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2021年7月 9日 (金)

アメリカはなぜアフガニスタン周辺地域に不安定の巣を作り出しているのか?

2021年7月7日
ウラジーミル・ダニーロフ
New Eastern Outlook

 タリバンに破れた19年以上の戦争後、アフガニスタンからのアメリカの慌ただしい撤退は、アメリカがベトナム戦争で敗北した後、1975年のサイゴンの状況に極めて似ている。アメリカ軍の撤退だけでなく、ワシントンは(ロシアで禁止されている)タリバンの反米攻撃がエスカレーションした場合、外交要員も撤退させるよう強いられる可能性があると言っており、ウォール・ストリート・ジャーナル報道によれば、既に不測の事態に備えて対応を立てているという。

 パキスタンの新聞「ネイション」が指摘している通り、アメリカが武器を与え「訓練した」アフガニスタン国軍は、アメリカとNATO軍が国から彼らの軍隊を撤退させる中、政府の差し迫った崩壊を予期して、大変な勢いで、軍用機器や兵器をタリバン用に放棄し、大隊丸ごと、戦火を交えず撤退している。四月に発表した軍隊撤退に関する声明で、ジョー・バイデンは、アメリカのアフガニスタンに対する失敗した政策によってもたらされた状況を制御するのに無力なことを認識する一方、ロシア、中国、インドとパキスタンに「進み出て」、「アフガニスタンを支援する」ために一層努力するよう要求した。

 アフガニスタン駐留米軍司令官オースティン・S・ミラー大将は、アフガニスタン関係のジョー・バイデン政策を批判し、タリバンが国全体で益々大規模な作戦を開始し、アメリカとの和平交渉にもかかわらず、権力を掌握する試みをするかもしれないと認めた。バグラム空軍基地での、アメリカ放送局ABCインタビューで、ミラーは、アフガニスタンの治安情勢は満足な状態ではないと述べた。彼は、アフガニスタンでは、どの派も軍事的手段で勝利可能とは思わないという以前の発言を繰り返した。だが彼は、果てしないアフガニスタン紛争で新たな流血の波を引き起こしかねない革命のためのあらゆる条件が揃って、事態は危険になりつつあり「我々は、アフガニスタンにとって良くない状況の始まりを見ている」と付け加えた。

 このようなアメリカ政府政策に対する批判的な評価の後、7月3日、ロイド・オースティン国防大臣は明らかにホワイトハウスの指示で行動して、ミラー大将を、アフガニスタン司令官の地位から解任し、後任に米中央軍司令官フランク・マッケンジー大将を発表したのは驚くに当たらない。

 一方、7月2日、最後のアメリカと同盟諸国軍が、カーブルの北西60キロに位置する彼らの主要基地バグラムを去り、基地閉鎖後、約千人のアメリカ兵が、カーブル空港とアメリカ大使館を警備する仕事で残る。AP通信によれば、彼らの数は、まもなく約650人に減るかも知れない(だが、ワシントンはアフガニスタンに留まるアメリカとNATOの民間軍事企業の規模については何も言っていない)。

 アメリカとNATOの軍隊が撤退するにつれ、(ロシアで禁止されている)タリバン軍は彼らの攻撃を強化し、日々新たな領土を増して、明らかに前進している。これまでの数日、タリバンの暴力を恐れて、彼らの攻撃から政府軍兵士が逃げて、多くの場合、国境を越えて、隣接する中央アジアで安全を求めることを強いられている。例えば、6月22日、タリバンとの戦いの後、130人以上のアフガン兵士が、タジキスタンに入り、6月23日、50人のアフガン国境警備兵と戦士がウズベキスタンに入り、7月5日、千人以上の政府軍兵士が避難所を求めて、タジキスタンに入った。

 アフガニスタン北部のタリバーンによる、これら国境検問所と軍事活動は中央アジア、ロシアと中国の懸念を高めている。リーダーの中でも、タジキスタンのエモマリ・ラフモン大統領は、現在、この問題に関して、ウズベキスタンとカザフスタンの大統領、シャヴカト・ミルズィヤエフとカシム=ジョマルト・トカエフと交渉している。7月2日、アフガニスタンとタジキスタンの内務大臣、ミルワイス・ナブとMuzaffar Huseinzodがアフガニスタン北部の状況を話し合うためにタシケントで会った。

 現状を考慮して、アフガニスタンでのアメリカ軍の任務中、アメリカに協力したアフガニスタン国民の緊急避難は特に激論の話題だった。ワシントンによれば、彼らの人数は約18,000人だ。最近ジョー・バイデン大統領は、彼らを後に残さないと強調した。「我々を支援するため命を危険にさらした他の人々と全く同様、彼らはアメリカで歓迎される」とアシュラフ・ガーニ大統領に率いられたアフガニスタン代表団のワシントン訪問の際に彼は言った。アフガニスタン人通訳や他のスタッフがアメリカで亡命資格を獲得するのを可能にする特別移民ビザを与えることが提案されている。アメリカ議会は難民と移民の特別移民ビザの合計人数について、26,000人を上限としたが、6月にアンソニー・ブリンケンは追加の8,000人の特別移民ビザをアフガニスタン人スタッフに認可するよう要請した。ブルームバーグによれば、約9,000人が既に特別移民ビザ申請を提出した。

 現状生じている問題に対応して、最近アメリカは、タリバンに対する戦いでアメリカを支援していた約9,000人のアフガニスタン国民に、一時的避難所を提供するよう頼むため、3つの中央アジアの国、カザフスタン、ウズベキスタンとタジキスタンの大統領と連絡を取った。ブルームバーグ報道によると、ワシントンはこれらの合意が、アフガニスタンの状況の規制に関連する問題を対象にするアメリカと中央アジア諸国間の更なる協力を確立するより広範囲の協定の一部となるよう希望している。

 提案された協定は、明らかに、アフガニスタンからの軍隊撤退にもかかわらず、この地域で軍事的存在を維持するのを可能にするアメリカのプランBの一部だ。交渉参加者は、「アメリカを支援したアフガニスタン人」の範疇は、軍事基地の技術スタッフに限定されず、アメリカが訓練し、武装させた、反タリバンの独立現地民兵(別名Arbaki)メンバーも含むと強調している。彼らには、政府監督下にない現地集団の戦士や、(両組織はロシアで活動を禁止されている)元タリバーンやDAESHの戦士も含まれる。

 ワシントンは明らかにシリアでのトルコの経験から学び、大半のアフガニスタン人に支持されていないカブール政府に忠誠を誓わない、アフガニスタン北部の独立「Arbaki」民兵勢力が中核を形成する地域の「新軍隊」に将来頼るつもりだ。この新軍隊は、タリバンや、もし中国やパキスタンなどの他の国々が軍隊をアフガニスタンに送った場合、他の地域の当事者に圧力を与えるのに役立つだろう。

 当然、これら「新軍隊」は中央アジアに基地が必要で、どうやら「難民キャンプ」を組織するふりをしながら、アメリカの本当の狙いは、カザフスタン、ウズベキスタンとタジキスタンに三つの軍事基地を建設することだ。アメリカは、人道支援を提供するためという主張で、実際は、新反タリバーン同盟の作戦を調整するために使われる可能性が高いアメリカが、これらの施設を利用できるよう保証することを望んでいる。これら「キャンプ」は、公式には、アフガニスタンの状況を監視することを目的とした電子情報収集センターでもあるが、ロシアと中国をスパイするために使えるよう意図されている。

 カザフスタン、ウズベキスタンとタジキスタンは、既にワシントンに、彼らが米軍基地受け入れを拒否すると知らせたが、アメリカが推進している新「協定」は別の名の下で、依然、基地創造を狙っている。

 モスクワと北京はこのようなワシントンによる提案を拒絶したが、中央アジアでアメリカが事実上の軍事基地を建設し、諜報能力を持つことを認めるのは上海協力機構と集団的安全保障条約組織(CSTO)加盟国義務の重大な違反だから、彼らが反対するのは極めて当然だ。

 無理もないのだが、中央アジア諸国は、伝統的に、アフガニスタンから、あるいは中東からアフガニスタン経由で、戦士やテロリストが彼らの領内に侵入するのを恐れている事実で現状は更に複雑になる。これには、反タリバン集団を含め、タリバンのみならず、様々なテロリストや過激派組織に参加した中央アジア人も含まれる。

 アメリカは、ウズベキスタンのアブドゥル・アズィーズ・カミロフ外務大臣とタジキスタンのシロジディン・ムフリディン外務大臣のワシントン訪問を合意署名の好機として利用したいと願っている。ブルームバーグによれば、ワシントンは、両国が彼らの領土から諜報活動を行うのを認めるよう強く主張している。それで、事実上、アフガニスタンからの撤退後、彼らを地域における影響力の拠点として使用するのだ。

 ロシアや中国や中央アジア諸国を安心させるため、アメリカへの再定住申請が考慮されているが、第三国への一時的亡命という他の選択肢も考慮されているとホワイトハウスは述べた。提案されている場所には、太平洋の島グアムもある。だが、それまでに、多くのアフガニスタン人が既にいわゆる「難民キャンプ」に住んでいるはずの、アメリカで暮らす特別移民ビザを拒否されたアフガニスタン人に何が起きるかについて、中央アジアの国や他の誰にもワシントンは何も言っていない。

 ロシアや中国同様、中央アジア諸国はアフガニスタン状況について懸念を表明した。中国はアフガニスタンと76キロの国境があり、5月、中国外務大臣王毅は、アフガニスタンをばらばらにさせつつある、アメリカの「あわてた撤退」は「和平プロセスに悪影響を与え」「地域の安定に悪影響を与える」と警告した。7月2日、ロシアのセルゲイ・ラブロフ外務大臣は、アフガニスタン状況についての懸念を繰り返し、(ロシアで禁止されている)DAESHジハード戦士が、明らかにアフガニスタン北部に集まっていると警告し、モスクワはCSTOで、同盟諸国とこの状況を論じると付け加えた。

 治安情勢の急速な悪化は、アメリカがアフガニスタンでロシア、中国と、とりわけ長引く対立に陥っている旧ソ連中央アジア共和国を得ようとしているという恐れを引き起こした。

 ウラジーミル・テレホフは、アジア太平洋地域問題専門家。オンライン誌New Eastern Outlook独占記事。

記事原文のurl:https://journal-neo.org/2021/07/07/why-is-the-us-creating-a-nexus-of-regional-instability-around-afghanistan/

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 恫喝男会見時、たまたまテレビを消音で、つけていて消し忘れ。発言に興味皆無。ウイルスは人事権で脅しても忖度しない。日本がウイルスに破れたことを証明する危険で不安な五輪終に突進。

 昨日タイムリー再配信を拝見。まともな研究者もおられるのだ。様々なワクチンの違いがわかった気がする。長時間なのでご注意を。

【タイムリー再配信 941・IWJ_YouTube Live】19:30~「免疫逃避変異E484Kとは?『第4波』変異株感染拡大にもかかわらず、過少検査でワクチンも打てないまま東京五輪強行開催の愚!~岩上安身によるインタビュー1037回 ゲスト 国立遺伝学研究所・川上浩一教授(2)」
視聴URL: https://www.youtube.com/user/IWJMovie/featured

 4月20日に収録した、岩上安身による川上浩一氏インタビューを再配信します。これまでIWJが報じてきたワクチン関連の記事は以下のURLから御覧いただけます。
https://iwj.co.jp/wj/open/archives/tag/%e3%83%af%e3%82%af%e3%83%81%e3%83%b3

  岩波書店月刊誌「世界」8月号 山岡淳一郎氏の「コロナ戦記」毎回ながら興味深く拝読。首相にも劣らない女帝の強権人事も描かれている。まともな政策をすると首になるのは東京も国も同じ。もう一本のコロナ記事「敗軍の将兵を語る」にしかみえない不思議。

 復興五輪がきいてあきれる福島第一の現状。こういう重要な話題、大本営広報部では永久に聴けない。約38分

【原発耕論 No16】福島第一のデブリ取出しを断念せよ 20210701

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