。
この崩壊しつつあるテロ・カルトがアフガニスタンだ、つまり歴史は今書き直すことができる、あるいは反対派がアフガニスタンで、ちょっとした保護が必要だと、アメリカとNATOはと考え、タリバンを排除するため侵入したのだ。アフガニスタン人だけが自身の問題を解決することができるのだから、続くアメリカ政権は、いずれも歴史にしっぺ返しされた。アフガニスタン人は、タリバンを望まないかもしれないが、少なくとも彼らは、アフガニスタン人の問題であり、それゆを、彼らの解決策の一部なのだ。
アメリカは慌てて逃げ、現地人との提携のふりをするため最も腐ったリンゴを残してゆく。それはイランに、レバノン国境を保証するよう要求するのと同じだ。トルコが他の全ての国々と同じようになったら、NATOは、ばらばらなかけらを拾い上げ、トルコの重要性が減る形でまとめようと望むかもしれないが、アフガニスタン紛争は差し迫った問題を遥かに超えるものだから、「最後の撤退」が、実際、そうなる可能性は高くない。
地平線に姿を現す暗い雲
既にアフガニスタンの近隣諸国は不吉な前兆を感じている。見出しにあるように、ロシアは攻撃型ヘリコプター演習をし、タジキスタン-アフガニスタン国境を安全に保つのを支援すると誓っているが、それは単なる手始めだ。
アフガニスタンからの撤退は、国境を接する中央アジア諸国を、ロシアにとって一層複雑にするだろうが、これはアメリカから見れば、もう一つの恩恵だ。何年もの間、(いずれもロシアで活動禁止されているテロ組織)アルカイダとISISを支援していたのだから、トルコも、おそらく火に油を注ぐだろうし、アフガニスタンで事態が一層悪化すなれば、トルコは、この地域で影響力を維持するため非国家主体を利用して、他の国々を不安定にする手に訴えざるを得ないだろう。
争うべきものが何も残されていないわけではない。タリバンは自分が勝ったことを知っており、アメリカとNATOは自分たちが負けたことを知っている。アメリカは何らかの形で連合を作るべく、タリバンとアフガニスタン政府間の交渉を奨励し、敗北を隠蔽しようと切望している。だが彼らはタリバンを追い出すために入ったのに、なぜまだ、そこにいるのだろう?
この国で長い間覇権を維持しているパシュトゥーン系アフガニスタン人には次のようにことわざがある。「アフガニスタン人をまとめようするのは、秤の上にカエルを載せようとするようなものだ」。アフガニスタン亡命者集団は、彼らが行くところどこででも、祖国の深い民族的、言語的、宗教的、政治的、文化的な相違を示す。だが彼らは、自然の故国から追われた難民ではなく、結局は、そもそも全てアフガニスタン人で、彼らの論争は、どの外国勢力を好むかではなく、誰が操縦桿を握るべきかについてなのだ。
大きなな戦いをせず、1996年に最初に権力を掌握したタリバンは、イデオロギーこそ広く嫌われているが、少なくとも現地のもので、理解されており、進路を阻むものは何もない。そもそも最初から根比べに過ぎなかったのだが、余り多くの時間は残っていない。
カーブル空港の治安を議論するアメリカとトルコ防衛大臣の最近の会談は、純粋に第三者による継続的な外国、NATOの影響力で、そこを飛び領土にするよう意図されている。出入国者や輸入貨物や輸出貨物を支配するのは、制裁の別名であり、当時ソ連のアフガニスタン侵攻に対する「強固な対応」だった1980年のアメリカによるモスクワ・オリンピック・ボイコットと同じぐらい有効な可能性が高い。
あなた方の問題だから、解決策はない
圧倒的多数の米軍は既に撤退し、ドイツやイギリスなどのパートナーも部隊を撤退させた。アフガニスタン軍は、国中で、タリバンに急速に負けつつある、アフガニスタン軍兵士は過激派戦士から逃げ、一部はタジキスタンに逃亡さえしている。
当局は全ての失地を再び奪還するとを誓っている。だが一体何によって?そうする唯一の方法は、彼らがこれまでのところ良かれ悪しかれ、し損ねている、政府が自分の中にタリバンをとりこむことだ。
アメリカの公共放送が、アフガニスタン政府を支援する最後の試みがあると主張しようとしている。それを最後の試みにすることで、アメリカに、もう一つ逃げ道ができるのだ。その逆ではなく、アフガニスタン人の無能力のおかげで、アメリカががっかりさせられ、アメリカは本当の友人ではなく、不実な友人を置き去りにしなければならないのだ。
差を埋めると期待して、争いを支援するよう、政府は民兵を武装させている。もしアフガニスタン治安部隊が、アメリカからのあらゆる装置や供給品や資金をもってしても現状維持できないなら、現地の様々な民族や部族集団の民兵が変化をもたらせるなど一体誰が思うだろう?
答えは単純だ。アフガニスタンが更に分裂し混沌とすれば、この地域に、それだけ、より多くの問題が生じるのだ。内戦の間に、彼らがアフガニスタンのどの集団と組んでいたか次第で、誰が支援され、無視されるかについて、アメリカも歴史を知っている。この長期戦で勝利する方法は、間接的な資金提供を通して適切な連中を連れて来て、素早く去ることだ。
マイクロチップ入りハードウェア
ジョー・バイデンは、我々が当初から知っているべきだったことを、ようやく言っている。アフガニスタンの未来は、アフガニスタン人が決めるよう任せなくてはならない。「我々は国造りのためにアフガニスタンに行ったのではない」とバイデンは最近の演説で言った。「アフガニスタンの指導者が集まって、未来へ進まなければならない。」
BBCによれば、彼は「何を欲するか」決めるのはアフガニスタン人次第だと強調したが、こうも補足した。「無意味な暴力は、止めなければならない。それは非常に困難だろう。」これはアフガニスタン人が無意味な暴力を欲していないという自認で、彼はそれを止めるため、そこにいるべきなのだ。アメリカが暴力を使うことで、勝つことができると考えない場合だけ暴力は無意味なのだ。さもなければ、それは、人々が何を欲しているかにかかわらず、暴力が使われる多くの他の場所同様、正当化される自由の戦いだ。
一つ確かなことがある。軍隊があろうと、なかろうと、金は依然流れるだろう。ロシアのメディアで、バイデンは軍撤退にもかかわらず、アメリカは「歩き去らない」と言ったとされている。これはつまり、ワシントンは、たとえ究極的に、その金がタリバンに行くことを意味するにせよ、何年もしてきたように、アフガンニスタン軍に資金を供給し続けることを意味する。
アフガニスタンから撤退するというアメリカの決定が正しいもので、我々がまだ知らないの狙いのために、テロリストや他の連中に使われる、もう一つの武器の「戦略的引き渡し」ではないと信じるのは素敵だろう。それは、ISIS攻撃後、アメリカが支援するイラク軍が撤退し、まるで偶然ではないかのように、極めて大量の軍装備品と弾薬がテロリストの手中に落ちた時のようだ。
武器供給を支配することで「我々の言う通りにするか、さもないと我々の銃は、より多く傷ものになる」と、アメリカが常に、ある程度の支配力を維持しようとしている可能性がある。だがバイデン政権には、他にどのような選択肢もないので、慌てて逃げ、混乱の中にトルコを最後の犠牲の多い勝利に残してゆく可能性が一層高そうだ。
ブルッキングス研究所が実に明らかに指摘している通り「(撤退によって起きる)これら全ての民主的プロセスや権利や人道的懸念に対するあり得る損失は極めて悲劇的だ。」だがアメリカはもうそれを逆転できない。任務とされるものより長生きした結果、今もはや腐敗した政府連合、軍需請負業者や、目的が利益で、できる限り長く、アフガニスタンを無力なものにし、独立ではなく、より依存するようにするNGOや開発機関を満足させることができないのだ。
始まりの終わりは見えない
アメリカ政府は、撤退後のシナリオで、何が次に起きるかもしれないか十分承知しており、時間がたてば、どれが最も正確だったか分かるだろう。あと知恵だが、研究者たちが、アメリカが、何が起きるか知っていたと言うのと同じぐらい良く知っていたなら、なぜそれほど長く駐留したのだろう?
アメリカによる航空援護がないので、タリバンは間もなく、いくつかの州の首都をとるだろうし、アフガニスタン軍は、多くが寝返って、既に降参しつつある。カーブルは、発砲なしで崩壊するかもしれない。
現地と親密な金融のつながりがある連中や、外国干渉を支持していた一部の連中に最後の機会を提供するため、アメリカとNATO介入失敗後、日没前にとんずらするため、空港は最後まで持ちこたえるだろう。
タリバンはNATOを打ち破り、最終結果として、多くのアフガニスタンへの外国干渉の最新のものが不名誉な結末に到ったのだ。同じことが、少なくとも近いうちに別の地域で繰り返されないよう願うが、もしそうなれば、状況を安定させるため少なくともトルコが送られるだろう!
中央アジアの安定性は、一帯一路プロジェクトなどで、継続的経済発展のために重要なので、中国を想起することが必要だと私は思う。北京は既にパキスタンで、タリバン指導部との様々なチャンネルを開発している。アフガニスタン撤退後、アメリカは、中国封じ込めのため、より多くの注意と資源を「自由に」できると予想される。
アフガニスタンからのアメリカ軍撤退は、おそらく、アメリカが、中国と、地域の「最近発見された友人たち」の勃興を封じ込めるための望ましい方法だ。
ヘンリー・カメンズは、コラムニスト、中央アジアとコーカサスの専門家。オンライン誌New Eastern Outlook独占記事。
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腹話術の人形のような目つき、口調で、五輪強行をしても、無責任な前任者に梯子を外されるみじめさ。アンダーコントロール、最適の気候というウソで招いておいて、ドカンの中に逃亡。
ショーディレクター過去発言以上に深刻なのは、どこの副大臣かわからない人物。ナチスにならえ大臣も。
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【IWJ・Ch6】12:00~「五輪は中止だ!抗議アクション~都庁前トーチリレー到着抗議行動」
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